75 / 105
〜10. 一途な鍾愛〜
ロザリアの告白
しおりを挟む
「すっかり朝になってしまったな…」
窓から差す陽の光に目を細めながら、殿下がそう苦笑する。御母上の死をはじめ、思い出したくない過去もあったはずなのに、殿下が私に全てを話してくれたことが嬉しかった。
「こんな時間まで、すまなかった」
「い、いえ…! 殿下のことを知ることができて、嬉しかったですわ」
私の言葉に殿下が微笑む。その柔らかい表情にドキッとする。いつもと変わらない笑顔。でも、こんなに優しかったかしら…
「部屋まで送ろう」
「きゃ…っ!?」
身体をフワッと抱き上げられ、驚いて殿下にしがみつく。
「ひ、一人で、大丈夫ですわ…!」
「駄目だ。そんな赤い目の貴女を一人で帰したら、またレイラに叱られる」
「え…っ、あ…」
完徹した上に、泣き腫らした瞳。まだ熱を持っていて、瞼が重たい。殿下の言う通り、赤くなっているのだろう。
「す、すみません…」
きっとひどい顔をしている。恥ずかしくなって視線を伏せると、殿下がコツンと私におでこをぶつけた。
「謝る必要はない。僕のために泣いてくれた貴女の瞳が、僕は堪らなく愛しい」
「─…っ!」
その言葉に頬が熱くなる。あ、甘すぎないかしら…。さっきから私ばかりドキドキさせられている気がする。
「あ、あの…っ、殿下…!」
「ん…?」
「わ、私も、その…、殿下のことを…お慕いしていますから…!」
「え…?」
殿下の瞳が、キョトンと丸くなる。
「も、もちろん…、殿下が私を想ってくださっていた時間に比べれば、全然、短いのですけれど…」
「ロ、ロザリア…?」
「で、でも…っ、私、男性にこんな感情を抱いたのは、殿下が初めてで…っ」
「ち、ちょっと待ってくれ…」
私の言葉を制止した殿下は、驚いた顔でこちらを見ている。
「…?」
「あ、貴女が…、僕を…慕っている…?」
「え…? ええ。慕っていますわ」
そう答えると、殿下の顔がみるみる赤く染まり、そのままフイっと顔を逸らされた。耳の先まで真っ赤だ。
「で、殿下…?」
「─…っ!」
目の前の真っ赤な耳に指先で触れると、殿下の身体がビクッと跳ねる。
「さ…っ、触らないでくれ…、今は…!」
「は、はい…っ」
慌てて手を引っ込めると、赤い顔のまま、殿下がこちらを向いた。
「そ、その話の続きは…、今夜、もう一度ここで頼む…」
「え…?」
「じゃないと僕は、このまま今日の執務を放って、貴女を抱いてしまう…」
「─…っ!?」
その言葉にコクコクと頷くと、殿下は足早に、私を自室まで送り届けてくれた。
窓から差す陽の光に目を細めながら、殿下がそう苦笑する。御母上の死をはじめ、思い出したくない過去もあったはずなのに、殿下が私に全てを話してくれたことが嬉しかった。
「こんな時間まで、すまなかった」
「い、いえ…! 殿下のことを知ることができて、嬉しかったですわ」
私の言葉に殿下が微笑む。その柔らかい表情にドキッとする。いつもと変わらない笑顔。でも、こんなに優しかったかしら…
「部屋まで送ろう」
「きゃ…っ!?」
身体をフワッと抱き上げられ、驚いて殿下にしがみつく。
「ひ、一人で、大丈夫ですわ…!」
「駄目だ。そんな赤い目の貴女を一人で帰したら、またレイラに叱られる」
「え…っ、あ…」
完徹した上に、泣き腫らした瞳。まだ熱を持っていて、瞼が重たい。殿下の言う通り、赤くなっているのだろう。
「す、すみません…」
きっとひどい顔をしている。恥ずかしくなって視線を伏せると、殿下がコツンと私におでこをぶつけた。
「謝る必要はない。僕のために泣いてくれた貴女の瞳が、僕は堪らなく愛しい」
「─…っ!」
その言葉に頬が熱くなる。あ、甘すぎないかしら…。さっきから私ばかりドキドキさせられている気がする。
「あ、あの…っ、殿下…!」
「ん…?」
「わ、私も、その…、殿下のことを…お慕いしていますから…!」
「え…?」
殿下の瞳が、キョトンと丸くなる。
「も、もちろん…、殿下が私を想ってくださっていた時間に比べれば、全然、短いのですけれど…」
「ロ、ロザリア…?」
「で、でも…っ、私、男性にこんな感情を抱いたのは、殿下が初めてで…っ」
「ち、ちょっと待ってくれ…」
私の言葉を制止した殿下は、驚いた顔でこちらを見ている。
「…?」
「あ、貴女が…、僕を…慕っている…?」
「え…? ええ。慕っていますわ」
そう答えると、殿下の顔がみるみる赤く染まり、そのままフイっと顔を逸らされた。耳の先まで真っ赤だ。
「で、殿下…?」
「─…っ!」
目の前の真っ赤な耳に指先で触れると、殿下の身体がビクッと跳ねる。
「さ…っ、触らないでくれ…、今は…!」
「は、はい…っ」
慌てて手を引っ込めると、赤い顔のまま、殿下がこちらを向いた。
「そ、その話の続きは…、今夜、もう一度ここで頼む…」
「え…?」
「じゃないと僕は、このまま今日の執務を放って、貴女を抱いてしまう…」
「─…っ!?」
その言葉にコクコクと頷くと、殿下は足早に、私を自室まで送り届けてくれた。
20
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新 完結済
コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる