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オマケ
旅路─翡翠の僥倖5
しおりを挟む─たまたま思い立った日、運悪く大雨に降られた。いつぞやのようで、タイミングが良いのか悪いのか。
どうやら留守だったようで、出直すか待つかで悩んだ。いくらオレだとしても、帰ってきた時に居場所を教えていない奴が居たら引くだろうか。そう思い、出直そうと踵を返した。
だから、タイミングってもんがあるじゃん?
丁度オレが離れる前に帰って来てしまった、また背が小さくなったように見えるたった二人だけいる家族の一人。
あぁ、ほら。固まってる。気まずくなって、昔は大変不評であったが取り敢えず笑ってみた。やっぱり逃げられた。
追いかけたのは反射だった。それに、何となく、これを逃したらもう謝る機会は無くなると感じた。
強い雨足で彼奴を見失って、それでも動きを予測して向かった大橋に。
たった二人しかいない家族が、どちらも謎の光に包まれていて。
とっさにオレも飛び込んで、彼奴の腕を掴む瞬間。
大雨で、時間的にも真っ暗だった筈の周辺が、パッと水色に変わった。
瞬間、襲いかかる浮遊感。
いや、いやいやいやいやいやいや。
「な、ん、で、空ぁあああぁぁぁ!?!?」
意味が分からん!!光に飛び込んだらそこは真っ青な良いお天気の空でした、ってアホか!?
こういう時って言うのは、時間がゆっくりに感じる程思考が早くなる。それでも打開策何て思い付く訳がないし、そもそもこんな状況になったことがない。
光に飛び込んで空中なんて、魔法じゃあるまいし。しかし、周りにあの二人の姿はない。どうやらオレだけが空に投げ出されたことに、少し安心する。
安心してる場合じゃねぇんだよなぁ。
例えば、この状況が本当に魔法のせいだとして。じゃあどうすればいいのかなんて、それでも分からないし。空中に浮くなんて出来ないし、パラシュートとかが出せる訳でもないし。
本当に、魔法があるんなら。
「羽で、も、生えて、み、ろ、や、ぁああああぁあ!!」
風圧で声が飛ぶ。しかし、もしかしたら声に反応して何かあるかと思って叫ぶ。叫んで、どうなるってんだ。
やっぱ無理かと諦めかけたその時、両腕がカッと熱くなった。38度のお湯に突っ込んだような、そんな感じ。
そして、ガクンと浮遊感が減少した。
すぐ足元には森があって、このまま落ちていたら木に突き刺さっていたかも知れないと考えるとゾッとする。
先程までの勢いはないが、ゆっくりと落下は続いていた。腕の熱さはいつの間にか治まっていて、今は落下による風圧を感じる。
しかし、その感じる範囲がやけに多いような気が…
「………あ?え、ん??ナニコレ…」
風を受けて落下の速度を抑えているものの正体、つまりオレの腕が鳥の翼になっていた。
肩から指先までが変化していたそれは、いい感じにパラシュートの役割を果たしてくれていた。止まりはしない。なんか、こう、羽ばたけたりしねぇの。
バッサバッサと腕を動かしてみるが、やはり飛ぶことは出来ない。と言うか、さっきよりはゆっくりだけどこれ割りと結構な速度で落ちてるのでは??
どれだけ動かしても、やはり飛べない。そのうちに、スッと腕が一瞬冷えた気がした。まさかと思い腕を見れば…
わぁお、腕元に戻ってる。死ぬ。
いやいやいやいやむりむりむりむりむり流石に無理。も一回、もう一回…出来た!!けど、地面ちっか!!いや、これぐらいならうまく着地でき……アッッッッ
「おまっ、ちょ、そこ退けぇぇえぇえぇ!!!!」
「は?え、何々うわぁぁぁああぁあ!?!?!?」
丁度、オレが落ちる先には一人の男が居た。いくら落下速度が落ちたと言っても、流石にバランスの悪い人間の上に着地等ということは出来る訳がなく。
まぁ、こんぐらいならオレは打撲で済むからいいかな。相手がどうなるかは知らんが。
「っ、【ウォーター】!!」
しかしもうぶつかると思った瞬間、バシャリと水に飛び込んだ感覚がした。驚いている間に、体は重力にしたがって下に沈む。
どうやら水の球体のようで、下を突き抜けて無事地面に着地出来た。見上げれば、男は心底驚いた表情でこちらを見つめていた。
「え、は、ハルピュイア…?」
「失敬な。れっきとした人間だ」
それが、この世界に来て初めて友人となった吟遊詩人、ソレイユとの邂逅であった。
────────
「─で、ソレイユに色々教えてもらったあと、暫く一緒に旅してたんだよ。数ヵ月前に別れて、ついこの前会ったけど」
「あぁ、しおちゃんが会ったっていう吟遊詩人さん。あの人のおかげで兄貴が居るって知れたから、感謝してるよ」
「おう。オレもお前らのこと聞いたぜ。んで、彼奴と旅してる間に色々あって、遺跡爆破して追われて逃げた先の地下でヨルを見つけて、何か懐かれたから連れてる」
「待って???遺跡爆破したの????」
「色々あったんだ…」
「物凄く気になる…」
宿でキノたちが取った部屋にて。久方ぶりに再開した弟とオレは今までのことを話し合っていた。
こちらも色々調べて、コイツらの居場所も、召喚の目的も知っていた。今までどんなことをしてきたかもある程度把握しているし、周りの人間がどんな奴らなのかも調べた。
信用は出来るだろう。しかし、それとこれとは話が別、と言うものがある。
「ところで、シオンとあの騎士サマが恋人って話本当か?」
「え、何それ。どこ情報?」
「ソレイユ情報。シオンと迎えに来た騎士サマを見て恋人と判断してた」
「あー、ね。まだ未満だよ」
その言葉にオレは目を見開く。ソレイユは長年旅をしている上、前職の名残で人間観察が上手い。少しの情報でもある程度見極められる奴だ。
それが恋人と判断していたし、オレが見てもそれっぽいと思ったからあんだけ嫌がらせしてた訳なんだが…
「…え、マジで未満?あれで?」
「両想いではあるんだけどねぇ。しおちゃんが素直になれなくて。ついこの前ようやく進展してた感じ」
「何だと……じゃあ、別にわざわざシオンを喰うとかって挑発まではしなくてよかったかもしれん」
「そんなこと言ってたの」
ちょっと挑発しすぎたかもしらん。まぁ、気に食わないのは本当なので止める気はさらさらないが。
丁度話が切れたところで、通信用魔道具が作動した。どうやら、シオンから連絡が来たらしい。魔力を流して通信を接続すれば、しかし聞こえて来たのは男の声。
『捕まえたぞ。これで俺たちの勝ちだな?』
「あれ、騎士サマじゃん?シオンは?」
『いるふぉ』
「何食ってんだお前」
『ろふふぉーふぁま!むぐ、ほれおいひいれす!!』
「ヨル~?晩飯は食えるぐらいに止めておけよ」
『ふぁい!』
『ん、ごちそうさま。おいろっく、さっき露店にガラクタ屋があったぞ。ヨルちゃんが買い占める前に止めに来てくれ』
『ヨルカナル、流石にその金を稼いだ本人の指示を扇ごう。全部買おうとするな』
『んぐんぐ、もふ、もぐもぐむぐ、んぐ!』
「食い終わってから喋れ!!キノ、いくぞ。あの馬鹿止めなきゃならん」
「はぁい」
魔道具から聞こえてきた楽しげな声に、目頭を押さえる。全く、何をやっているんだか。
キノと共に宿を出て、ついでに露店か飯屋で何か食べるか、何を食べようかと話ながら目的地へと向かう。
途中キノが他のお仲間とも合流し、オレはゲームに負けたので大人しく手を引くことを宣言する。疑わしそうにする騎士サマを鼻で笑い、積もる話もあるからと晩飯の時間だけ二人を借りることにした。
疑わしいのはわかるが、別に勝手に連れてかねぇから家族水入らずで過ごさせろ、KY騎士。
「気の使えねぇ騎士サマだなぁ、ホントによ!」
「疑われるような言動をする貴様が悪い」
「だからって家族水入らずの晩飯に混ざりにくるか?空気読め??」
「ふっ。俺にはここに混ざる理由がある」
「ほぉ?言ってみろや」
「お兄さん、妹さんを俺に下さい」
「誰がやるかバァ~~~~~カ!!!」
「仲良いね、あの二人」
「二人とも素面だよな?酒入ってねぇ?」
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