巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。

蒼霧雪枷

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本編

23、これは女装と言い張る

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 さて、あれから団長と相談をして決行日を決めた。作戦はシンプルで、に引っ掛かり拐われたら、敵のアジトについてから魔法で居場所を教える。その際、出来る限り犯人どもを逃がさないようにする。無理はするなと念押しされたが。
 念には念を入れて、久しぶりに名称不明のスキルを使ってみることにした。
 例えば、魔法を封じられてしまえば意味がない。そのため、魔力を使わないスキル…つまり、俺のゲームで使っていたスキルを使うべき。あれは、元々魔力なんかが関係ない世界線のスキルなので、こちらでも魔力をつかわない。
 身体強化も魔力を使うため、封じられたら俺が圧倒的に不利になる。似たようなスキルは…あ、片手剣スキルにあった。じゃあこれはいいな。

 他に必要そうなものは……あ、暗殺系統とか仕入れるか。気配遮断とか、逃げ出したのがバレるのを遅らせることができれば強い。
 いいな、異世界。前じゃ出来なかった作戦が大量に出来る。えー、悪者集団潰しまくって試してみたい。どれだけ通用できるかめっちゃ試したい。でも万が一があるからな。無謀なことは止めとこう。
 そんなこんなの結果がこちら。

──────────

個人スキル【※※※※※】
スキル【身体強化】【精密魔力操作】【回復魔法・中】

狩人スキル◁
双剣スキル◁
片手剣スキル◁
鍛冶スキル◁
錬金術スキル◁
獣使いスキル◁
暗殺者スキル◁

魔法属性【火】【水】【土】【風】【闇】

──────────

 そう言えば、黒猫を仲間にするために入れた獣使いビーストテイマースキル、使わなかったな…黒猫よ、お前は一体何処に行ったんだ…
 あとは、暗殺者スキルを増やしただけだが…これで準備は万端だろう。あとは作戦に備えて、体を休めておこう。
 …それと、せめてパンぐらいは食べておこう。うん。いい加減に果物生活から抜け出さねば…健康的でいいと思うけど、流石にな。

 そんな俺の試みは、魔導師さんによりカビたパンに入れ換えられていて潰れたのだった。お前もいい加減にしろよ。


 作戦決行日、俺はどうにか説得したラナさんの手により「少し裕福な商人の娘」に仕上げられていた。ちなみに変化魔法は解いてある。やるなら徹底的にな。
 スカートなんか中学の制服以来だが、足首の少し上まであるスカートの下にはナイフや色々を仕込んである。スパイみたいな気分で、ラナさんに全身を確認してもらうため鏡の前でクルクル回る。
 動きやすさの方も確認していれば、部屋のドアがノックされた。返事をすれば、入ってきたのは未だにムスッとしている赤目さん。
 彼は最後までこの作戦に反対していたらしいが、多分それは事情を知っているからこそ感じている同情からだろう。それに、守るって誓わせてしまったから。勇者はみゃーのだったから、誓いなくしても……よくないかもしれん。

 入ってきた赤目さんの方を向けば、何やら固まって動かない。はて、どうしたのだろうか。

「……?赤目さん?」
「……………ようs……ハッ!!…いや、なん、でもない。うん、何でもない。じ、準備はできたか?」
「めっちゃ噛むじゃん?できたよ、一応。どうだ、ラナさんの力作らしいぞ。ちゃんと女に見えるだろう?」
「あ、あぁ…と言うか、魔法解いているのか」
「よく分かったね。解いてた方がいいでしょ?」
「そう、だな……あー、その、何だ。似合ってるぞ」
「え、この格好似合っても嬉しくない。いや、ラナさんが選んだやつだから似合ってて当たり前なんだけど、何だろう…フクザツ……」
「何故だ」

 女性は綺麗だと誉められるのが嬉しいのだろう、と言われても。俺がこれ幸いと男の振りをして生活していることを忘れているのだろうか。
 というか赤目さん、その発言俺が綺麗って言ってるようなもんだよ。ツッコミはしないけd

「つまり、ジークから見ても今のリンドウ様は綺麗で美しい、と…成長しましたね」
「は、え……そう、なる、な?……いや、違う!!そんなこと言ってないぞ!!ただの社交辞令だアホ!!」
「はいはい、分かってるからいくよ赤目さん。ラナさん、無事に帰ってくるから明日の朝食は美味しいデザートが欲しいな!」
「かしこまりました。お気をつけていってらっしゃいませ」

 ラナさんがツッコんでしまい、赤目さんが喧嘩モードに入りかけるのでさっさと行くことにする。
 時刻はもうそろ夕方。人攫いが一番多い時間帯はもう少ししたらだ。夕飯までには帰ってこれないだろうが、その分朝食で甘いものを食べよう。疲れた時には甘味が一番なのだ。
 とりあえず、王宮の門のところまで赤目さんと歩く。馬車で市街地の近くまで行き、俺は一人で市街地に入り、そのまま罠に掛かるまでぶらつく予定だ。
 廊下を歩く俺に向けられる視線が痛い。誰だろうって思ってんだろうな。他の人は俺が女子のふりして囮やるって知らないから。
 あと、さっきからこっちをチラチラみる赤目さんがちょっとウザい。

「………ねぇ、赤目さん。言いたいことがあるならハッキリ言ったらどうなんだい?」
「おまっ…なんか、声が随分…」
「そりゃあ、女子のふりするなら声ぐらい高くするでしょ。口調も変えた方がいいかしら?」

 あっまって、自分で言ってて鳥肌立った。なんだよ「かしら?」って、無理キツい。

「……何処かの令嬢かと思われるぞ。もしかしたら貴族は拐われないかもしれん。止めておけ」
「はーい。俺…あー、私もそう思う。それに、あの口調はキツいししんどい」

 流石に一人称は変えた方がいいと思うので、何度か私を連呼して馴染ませる。うん、声も口調もバッチリ。大丈夫そうだな。

「……おい」
「何?」
「…少しでも怪我をしたら、許さないからな」
「え、結構無茶言うね?じゃあ赤目さんくる前に治しとくね」
「だから、するなと言っているんだ!ど阿呆!」

 ペシン、と頭を叩かれた。全然痛くないけど、怪我するなとか言いつつ暴力振るうのはどうなのよ。

 馬車の近くには、騎士団と王子がいた。騎士さんたちは別行動と聞いていたが、多分俺の格好を確認するための顔合わせだろう。
 ラナさんの神業が凄いのは分かるから、そのザワッ…っつーの止めろ。実は女だった…!?みたいな雰囲気止めろ。間違っちゃねぇが違う。俺は此処では男として生きるって決めたんだよ!!

「ふむ…我が弟は妹でもイケる、と…」
「弟でもなければ妹でもないです。全然いけないです。これはラナさんの腕があったからこそ似合っているように見えるだけであって、事実としてはかなりキツいものです」
「まぁ、不本意かもしれんがよく似合っているぞ。可愛らしくていいじゃないか」
「リーダーさんまで…」

 思わずため息をついてから気づく。一番うるさい奴が居ないことに。
 周りを見れば、どうやら勇者とその仲間はいないらしい。彼奴らがくる前にさっさと出発することにしよう。
 リーダーさんは他の仕事があるので見送りに来ていただけらしく、今回の指揮は赤目さんがとっているらしい。だから俺の参加を反対してたのか。
 別行動だと思っていた赤目さんと同じ馬車に乗る。作戦の確認のためらしい。まぁ、俺は途中で降りるんだけどさ。いいのか、一緒で。
 そこから市街地の手前まで、赤目さんから注意と釘を刺されることとなった。無理しないから、分かったって。

 さぁ、囮作戦開始だ。やるからには頑張りますか。




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