巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。

蒼霧雪枷

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本編

15、これは想定外

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 雷の音で目が覚めた。俺が起きるぐらいなので、恐らく近くに落ちたのだろう。
 頭が上手く働かない。目を開けても周りは暗く、体の下にはやけに柔らかい毛布っぽいのが敷かれている。というか、俺は確か森に向かったはずでは。
 少しずつ思い出せてきた。森に向かい、確か奥まで来たところで大量の魔物に襲われたのだ。八つ当たり気味に風で遠くまで吹き飛ばしまくってたが、もう少しと言うところで意識が急に途切れたんだったか。
 あー、そうだ。一回目が覚めて、赤目の騎士さんに抱えられてどっかの洞穴にいるの確認したわ。てことはまだそこか?何で今は横になってんだ、俺。
 後、空気は寒いがやけに背中が暖かい。そんでもって何か体に乗ってて少し重いし、なんなら動けない。

 頑張って体を反転させる。暗くて見えないが、目の前に暖かい壁みたいなのがある。もしかしなくとも、これはあれか?俺の上に乗ってんのは腕で、この壁は体だな?
 おいこら騎士サマや。いつ誰が俺を抱き枕にしていいと言った。そんでもってこの地面に敷かれてる、やけに柔らかくてふわふわしてるのなんだ。どっから出した。後で正体教えろ俺も欲しい。
 見えないが顔があるであろう場所を睨む。そう言えば、身体強化って目に使ったらよく見えるとか誰か言ってなかったか?
 目に使ったことはないが、今真っ暗だし、試してみる価値はあるよな。練習練習。

 結果。めっちゃ見えるヤバ。まって、視力も良くなってるなこれ。自慢じゃないが、引きこもってゲーム三昧読書三昧してた俺の視力は悪い。でも眼鏡は邪魔なので普段はつけてないし、召喚された日に何処か落とした。
 目付き悪いと言われるが、目を細めれば見えるので何も問題なかった。でも久しぶりに視界がハッキリしてる。目も疲れない。いつも使っとこうかな?

 あ、当初の目的を忘れるとこだった。人を抱き枕にしてる奴の寝顔を拝んでやろうと思ってたんだった。
 ほどかれた赤茶の髪が地味に顔にかかっている。これじゃ見えねぇなぁ、と無意識に手を伸ばす。
 顔に手が触れ──

 カッッ!!!と赤い目が見開かれた。

 正直に言おう。滅茶苦茶ビビった。思わず手を引っ込めてしまった。いや、伸ばしたままも可笑しいので戻していいのだが。
 と言うか、一瞬触っただけで起きるってなんだ。だったらさっき俺が反転したところで起きろよ。何でだよ。要らねぇよそのドッキリ。心臓に悪い。
 ちょっと文句言ってやろう。

「…急に起きないでよ。ビックリするだろ」
「………………あぁ…?」

 一応返事はあったが、随分とふわふわした声だ。しかも、目の焦点は合ってない。
 あっこれ起きてねぇやつ。目だけ開いて意識は寝てるやつだ。たまに俺もやるやつ。
 このまま起こすかもう一度寝るのを待つかを考えていれば、体に回されていた騎士さんの腕に力がこもる。え、ちょっとまって。

「ん~~…ぬくい……」
「おいこら俺は抱き枕じゃっ…ちょっと、はなし、寝んなー!!」

 制止の声も届かず、向き合ったまま思い切り抱き締められる。しまった、後ろ向いときゃよかったかもしれない。いや、それはそれでヤバいことになる可能性も…あれ?
 どうにか拘束から逃げられないかと動いていれば、変化の魔法が解けてることに気付いた。
 まってまってまって。いつから?もしかしなくとも最初に起きる前から?倒れた時から?一番可能性があるのは倒れた時だな!?
 つまり、さっき起きた時には既に戻ってたと。いやでも赤目の騎士さん鈍そうだから気づいてない可能性とかありませんかありませんね?こういうタイプは鈍そうに見えて実は鋭いんだ!!俺知ってる!!

 あまりにも想定外な事態に呆然としていれば、先程少し開けた隙間を更に強く抱き締められて埋められた。後頭部にまで手を回され、顔が胸板に埋まってます騎士さん息が!出来ないんですが!!
 おまけに先程、体を押し返えそうと腕を自分の前に持ってきている。つまり、俺と騎士さんの体に挟まってまじで動かない。これは詰んだ。

 どうにか顔を離す。息ができる。酸素美味しい。が、安心するのはどうやら早かったらしい。こんだけ体がくっついていれば、当たり前だが顔も近い訳で。
 わぁやっぱ異世界人顔良~~~、とか現実逃避してる場合じゃない。めっちゃ近い息かかりそう。ビックリしたわ。

 最悪の事態になる前に顔をそっと真っ直ぐに戻す。上を向いてはいけない。そう、例え相手が寝てて記憶が残らないとしてもだ。俺の記憶にはバッチリ残るからな。
 目の強化を解い視界をシャットダウンして瞑る。こう言うときはあれだ。寝よう。寝て、次起きた時には騎士さんが先に起きてることを願おう。
 散々寝ていたし少々苦しいが、未だ続く雨の音と人の体温で多分寝れる。目を瞑ればほら、眠気が…

「…り、んどう…」

 おい名前呼ぶな。今眠れそうだったのに。なに寝言??普段名前呼ばない癖に寝言で呼ぶってなに??少女漫画じゃねぇんだから、夢に俺を出すな。出演料取るぞ。

「………ぃ、な」
「…え?何?寝言だとしてもハッキリ言ってよムカつくから」

 寝言に対してあれだと思うが、いやもう寝そうなとこを呼ばれて起こされた身としてはもうハッキリと言って欲しい。そして現実逃避させてくれ。

「…どこにも…いくな…」
「えっ」

 まって何それ、ちょっとキュンとするじゃんやめてよ…更に締めるのもやめて!!苦しいんだって!!何で抵抗すると更に力込めんだよ!!お前寝てんだろ!?実は意識あるとかっつー落ちじゃねぇだろうな!!身体強化使ってんのに何でこの拘束解けねぇんだ畜生!!!
 昼間のやり取りを思い出すような攻防戦の末、とうとう俺の腕に限界が来たので、苦しいが諦めて大人しくすることにする。
 あっ、抵抗止めたらちょっとだけ力抜けた。マジで起きてんじゃねぇの、お前。なぁ、おい。本当に寝てる??

 起きたら絶対にこの事を言い、お前実は寂しがり屋なんだな?ってからかってやろう。昼間、あんだけ俺を引き留めようとしたのも含めて。
 そう決心して、俺は二度寝をするのだった。


 そう言えばこんだけ触れてる面積多いのに嫌悪も感じないなんて珍しいなぁ、とぼんやりする頭で考えたが、すぐに沈む意識に消えた。




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