巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。

蒼霧雪枷

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本編

24、運命ってあるんだね

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「あれ、りんちゃんもう行っちゃったの?」
「お、勇者。あぁ、ついさっきな」

 どうやら、一足遅かったようだ。既にあの子の乗った馬車は出発してしまったらしい。騎士団の団長は、随分と軽く話しかけてくるため少々苦手だ。
 しかし、もう少し引き留めておけばいいものを。

「なぁんだ。折角、防御魔法を付与したアクセサリー用意したのに」
「あぁ、それなら今出発する騎士の一人に持たせればいい。先に行った馬車に追い付くぐらいなんてことはないさ」

 そう言って騎士の一人を呼び寄せた。アクセサリーの入った箱を渡せば、一人馬に乗って早々に追いかけていった。

「よかったぁ、無駄にならなくて」
「そうだな。あのアクセサリーは勇者が作ったのか?」
「ううん。僕も手伝ったけど、魔法の付与は仲間がやってくれたんだ」

 振り返り、に笑顔を向ける勇者様。

「ね、リサーナ」
「えぇ。素晴らしい出来になりました」

 そう、これが上手くいけばきっと───


───────────


 馬車が止まった。まだ目的地に着くには早すぎるが、どうやら忘れ物があったらしい。
 騎士の一人が一つの箱を渡してきた。俺宛に「勇者御一行の魔導師サマ」から防御魔法が付与されているアクセサリー、らしい。
 何となく察してしまったので、折角だから赤目さんと届けてくれた騎士さん、それとルーファスさんを巻き込むことにした。

「赤目さんと騎士さん。ちょっとまずいことになりそうなんで、お話いいでしょうか?」
「は?別に俺は構わないが…」
「自分も構いません」
「じゃあ遠慮なく。これなんだけどさ…──」

 そろそろ、俺も反撃に出ることにしよう。いい加減この虐めにも飽きたからな。
 ちょっとした作戦変更と、騎士さんにルーファスさんへの伝言を頼む。準備が整ったのでもう一度馬車が動いた。今度はきちんと予定した場所に到着し、そこから俺は単独行動に入る。
 既に空が暗い赤色に染まり、星も見えていた。はじめは人もいて店も沢山ある大通りを歩くが、道に迷った振りをして人気の少ない方へと進む。
 しきりに周りを見渡し、時折立ち止まったり道を引き返してみる。勿論、不安や恐怖を顔に張り付けて。
 端から見れば、「見知らぬ場所で道に迷い、不安で泣きそうになっている少女」に見えることだろう。あ、別の変質者が引っ掛からないように願うのを忘れていた。別のが引っ掛かったらどうしよう。

 俺の心配はどうやら杞憂に終わったようで、しばらく(本気で)道に迷っていたら人の気配が後ろからし始めた。しかも、一人ではない。
 気付かない振りをして、まだまだ道に迷う。というか、マジで道わかんねぇ。ここ何処。
 思わず立ち止まり、辺りを確認する。本気でヤバそうなところに入ってしまったらしいが、まぁどうせ捕まるんだし無問題もーまんたい。気にしたら負け。
 そんな言い訳をしていれば、突然ガンッ!と後頭部に衝撃を感じた。どうやら、パイプかなにかで殴られたらしい。
 そうやって捕まえんのか、と薄れる意識で思う。倒れる体を、倒れる前に担がれた。随分とでかい図体の奴だ。ここは大人しく気絶した方がいいので、重い瞼を素直に閉じる。
 赤目さんやあの騎士さんが上手くやれているかが心配だが、痛む頭では思考が纏まらずに意識が途切れた。

 そして、腹への衝撃で目が覚めた。

「…がっ…ゲホッ……っ……ぁ…?」
「やっと起きたか」

 どうやら腹を蹴られたらしい。周りは薄暗いが、何処かの部屋らしい。恐らく、人攫いのアジトの一室だろう。俺は手足を縛られて床に転がされている。
 人は俺を蹴った奴以外見当たらない。どうやら、他の拐われた少女たちは別のところのようだ。
 目の前の男は、下卑た笑いを浮かべて俺を見下ろしている。あー、知ってる。こういうやつ知ってる。昔どっかの集団のボスもこんな感じだったし、そういやその時も俺囮やったな。囮っつーか、擦り付けられただけだけど。
 その時も無駄にいたぶられた記憶がある。コイツもそれ系の人種かと思っていれば、その予想は当たったらしい。

 そこから数十分程、殴る蹴るが延々と続いた。しかも、コイツ回復魔法を使えるらしい。ある程度殴れば回復し、またすぐに殴る。質悪いな。
 当たり前だが、例の魔導師から貰ったアクセサリーは特に何かが発動することもなかった。防御魔法なんかが付与されていないことは明白である。
 どうやら、あの魔導師は俺に消えてほしいらしい。

 俺は名称不明スキルで手にいれたスキルを使い、痛みと衝撃の遮断をする。回復してくれるのなら、痛みと衝撃だけを消せばいい。
 それだけで、何の反応もしなくなれる。痛みも衝撃も感じなければ、殴られようと何も感じない。
 反応しなくなった俺に飽きたのか、最後に一蹴り入れれば回復せずに出ていこうとする。なるほど、抵抗させないために最後は治さないのか。頭いいな。
 部屋から出ようとする男をぼけっと見ていれば、男は突然その場に崩れ落ちた。流石に予想外な出来事に目を丸くしていれば、俺を縛っていた縄が突然切れた。

 起き上がって辺りを見渡す。そう言えば、と片手剣スキルにあった身体強化を目に使う。暗かった部屋が昼間のように見え、見渡せば男を倒したやつの正体が分かった。
 闇に紛れる黒い毛に、月のような金色の目が二つ光っている。初めて見たときよりかなり大きくなっているが、紛うことなきあの日の黒猫である。
 あまりのことに唖然としていれば、メインクーンぐらいになっている黒猫が俺にすり寄ってきた。え、可愛い。無理、可愛い。
 はっ!と思い立ち、獣使いビーストテイマースキルにある【意志疎通】を使う。これは一応、テイムしていない獣や魔物にも使えたはずだ。

「あの、言葉分かる?」
『我は元々分かるぞ。分からないのはそちらの方だと思うが』
「わ、わかる…!スキルすげぇ!え、何でお前ここにいんの?てっきり森に帰ったのかと思ったのに…」
『ほぅ。スキルとやらで我とも会話できるのか。うむ、答えてやろう。我は確かに修行のため森へ一度帰った。そして、今宵ようやく修行が終わったのでお主のところへ顔を出しに来たのだが…ちょっと待っておれ。すぐにあれを消そう』
「ん?あぁ、あれ。いいよ。どうせ後で捕まえるやつだから」

 黒猫の視線の先には、先程の男が。死んではいないようだが、殺すのは説明が面倒なので止めてほしい。

 いやしかし、こんなところで会うなんて運命感じる。いや、会いに来てくれたんだっけ?どっちでもいいや。
 ここで絶対に仲良くなって、連れ帰ってお喋りするんだ。ついでにもふもふさせてもらおう。
 俄然やる気が出てきたところで、折角だから黒猫にも協力を頼むことにした。

 さぁ、ここからが本番だぜ。



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