巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。

蒼霧雪枷

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本編

25、思ったより楽だった

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 黒猫に、他の拐われた少女たちの捜索と保護を頼み、俺は暗殺者スキルで気配を消して廊下を歩く。ついでに、人がいる部屋に狩人スキルで作った睡眠薬を投げつける。
 この睡眠薬は粉末で、撒くとすぐに空気に溶ける。原理はよくわかってない。異世界だからな!!即効性なので、部屋に投げ入れてドアを閉めて数分後には全員スヤァである。
 効果は大のものを用意したので、多分二三日起きないんじゃないかな。…やりすぎかな。
 人がいない部屋も確認していく。もしかしたら捕まった人達がいるかもしれない。そう思って見て回れば、とある帳簿を発見した。
 えー、なになに?奴隷売買、と。此処、真っ黒ですね。ヤバいな。え、と言うかあの男、商品として拐った俺をいたぶってたの?はぇ~、やっぱ変態だった。
 そっと帳簿を元に戻し、俺は廊下を進むことにした。

 順調に少しずつ人数を減らし、大勢の人がいる部屋にたどり着く。どうやら飲んでいるらしい。
 急遽増やした作戦のために、ここには睡眠薬を投げ込まない。さーて、多勢に無勢ですがいっちょやったりますか。
 素早く部屋に侵入し、手近にいたやつを途中で手にいれといた棒で殴る。一発で気を失ってくれたので、フルスイングしたかいがあった。身体強化様々だな。
 異変に気がついた時には遅く、既に俺は同じノリで五人消した。気配はまだ遮断しているので、どうやら俺が何処にいるのか気がついていないらしい。
 作戦には気づいてくれないと困るので、遮断を止めて一人殴る。一斉にこっち見んのやめろ。ぐるんってこっち見んな、怖いわ。

「テメェ!どうやって逃げ出した!!」
「え、気にするとこそこ?こんな如何にも可憐そうな少女が大の成人男性を殴って気絶させたことには驚かないの?」
「何ぼさっとしてやがる!!さっさと取っ捕まえろ!!」
「無視とか、つまんないなぁ」

 やはり俺は商品ということなのか、傷をつけるなとの命令を下していた。あー、ダメダメ。あの変態男みたく、魔法使って治せばいいから半殺しぐらいの勢いでこないと。
 伸びてきた手を最小限の動きでかわし、相手の勢いを使って投げ飛ばす。前は転ばせるぐらいしか出来なかったが、身体強化様々だな(二回目)
 脳天をまっすぐ地面にぶつかるように投げたので、うまい具合に気絶してくれた。ゆっくりしてる暇はないので、次の撃退に集中する。
 やり過ぎると追加作戦が失敗になるので、程よく人数を残しつつカウンターで潰していく。
 ほら、早くしろよ。商品とか言ってる場合か?お前ら全員倒したっていいんだぜ?と、恐らくこの人攫いのリーダーであろう人物を目で挑発する。
 ここのリーダーは、どうやら単細胞だったらしい。俺の挑発を受けて、すぐに顔を真っ赤にして怒り出した。

「もう傷つけたって構わねぇ!!後で治せばいい!!捕まえろ!!」
「お、やっとか」

 ようやくガチになってくれたらしい。武器まで使うようになってきた。
 ここで俺は、体力の限界がきたように攻撃を受ける。と言っても、少しかすっただけなんだが。
 これを見て相手はニヤリと笑う。今まで完璧に避けていた俺にかすり、俺の体力が尽きると思ってくれたようだ。実際はそんなに体力使ってないんだけどな。ちょっと避けて、相手の勢い使って投げるだけだし。
 数人がかりで攻撃を仕掛け始めたため、ここは普通に避けきれずに当たってしまう。ますます相手は俺の術中に嵌まってくれる。

 いやしかし、あの変態男には少し感謝しないとな。痛みを遮断しているから動けているが、最後に回復されていないおかげで俺の体は多分ガタガタだ。ここで無駄に攻撃を受けずにすむ。

 さて、そろそろ時間だろう。避けるのをやめて棒で殴られる。結構吹っ飛ばされるな。椅子を巻き込んで床に倒れた俺は、その瞬間に突入してきた騎士団の方を見る。
 ここでスキルを切ったら身体中の痛みで気絶できると思うので、ここは切って気絶しておこう。この方が好都合だし。
 人攫いどもを部下に任せた赤目さんが駆け寄ってきた。ちょうどスキルを切ったところなのだが、痛みで気絶ってむしろ痛み感じない?そんなことない?痛すぎてもう神経バグったかな?

「赤目さん……あと、まかせた…」
「おい、リンドウ!!しっかりしろ!!」
「まって触んないで痛い痛い痛いまって急にきたやばむりちょっとむりしぬまって」
「は!?おい、まてお前どれだけの怪我を負ったんだ!!」
「今叫ばないでぐわんぐわんするからあー、むり気絶しとくわ赤目さんがんば……」
「リンドウ!!」

 遅れてやって来た激痛に耐えられず、赤目さんに何の返事も出来ない。つい、気絶を自己申告してしまった。
 これだけ怪我してやったんだからきっと追加作戦は成功するだろうと、安心して俺は意識を手放した。


──────────


 ふっ、と意識が浮上する。重い瞼を開ければ、最近やっと見慣れた俺の部屋の天井が。部屋の明るさ的に多分今はお昼過ぎ。
 体を起こそうとすれば、主に腹部からの激痛が酷かった。思わず痛みを遮断する。そこで、ルーファスさんの回復魔法をスキルとして持っていたことを思いだし、遮断を切って使ってみる。
 少しはましになったかも知れないが、痛みがなかなか消えないので止めてもう一度遮断する。もしかしたら何かコツがあるのかもしれない。
 ベッドから降りようとしたのだが、履くものが何もない。仕方がないので裸足で降りる。絨毯が敷かれているので裸足でも問題ない。むしろちょっと気持ちいい。ふわふわだったんだな、この絨毯。

 少し目眩が酷いが、元々目眩も頭痛も持ってるので気にしないでおく。引きこもり生活って怖いよな。一気に体弱くなる。
 俺の服装はいつもの寝間着。体を確認すれば、変化していないのでしておこうと思った。しかし、遮断しているはずの腹部の痛みを感じたため止めておく。
 変化魔法の使いすぎは怖い結果になる。それに、体がまともな状態じゃないと勝手に解けるし、多分今はガタガタでまともじゃない。
 いくらかは治っているようだが、完全回復とは言い難いので変化はしないでおこう。してなくてもバレないしな。
 
 それでも一応念のため、上に大きめの上着を羽織っておく。あと普通にこの格好少し寒い。
 今更だが、俺の部屋は二つの部屋がくっついている。寝室とリビングって感じだな。なので、寝室から出ていつもラナさんとお茶を飲んでいる部屋へと移動する。
 ドアを開ければ、その部屋には四人の人間と一匹の黒い動物がいた。
 言わずもがな、ラナさんと赤目さんとルーファスさんにみゃーの。そしてあの黒猫。四人には悪いが、俺の目線は今黒猫に捕らわれている。
 いる。俺の部屋に、俺の目の前にあの黒猫がいる。しかもまた大きくなってる。はぁ~、なんで大きくなってんの?最高か??今すぐ抱きつきたい。嫌がられて終わりだろうけど。

 そろそろ黒猫から視線を外した方がいいのだろうが、しかしこちらに向けられている視線が怖くてあっちを見れない。チラッと見れば、バッチリ四人全員と目が合った。怖いって。
 観念して顔を向ける。多分皆怒ってるんだろうし、それ以上に心配を掛けたんだろう。謝った方がいいかと考えていれば、またみゃーのと目が合った。

 瞬間、みゃーのの目から大量の涙が。ポロポロとかじゃない。漫画みたいにドバァって感じ。いやこんなこと言ってる場合じゃない。

「し、しおちゃんのばかあぁぁぁぁ!!!!!」
「急に罵られた」

 声をあげて泣き出したみゃーのに、俺は狼狽えるばかりだ。泣くほど心配を掛けたらしい。
 そのうち、みゃーのにつられたのかラナさんまで泣き出したものだから、俺と赤目さんとルーファスさんは二人を慰めることになった。

 この間に、俺は二人に何回謝ったのか分からないぐらい謝った。ラナさんにいたっては、無事に帰るって約束を破ってしまった謝罪もした。
 本当、反省してるんでそろそろ泣き止んでほしいです。




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