ホワイトコード戦記1 シンカナウスより

星白 明

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三章 人形部隊(ドールズ)

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『――テレポート・ゲートエリアを通過中の艦隊に警告する』
 εの無機質な声による通信が、空域に響いた。
『当国の許可なくゲートエリアを利用し、領内に転移することは禁じられている。速やかに転進、領空より退去されたし。従わない場合は敵対行為と見なし、攻撃を加える。繰り返す――』
【……反応なし。無視かよー】
【でも、何かさ、砲塔、こっち向いてない?】
【あ、やば……】
 アンドロイド数機とμは慌てて身をひるがえした。数秒遅れて、赤い筋を引き連れて、凶悪な火器での攻撃が数条、隊を喰い破るように通過した。ちりっと大気が焼ける匂いに、μは顔を引きつらせた。
【攻撃してきた……っ!】
 εの顔から、さらに表情が抜け落ちた。
『――部隊への攻撃を確認した。戦意ありと見なし、これより攻撃を開始する……!』
 全機攻撃開始、と指令が下った。
【砲撃隊、構え。超遠距離砲撃――まずは前方三艦、墜とす!】
 指示と同時に、砲装を持ったアンドロイド三機が構えた。全員、エネルギーを最大充填するために全身を発光させている。
 μは歯を食いしばった。
(撃つんだ。これは戦争だ。覚悟がなくても、何でも――大義ならある……仕事だから……!)
【撃て!】
 震える指がトリガーを引いた。
 砲装が青白い光を放ち、高速の白い稲妻を射出した。雷にも似た轟音ごうおんと共に、前方に位置していた艦船が光に呑まれた。数瞬前にシールドらしきものを展開したように見えたが、コンマ数秒後、あっさりと光がシールドを食い破る。数拍おいて、爆音が空域にとどろいた。
 爆発による炎と黒煙、そして太陽を目くらましに、一気に前方のアンドロイド十四機が加速し、空振くうしんの唸りを上げて青空を駆けた。空母から戦闘機たちが慌てて飛び立ってくる。同時に、牽制とばかりにミサイルの弾幕が空に張られた。
【砲撃隊、次弾装填! 後衛組、護衛を頼むぞ!】
【【【【了解】】】】
 当然、同じところに居座るεたちではない。μも砲装をリチャージしながらεのあとに続き、鋭く空を切る。襲いくる砲撃は、護衛の機体が残像さえ残るほどの高速移動により、叩き、あるいは撃ち払う。火花と黒煙のカーテンをくぐり抜け、仲間とのやりとりで既に標的を定め終えていた三機が、再び砲装を構えた。
【撃て!】
 超遠距離砲撃――ではない。前衛が戦闘機と空中戦を仕掛ける片手間に設置した、空中ネット。指先ほどの太い針が百本単位で構築した、爆裂する網の中に、起爆エネルギーが外から打ち込まれた。
 空に昼の日光よりなお明るく、蒼白の閃光が走る。ブウンと不気味な唸り声のような音を上げて、一瞬で網の中の戦闘機が黒く融け落ちた。
【向こうの護衛が剥がれた空母を狙え! その他の前衛は相手の攪乱(かくらん)に務めろ!】
【――……?】
 開始数分で戦力をごっそり削られた戦艦から、半狂乱のように砲撃が飛んでくるのを、μは奇妙な感覚で眺めていた。
 遅い。どこに攻撃が飛んでくるか、簡単に予測がつく。体を木の葉さながらにひらめかせれば、止まっている木々の間を走り抜けるくらい簡単に鉄と炎の嵐をかいくぐることができた。
 あの傭兵の機械人間と戦った時は、無我夢中だった。彼の動きについていけていたのは、戦ううちに相手の癖をつかんだのだと思っていたが、違うようだ。
(もしかすると、この感覚が博士の新実装したシステム? うまくすれば、使える?)
 束の間の判断。リソースを別の計算に振り分けることにした。今の予測精度ならば、少し気を逸らしていてもどうにか避けることはできると踏んだのである。
(MOTHERの演算支援を受けて、予測軌道を全機に共有――防御、攻撃の両方を支援……できるか!? いいや、やってみせる!)
 数でいえば決して有利な状況ではない。使えるものは使わなければ、味方に被害が出る。
(セッション確立――サーバーによる送受信、演算結果を同期――よし、通った!)
【ε! みんな! これ、使って!】
【……!?】
 μから受けた予測の並外れた正確性と提案行動の確実性に、εが目を瞠った。
 また、切り込んでいった十四機からも、それぞれから驚きの声が上がる。
【何じゃこりゃー! 見える! 弾道が見える! 弾が止まって見えるぞ!?】
【相手の動きの意図が分かる……! これならまだ、楽に数をこなせるよ!】
【我々は相手をなぶりに来たのか? いいや戦いに来たはずだが】
【深く考えるな、きっと博士が何かμに爆弾を仕掛けたんだ】
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