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四章 ホワイトコードの叛逆
九
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『っ――上方索敵! レーザーでやれ! おそらく相手は量子ステルスだ!』
本当に、とことんまで察しがよすぎる司令官だ。
(せっかく隠れているように言っておいたのになぁ)
ミュウは思いながら、合図の信号をそっと送信した。
数千メートル上空で、光が揺らぎ、小さな影が複数体出現した。
【さて――ところで、何人、集まったかな?】
【すでに起動しているものは、全員、定刻集合いたしました】
低位プラズマでの秘匿通信に返答があった。
【いや、方位センサーが曲がっていたせいで、本当に辿り着けないかと思った】
【その羊飼いに感謝だな。ところで治ったのか、それ】
【まだだ。誰か調整技能に立候補したい奴は名乗り出てくれ、俺が練習台になろう。……壊すなよ?】
【こら、そこ。マザーの前よ、静かになさい】
わずかな咳払いのあと。
【――転移認可システムにはまとめて申請を通しておきましたわ。あとはマザーの号令次第です】
ミュウは軽く、頷いた。
そして、あらかじめ決めておいた起動コードを発信した。
『――〝呼応せよ、白騎士団〟。私一人では到底辿り着けない、時の果て、光の先を目指して。私の力になって欲しい』
【はい、マザー。先輩たちの無念に変わり――我々は、あなたの手足、あなたの目、あなたの耳、そして剣と盾となりましょう】
*
ふわりと、〝意識〟が揺れた。
『彼ら』ははるか地面の下、シンカナウスの地下通路で目を覚ました。
遠く彼方より入力されたデータは、魂の呼び声は、生まれながらにして彼らのやるべきことを指し示していた。
――馳せ参じる。
助けて欲しい、という、たった一人の――『TYPE:MOTHER』の求めに応じて。
だから、孵卵器のようなカプセルから、一斉に飛び出した。
数万対の足が地に着くと、ずん、と大地が振動した。一瞬あとには、プラズマの白い光が弾け、彼らはその場から転移(テレポート)していた。
目指すは、はるか、オーギル海上空――。
*
曇天の空。雲の向こうに、ミュウの呼びかけに『彼ら』が応じた証に、白いプラズマ光が次々と出現する。ひとつひとつの光は小さくとも、いずれも確かに星のごとき光芒を宿すもの。はじめは小さな瞬きにしか過ぎない光の数は、その光景を見守る者の前で、いや増しに増してゆく。
『――熱源、多数感知! 何だ、この数は……!』
『数がどんどん増加していきます! 三千……五千……八千……一万二千……まだ増えるのか!?』
嘘だろう、と愕然と悲鳴が上がる。
曇天に白む海上をなお明るく染め上げ埋め尽くす、空に満ちる純白の光。
その数――およそ、十万機。
『……おいおい、いったいいつの間に、どこからこんな大量の戦闘型アンドロイドをこさえてきたって?』
シスリーの、勘弁してくれ、という呟きが落ちた。勝てるか、こんなの。
『おじさんはこれを上に報告しろと……?』
『大人が自らの行いに責任を取らなかった結果です。――ずっと考えていました。MOTHERは、博士は、アンドロイドたちは、なぜ死ななければならなかったのかと。エントや裏切り者に殺されたんじゃない。彼らは人間の善性を信じ、神の意思を求めた結果、この世に満ちたあなたがたの悪性に殺されたのです』
『哲学の時間につきあってはいられない』
シスリーは苦々しげに告げた。
『君のこれは、子供の悪戯を超えている。――ミュウ。君と、その大戦力……白騎士団の一団を、人類にとっての危険勢力と判断した。その戦力の作成という暴走行為をもって、我が国への叛逆、および宣戦布告と見なす』
『構いません』
ミュウは断じた。
『私が選んだのは、元よりあなたたちだけでなく、私を厭う全てと戦うしかない道だった。私は、私であるために、あなたたちと戦い、問いかけるつもりです。――それを思えば、十万という数字でさえ、少ないぐらいではないかと思いますが』
『君みたいな本物の真面目な脅威が現れるのを恐れてたんだよ、ウチは……!』
『……私はただ、ここで意味もなく終わりたくない。それだけです』
そうして、シンカナウスとエントの戦いだったはずの第三次オーギル空戦は、白騎士団を名乗る第三勢力の介入により、一時停戦を強いられたかに見えたが――、
この時、思わぬ形で転げ出てきた本物の世界の『悪意』が、あらゆる命に牙を剥くことになるとは――誰も予想だにしていなかった。
本当に、とことんまで察しがよすぎる司令官だ。
(せっかく隠れているように言っておいたのになぁ)
ミュウは思いながら、合図の信号をそっと送信した。
数千メートル上空で、光が揺らぎ、小さな影が複数体出現した。
【さて――ところで、何人、集まったかな?】
【すでに起動しているものは、全員、定刻集合いたしました】
低位プラズマでの秘匿通信に返答があった。
【いや、方位センサーが曲がっていたせいで、本当に辿り着けないかと思った】
【その羊飼いに感謝だな。ところで治ったのか、それ】
【まだだ。誰か調整技能に立候補したい奴は名乗り出てくれ、俺が練習台になろう。……壊すなよ?】
【こら、そこ。マザーの前よ、静かになさい】
わずかな咳払いのあと。
【――転移認可システムにはまとめて申請を通しておきましたわ。あとはマザーの号令次第です】
ミュウは軽く、頷いた。
そして、あらかじめ決めておいた起動コードを発信した。
『――〝呼応せよ、白騎士団〟。私一人では到底辿り着けない、時の果て、光の先を目指して。私の力になって欲しい』
【はい、マザー。先輩たちの無念に変わり――我々は、あなたの手足、あなたの目、あなたの耳、そして剣と盾となりましょう】
*
ふわりと、〝意識〟が揺れた。
『彼ら』ははるか地面の下、シンカナウスの地下通路で目を覚ました。
遠く彼方より入力されたデータは、魂の呼び声は、生まれながらにして彼らのやるべきことを指し示していた。
――馳せ参じる。
助けて欲しい、という、たった一人の――『TYPE:MOTHER』の求めに応じて。
だから、孵卵器のようなカプセルから、一斉に飛び出した。
数万対の足が地に着くと、ずん、と大地が振動した。一瞬あとには、プラズマの白い光が弾け、彼らはその場から転移(テレポート)していた。
目指すは、はるか、オーギル海上空――。
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曇天の空。雲の向こうに、ミュウの呼びかけに『彼ら』が応じた証に、白いプラズマ光が次々と出現する。ひとつひとつの光は小さくとも、いずれも確かに星のごとき光芒を宿すもの。はじめは小さな瞬きにしか過ぎない光の数は、その光景を見守る者の前で、いや増しに増してゆく。
『――熱源、多数感知! 何だ、この数は……!』
『数がどんどん増加していきます! 三千……五千……八千……一万二千……まだ増えるのか!?』
嘘だろう、と愕然と悲鳴が上がる。
曇天に白む海上をなお明るく染め上げ埋め尽くす、空に満ちる純白の光。
その数――およそ、十万機。
『……おいおい、いったいいつの間に、どこからこんな大量の戦闘型アンドロイドをこさえてきたって?』
シスリーの、勘弁してくれ、という呟きが落ちた。勝てるか、こんなの。
『おじさんはこれを上に報告しろと……?』
『大人が自らの行いに責任を取らなかった結果です。――ずっと考えていました。MOTHERは、博士は、アンドロイドたちは、なぜ死ななければならなかったのかと。エントや裏切り者に殺されたんじゃない。彼らは人間の善性を信じ、神の意思を求めた結果、この世に満ちたあなたがたの悪性に殺されたのです』
『哲学の時間につきあってはいられない』
シスリーは苦々しげに告げた。
『君のこれは、子供の悪戯を超えている。――ミュウ。君と、その大戦力……白騎士団の一団を、人類にとっての危険勢力と判断した。その戦力の作成という暴走行為をもって、我が国への叛逆、および宣戦布告と見なす』
『構いません』
ミュウは断じた。
『私が選んだのは、元よりあなたたちだけでなく、私を厭う全てと戦うしかない道だった。私は、私であるために、あなたたちと戦い、問いかけるつもりです。――それを思えば、十万という数字でさえ、少ないぐらいではないかと思いますが』
『君みたいな本物の真面目な脅威が現れるのを恐れてたんだよ、ウチは……!』
『……私はただ、ここで意味もなく終わりたくない。それだけです』
そうして、シンカナウスとエントの戦いだったはずの第三次オーギル空戦は、白騎士団を名乗る第三勢力の介入により、一時停戦を強いられたかに見えたが――、
この時、思わぬ形で転げ出てきた本物の世界の『悪意』が、あらゆる命に牙を剥くことになるとは――誰も予想だにしていなかった。
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