風のなかの日記帳

吉谷新次

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風のなかの日記帳2

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 俺の名前は、川村。
 今日は、帰宅の道順とはまったく違う道を歩かされている。

 隣にいるこの女は、二階堂朱里というクラスメイト。
 特殊な霊感を持つ女子高生だ。

川村「なんで、俺なんだ?」

二階堂「だって、私はまだ、幽霊の声しか聞こえないんだもん。川村だったら、幽霊の姿が見えるでしょ?」

川村「そうじゃねぇよ。なんで、藤崎とか、芹沢じゃなくて、俺なんだよ。俺も、まだ霊感が強いとは言いきれねぇし」

二階堂「良いじゃない、別に。……イヤだったら、やめるけど」



川村「イヤだったら、一緒に歩くわけねえだろ」

二階堂「……もう(小声)」

川村「なんだよ?」

二階堂「……なによ」

川村「おめーが、なんだよ?」

二階堂「あー、もう! うるさいうるさい! 成仏させて、すぐ帰るよ!」



子供「パパ!」

川村「は? なに?」

二階堂「パパァ!?」

 なんか、子どもが抱き着いてきた。
 しかも、俺のことを、パパ、と呼んできやがる。

子供「ねえねえ。久しぶりに、キャッチボールをしようよ」

二階堂「どうなってるの? カノジョとか嫁がいるなら言いなさいよ!」

川村「ちっげーよ。俺の子じゃねえよ。そもそも、カノジョなんていねーし」

二階堂「じゃあ、なんで、カノジョがいない、って私に教えないのよ?」



川村「は? なんでおめーに俺の恋愛事情を報告しなくちゃいけねーんだよ」

二階堂「……なんでもない! ごめんね!」

子供「パパのグローブを持って、待ってたんだ。やろう!」



 俺は、二階堂とわけのわからない会話をしていた。
 気づけば、子どもからグローブを手渡されることとなった。

二階堂「あ、そういうことね」

川村「なんだよ?」

二階堂「キャッチボール、してあげて。この子のお父さんの声が聞こえてたみたい」

川村「は? ……そういうことか」



 とりあえず、しばらくキャッチボールをしてあげた。

順平「パパ! 僕、強くなった?」

川村「ああ」

順平「僕ね、もっと強くなって、お母さんや弟を守るんだ!」

 子どものその言葉で、俺は霊気を感じた。
 この俺に、あの子どもの父親が、憑依していることがわかったからだ。



 二階堂は、あの子どもの父親から、手伝いを求められたのだろう。
 子どもの名前と、子どもに伝えたい言葉が、わかった。

川村「順平、自分以外の誰かのために頑張ってたら、身体を壊すぞ。
 自分のやりたいことを見つけて、それに向けて努力や工夫をするんだぞ。
 パパはそれだけで、誇りなんだよ。お母さんも、安心するし。
 これからも、身体に気をつけて、無理せず頑張れ」

 俺が、順平という子どもに、彼の父から貰った言葉を言ってあげると。

順平「うん。頑張る!」



 順平は、非常に喜んでいた。
 そして、キャッチボールが終わると、順平は握手をしてきた。
 本当に、父親の姿が見ている。だから俺も、しっかりと拳を握った。

順平「パパ、この前、パパの分のアイスを食べちゃってごめんね」

川村「パパは、気にしてないよ」



順平「それで、今日のキャッチボール、ありがとう!」

川村「どういたしまして。また、キャッチボールをやろうな」

順平「……もう、キャッチボールは、できないんだよね?」



川村「え?」

順平「……そんな気がするんだ」

川村「……そうだな。でも、これからもずっと、見守ってるよ」

順平「うん。僕も、弟も、お母さんも、見守っててね」



 キャッチボールが終わり、子どもと解散した。
 俺達は、帰宅を始めた。

二階堂「どうだった?」

川村「成仏させたよ。オヤジもガキも、満足してた。それだけ」

二階堂「あの子のお父さん、裕也に感謝してたよ。やったじゃん。良い男子高校生だねー」

川村「どうも。まあ、それが俺達の役割みたいなもんだからな」



二階堂「ねえ、この近くに喫茶店があるから、反省会でもする?」

川村「行かねえよ。しかも、反省会、ってなんだよ」

二階堂「……ごめんなさいね。カノジョの邪魔をしちゃって」

川村「だから、カノジョはいない、って言ってるだろ」

二階堂「じゃあ、なんで行かないの?」

川村「家から遠いし、反省することないから」

二階堂「……わかった。帰る」



川村「……行ってやるよ。少しだけだぞ」

二階堂「最初から、行く、って言いなさいよ」

川村「なんだよそれ。だったら、反省会、っていう言いまわしするなよ。普通に誘えよ」

二階堂「普通に誘って、裕也にカノジョがいたら、迷惑じゃん」

川村「だから、いねぇ、って言ってるだろ」

二階堂「だったら、最初から、いない、って教えなさいよ!」

川村「だから、なんでお前に俺の恋愛事情を報告しなくちゃいけねーんだよ」

二階堂「あー、もう、うるさいうるさい。はやく喫茶店に行くよ!」

 俺は、特殊な学校に通っている分、霊感がある友達もいる。
 俺みたいな霊感のある生徒もいれば、霊感があるからといって転校してくる生徒もいる。

 二階堂も、通っている学校で知り合った女子高生だ。

 俺は、こういった学生生活を送っている。



 今日もまた、幽霊を一人、成仏させることができた。
 今回は、これで終わりだ。喫茶店に行くとするか。


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