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41. 朋子の朋子
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(朋子の朋子)
そして、放課後……
良一は帰宅してから昨日と同じように母親のベッドの横で自体は、ますます複雑で混迷をきたしているなっと自己解説していた。
これからどうすべきか、進むべきか、退くべきか……
「お姉ちゃんに見られちゃったわねー」
妙子が帰ってきて良一の隣に来たが、昨日までの感じと違うと思った。
「どうしようかなー? 紗恵子さんにも本当のこと話そうかな……」
「信じてくれると思う?」
「多分、笑われる……、それに朋子ちゃんにも聞いてみないといけないし……、もしかしたら紗恵子さんには、朋子ちゃんが見えないかもしれないし……」
「どういうこと……?」
「誰もがみんな、朋子ちゃんが見えるとは限らないんだ……、もともとは実体がない夢の中の人だからね。ターちゃんは、プラネタリウムで会っているから大丈夫と思ったんだ。それに朋子ちゃんも連れてくればといっていたから……」
「そうなんだ……、そうかもね……」
「でも、どうしようかなー、きっと今日も待っていると思うし……」
「でも、三日連続というのもさすがに怪しまれるわよー」
「そうだよねー、二人でかわいく添い寝していたなんて思わないし、ましてや二人でお母さんの夢の中に行っていました、なんて絶対信じないし……」
「とりあえず、今日はやめましょう……」
「そうだねー、朋子ちゃんには悪いけど……」
二人の考えはまとまった。
しかし、良一はこんなことを繰り返していて、本当に母親は目を覚ますのだろうかと不審に思っていた。
もっと他に方法はないものかと思案に暮れた。
その夜、良一が久しぶりに自分の布団の中に入り、その心地よさにため息をついていたころ、布団の中の怪しい物体に気づいた。
最初は布団の塊と思っていたが、その物体が動いていることに気がついた。
「ええ、……」
良一は仰向けのまま、足で布団を蹴飛ばしながら這い出した。
布団から這い出したにもかかわらず、着布団はこんもり盛り上がっていた。
それを見て、新一だと思った。
「もう、何てところから出てくるんですか!」
良一は、一呼吸置いてから立ち上がり布団をはいだ。
「朋子ちゃん!」
そこには、母親の夢の中の少女、朋子が卵のようにうずくまって、こちらに微笑みかけていた。
「来ちゃったっ!」
「……、来ちゃったって、また新一かと思っちゃったよー」
「へぇへぇへぇ…、そうよー。新一が、たまたま通りかかって、良ちゃんが来るのを待っているけど、なかなか来ないって言ったら、連れてきてくれたの」
彼女はあどけなく笑って起き上がった。
「でも、ここはまずいよー」
「何で……?」
「だって、男の部屋だし夜だし……、だから……」
「エッチなことするから?」
「……、だから、ちがうんだって、そういう問題ではないから。困っちゃうなー」
夜中に現れた彼女をどうしようかと、更に頭を悩ませた。
一つ間違えれば、この状況は少女誘拐だ。
「とりあえず、妙ちゃんのところに行こうー」
良一は、彼女を部屋で待たせると、廊下の様子を伺ってから妙子の部屋のドアをそっと開けて中に入った。
「……、何、やっぱり行くの?」
妙子は、起きていた。
「違うんだ……、ちょっといい」
妙子が起きていることを確認すると、良一は再び自分の部屋に戻り、朋子を連れて妙子の部屋に戻った。
「朋子ちゃん!」
妙子は驚いて朋子に駆け寄った。
「来ちゃった……」
朋子は笑って答えた。
「いいけど……」
妙子は朋子の肩を抱いてベッドの上に腰掛けさせた。
「よく来たね……」と、その横に妙子も掛けた。
そしてもう一度肩を抱き寄せ、背中を撫でて喜び合った。
「お姉ちゃんたちの来るのを待っていたんだけど、全然こなかったから……」
朋子はほっぺを膨らませて怒って見せた。
「ごめんごめん、あんまりお邪魔してもいけないかと思って、二人で相談してやめたの。本当は行きたかったんだけどね。でも、朋子ちゃんが来てくれて嬉しいわ」
妙子は立ち上がって、山のように並べられてあるぬいぐるみの中から、さっちゃんを取り出し、朋子に会わせた。
「これが私のさっちゃん、ちょっと汚れているけど、よろしくねー!」
妙子が小学校四年生のとき、母親朋子が仕事に復帰することになって、妙子が寂しくないようにと、妙子の背丈ほどあるさっちゃんを自分で作って妙子に渡した。
妙子は、もうそんなに子供じゃないよ、と言いながらも毎日さっちゃんに話しかけて遊んでいた。
もちろん寝る時も一緒だった。
「こちらこそよろしくねー」
朋子も小首を傾げてお辞儀した。
「そうだ、もう一人逢わせたい人がいるんだ。私のお母さん……」
妙子は、大事そうにさっちゃんを元いたぬいぐるみの中に戻すと、朋子の手をとった。
良一もその話にあわせて……
「そうだね。お母さんに逢ってから、お茶でも飲もうか?」
「何か、おやつ作ってくれるの?」
妙子の嬉しそうな顔と声。
その声に乗せられるかのように良一もはしゃぐように……
「買い置きの、アイスクリームがあるじゃん。あ、そうだ。ホットケーキも焼こう!」
「賛成!」
妙子は飛び上がり、こぶしを上げて喜んだ。
三人は、紗恵子が起きないようにと祈りながら、音を立てないようにしてキッチンに降りて行った。
「私のお母さん。眠りの森のオーロラ姫なの……」
妙子は小さな声で言った。
「……、どこか悪いの?」
朋子も妙子を気遣うように小さな声で話した。
「そう、突然倒れてしまって、それから目を覚まさないの……、私のお母さんに、見覚えない? どこかで逢わなかった?」
妙子の話にもかかわらず、朋子の反応は無かった。
「私のお母さんによく似ている……、とてもきれいな人ね……、でも逢うのは初めてだと思うわ」
「そう、もしかしたら知っている人かなっと思って……、一度、聞いてみたかったんだ」
妙子は、朋子ちゃんが私のお母さんよ、と口元まで出掛かっていた。
「早くよくなって、目を覚ますといいわねー」
しかし、朋子はまったくの他人、知らない人を見ている感じだった。
「うん、もし、何か思い出したら教えてねー」
現実問題、なぜ朋子が二人いるのかわからないが、それを一人にまとめることなど、到底不可能なことだと妙子は思った。
「もちろんよ!」
朋子は、まだその衝撃の事実を知らないまま、明るく答えた。
良一と妙子のかすかな望みは消え、よく考えれば、少女に三十年後の自分の姿を想像できるわけがなかった。
「……、じゃー、僕飲み物作るよ」
良一は、考えても考えきれないことを振り切るように、その場から離れ、キッチンに向った。
「ホットケーキもねー!」と、付け足したのは妙子だった。
妙子と朋子はリビングのソファに座ったとき……
「……、楽しそうね。何のパーティーかしら……」
突然、紗恵子が二階から降りてきた。
「あああ、これには深い事情がありまして……」
良一はその聞き覚えのある声に振り返り、気絶しそうになった。
「ああの、違うの……」
妙子もさすがにこの場を繕えない。
「こんにちは、お邪魔しています!」
朋子だけが冷静に、紗恵子に向かって立ち上がり深々とお辞儀をした。
「……、お友達も一緒なの?」
何か悪いことをしていた子供を見つけて、叱るような顔つきで紗恵子は三人を見た。
「そう、そうなの。彼女のことで、ここ二日三日、良一とも相談していたんだけど、彼女、家が無いの……」
妙子は、苦し紛れに説明しようとした。
「家が無い……?」
訊きなおした紗恵子は、妙子と朋子の前にゆっくりと座った。
それをみて、妙子と朋子も改めて座り直した。
「そうなの、家が無いというよりも、帰れないの。借金の取り立てが来て、彼女を売り飛ばすと言うの……。ほら、テレビでよく言っているでしょう。借金地獄よ……」
「……、それだったら、警察の生活安全課に相談しないと……」
紗恵子は、その話を少しは信じたのか、まともな答えを返した。
「そんなことで警察が動くわけないでしょう。それに両親は逃げているの。三人一緒だと目立つから、もし捕まったら売り飛ばされちゃうし、だから、彼女は私が匿っているんだけど。しばらくこの家にいてもいいよねー?」
妙子の苦しい説明が終わった。
「それは、いいけど……」
彼女を家に置いてくれるということが、妙子や良一の行き詰まった思いを、少しはやわらげてくれた。
「名前は、なんて呼べばいいのかしら……?」
「小柴朋子です。よろしくお願いします!」
「え、奇遇ね。私の母と同じ名前だわ」
「そう、そうなの……」
妙子がまた返事に困った。
「……、だから、僕は、ほんとに妙ちゃんと変なこと……、してないということが分かってもらえればいいんだけど……」
良一はとっさに話を変えた。
「良一、何かやろうと思ったの?」
妙子もその話に乗った。
「いや、何も、……」
良一は肩を落として小さくなった。
紗恵子は二人の話を聞かずに……
「わかったわ。じゃ、朋子ちゃん好きなだけ、この家にいてくれていいから。いるものがあったら何でもいってちょうだいね」
「ありがとうございます」
朋子は座ったまま頭をぺこりと膝につくくらい折り曲げて感謝を示した。
「それじゃ、お言葉に甘えまして、お布団が欲しいなー」
妙子が、朋子の代わりのような口調で言った。
「あら、私なら良ちゃんと同じ布団でいいわよー!」
朋子が良一見て言った。
「ああははは、冗談が好きだから……」
良一は、またも青ざめて、さらに体を小さくたたんだ。
「あんた、まさか……」
妙子が睨んだ。
「僕は何もしてないってー!」
良一は逃げるように振り返り、もう一度キッチンに向った。
「じゃー、妙子の部屋に運んでおくわ」
紗恵子は立ち上がりお客用の布団がある和室に向いながら……
「じゃー、今日はもう遅いから早く寝なさいねー!」
「アイスクリームとホットケーキ食べたらすぐ寝る……」
妙子の明るい声が響いた。
「寝る前に食べると肥るわよ……」
紗恵子のきついお言葉!
「おおきなお世話ー!」
妙子は開き直ったように叫んだ。
三人が、朋子の歓迎パーティーとばかりに、紅茶とホットケーキとアイスクリームを食べて寝たのは三時を回ったころだった。
そして、放課後……
良一は帰宅してから昨日と同じように母親のベッドの横で自体は、ますます複雑で混迷をきたしているなっと自己解説していた。
これからどうすべきか、進むべきか、退くべきか……
「お姉ちゃんに見られちゃったわねー」
妙子が帰ってきて良一の隣に来たが、昨日までの感じと違うと思った。
「どうしようかなー? 紗恵子さんにも本当のこと話そうかな……」
「信じてくれると思う?」
「多分、笑われる……、それに朋子ちゃんにも聞いてみないといけないし……、もしかしたら紗恵子さんには、朋子ちゃんが見えないかもしれないし……」
「どういうこと……?」
「誰もがみんな、朋子ちゃんが見えるとは限らないんだ……、もともとは実体がない夢の中の人だからね。ターちゃんは、プラネタリウムで会っているから大丈夫と思ったんだ。それに朋子ちゃんも連れてくればといっていたから……」
「そうなんだ……、そうかもね……」
「でも、どうしようかなー、きっと今日も待っていると思うし……」
「でも、三日連続というのもさすがに怪しまれるわよー」
「そうだよねー、二人でかわいく添い寝していたなんて思わないし、ましてや二人でお母さんの夢の中に行っていました、なんて絶対信じないし……」
「とりあえず、今日はやめましょう……」
「そうだねー、朋子ちゃんには悪いけど……」
二人の考えはまとまった。
しかし、良一はこんなことを繰り返していて、本当に母親は目を覚ますのだろうかと不審に思っていた。
もっと他に方法はないものかと思案に暮れた。
その夜、良一が久しぶりに自分の布団の中に入り、その心地よさにため息をついていたころ、布団の中の怪しい物体に気づいた。
最初は布団の塊と思っていたが、その物体が動いていることに気がついた。
「ええ、……」
良一は仰向けのまま、足で布団を蹴飛ばしながら這い出した。
布団から這い出したにもかかわらず、着布団はこんもり盛り上がっていた。
それを見て、新一だと思った。
「もう、何てところから出てくるんですか!」
良一は、一呼吸置いてから立ち上がり布団をはいだ。
「朋子ちゃん!」
そこには、母親の夢の中の少女、朋子が卵のようにうずくまって、こちらに微笑みかけていた。
「来ちゃったっ!」
「……、来ちゃったって、また新一かと思っちゃったよー」
「へぇへぇへぇ…、そうよー。新一が、たまたま通りかかって、良ちゃんが来るのを待っているけど、なかなか来ないって言ったら、連れてきてくれたの」
彼女はあどけなく笑って起き上がった。
「でも、ここはまずいよー」
「何で……?」
「だって、男の部屋だし夜だし……、だから……」
「エッチなことするから?」
「……、だから、ちがうんだって、そういう問題ではないから。困っちゃうなー」
夜中に現れた彼女をどうしようかと、更に頭を悩ませた。
一つ間違えれば、この状況は少女誘拐だ。
「とりあえず、妙ちゃんのところに行こうー」
良一は、彼女を部屋で待たせると、廊下の様子を伺ってから妙子の部屋のドアをそっと開けて中に入った。
「……、何、やっぱり行くの?」
妙子は、起きていた。
「違うんだ……、ちょっといい」
妙子が起きていることを確認すると、良一は再び自分の部屋に戻り、朋子を連れて妙子の部屋に戻った。
「朋子ちゃん!」
妙子は驚いて朋子に駆け寄った。
「来ちゃった……」
朋子は笑って答えた。
「いいけど……」
妙子は朋子の肩を抱いてベッドの上に腰掛けさせた。
「よく来たね……」と、その横に妙子も掛けた。
そしてもう一度肩を抱き寄せ、背中を撫でて喜び合った。
「お姉ちゃんたちの来るのを待っていたんだけど、全然こなかったから……」
朋子はほっぺを膨らませて怒って見せた。
「ごめんごめん、あんまりお邪魔してもいけないかと思って、二人で相談してやめたの。本当は行きたかったんだけどね。でも、朋子ちゃんが来てくれて嬉しいわ」
妙子は立ち上がって、山のように並べられてあるぬいぐるみの中から、さっちゃんを取り出し、朋子に会わせた。
「これが私のさっちゃん、ちょっと汚れているけど、よろしくねー!」
妙子が小学校四年生のとき、母親朋子が仕事に復帰することになって、妙子が寂しくないようにと、妙子の背丈ほどあるさっちゃんを自分で作って妙子に渡した。
妙子は、もうそんなに子供じゃないよ、と言いながらも毎日さっちゃんに話しかけて遊んでいた。
もちろん寝る時も一緒だった。
「こちらこそよろしくねー」
朋子も小首を傾げてお辞儀した。
「そうだ、もう一人逢わせたい人がいるんだ。私のお母さん……」
妙子は、大事そうにさっちゃんを元いたぬいぐるみの中に戻すと、朋子の手をとった。
良一もその話にあわせて……
「そうだね。お母さんに逢ってから、お茶でも飲もうか?」
「何か、おやつ作ってくれるの?」
妙子の嬉しそうな顔と声。
その声に乗せられるかのように良一もはしゃぐように……
「買い置きの、アイスクリームがあるじゃん。あ、そうだ。ホットケーキも焼こう!」
「賛成!」
妙子は飛び上がり、こぶしを上げて喜んだ。
三人は、紗恵子が起きないようにと祈りながら、音を立てないようにしてキッチンに降りて行った。
「私のお母さん。眠りの森のオーロラ姫なの……」
妙子は小さな声で言った。
「……、どこか悪いの?」
朋子も妙子を気遣うように小さな声で話した。
「そう、突然倒れてしまって、それから目を覚まさないの……、私のお母さんに、見覚えない? どこかで逢わなかった?」
妙子の話にもかかわらず、朋子の反応は無かった。
「私のお母さんによく似ている……、とてもきれいな人ね……、でも逢うのは初めてだと思うわ」
「そう、もしかしたら知っている人かなっと思って……、一度、聞いてみたかったんだ」
妙子は、朋子ちゃんが私のお母さんよ、と口元まで出掛かっていた。
「早くよくなって、目を覚ますといいわねー」
しかし、朋子はまったくの他人、知らない人を見ている感じだった。
「うん、もし、何か思い出したら教えてねー」
現実問題、なぜ朋子が二人いるのかわからないが、それを一人にまとめることなど、到底不可能なことだと妙子は思った。
「もちろんよ!」
朋子は、まだその衝撃の事実を知らないまま、明るく答えた。
良一と妙子のかすかな望みは消え、よく考えれば、少女に三十年後の自分の姿を想像できるわけがなかった。
「……、じゃー、僕飲み物作るよ」
良一は、考えても考えきれないことを振り切るように、その場から離れ、キッチンに向った。
「ホットケーキもねー!」と、付け足したのは妙子だった。
妙子と朋子はリビングのソファに座ったとき……
「……、楽しそうね。何のパーティーかしら……」
突然、紗恵子が二階から降りてきた。
「あああ、これには深い事情がありまして……」
良一はその聞き覚えのある声に振り返り、気絶しそうになった。
「ああの、違うの……」
妙子もさすがにこの場を繕えない。
「こんにちは、お邪魔しています!」
朋子だけが冷静に、紗恵子に向かって立ち上がり深々とお辞儀をした。
「……、お友達も一緒なの?」
何か悪いことをしていた子供を見つけて、叱るような顔つきで紗恵子は三人を見た。
「そう、そうなの。彼女のことで、ここ二日三日、良一とも相談していたんだけど、彼女、家が無いの……」
妙子は、苦し紛れに説明しようとした。
「家が無い……?」
訊きなおした紗恵子は、妙子と朋子の前にゆっくりと座った。
それをみて、妙子と朋子も改めて座り直した。
「そうなの、家が無いというよりも、帰れないの。借金の取り立てが来て、彼女を売り飛ばすと言うの……。ほら、テレビでよく言っているでしょう。借金地獄よ……」
「……、それだったら、警察の生活安全課に相談しないと……」
紗恵子は、その話を少しは信じたのか、まともな答えを返した。
「そんなことで警察が動くわけないでしょう。それに両親は逃げているの。三人一緒だと目立つから、もし捕まったら売り飛ばされちゃうし、だから、彼女は私が匿っているんだけど。しばらくこの家にいてもいいよねー?」
妙子の苦しい説明が終わった。
「それは、いいけど……」
彼女を家に置いてくれるということが、妙子や良一の行き詰まった思いを、少しはやわらげてくれた。
「名前は、なんて呼べばいいのかしら……?」
「小柴朋子です。よろしくお願いします!」
「え、奇遇ね。私の母と同じ名前だわ」
「そう、そうなの……」
妙子がまた返事に困った。
「……、だから、僕は、ほんとに妙ちゃんと変なこと……、してないということが分かってもらえればいいんだけど……」
良一はとっさに話を変えた。
「良一、何かやろうと思ったの?」
妙子もその話に乗った。
「いや、何も、……」
良一は肩を落として小さくなった。
紗恵子は二人の話を聞かずに……
「わかったわ。じゃ、朋子ちゃん好きなだけ、この家にいてくれていいから。いるものがあったら何でもいってちょうだいね」
「ありがとうございます」
朋子は座ったまま頭をぺこりと膝につくくらい折り曲げて感謝を示した。
「それじゃ、お言葉に甘えまして、お布団が欲しいなー」
妙子が、朋子の代わりのような口調で言った。
「あら、私なら良ちゃんと同じ布団でいいわよー!」
朋子が良一見て言った。
「ああははは、冗談が好きだから……」
良一は、またも青ざめて、さらに体を小さくたたんだ。
「あんた、まさか……」
妙子が睨んだ。
「僕は何もしてないってー!」
良一は逃げるように振り返り、もう一度キッチンに向った。
「じゃー、妙子の部屋に運んでおくわ」
紗恵子は立ち上がりお客用の布団がある和室に向いながら……
「じゃー、今日はもう遅いから早く寝なさいねー!」
「アイスクリームとホットケーキ食べたらすぐ寝る……」
妙子の明るい声が響いた。
「寝る前に食べると肥るわよ……」
紗恵子のきついお言葉!
「おおきなお世話ー!」
妙子は開き直ったように叫んだ。
三人が、朋子の歓迎パーティーとばかりに、紅茶とホットケーキとアイスクリームを食べて寝たのは三時を回ったころだった。
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