巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。

蒼霧雪枷

文字の大きさ
33 / 60
本編

22、ちょっとは遠慮しろ

しおりを挟む
 最近、市街地で誘拐事件が多発しているらしい。被害者皆、若い女性…というより少女とも呼べる年のものばかり。
 騎士団総出で捜索するも、見つけられないらしい。なので、丁度戻ってきた勇者たちの手を借りることにしたらしい。そして、その勇者ご本人が俺までも巻き込んだ、と。

「何で反対しなかったんですか」
「いや、物凄く薦めてくるものだから…取り敢えず、話だけでも聞いてもらおうと思ったんだ」

 苦笑いでそう言ったのは、厳つい顔のリーダーさん。その隣には王子と赤目さんもいる。二人とも、何やら雰囲気が怖い。何やら怒っているようだ。
 聞くところによると、囮は騎士団でもやったらしい。しかし変化魔法が見破られているのか、少女の姿で彷徨いても何の収穫もなかったのだとか。
 そのため、背格好が小さめで、ある程度戦える者が必要という話になった。勇者御一行の魔導師なら、変化魔法も見破られないのではないかとの話もあったが、勇者が俺を推しまくるので「背格好も丁度良さそうだし…」と、話だけでもしようという結論に至ったらしい。

 いや、お前ら俺のこと子供扱いしてるくせになに考えてんだ。確かに、騎士の人と毎日稽古でいい勝負してるけど!騎士団副団長ともいい感じに勝負してるけど!!!
 しかも、話を聞く限りあの女魔導師も俺を推したと言うじゃないか。絶対嫌がらせしようとしてる。
 あれだろ?俺が全然成果を出せず、勇者みゃーのに落胆されろと思ってんだろ?
 と言うか、俺はここで男として生活してるってのに、何故そんなに目の敵にするのだろう。間違ってもみゃーのとどうこうなるなんて…まさか、彼奴のドM発言のせいか?犬とか奴隷っつってるあれのせいか?本当勘弁してくれよ!!

 なんとなく原因を察して顔をしかめれば、リーダーさんが申し訳なさそうにする。

「悪いな。話を聞いてくれるだけでいいんだ。無理に受ける必要はない」
「…え、あぁ、いえ。別に囮に関しては構わないんです。ただ、別の悩み事に頭を抱えてまして…」
「貴様は何を考えている!!」
「えっ」

 急に赤目さんが叫んだ。驚いてそちらを見れば、こちらを睨む赤い目と目があった。目付きが悪いとかじゃなく、本気で怒っているらしい。
 よくわからずに首を傾げていれば、王子の方から深いため息が聞こえた。こちらへ近づき、俺の肩に手を置いた王子を振り払いそうになるのを必死で我慢する。

「分かっているのか?これは危険な任務なんだ。捕まったら、何をされるのか分からないんだぞ?」
「危険なことぐらい分かってます。捕まって場所を特定したら、そこを制圧すればいいんでしょう?」
「危険だというのが分からないのか!!」
「分かってますって。囮なんて慣れてるんですよ。こっちだったら魔法あるし、あっちより断然楽。これ以上被害が増える前に、使えるものは使っとくべきですよ、殿下」
「っ……君は…いや、もういい。勝手にすればいい」

 そう言って、部屋から出ていく王子。何か拗ねられたんですが、と他の二人を見やれば、呆れたような怒っているような表情をしていた。

「お前の言い分は間違っちゃいないが…いいのか?囮になんかなって」
「構いませんよ。適役なんでしょう?変化をしなくても丁度よく、尚且つ腕もある程度立つ。多数を相手にするのはなれてます。騎士相手よりよっぽど戦いやすい」

 肩を竦めてそう言えば、困ったように苦笑いをするリーダーさん。

「そうか…俺個人としては止めたいが、騎士団団長としては頼みたい」
「団長!?いくら何でも、リンドウは…」
「成人しているんだろう?だったら、子供扱いして庇護下に置くのは認めない。彼も大人だ。国民を守るため、使えるものは使うべきだ」
「では、彼奴だって…」
「言っとくけど、俺はこの国の国民にカウントしないでね、赤目さん。まだ登録も何もしてないけど、冒険者扱いでよろしく」
「なっ!?」
「では、リンドウ殿。人攫い捕獲の為、囮の依頼を貴殿に頼みたい」
「謹んでお受けいたします」

 正直面倒くさくて仕方がない。別に立派な正義感があるわけでもないし、あのドMと違って危険が好きな訳でもない。いまだに他人に触れられるのは嫌だし、捕まるなんて勘弁してほしい。
 それでも流石に、話を聞いて嫌ですとは言えないよなぁ。子供が捕まってんだもんなぁ。俺が適任っつーなら、断ってまた時間がかかるより、さっさと終わらせた方がいい。
 そう思って受けたんだが…おい、話を持ってきた本人が何でそんな微妙な顔をする。断って良かったのか??上の人間なら、使えるもんは使えよ。そんなんで国守れるか。
 赤目さんは何か拗ねてるし、取り敢えず日程と作戦決めは後日と言うことで俺は退室することにした。

 ドアを開ければ、すぐ横に笑顔のみゃーのが。

 思わずドアを閉める。後ろで二人が怪訝そうにしている雰囲気が感じられるが、条件反射だ。悪く思うな。
 一呼吸置き、もう一度開ける。閉めた。目の前にいた。なに、ホラー映画かなにか?メリーさんかよ。笑顔で近づいてんの地味に怖いから止めてほしい。

「ちょっと、何回閉めるのさ」
「…いや、メリーさん感があって…つい…」
「もしもし僕キノくん。今あなたの目の前にいるの」
「目の前にいるなら電話してくんな」
「囮の件、どうなった?」

 ドアのところで会話するのもなんなので、部屋を出て歩きながら話をすることにした。

「受けたよ。お前が俺の名前出したんだって?」
「流石りんちゃん!キミなら受けてくれると思ったんだぁ。得意だもんね、敵陣に入り込んで内から崩すの」
「どっかの誰かさんのおかげでな。こんのトラブルメーカーめ…ちょっとは俺に遠慮しろよ」
「え、りんちゃんに遠慮とかいる?」
「あぁ、いるな。バッチリいるな。本当、いい加減にしろよ」
「えー?何だかんだ言って、拐われた女の子たちを助けたいくせに!お人好しさんめっ!!」

 蹴りたい、この笑顔。でも蹴ったら悦ばれるだけなので、必死に我慢する。ちくしょう、ドMの対処法をググりたい。スマホが欲しい。あってもここじゃ使えないだろうけど。

 またしてもみゃーのを迎えに来た魔導師さんに、謎の勝ち誇った笑みを向けられた。なので、笑顔でお仕事お受け致しましたと言えば、少し顔をしかめられる。
 生意気なガキめって思ってんだろうな。今回何を考えてるかは分からないが、流石に余計な手出しはしないだろう。作戦に支障がない程度ならしそうだが…

 彼女の存在に不安を覚えつつ、多分また部屋に何かされてんだろうなぁ、と面倒くさい思いで廊下を歩く。
 と言うか、依頼のことラナさんになんて説明しよう……



しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

前世で私を捨てた皇太子が、今世ではなぜか執着してきます。でも私は静王妃なので『皇叔母様』と呼ばせます

由香
恋愛
沈薬は前世、皇太子の妃だった。 だが彼の寵愛は側室へ移り、沈薬は罪もなく冷宮へ送られ――孤独の中で死んだ。 そして目を覚ますと、賜婚宴の日に戻っていた。 二度目の人生。 沈薬は迷わず皇太子ではなく、皇帝の弟である静王を選ぶ。 ただしその夫は、戦で重傷を負い昏睡中だった。 「今世は静かに生きられればそれでいい」 そう思っていたのに―― 奇跡的に目覚めた静王は、沈薬を誰よりも大切にしてくれた。 さらにある日。 皇太子が前世の記憶を思い出してしまう。 「沈薬は俺の妃だった」 だが沈薬は微笑んで言う。 「殿下、私は静王妃です」 今の関係は―― 皇叔母様。 前世で捨てた女を取り戻そうとする皇太子。 それを静かに守る静王。 宮廷を揺るがす執着と溺愛の物語。

処理中です...