暗闇の灯

兎都ひなた

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#02

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そしてすぐに、呼び出された多目的教室へと走り出す。早く戻らなきゃ。怒られる。咲夜にもらった5個のパン。いつもな嫌な重みに感じるのに、今日はなんだか気分と一緒に軽かった。自分はこんなに単純な人間だったかと、ふと疑う。
「お!帰ってきたぞ。」
取り巻きの中の一人の声で、教室にいた全員が、扉を開けたばかりの瀬津に目線をやる。
「ただいま、戻りました。」
「サンキュー。本当、あんたって便利だよね。」
便利...か。仲間としては決して見てくれない。私はただのこの人たちの道具に過ぎない。パンの入った袋を渡し、立ち去ろうとしたが、袋の中を見た彼女はそれを許してくれなかった。
「お前鞄の中見せろよ。金、残ってんだろ?」
いつもはお札で払うから、少しだけお釣りをもらう。それが目的だろう。だが、今日はお金は入ってない。全部竜木くんにあげたから。
瀬津に喋らせる余裕なんて与えず、取り巻きが鞄を奪う。奪われた鞄は乱雑に床に投げられ、寄って集って複数人で瀬津の鞄の中を探り始める。
「あっ……」
取り巻きがメロンパンを鞄から、出した。竜木くんからもらったメロンパン。
「おい、なんでお前が昼飯持ってんだよ。いつもねぇのに。金はないし。何とか言えよ。」
引きちぎれそうな勢いで、髪を前から上へと引っ張られる。容赦ない。痛みに顔をしかめる。ズルズルと引っ張られ、背中からはグリグリと足蹴にされた。
「おい、お前は私らの役に立ってくれりゃそれで良いんだよ。自分のこと気にするくらいなら私らのために働けよ。じゃないと更に痛い目見るからな!!」
ドンッ...と鈍い音を立て、床に叩きつけられる瀬津。声を上げることも許されない。もう、涙も出ない。瀬津はただ、光を失った目で床の隙間を眺めていた。その顔は虚無そのものだ。
後ろから、不意に腕を引っ張られる。またなにかされるのかと、諦めて目を閉じた。
しかし、瀬津が思っていたような衝撃はなく、代わりにポスッと、胸に引き寄せられ、優しく人の温もりが伝わってくる。腕を回され、体が包まれる。その温もりに、瀬津はゆっくりと目を開けた。
「な…んで?」
目の前にいた人物に驚きを隠せず、目を見開く。そこに居たのは、先程パンをくれて助けてくれた、咲夜だった。なんでそんなに私に構うのだろう。2年になってから同じクラスになっただけの関係なのに...。
「何でじゃねぇよ。お前、辛い時は声上げろよ。痛いなら、苦しいなら言えよ。俺が助けるから。」
咲夜は、瀬津を強く抱き寄せ、小刻みに震えていた。咲夜の方が辛そうな顔をしている。なんでそこまで...と疑問が頭から離れない。でも、咲夜を突っ撥ねる理由は何も無く、瀬津はそのまま抱き寄せられていた。
「…お前ら、寄って集って1人の女子足蹴にして何が楽しいんだよ。何が面白いのか、俺には理解出来ねぇ。こいつ、連れてくから。今度から近付くんじゃねーぞ。」
そのまま瀬津を抱き上げ、入口へと向かう咲夜。その顔は今までに見た事のない、爽やかな咲夜の印象からは想像もつかない程に険しく、恐ろしかった。
「てめぇあたしらの仲間連れて行くんじゃねぇぞ。」
「あたしら許可してねぇだろ。」
口々に、瀬津を虐めていた彼女たちが言う。許可だなんて...。まだ瀬津のことを所有物の様に扱っている。離れるのも一緒にいるのも、瀬津の自由だ。他人が許可しなきゃ動けないなんて、そんな窮屈な生活があるのか。
こんなにこんな奴等のために毎日学校で必死になって動いてるのに、やらせてる奴はクズばかりだ。学校外のことはわからないが、もしかしたら何かやらせているのかもしれない。なのにこいつらはなんとも思っちゃいない。それにすごく腹が立った。
こいつをボロボロにしてまでさせたいことがあるなら俺はそれを全力で止めてやる。
「そんなの関係ねぇし。俺が連れていくって言ったら連れていくんだよ。行かないと拒否出来るのはこいつだけだ。お前らがそれでも何か手を出してくるんなら、俺は容赦しねぇよ。」
「う”…。」
虐めの主犯者を含め、全員言葉を詰まらせ、何も言い返せない。手も足も出ない状況だ。流石にそこまでは言われたら何も出来ない。自分を傷つけてまでは仲間を守らない。そういう人たちだ。
それを軽蔑の眼差しで一瞥し、咲夜はそのまま瀬津を抱きかかえて扉を出る。そのまま咲夜は平然と廊下を歩き始める。顔を咲夜の胸元に埋める形で抱きかかえられ、周りの状況を見ることが出来ない瀬津にも伝わるくらい、各教室からキャーキャーと黄色い声が聞こえてきた。
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