俺「重課金疲れた……」ギルメン「俺さんすごい! 次のイベントもお願いします!」

道楽時計

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第一話 アカウントを捨てる日

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俺「…………」 

女「俺さんのお蔭でまたウチのギルドが勝ったっすよ! さすがっす!」 

俺(俺の金のお蔭じゃん……) 

女2「すごい! かっこいい!」 

俺(俺の金がかっこいいんじゃん……) 

女3「俺さーん! また、探索ご一緒させてもらえたらなーと……」 

女2「あ! ずるい! 俺さん、こんなクレクレ野郎ほっといて私といきましょうよ!」 

女3「はぁ? 言うに事欠いてクレクレ? ふざけないでよ! あんたのがレベル低いじゃん! クレクレはどっちよ! 俺さんとアンタなんかじゃ釣り合わないのよ!」 

俺(俺は……俺は……俺はおれはオレオレはオレはオレオ取ってオレオォォォォッ!) 
俺「うわぁぁぁぁっぁぁぁああああ!!!」ダッ 

女「うぉ! お、俺さんどうしたっすか!」 

女3「あれ俺さん? どこいくんですかぁー!」 

女2「あーもう……アンタのせいじゃん……うっざ」 


◆◆


GM「へぇ……アカウント消したい。それで最後に俺に挨拶?」 

俺「…………」 

GM「止めても無駄っぽいな。アンタがいないと、ウチも寂しくなるよ」 

俺「重課金者がひとり消えるんだからそりゃな。あんたらの懐も寂しくなるだろうな」 

GM「荒んでるねぇ……。たまにいるんだ、お前みたいな奴」 
GM「でも、重課金は麻薬だぜ? 現実に思い入れのないお前は、またいつか、同じことを繰り返す」 

GM「人に囲まれたい……ちやほやされたい……機嫌を窺われたい……。いずれ気付くさ、もう俺にはこれしかないんだって、な」 

俺「そんな……そんなこと、ねぇよ……散々言いやがって」 
俺「俺はただ……時間掛けるより金使った方が早いから……。強くなりたかった……だけなんだ」 

GM「……そうかい」 

GM「アカウント売るのか? 100万にはなるだろ? なんなら俺が上手く手配してやってもいい」 

俺「ハイエナが」ボソッ 

GM「…………」 

俺「誰が何と言おうが、さっと消してやる。伝説の武器も……ひとつだけの鎧も……世界神の加護も……この討伐王の紋章も……ぜんぶ、消してやるんだ……!」 

GM「まあ、そう言う奴は多いわな。ケジメだとか言って」 
GM「でも、お前は戻ってくる。必ず、ここじゃなくても、他のオンゲーの世界にな」 

俺「そんなことねぇよ! お前も! 俺の、俺の金がそんなに欲しいか!」 

GM「……民度のいいオンゲーを教えてやる。月額制で、重課金の利点も他と比べて圧倒的に少ない。まだできて間もないから、後々古参ぶれるぞ」 

俺「…………じ、GMさん」 

GM「じゃあな。お前のこと、結構好きだったぜ。ここにはもう、戻ってくるなよ」 


◆◆


男「ウチのギルドにようこそ! 俺さん、オンゲーは初めて?」 

俺「ちょ、ちょっとだけやってたよ。なんていうか……嫌いな奴ができて、すぐやめちゃったけどね」 

男「あーなるほどね」 

女「ウチも今日入ったところなんっす! よろしく!」 

俺「げっ!?」 

女「ど、どしたんっすか?」 

俺「い、いや……なんでもない」 
俺(偶然か? いや、でも……名前もキャラメイクも似てるぞ) 
俺「お、女さんは前にこういったオンゲーは?」 

女「あははは……なんか、空気悪かったもんで。そこそこ強かったんっすけどね」 
女「親友がやめちゃったみたいで、それ切っ掛けに……」 

俺「…………」 
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