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#01
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暗闇の灯 ~Another Story~
最初はただ、暗い子がいるなーってだけの印象だった。いつも下を向いて歩いてる、他のクラスの女子。特に関わることもなければ、興味を持つ対象にもなってなかった。
それが、夏休みに入る前あたりで変わった。
「咲夜、何見てんのー?」
廊下をじっと見る、竜木 咲夜(たつき・さくや)に彼、君谷 亮(きみたに・りょう)は近付き、前の席に断りなく座る。亮とは長年一緒に過ごす幼馴染だ。
咲夜は「ん。」と廊下を指さし、亮の目線を廊下の外へ向けさせる。
「誰?あの子。」
「知らね。」
そこには、前を向き何かのために一生懸命走っている、女がいた。毎日、昼休みに入ると1番に廊下を走っている。購買の袋を持ち、走る彼女をいつの間にか目で追うようになっていた。彼女はいつから、下を向かなくなったのだろう。
まあ、理由はなんにせよ前を向けるのはいいことかな。そんなことを呑気に思っていた。
「そう言えば、このゲームさあ...」
目の前で亮が携帯を見せながら話している。高校に入ってから、いつも亮とつるんでいた。他にも数人、たまに遊ぶやつがいるくらい。女子たちは体育の授業でキャーキャーと黄色いの声を出している。
正直、集団生活はあんまり得意ではない。ただ、嫌なやつに見られたくないというエゴのためだけに、笑顔を振りまいていた。
中学の時に周りの奴らがコソコソと話していたのは、陰口を言われているとおもっていたが、それが誤解だとわかったのは高校に入ってから。いろいろと気付くのが遅すぎた。
「咲夜、聞いてる?」
「ああ、ごめん。何だっけ。」
未だに、目標も目的もなく、なんとなく日々が流れている。なんか楽しいことないかな、と考えていると1日が終わる。そんな日々。
2年にあがり、クラス替えの時、亮と同じクラスで安心した。
教室に行くと、去年、無意識に目で追っていた廊下の彼女がいた。つい、名簿と照らし合わせて名前を確認する。彼女の名前は、神無月 瀬津(かんなづき・せつ)と言うらしい。
「おい、咲夜。気をつけろよ。」
亮が、息を潜めて声をかけてきた。
なんだろう、と亮の声に耳を傾け、その言葉を疑った。クラスにいる教頭の娘、篠原 理央(しのはら・りお)には逆らうなと言う。逆らえば自分の大学受験は厳しいものになると校内中の知る噂らしい。
高校受験で、受験の厳しさを知っている人間なら、誰しも大人しくしておこうと考えるだろう。だから...神無月に対する、篠原の虐めは全員、黙認。
最初、意味がわからなかった。神無月が虐めにあっている事も知らなかったし、それを黙認している意味がわからなかった。あの、廊下を一生懸命走っていたのは、虐められ、篠原に従うためだったっていうのか...?
同じクラスでないと、こうも情報が入ってこないのかと、少しだけ悔しくなる。と、同時に自分の今までの人への無関心さがよくわかった。
よく見れば、神無月の制服は裾や袖などツギハギされている。所々、刺繍が刺してあるところがあったり、ボタンが違ったり。お洒落でやってんのか、なんて思ってたけど...どうなんだろ。気になるなー...。
また、今日も無意識に神無月を目で追う。
不意に神無月の机に、誰かがメモ入れたのを、視界の端に捉える。...篠原の取り巻きか?なんだろう...内容がやけに気になった。自分の席に戻ってきた神無月は、机の中のメモに気づき、読んだ後、ポケットに仕舞った。小さく、ため息をついたように見える。
「なに?咲夜、神無月のこと気になんの?進学考えてんなら辞めとけよ。」
「えー、竜木くんってああいう子がタイプ?」
ポンッと肩に手を置かれ、クラスの男子に声をかけられる。今年、初めて同じクラスになった男子だ。...名前、なんだっけ。その男子の言葉に、近くにいた女子はわざとらしく声を上げ、驚いて見せた。
「何の話?」
社交辞令のような笑顔を作り、軽く、返す。「もぉ~」という、女子の高い声。...こいつの名前もわかんないんだよなー...。この、やけに絡んでくる感じも、なんのアピールなのか、さっぱりわからない。
昼休みになり、神無月は1番に廊下に出た。購買に向かったのだろうと、その時は思った。先程のメモのこともあり、無性に気になり、瀬津の跡をつけるように、咲夜も購入に向かう。
購買には...居ないか。去年、廊下を走っていた神無月はいつも購買のパンを買っていた。だから、今日もそれを買いに走ったのだと、思った。宛が外れたか。
とりあえず、と自分の昼食用にメロンパンを1つ買う。近くの長椅子で食べることにした。
あのメモ、なんだったんだろうなー...。もしかしたら、そのメモのやり取りは、自分が見落としていただけで、今日が初めてではないかもしれない。でも、見てしまった以上、なんなのか、気になってしまう。
メロンパンを半分ほど、食べたあと、神無月が息を切らせて購買に走ってきた。財布の中身をしきりに確認しながら、生徒たちの列に並んでいる。
やっぱり買いに来てるんじゃん。...でも、1番に教室を出たはずの神無月がなんでこの時間になったのだろう。気になりはしたが、メロンパンも食べ終わってしまい、これ以上の追跡をせずに、教室に戻る。
教室に戻ると、自分の席の前の席に座る亮がいた。「何してたんだよ。」と口をもごもごとさせながら言う。
「悪い、今日もう食べてきたわ。」
いつも一緒に昼食を食べていた亮は、その咲夜の言葉に、動きを止めた。
「何かあった?」
突然のいつもとは違う行動。そう言われても無理はない。自分でも、何がしたかったのかよくわかっていないのだ。
「別に。大丈夫、いつも通りだよ。」
自分の中で、整理が出来たら亮には話そう。今、何か言ったところで、正直何が言いたいのか、よくわかっていないから。
午後の授業は滞りなく終わり、生徒たちは部活に行くものと帰宅を急ぐものにわかれる。咲夜は自転車に跨り、本屋に急いでいた。姉に頼まれたおつかい。雑誌の新刊買ってこい、らしい。自分で行けばいいのに...と、呟いたら怒られてしまった。
女子の読む雑誌はよく分からない。姉の買っている雑誌は予め聞いているから、わかるが...正直どの雑誌も同じに見えてしまう。
3つ上の姉は大学生だ。トレンドを抑えないと、と毎日忙しそうにオシャレを頑張っている。好きなものを着ればいいのに...。
「ただいまー...」
「おかえり!買ってきてくれた!?」
咲夜が玄関を開けて、中に入ると同時に、部屋の奥から姉、竜木 由比(たつき・ゆい)が飛び出してくる。先に帰ってるなら、ほんと自分で買いに行けばいいのに。
無言で本屋の袋を差し出す咲夜。「ありがとー!!」と由比の言葉を後ろに聞きながら、自室に入る。
最初はただ、暗い子がいるなーってだけの印象だった。いつも下を向いて歩いてる、他のクラスの女子。特に関わることもなければ、興味を持つ対象にもなってなかった。
それが、夏休みに入る前あたりで変わった。
「咲夜、何見てんのー?」
廊下をじっと見る、竜木 咲夜(たつき・さくや)に彼、君谷 亮(きみたに・りょう)は近付き、前の席に断りなく座る。亮とは長年一緒に過ごす幼馴染だ。
咲夜は「ん。」と廊下を指さし、亮の目線を廊下の外へ向けさせる。
「誰?あの子。」
「知らね。」
そこには、前を向き何かのために一生懸命走っている、女がいた。毎日、昼休みに入ると1番に廊下を走っている。購買の袋を持ち、走る彼女をいつの間にか目で追うようになっていた。彼女はいつから、下を向かなくなったのだろう。
まあ、理由はなんにせよ前を向けるのはいいことかな。そんなことを呑気に思っていた。
「そう言えば、このゲームさあ...」
目の前で亮が携帯を見せながら話している。高校に入ってから、いつも亮とつるんでいた。他にも数人、たまに遊ぶやつがいるくらい。女子たちは体育の授業でキャーキャーと黄色いの声を出している。
正直、集団生活はあんまり得意ではない。ただ、嫌なやつに見られたくないというエゴのためだけに、笑顔を振りまいていた。
中学の時に周りの奴らがコソコソと話していたのは、陰口を言われているとおもっていたが、それが誤解だとわかったのは高校に入ってから。いろいろと気付くのが遅すぎた。
「咲夜、聞いてる?」
「ああ、ごめん。何だっけ。」
未だに、目標も目的もなく、なんとなく日々が流れている。なんか楽しいことないかな、と考えていると1日が終わる。そんな日々。
2年にあがり、クラス替えの時、亮と同じクラスで安心した。
教室に行くと、去年、無意識に目で追っていた廊下の彼女がいた。つい、名簿と照らし合わせて名前を確認する。彼女の名前は、神無月 瀬津(かんなづき・せつ)と言うらしい。
「おい、咲夜。気をつけろよ。」
亮が、息を潜めて声をかけてきた。
なんだろう、と亮の声に耳を傾け、その言葉を疑った。クラスにいる教頭の娘、篠原 理央(しのはら・りお)には逆らうなと言う。逆らえば自分の大学受験は厳しいものになると校内中の知る噂らしい。
高校受験で、受験の厳しさを知っている人間なら、誰しも大人しくしておこうと考えるだろう。だから...神無月に対する、篠原の虐めは全員、黙認。
最初、意味がわからなかった。神無月が虐めにあっている事も知らなかったし、それを黙認している意味がわからなかった。あの、廊下を一生懸命走っていたのは、虐められ、篠原に従うためだったっていうのか...?
同じクラスでないと、こうも情報が入ってこないのかと、少しだけ悔しくなる。と、同時に自分の今までの人への無関心さがよくわかった。
よく見れば、神無月の制服は裾や袖などツギハギされている。所々、刺繍が刺してあるところがあったり、ボタンが違ったり。お洒落でやってんのか、なんて思ってたけど...どうなんだろ。気になるなー...。
また、今日も無意識に神無月を目で追う。
不意に神無月の机に、誰かがメモ入れたのを、視界の端に捉える。...篠原の取り巻きか?なんだろう...内容がやけに気になった。自分の席に戻ってきた神無月は、机の中のメモに気づき、読んだ後、ポケットに仕舞った。小さく、ため息をついたように見える。
「なに?咲夜、神無月のこと気になんの?進学考えてんなら辞めとけよ。」
「えー、竜木くんってああいう子がタイプ?」
ポンッと肩に手を置かれ、クラスの男子に声をかけられる。今年、初めて同じクラスになった男子だ。...名前、なんだっけ。その男子の言葉に、近くにいた女子はわざとらしく声を上げ、驚いて見せた。
「何の話?」
社交辞令のような笑顔を作り、軽く、返す。「もぉ~」という、女子の高い声。...こいつの名前もわかんないんだよなー...。この、やけに絡んでくる感じも、なんのアピールなのか、さっぱりわからない。
昼休みになり、神無月は1番に廊下に出た。購買に向かったのだろうと、その時は思った。先程のメモのこともあり、無性に気になり、瀬津の跡をつけるように、咲夜も購入に向かう。
購買には...居ないか。去年、廊下を走っていた神無月はいつも購買のパンを買っていた。だから、今日もそれを買いに走ったのだと、思った。宛が外れたか。
とりあえず、と自分の昼食用にメロンパンを1つ買う。近くの長椅子で食べることにした。
あのメモ、なんだったんだろうなー...。もしかしたら、そのメモのやり取りは、自分が見落としていただけで、今日が初めてではないかもしれない。でも、見てしまった以上、なんなのか、気になってしまう。
メロンパンを半分ほど、食べたあと、神無月が息を切らせて購買に走ってきた。財布の中身をしきりに確認しながら、生徒たちの列に並んでいる。
やっぱり買いに来てるんじゃん。...でも、1番に教室を出たはずの神無月がなんでこの時間になったのだろう。気になりはしたが、メロンパンも食べ終わってしまい、これ以上の追跡をせずに、教室に戻る。
教室に戻ると、自分の席の前の席に座る亮がいた。「何してたんだよ。」と口をもごもごとさせながら言う。
「悪い、今日もう食べてきたわ。」
いつも一緒に昼食を食べていた亮は、その咲夜の言葉に、動きを止めた。
「何かあった?」
突然のいつもとは違う行動。そう言われても無理はない。自分でも、何がしたかったのかよくわかっていないのだ。
「別に。大丈夫、いつも通りだよ。」
自分の中で、整理が出来たら亮には話そう。今、何か言ったところで、正直何が言いたいのか、よくわかっていないから。
午後の授業は滞りなく終わり、生徒たちは部活に行くものと帰宅を急ぐものにわかれる。咲夜は自転車に跨り、本屋に急いでいた。姉に頼まれたおつかい。雑誌の新刊買ってこい、らしい。自分で行けばいいのに...と、呟いたら怒られてしまった。
女子の読む雑誌はよく分からない。姉の買っている雑誌は予め聞いているから、わかるが...正直どの雑誌も同じに見えてしまう。
3つ上の姉は大学生だ。トレンドを抑えないと、と毎日忙しそうにオシャレを頑張っている。好きなものを着ればいいのに...。
「ただいまー...」
「おかえり!買ってきてくれた!?」
咲夜が玄関を開けて、中に入ると同時に、部屋の奥から姉、竜木 由比(たつき・ゆい)が飛び出してくる。先に帰ってるなら、ほんと自分で買いに行けばいいのに。
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