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34. 奈緒とハナ
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(奈緒とハナ)
アキラが、兄の残したジャンダルムの絵を殺風景な私の部屋の壁に掛けてくれた……
本当の私の部屋は、二階にある。でも、二階に上がれない私のために、一階の和室八畳を私の部屋にしてくれた。
ここには、パジャマと下着しか置いていない。
外に出ないと決めていた私には、他のものは要らない。
おまけにテレビもラジオもなく、スマホすら持っていない。
テレビが見たければ、居間に行けばいい……
動けない私に、世間の事情など、どうでも良いこと……
見れば見るほど、自分と比べて悲しくなる……
何もない部屋で、一日過ごす……
楽しみと言えるほどの楽しみではないが、一階の和室八畳から、縁側を隔てて、庭が見える。小さな庭だが、季節の移り変わりを教えてくれる。
世間の人の営みを感じさせない、この庭が好きだ。
トイレはポータブルトイレ……、最近ようやく使えるようになった。でも時々、間に合わない時もある……
食事もこの部屋に持ってきてもらえれば、一日中、一歩もこの部屋から出ない時もある……
慣れれば、これが一番幸せなことかもしれない……
将来に夢や希望がない私には、ここで年を取って死んでいく……
それで、いいのかもしれない……
私は人生に絶望している……
この部屋と庭とポータブルトイレと、ベッドだけが私の人生……
「いい絵だね……、力強いよ!」
「いつか、私も本物のジャンダルムに逢えるかな……?」
「……、この絵を見て、リハビリ頑張るんだ。きっとジャンダルムに逢えるさ……、必ず俺が連れて行くよ……」
「……、遭難するわよ……」
「遭難しないように、リハビリ頑張ってくれよ……」
「……、お兄さんと同じことを言うのね……」
「兄貴も、そんなこと言ったのか?」
「そうよ……、それなのに私を置いて、自分一人で遭難していては、始まらないのにね……」
「……、昔から、おっちょこちょいなところがあったからな……」
「よく、二階の階段から滑り落ちていたわね……」
「幽霊になってでも、この絵を奈緒に届けたかったんだ……」
「……、不思議な店よね……、カタリーナって……」
「本当だ……、今でも、夢でもみていた気分だよ……」
「そうね……、また連れて行ってくれる……?」
「……、喜んで連れて行くよ。少しは家から出た方がいいから……」
私は、それには答えず、アキラは部屋を出て行った……
昼間の外出の疲れが出たのか、ベッドに入ると、気持ちよく、すぐに眠りにつけた。
でも、すぐに目が覚めた。ほんの一時間くらい寝たようだ。
寝返りをしながら、カタリーナのことを考えていた。
なぜ、あの時、あんなに動けたのか、自分でも不思議に思っていた。
今まで、あんなふうに襲い掛かってくる人はいなかったから……
私は、起き上がって、ベットの柵を持ちながら立ってみようと、体を前に傾けた。
でも、足は踏ん張れず、畳の上に転がった。
「急に立とうとしても無理よ……」
その声で、私は両手を突いて上半身だけ起き上がって前を見た。
「ハナさん……」
「でも、偉いわー、自分で立とうとするなんて……」
「……、私を連れに来たの……?」
「貴女は、まだ死にたいの……?」
「……、そうね……、もういいかな……」
私は、畳の上で仰向けになって寝ころんで、下からハナさんを見上げた。
ハナさんは、私の横に来てしゃがんでくれた。
「カタリーナのときは、逃げてしまったけど……、よく考えれば、私は生きていてもしょうがない人だから……、家族にも迷惑かけているだけだから……」
「家族の人は、そう思ってないと思うよ……、特にアキラは、真剣に奈緒を治そうとしているよ」
「でも、アキラは、私がいないほうが、もっと自由に生きていけると思うから……、今は、私に付きっ切りだから……」
「……、でも、それがアキラの望みなんじゃないの……」
「もう……、いいんじゃないかな……、貴女の言った通り、自分では死ねないから、連れて行って……、貴女の世界に……」
「本当に、いいのね……?」
私は頷いた……
「……、じゃー、服を脱いで……、裸になるのよ……」
「大丈夫よ、パジャマの下はリハビリパンツしか穿いてないから……」
「脱がしてあげましょうか……?」
ハナさんは、ショート丈のワンピースパジャマを裾から捲り上げ、パンツも脱がした。
「思った通りね……、奇麗な裸だわ……、死んでしまって、灰にするにはもったいないわね……」
ハナさんは、そう言うと、着ていたワンピースパジャマを脱いだ。下は何も着けていなかった。
「思い残すことはないのね……」
「……、もう、いいのよ……」
「いくわよ……」
ハナさんは、私の上に足を絡めさせながら、覆いかぶさり、乳房で私の体を撫でまわした。
「気持ちいいでしょう……」
「……、え、え、……」
それから、私を抱きかかえて、ベッドに仰向けに寝かしてくれた。
でも、それだけでは済まなかった……
そして、朝まで……
気がついて、起きて見ると、ハナさんはいなかった。
でも、次の夜も、私を裸にして、ハナさんも裸になった。
「……、こんな世界、知らないでしょう……?」
「……、えー、こんな世界って、……」
「……、この世界よー、女だけにしか分からない……、女だけの世界よー」
「……、えー、ハナちゃん、待って、そこは駄目よー、……」
「……、大丈夫よ、何をやっても、頑張っても、女同士、赤ちゃんなんかできないから……」
そして次の日も、次の日も、次の日も、息も付けないほど、激しく毎晩、朝まで、続いた……
そのせいか、ハナちゃんの手伝いもあって、歩行器を使って立てるようになった。
それでも毎晩、毎晩、毎晩、毎晩、息も付けないほど激しく、朝まで続いた。
一度、立てるようになると、歩けるようになるには早かった。もちろん歩行器を使ってだが……
それでも、毎晩、毎晩、毎晩、毎晩、人参、ズッキーニ、終わりは大根と攻めてくる。
ハナちゃんの世界って、死んだ人の世界ではなくって、女だけの世界なのね……
でも、次の日、ハナちゃんは現れなかった……
アキラが、兄の残したジャンダルムの絵を殺風景な私の部屋の壁に掛けてくれた……
本当の私の部屋は、二階にある。でも、二階に上がれない私のために、一階の和室八畳を私の部屋にしてくれた。
ここには、パジャマと下着しか置いていない。
外に出ないと決めていた私には、他のものは要らない。
おまけにテレビもラジオもなく、スマホすら持っていない。
テレビが見たければ、居間に行けばいい……
動けない私に、世間の事情など、どうでも良いこと……
見れば見るほど、自分と比べて悲しくなる……
何もない部屋で、一日過ごす……
楽しみと言えるほどの楽しみではないが、一階の和室八畳から、縁側を隔てて、庭が見える。小さな庭だが、季節の移り変わりを教えてくれる。
世間の人の営みを感じさせない、この庭が好きだ。
トイレはポータブルトイレ……、最近ようやく使えるようになった。でも時々、間に合わない時もある……
食事もこの部屋に持ってきてもらえれば、一日中、一歩もこの部屋から出ない時もある……
慣れれば、これが一番幸せなことかもしれない……
将来に夢や希望がない私には、ここで年を取って死んでいく……
それで、いいのかもしれない……
私は人生に絶望している……
この部屋と庭とポータブルトイレと、ベッドだけが私の人生……
「いい絵だね……、力強いよ!」
「いつか、私も本物のジャンダルムに逢えるかな……?」
「……、この絵を見て、リハビリ頑張るんだ。きっとジャンダルムに逢えるさ……、必ず俺が連れて行くよ……」
「……、遭難するわよ……」
「遭難しないように、リハビリ頑張ってくれよ……」
「……、お兄さんと同じことを言うのね……」
「兄貴も、そんなこと言ったのか?」
「そうよ……、それなのに私を置いて、自分一人で遭難していては、始まらないのにね……」
「……、昔から、おっちょこちょいなところがあったからな……」
「よく、二階の階段から滑り落ちていたわね……」
「幽霊になってでも、この絵を奈緒に届けたかったんだ……」
「……、不思議な店よね……、カタリーナって……」
「本当だ……、今でも、夢でもみていた気分だよ……」
「そうね……、また連れて行ってくれる……?」
「……、喜んで連れて行くよ。少しは家から出た方がいいから……」
私は、それには答えず、アキラは部屋を出て行った……
昼間の外出の疲れが出たのか、ベッドに入ると、気持ちよく、すぐに眠りにつけた。
でも、すぐに目が覚めた。ほんの一時間くらい寝たようだ。
寝返りをしながら、カタリーナのことを考えていた。
なぜ、あの時、あんなに動けたのか、自分でも不思議に思っていた。
今まで、あんなふうに襲い掛かってくる人はいなかったから……
私は、起き上がって、ベットの柵を持ちながら立ってみようと、体を前に傾けた。
でも、足は踏ん張れず、畳の上に転がった。
「急に立とうとしても無理よ……」
その声で、私は両手を突いて上半身だけ起き上がって前を見た。
「ハナさん……」
「でも、偉いわー、自分で立とうとするなんて……」
「……、私を連れに来たの……?」
「貴女は、まだ死にたいの……?」
「……、そうね……、もういいかな……」
私は、畳の上で仰向けになって寝ころんで、下からハナさんを見上げた。
ハナさんは、私の横に来てしゃがんでくれた。
「カタリーナのときは、逃げてしまったけど……、よく考えれば、私は生きていてもしょうがない人だから……、家族にも迷惑かけているだけだから……」
「家族の人は、そう思ってないと思うよ……、特にアキラは、真剣に奈緒を治そうとしているよ」
「でも、アキラは、私がいないほうが、もっと自由に生きていけると思うから……、今は、私に付きっ切りだから……」
「……、でも、それがアキラの望みなんじゃないの……」
「もう……、いいんじゃないかな……、貴女の言った通り、自分では死ねないから、連れて行って……、貴女の世界に……」
「本当に、いいのね……?」
私は頷いた……
「……、じゃー、服を脱いで……、裸になるのよ……」
「大丈夫よ、パジャマの下はリハビリパンツしか穿いてないから……」
「脱がしてあげましょうか……?」
ハナさんは、ショート丈のワンピースパジャマを裾から捲り上げ、パンツも脱がした。
「思った通りね……、奇麗な裸だわ……、死んでしまって、灰にするにはもったいないわね……」
ハナさんは、そう言うと、着ていたワンピースパジャマを脱いだ。下は何も着けていなかった。
「思い残すことはないのね……」
「……、もう、いいのよ……」
「いくわよ……」
ハナさんは、私の上に足を絡めさせながら、覆いかぶさり、乳房で私の体を撫でまわした。
「気持ちいいでしょう……」
「……、え、え、……」
それから、私を抱きかかえて、ベッドに仰向けに寝かしてくれた。
でも、それだけでは済まなかった……
そして、朝まで……
気がついて、起きて見ると、ハナさんはいなかった。
でも、次の夜も、私を裸にして、ハナさんも裸になった。
「……、こんな世界、知らないでしょう……?」
「……、えー、こんな世界って、……」
「……、この世界よー、女だけにしか分からない……、女だけの世界よー」
「……、えー、ハナちゃん、待って、そこは駄目よー、……」
「……、大丈夫よ、何をやっても、頑張っても、女同士、赤ちゃんなんかできないから……」
そして次の日も、次の日も、次の日も、息も付けないほど、激しく毎晩、朝まで、続いた……
そのせいか、ハナちゃんの手伝いもあって、歩行器を使って立てるようになった。
それでも毎晩、毎晩、毎晩、毎晩、息も付けないほど激しく、朝まで続いた。
一度、立てるようになると、歩けるようになるには早かった。もちろん歩行器を使ってだが……
それでも、毎晩、毎晩、毎晩、毎晩、人参、ズッキーニ、終わりは大根と攻めてくる。
ハナちゃんの世界って、死んだ人の世界ではなくって、女だけの世界なのね……
でも、次の日、ハナちゃんは現れなかった……
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