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本編
19、あの日の真実
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「運命的だよね、しおちゃん♡」
何が運命だ、クソ食らえ。赤目さんの後ろに隠れながら、心の中でそう吐き捨てる。正直、トラウマの原因より会いたくない奴だった。
だって、あれには勝てる自信めっちゃあるけど、コイツには絶対に勝てない。武力行使は喜ぶし、かといって放置も喜ぶ。罵詈雑言を浴びせても喜ぶし、何してもしなくても喜ぶ。
どうやって勝てと???
性格はあれよりマシかもしれんが、性質というか性癖はコイツの方が………いや、どっこいどっこいかもしれん。
「ねぇ、しおちゃん。何もしないからそろそろ出ておいで?僕も流石に傷つく」
「嘘つけ、興奮してるくせに」
「いや本当にさ。興奮とかの前に、影からこっち睨むの猫みたいで可愛いだけだから諦めた方がいいよ?」
「俺の半径5km以内に近づくんじゃねぇ」
「いや、無理があるって」
スイッチ切ったから大丈夫、と笑って手招きをする奴の顔を睨み付ける。スイッチってなんだ。ドMスイッチか?んなもんいっそ壊してしまえ。
奴は、動く気配のない俺を見て苦笑を洩らした。
「ほら、騎士さんにも迷惑だろうからさ。そろそろ離れてあげたら?」
「いや、そんな事はないが…」
「騎士さんはちょっと黙ってて」
「はぁ?」
「ほらしおちゃん。大事になる前に離れよう」
黙れとか言うから赤目さん不機嫌になったじゃないか。大事になる前にってなんだ。お前は俺をなんだと思って……あー、もしかしなくともあれか?
「みゃーのさんや」
「なぁに、しおちゃん」
「俺も一年で変わったし、この三ヶ月で赤目さんには慣れたので、平気だぞ…?」
そう言った瞬間、みゃーのは目を見開き大袈裟なくらい驚いた。そんなに驚くことか?
「僕に触れるのすら嫌がってたしおちゃんが…!?」
「お前はまた別の理由もあったからなんだが。何故それが分からない」
二年前、俺があれに襲われた後だ。そのせいでしばらく男性恐怖症と潔癖症が酷くなり、昔馴染みですら触れるのが嫌だった時期があった。
みゃーのと会わなくなったときはまだ治ってなかったから、多分あいつは今も俺が恐怖症持ちだと思ってるのだろう。
ちなみに、治療法は気合い。なんかあのままだと負けた気がして嫌だったので、気合いで恐怖症は治した。潔癖症は元々持ってたもんなので、完璧には治らなかったが。こっちは治すもんでもないしな。
「あんな…他の男が触れた瞬間に蹴り飛ばして、恐怖に顔を歪めていたしおちゃんが自分から触れるなんてっ…!お前、一体何者だ!!」
「蹴り飛ばしてるのに怖がってるのか?俺はジークレイン・アッシュロード。王国騎士団副団長だ。そう言うお前は何だ?コイツが言っていた奴では無いことは確かのようだが…」
「僕は宮迫黄乃。こっち風に言えば、キノ・ミヤサコかな。そこのしおちゃんの友人であり犬で奴隷の幼馴染みだよ。ところで、「言っていた奴」って何?」
「犬で奴隷…?」
「アイツが勝手に言ってるだけ。だからその目を止めてくれないかな、赤目さん。誤解だ」
頼むから信じないでよ。一回も俺はあんなこと言った記憶ないよ。むしろうんざりしてるんだから。止めてくれ。
「…彼奴、幼馴染みなのか」
「うん、まぁ…言っとくけど、アイツは俺のトラウマの弟だよ。ちなみに俺の一個下」
「嘘だろう!?」
いや、本当にあれの弟なんだ。つまり、兄弟揃って俺を苦しめる最悪兄弟なんだ。新たなるトラウマ増やす気かよちくしょう。
「彼奴がお前の一つ下!?上ではなくてか!?」
「何処に驚いてんだよ!!つーかうるせぇ!!俺のが上なんじゃボケぇ!!」
「そー。僕のが下なんだよ~。で、しおちゃんや」
「なんだよ、みゃーの」
「僕にすら話してくれなかった兄貴のことを、そこの騎士さんに話したの?なんで?そんなに信用出来る男なの?ねぇ、理由を簡潔に十文字以内で答えてよ」
「ちょうどよかったから」
「流石しおちゃん。ぴったり十文字だね!」
上から赤目さんの「もっと言い方なかったのか」との文句が聞こえるが、簡潔に十字っつったらこれしか浮かばなかった。
いやだって丁度よかったんだよ、本当。昔の俺知らないし、口固そうだし、騎士の誓いとかしてくれたし。安心そうだったんだよ。後あれだ。
「後、俺より強かった」
「マジで?」
「大マジ」
「はえぇ…流石異世界。引きこもり生活で鈍ってるとはいえ、あのカウンターの鬼と呼ばれたしおちゃんに勝つとは…」
「まぁ…カウンター以前の話だったんだけどな…」
目覚めた時には既に拘束って、どうカウンターしろと?
本当にドMスイッチが切れているのか、俺の知っている昔のみゃーのに戻っていたので、いい加減赤目さんの後ろから出ていく。
スイッチが入ってなければ大丈夫。多分。
それでも不安なので、隣に赤目さんを常駐させますがね!!!
「やっと出てきてくれたぁ…ごめんね、しおちゃん。久しぶりに会ったから、ついはしゃいじゃった」
「切り替えが出来るから、お前の兄貴よりお前の方が付き合い安くて助かるよ…本当…」
「あぁ、そう。兄貴のことでしおちゃんに謝らなきゃいけないことがあるんだけどさ…」
おう、どうした。お前が俺に謝らなけりゃあならない事は大量にあると思うんだが、あれについての謝罪なんかあったかな?
「兄貴にしおちゃん家の住所教えたの僕なんだけどさ、あの日はごめんね?」
「…………は?」
あー、はいはい。ちょっと待とうぜ。なんだって?あれが俺の家の前にいたのは偶然でも何でもなく、みゃーのが教えたから、と…
いや、あれと俺の間に何があったかお前知ってただろうが。
「何故?何で教えた!あの日、俺がどんだけ怖い思いをしたか!!!」
「本当ごめん。二年経ってやっと謝罪の手紙を送りたいとか言い出すから、手紙だったらってつい教えちゃった。まさか直接渡しに行くとは思わなくて…」
「だからお前、あの日あの時間にあそこにいたのか…」
「うん。しおちゃん家向かってた。流石に止めなきゃダメかなって。でもなんで傘も差さずに橋にいたの?」
「追いかけ回されたんだよな、お前の兄貴に」
「…ごめんねぇ、うちの兄貴が」
「お前も悪い」
つまり、俺はコイツのせいでトラウマを増やされ、コイツに巻き込まれて異世界に来た、と。
そう言えば、コイツ昔からトラブルメーカーだった。よく喧嘩に巻き込まれたなぁ…と遠い目をしていれば、赤目さんが一言。
「と言うか、しおちゃんとは何だ?」
「あっ」
やっべ。馴染み過ぎて全然気づかなかった。どう説明すればいいのか、の前にみゃーのに今の名前を教えなければいけない。じゃなきゃ、いつまで経ってもしおちゃんだ。
「いや、赤目さん、それは後で…」
「え、しおんちゃんだからしおちゃんだけど。何で?」
「は?コイツはリンドウじゃないのか?」
「あああああ~~~」
「え、え?しおちゃん、どゆこと?」
「おいリンドウ、どういう事だ」
どうやら既に遅かったようだ。最初に素知らぬ振りして自己紹介から始めれば良かったと思うも、既に後の祭りだった。
何が運命だ、クソ食らえ。赤目さんの後ろに隠れながら、心の中でそう吐き捨てる。正直、トラウマの原因より会いたくない奴だった。
だって、あれには勝てる自信めっちゃあるけど、コイツには絶対に勝てない。武力行使は喜ぶし、かといって放置も喜ぶ。罵詈雑言を浴びせても喜ぶし、何してもしなくても喜ぶ。
どうやって勝てと???
性格はあれよりマシかもしれんが、性質というか性癖はコイツの方が………いや、どっこいどっこいかもしれん。
「ねぇ、しおちゃん。何もしないからそろそろ出ておいで?僕も流石に傷つく」
「嘘つけ、興奮してるくせに」
「いや本当にさ。興奮とかの前に、影からこっち睨むの猫みたいで可愛いだけだから諦めた方がいいよ?」
「俺の半径5km以内に近づくんじゃねぇ」
「いや、無理があるって」
スイッチ切ったから大丈夫、と笑って手招きをする奴の顔を睨み付ける。スイッチってなんだ。ドMスイッチか?んなもんいっそ壊してしまえ。
奴は、動く気配のない俺を見て苦笑を洩らした。
「ほら、騎士さんにも迷惑だろうからさ。そろそろ離れてあげたら?」
「いや、そんな事はないが…」
「騎士さんはちょっと黙ってて」
「はぁ?」
「ほらしおちゃん。大事になる前に離れよう」
黙れとか言うから赤目さん不機嫌になったじゃないか。大事になる前にってなんだ。お前は俺をなんだと思って……あー、もしかしなくともあれか?
「みゃーのさんや」
「なぁに、しおちゃん」
「俺も一年で変わったし、この三ヶ月で赤目さんには慣れたので、平気だぞ…?」
そう言った瞬間、みゃーのは目を見開き大袈裟なくらい驚いた。そんなに驚くことか?
「僕に触れるのすら嫌がってたしおちゃんが…!?」
「お前はまた別の理由もあったからなんだが。何故それが分からない」
二年前、俺があれに襲われた後だ。そのせいでしばらく男性恐怖症と潔癖症が酷くなり、昔馴染みですら触れるのが嫌だった時期があった。
みゃーのと会わなくなったときはまだ治ってなかったから、多分あいつは今も俺が恐怖症持ちだと思ってるのだろう。
ちなみに、治療法は気合い。なんかあのままだと負けた気がして嫌だったので、気合いで恐怖症は治した。潔癖症は元々持ってたもんなので、完璧には治らなかったが。こっちは治すもんでもないしな。
「あんな…他の男が触れた瞬間に蹴り飛ばして、恐怖に顔を歪めていたしおちゃんが自分から触れるなんてっ…!お前、一体何者だ!!」
「蹴り飛ばしてるのに怖がってるのか?俺はジークレイン・アッシュロード。王国騎士団副団長だ。そう言うお前は何だ?コイツが言っていた奴では無いことは確かのようだが…」
「僕は宮迫黄乃。こっち風に言えば、キノ・ミヤサコかな。そこのしおちゃんの友人であり犬で奴隷の幼馴染みだよ。ところで、「言っていた奴」って何?」
「犬で奴隷…?」
「アイツが勝手に言ってるだけ。だからその目を止めてくれないかな、赤目さん。誤解だ」
頼むから信じないでよ。一回も俺はあんなこと言った記憶ないよ。むしろうんざりしてるんだから。止めてくれ。
「…彼奴、幼馴染みなのか」
「うん、まぁ…言っとくけど、アイツは俺のトラウマの弟だよ。ちなみに俺の一個下」
「嘘だろう!?」
いや、本当にあれの弟なんだ。つまり、兄弟揃って俺を苦しめる最悪兄弟なんだ。新たなるトラウマ増やす気かよちくしょう。
「彼奴がお前の一つ下!?上ではなくてか!?」
「何処に驚いてんだよ!!つーかうるせぇ!!俺のが上なんじゃボケぇ!!」
「そー。僕のが下なんだよ~。で、しおちゃんや」
「なんだよ、みゃーの」
「僕にすら話してくれなかった兄貴のことを、そこの騎士さんに話したの?なんで?そんなに信用出来る男なの?ねぇ、理由を簡潔に十文字以内で答えてよ」
「ちょうどよかったから」
「流石しおちゃん。ぴったり十文字だね!」
上から赤目さんの「もっと言い方なかったのか」との文句が聞こえるが、簡潔に十字っつったらこれしか浮かばなかった。
いやだって丁度よかったんだよ、本当。昔の俺知らないし、口固そうだし、騎士の誓いとかしてくれたし。安心そうだったんだよ。後あれだ。
「後、俺より強かった」
「マジで?」
「大マジ」
「はえぇ…流石異世界。引きこもり生活で鈍ってるとはいえ、あのカウンターの鬼と呼ばれたしおちゃんに勝つとは…」
「まぁ…カウンター以前の話だったんだけどな…」
目覚めた時には既に拘束って、どうカウンターしろと?
本当にドMスイッチが切れているのか、俺の知っている昔のみゃーのに戻っていたので、いい加減赤目さんの後ろから出ていく。
スイッチが入ってなければ大丈夫。多分。
それでも不安なので、隣に赤目さんを常駐させますがね!!!
「やっと出てきてくれたぁ…ごめんね、しおちゃん。久しぶりに会ったから、ついはしゃいじゃった」
「切り替えが出来るから、お前の兄貴よりお前の方が付き合い安くて助かるよ…本当…」
「あぁ、そう。兄貴のことでしおちゃんに謝らなきゃいけないことがあるんだけどさ…」
おう、どうした。お前が俺に謝らなけりゃあならない事は大量にあると思うんだが、あれについての謝罪なんかあったかな?
「兄貴にしおちゃん家の住所教えたの僕なんだけどさ、あの日はごめんね?」
「…………は?」
あー、はいはい。ちょっと待とうぜ。なんだって?あれが俺の家の前にいたのは偶然でも何でもなく、みゃーのが教えたから、と…
いや、あれと俺の間に何があったかお前知ってただろうが。
「何故?何で教えた!あの日、俺がどんだけ怖い思いをしたか!!!」
「本当ごめん。二年経ってやっと謝罪の手紙を送りたいとか言い出すから、手紙だったらってつい教えちゃった。まさか直接渡しに行くとは思わなくて…」
「だからお前、あの日あの時間にあそこにいたのか…」
「うん。しおちゃん家向かってた。流石に止めなきゃダメかなって。でもなんで傘も差さずに橋にいたの?」
「追いかけ回されたんだよな、お前の兄貴に」
「…ごめんねぇ、うちの兄貴が」
「お前も悪い」
つまり、俺はコイツのせいでトラウマを増やされ、コイツに巻き込まれて異世界に来た、と。
そう言えば、コイツ昔からトラブルメーカーだった。よく喧嘩に巻き込まれたなぁ…と遠い目をしていれば、赤目さんが一言。
「と言うか、しおちゃんとは何だ?」
「あっ」
やっべ。馴染み過ぎて全然気づかなかった。どう説明すればいいのか、の前にみゃーのに今の名前を教えなければいけない。じゃなきゃ、いつまで経ってもしおちゃんだ。
「いや、赤目さん、それは後で…」
「え、しおんちゃんだからしおちゃんだけど。何で?」
「は?コイツはリンドウじゃないのか?」
「あああああ~~~」
「え、え?しおちゃん、どゆこと?」
「おいリンドウ、どういう事だ」
どうやら既に遅かったようだ。最初に素知らぬ振りして自己紹介から始めれば良かったと思うも、既に後の祭りだった。
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