巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。

蒼霧雪枷

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本編

01、周りが皆憐れんでくる

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 召喚されてから早四日。王様から与えられた部屋でソファに寝転がり、俺はスキルを確認してから今までを思い返していた。

 召喚の間とやらから謁見の間へと案内された俺の心配の一つは杞憂に終わったらしく、王様も宰相様も良い人だった。お花畑って感じでもなさそうだ。
 召喚したことの詫びと、元の世界に還す方法は分からないこと。今の世界の状況と、どうかこの世界を助けてくれないか、という話を勇者にしていた。

 俺はというと…

「こんな小さい子を親と離れ離れにしてしまい、本当にすまないことをした。私のことは兄と思ってくれていいぞ…!」
「私のことも、お姉様って気軽に呼んでね…!」

 と、この国の第一王子と第一王女に涙ぐまれながら囲まれていた。ちょっとノリがウザく感じるのは、きっと俺の性根が腐っているせいだろう。
 そして、果たして俺は一体何歳に見られているのだろう。一応、日本人は若く見られてしまうことを踏まえつつ、俺を男と間違えているとしたら…お世辞にも高いとはいえない身長なので…

「こんな、12歳程の男の子を巻き込んでしまうなんてっ!私たちはなんてことを…」

 はい、言質取れましたー。12歳の男の子だそうでーす。はーい。
 そんなに気に病むことないとは思うんだけど。まぁ、しょうがないのか。12歳の男の子だもんなー。12歳の……地味にダメージが大きいですね。

 そして、召喚されてから一度も声を発していない俺は、何やら「召喚のショックで声を出せなくなった哀れな少年」という設定をつけられていた。
 …うん、いやねぇ?声、出せますよ?ねぇ、喋れるよ?ただちょっと余りのことに何も言えなかったってのと、引きこもりでろくに対人スキル持ってないから喋れなかっただけで…いや、あの、騙してるみたいになるからやめてくれ。
 コミュ障で悪かったな、くそ…

 その日は、罪悪感と12歳ショックで部屋に案内された瞬間に、着替えもせずにさっさと寝た。
 悪い夢ならいいなって、あり得ない希望を抱いたっていいじゃんか。
 異世界生活0日目、しゅーりょー。

 そして始まった異世界生活、一日目。お昼です。寝すぎです。侍女さんが半泣きで起こしてくれました。
 なんかごめんなさい。遅起きの夜型人間なんです、ごめんなさい。
 あまりに俺が起きないため、死んだと思ったらしい。侍女さん、名前はラナさんだそう。覚えやすいね。

 昨日は何も食べてなかったので、一応お腹は空いていた。ただ、流石に寝起きでそんなに量は食べられず。
 出されたものは至極シンプルなお粥みたいなものだったのだが、半分も食べれずに残してしまった。
 その日は結局、お昼ご飯以外は果物だけで済ませ、適当に用意されていた本を読んで一日が終わった。
 余談だが、キチンとこちらの言語や文字は分かるようだ。良かった良かった。

 異世界生活、二日目。読書で夜更かしした俺は今日も遅起き…前日よりは早かった。ラナさんがお昼より前に起こしてくれた。昨日はごめんね。

 異世界生活、三日目。え?二日目終わんの早い?だって何もすることなかったから、果物食べて本読んで終わった。ちなみにこの三日目も以下略。

 と言う感じの本日四日目である。ソファに寝転がりながら、俺は思った。暇だな、と。
 そんなことを考えていれば、ドアがノックされた。おそらく侍女のラナさんだと思われるので、ちゃんとソファから身を起こす。
 料理の乗ったワゴンを押しながら入ってきたラナさん。あぁ、もうお昼の時間か。なんか、ちゃんとしたご飯を用意されているのを見ると、ふつふつと罪悪感が溢れてくる。
 別にご飯が不味いわけではない。異世界あるあるの飯不味問題はここではなかった。普通に美味しい洋食です。
 ただ、単純に俺がものを食べない少食っていう問題があるんだよ。

 なんだろうなぁ。沢山用意してくれるのは嬉しいんだけど、それだけあると見るだけでお腹一杯というか、正直食欲がないといいますか。
 申し訳ないが、今日も果物で。

 そんなこんなでお昼過ぎ。そして今日も今日とてろくに声を発していない俺。
 そう言えば、勝手につけられた喋れない設定をこれ幸いと利用して、全く喋ってないので自己紹介すらしていない。
 ラナさんはどうやら俺用の侍女さんらしく、まぁ子供と思われているからか随分とお話をしてくれている。
 難しいらしい本を読んでいたらとても誉められた。ちょっと嬉しい。

 ラナさんぐらいになら教えてもいいかなぁ、と思ったが、ちょっとここで予想外な事が。
 元々引きこもってたおかげで、数日喋っていなかった俺の喉はどうやら仕事を放棄したらしい。
 マジで声出なかった。ヤバい。

 待ってくれ、違うんだ。ショックもなんも受けてない(12歳扱いには受けたが)から声出ると思って口を開けたんだ。マジで声でないとは思わなくて、ビックリしただけなんだ。
 だからラナさん、その「あぁ、この子の声を奪ってしまった…私たちはなんてことを…」みたいな悲壮感漂う目をやめてくれ。切実に。

 仕方がないので、身振り手振りで何か書くものと紙を要求。すぐに小さな手帳と万年筆が用意された。待って俺万年筆使ったことない。
 そっか、異世界だからボールペンとかないのか。インクをつけて書く感じか。練習しよう。

 とりあえず、何度か試し書きをして書き心地を確かめる。うん、まぁまぁいけそうかな。勝手にこの世界の言語に書き換えられる機能もついてるみたいだし。
 さて、名乗るのはいいがどうしようか。どうせなら改名するのもありだよな。今までの自分を捨てる感じで。
 しかし、一応別段両親に問題はあるにはあったが死ぬほど嫌いと言うわけではなし、姉に名前を呼ばれるのは正直嬉しかった記憶があるので、捨てるのは少々忍びない。
 まぁ、現在俺は性別を間違われているわけで。だったらそれ用の名前ってことで。ネットで使ってた奴とかでいいかな。
 つっても結構あるしなー。どーれにしーようかなー………よし。

『俺の名前はリンドウです、ラナさんよろしく』

 これでどーだ!記念すべき手帳の一ページ目には、試し書きもあるがラナさんへの挨拶を書くことにした。
 まぁ、元々そのつもりで紙を要求したわけだが。
 文を読んだラナさんは、俺の顔と手帳を何度か交互に見て……何故か泣いた。

 待って何で泣いた!?!?


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