3 / 6
#03
しおりを挟む
『オラッ!!だらけんじゃねぇ!! 進みたければ今からこいつを倒していけよな!!!』
土方系の人が乗り込んできたかと思う勢いで妃水の駒が叫ぶ。ずいぶんスパルタなキャラを選んだなー...。
駒が叫び、考える時間も与えず、妃水の駒が立っているマスからモクモクとドライアイスのような煙が流れ出る。その煙の影から、地響きを思わす唸り声が聞こえてくる。
煙の奥から影が揺らぎ、その姿は童話などで悪役とされる狼そのものだった。ただ、1匹ではない。煙の中からは5匹の狼が妃水に向かって飛びかかってくる。
こんなの……ホントにゲーム?
「え、ぇ...オレ1人って無理じゃね?しかも俺の能力って......不利じゃんか。」
水を操ることの出来る妃水の選んだ水術師。確かに水を操るだけで複数の狼に勝てるとは到底思えない。
「水流弾ッッ!!」
襲ってくる狼をしっかりと指さし、妃水が唱える。ザバァァッと豪快な音を立てながら、机の上にあったコップの水が大きな波となって狼を覆う。
家中水浸しだ。襖も障子も台無し。顔を赤くして酔っていた親戚の叔父たちは妃水の波で酔いが覚めたのか、ポカンとしている。そんな中、平然と食事の片付けを続ける母や叔母、祖母。何故この状況で日常生活を送れるのか、毎年不思議でならない。
波をモロに受けたはずの狼たちは、ブルブルと体を揺らし、水を振り払う。その姿は雨に濡れた大型犬のようだ。
「やっぱ、効かねぇよな...。」
妃水が確信と共に呟く。
水を使って出来ること...。物理的に、流すだけではなく、ちゃんとダメージとして効果のあることがまるで思いつかない。
頭を悩ませ、固まってしまった妃水に、黒い影が勢いよく飛んだ。狼が妃水を襲う。生暖かいものが妃水の腕を伝う。服は切り裂かれ、妃水はその場に蹲った。
「マジック・ファイヤー!!」
突如として、詩織の声が響く。ガスバーナーが狂ったような音をさせながら、炎が渦を巻き、狼たちを巻き込んでいく。
炎が消える頃、何事も無かったかのように、狼たちは消えていた。気付けば叔父たちは隣の部屋へ避難し、二次会を始めていた。まだ飲むのか。
「ひぃ兄ちゃん。大丈夫?」
蹲る妃水に詩織が駆け寄る。美紅も後に続き、自分の服を破ると妃水の傷口を抑えた。すぐに赤く染ってしまったが、時期に止まるだろう。
それにしても、双六で他の人が手助けをしてもいいなんて知らなかった。きっと物心つく頃から興味津々でみんなのプレイを見てきた詩織だからこその行動だろう。もう誰も消したくない。
「ありがとな。詩織、美紅。」
ポンッと妃水が詩織の頭の上に手を置き、美紅に笑いかける。
「ひぃ兄ちゃんが無事でよかったよ!じゃあ、次はしぃちゃんの番ね!!」
恐怖心より好奇心が勝ってしまうのか、気にすることもなく詩織はサイコロを振り、駒を進める。
____数十分後。
『さぁ試練だ。次にどちらかのサイコロから"1"が出てくるまでお前は犬の言葉しかしゃべれないよ。』
「げ!マジかよ。」
翔歌の番だ。ゲーム中盤。戦うだけでなく、ミッションやただのゲーム感覚のお遊びもあることが分かった。
翔歌がいったのと同時に、翔歌の頭から煙が出る。犬のような耳を生やし、諦めたように胡座をかいて座る翔歌。その姿はどこか凛々しくもあった。
「翔?」
「ワンッ!」
美紅の問いかけに、姿勢を崩すことなく、翔歌が答える。その横顔を覗き込みながら、恐る恐る妃水も声をかける。
「わざとじゃねぇよな?」
「ワンッワンワンッッ!!」
妃水から目を逸らし、顔は真っ赤だ。言っていることは全然わからない。姿勢を崩さない翔歌とは相反して耳はピコピコと動く。
「まあ...とにかく。しょうがないからこのまま進めるか。」
気持ちを切り替えるように妃水が言うと、サイコロを無造作に投げた。コロコロ転がり、もう濡れて焦げてボロボロになってしまった襖の目の前で止まる。
数字を確認する前に、妃水の駒は勝手にトントンと動いていく。出だしが進まなかっただけで、どんどん追い越し、今では妃水がこの双六のトップだ。その逆に翔歌は変なマスに止まることが多く、現在最下位。
あれ?ここだけマスの色が違う...。
『さぁさぁレッドゾーン突入だ。気をつけろよぉ。気をつけろ!!こいつらは一筋縄じゃあ倒せねぇ!!』
土方系の人が乗り込んできたかと思う勢いで妃水の駒が叫ぶ。ずいぶんスパルタなキャラを選んだなー...。
駒が叫び、考える時間も与えず、妃水の駒が立っているマスからモクモクとドライアイスのような煙が流れ出る。その煙の影から、地響きを思わす唸り声が聞こえてくる。
煙の奥から影が揺らぎ、その姿は童話などで悪役とされる狼そのものだった。ただ、1匹ではない。煙の中からは5匹の狼が妃水に向かって飛びかかってくる。
こんなの……ホントにゲーム?
「え、ぇ...オレ1人って無理じゃね?しかも俺の能力って......不利じゃんか。」
水を操ることの出来る妃水の選んだ水術師。確かに水を操るだけで複数の狼に勝てるとは到底思えない。
「水流弾ッッ!!」
襲ってくる狼をしっかりと指さし、妃水が唱える。ザバァァッと豪快な音を立てながら、机の上にあったコップの水が大きな波となって狼を覆う。
家中水浸しだ。襖も障子も台無し。顔を赤くして酔っていた親戚の叔父たちは妃水の波で酔いが覚めたのか、ポカンとしている。そんな中、平然と食事の片付けを続ける母や叔母、祖母。何故この状況で日常生活を送れるのか、毎年不思議でならない。
波をモロに受けたはずの狼たちは、ブルブルと体を揺らし、水を振り払う。その姿は雨に濡れた大型犬のようだ。
「やっぱ、効かねぇよな...。」
妃水が確信と共に呟く。
水を使って出来ること...。物理的に、流すだけではなく、ちゃんとダメージとして効果のあることがまるで思いつかない。
頭を悩ませ、固まってしまった妃水に、黒い影が勢いよく飛んだ。狼が妃水を襲う。生暖かいものが妃水の腕を伝う。服は切り裂かれ、妃水はその場に蹲った。
「マジック・ファイヤー!!」
突如として、詩織の声が響く。ガスバーナーが狂ったような音をさせながら、炎が渦を巻き、狼たちを巻き込んでいく。
炎が消える頃、何事も無かったかのように、狼たちは消えていた。気付けば叔父たちは隣の部屋へ避難し、二次会を始めていた。まだ飲むのか。
「ひぃ兄ちゃん。大丈夫?」
蹲る妃水に詩織が駆け寄る。美紅も後に続き、自分の服を破ると妃水の傷口を抑えた。すぐに赤く染ってしまったが、時期に止まるだろう。
それにしても、双六で他の人が手助けをしてもいいなんて知らなかった。きっと物心つく頃から興味津々でみんなのプレイを見てきた詩織だからこその行動だろう。もう誰も消したくない。
「ありがとな。詩織、美紅。」
ポンッと妃水が詩織の頭の上に手を置き、美紅に笑いかける。
「ひぃ兄ちゃんが無事でよかったよ!じゃあ、次はしぃちゃんの番ね!!」
恐怖心より好奇心が勝ってしまうのか、気にすることもなく詩織はサイコロを振り、駒を進める。
____数十分後。
『さぁ試練だ。次にどちらかのサイコロから"1"が出てくるまでお前は犬の言葉しかしゃべれないよ。』
「げ!マジかよ。」
翔歌の番だ。ゲーム中盤。戦うだけでなく、ミッションやただのゲーム感覚のお遊びもあることが分かった。
翔歌がいったのと同時に、翔歌の頭から煙が出る。犬のような耳を生やし、諦めたように胡座をかいて座る翔歌。その姿はどこか凛々しくもあった。
「翔?」
「ワンッ!」
美紅の問いかけに、姿勢を崩すことなく、翔歌が答える。その横顔を覗き込みながら、恐る恐る妃水も声をかける。
「わざとじゃねぇよな?」
「ワンッワンワンッッ!!」
妃水から目を逸らし、顔は真っ赤だ。言っていることは全然わからない。姿勢を崩さない翔歌とは相反して耳はピコピコと動く。
「まあ...とにかく。しょうがないからこのまま進めるか。」
気持ちを切り替えるように妃水が言うと、サイコロを無造作に投げた。コロコロ転がり、もう濡れて焦げてボロボロになってしまった襖の目の前で止まる。
数字を確認する前に、妃水の駒は勝手にトントンと動いていく。出だしが進まなかっただけで、どんどん追い越し、今では妃水がこの双六のトップだ。その逆に翔歌は変なマスに止まることが多く、現在最下位。
あれ?ここだけマスの色が違う...。
『さぁさぁレッドゾーン突入だ。気をつけろよぉ。気をつけろ!!こいつらは一筋縄じゃあ倒せねぇ!!』
0
あなたにおすすめの小説
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる