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帰り道、瀬津が帰るであろう、表の道を避けて帰る。家へ入り、自分の部屋へ駆け込むと、同時に玄関の開く音がした。
「ただ今帰りました。」
微かに聞こえる、瀬津の声。
「お帰り、瀬津。」
咲夜は、自分の部屋から顔を覗かせて声をかける。本当は今さっき、帰ってきたばかりのくせに、何分も先に帰っていた風を装う。
裏道ダッシュで帰ってきてよかった...。と瀬津のにこやかな表情を見て、改めて思った。出迎えてくれる人の存在が、あるのとないのとではやっぱり心持ちが違うと思う。瀬津のように、何も無かった一人暮らしから急に家族が出来た人間だと、尚更だ。
「上がりなよ。姉貴が料理しないから、いつも俺が作るんだ。何がいい?」
階段を下りてきながら言う、咲夜を見て、ふと、なんで先に帰ったんだろう、と疑問を持った。靴箱の中で見た、小鳥も女子トイレから戻る頃には居なくなっていた。もしかして、咲夜が埋めてくれたの...?
気にはなったが、話を止めてしまうのも気が引けて、わざと気付いていない風を装ってしまった。
「何でもいいよ。家にあるもので作れるものなら、何でも。」
一人暮らししていた頃は、食べ物と言えるような食べ物を食べていなかったから。食べれるだけで嬉しい。しかも人の手作りだなんて、贅沢だ。
「じゃあ手頃だしオムライスね。」
瀬津の返答に、迷うことなく咲夜がメニューを決める。
オムライス...。お母さんがよく作ってくれた私の大好物だ。ふわふわの卵なんて...もうどれ程食べていないだろう。
部屋にあがり、鞄を咲夜の部屋に置き、手を洗って、リビングに入ると、咲夜は既に調理を終えていた。椅子に座る瀬津の目の前に、咲夜がオムライスの乗った皿を置く。「どうぞ。」と囁くように言って、瀬津の向かいの椅子に座った。
「いただきます。」
丁寧に手を合わせ、スプーンを持つ。久しぶりのこの感じ。嬉しくて、胸が高鳴る。たかだかオムライス、と思う人も少なくはないかもしれないが、瀬津は食べることの出来る喜びに満ちていた。
「どうぞ。好きなだけ食べていいよ。」
嬉しそうに目を輝かせる瀬津に、つられるように笑みを零す咲夜。今日は由比の帰りが遅い。バイトがある日だと、面倒くさそうに嘆いていた。
目の前の瀬津は、勢いよくパクパクと、ペースを落とすことなくオムライスを食べている。誰も取ったりなんかしないのに、必死に食べるその姿は、可愛さを思わせた。
口に合ってよかった、と胸を撫で下ろす。
そして突然、咲夜は堪え切れないように、肩を震わせて笑い出す。
「どうしたの?咲夜。」
「お前...ほんと可愛すぎっ!!!」
突然笑い出した咲夜に驚き、瀬津は動き続けていた手を、止めた。咲夜は今度は声を上げて笑う。
あぁ、もう。こいつ本当に同い年だとは思えねぇ。口の周りに米粒をつけて、ポカンとしている瀬津が愛おしかった。可愛くて仕方がない。
笑い続ける咲夜に、瀬津はおろおろとし始めた。どうしていいかわからず、とりあえずスプーンを机の上に置く。
「そんな事ないと思うよ?」
精一杯考えて出た言葉。首を傾げる。
「じゃあこれなぁんだ。」
ニヤニヤする咲夜は、瀬津の口元に手を伸ばし米粒をつまみ取る。そのお米を見て、瀬津は恥ずかしそうに目を伏せた。
「...ご飯。だって美味しいんだもん。夢中になっちゃうもん。」
自分で気付かないほど、夢中になっていた恥ずかしさと、からかわれた事への悔しさで思わずふくれっ面になる瀬津。
その表情がまた幼くて可愛い。と、咲夜は感じた。
「サンキュ。もっと食いたくなったら遠慮なく言って。食っていいからな。」
そう言い、向かいの席から手を伸ばし、瀬津の髪をまたくしゃくしゃにする。瀬津は抵抗をしない。
瀬津は、最初に比べて明るくなったと思う。少なくとも、その辺によくいる極普通の子、と思えるまでには顔を上げて話すことが出来るようになっただろう。ただ...まだ虐めが終わっていないのも事実だけれど。
次の日の朝、瀬津の自転車がないので、自転車登校を一旦辞めて、一緒に歩いて学校へ向かう。結局、昨晩、由比は日付を変わるまで帰って来なかった。帰ってくるなり、食事もとらず、お風呂に入ってすぐに部屋にこもってしまった。
隣を歩く咲夜は、特に何も話さない。ただ、一定の距離感を保ったまま、瀬津の隣を歩いている。周りからの視線も気になるが、やましい事をしているわけではないから、堂々としていろと、家を出て直ぐに咲夜に怒られたばかりだ。
「咲夜――、瀬津――――ッ!」
学校まで後10mというところで、後ろから大声で呼びながら亮が走ってくる。「おはよッ!!」と、元気に言うと、瀬津と咲夜の間に入り、2人の背中に手を置いた。
「おはよう。」
瀬津が、返事をすると、亮は妙に嬉しそうな顔をした。頬が緩んでいる。
たったこれだけのことでも、幸せを感じている。頬が緩みきらないように、緩んだ頬を隠すように、亮はそっぽを向いた。キョトンとした表情の瀬津の視線を後ろから感じる。
「なぁ、亮。...-・・―+:*?」
トントンッと、亮の背中を叩き、目配せをすると、亮の耳元で咲夜が囁く。
"告白したら?"
「はぁ!!?お前...何言って......。」
亮はいきなり叫んだかと思うと、瀬津を一目見て、口を両手で覆い、思わず足を止めた。隠しきれない動揺。抑えきれなかった焦りに、なにがあったのかわからず、瀬津は不思議そうに見つめている。
そんな瀬津とは打って変わって、周りに居合わせた女子たちはキャーキャーと黄色い声を飛ばしている。
「ただ今帰りました。」
微かに聞こえる、瀬津の声。
「お帰り、瀬津。」
咲夜は、自分の部屋から顔を覗かせて声をかける。本当は今さっき、帰ってきたばかりのくせに、何分も先に帰っていた風を装う。
裏道ダッシュで帰ってきてよかった...。と瀬津のにこやかな表情を見て、改めて思った。出迎えてくれる人の存在が、あるのとないのとではやっぱり心持ちが違うと思う。瀬津のように、何も無かった一人暮らしから急に家族が出来た人間だと、尚更だ。
「上がりなよ。姉貴が料理しないから、いつも俺が作るんだ。何がいい?」
階段を下りてきながら言う、咲夜を見て、ふと、なんで先に帰ったんだろう、と疑問を持った。靴箱の中で見た、小鳥も女子トイレから戻る頃には居なくなっていた。もしかして、咲夜が埋めてくれたの...?
気にはなったが、話を止めてしまうのも気が引けて、わざと気付いていない風を装ってしまった。
「何でもいいよ。家にあるもので作れるものなら、何でも。」
一人暮らししていた頃は、食べ物と言えるような食べ物を食べていなかったから。食べれるだけで嬉しい。しかも人の手作りだなんて、贅沢だ。
「じゃあ手頃だしオムライスね。」
瀬津の返答に、迷うことなく咲夜がメニューを決める。
オムライス...。お母さんがよく作ってくれた私の大好物だ。ふわふわの卵なんて...もうどれ程食べていないだろう。
部屋にあがり、鞄を咲夜の部屋に置き、手を洗って、リビングに入ると、咲夜は既に調理を終えていた。椅子に座る瀬津の目の前に、咲夜がオムライスの乗った皿を置く。「どうぞ。」と囁くように言って、瀬津の向かいの椅子に座った。
「いただきます。」
丁寧に手を合わせ、スプーンを持つ。久しぶりのこの感じ。嬉しくて、胸が高鳴る。たかだかオムライス、と思う人も少なくはないかもしれないが、瀬津は食べることの出来る喜びに満ちていた。
「どうぞ。好きなだけ食べていいよ。」
嬉しそうに目を輝かせる瀬津に、つられるように笑みを零す咲夜。今日は由比の帰りが遅い。バイトがある日だと、面倒くさそうに嘆いていた。
目の前の瀬津は、勢いよくパクパクと、ペースを落とすことなくオムライスを食べている。誰も取ったりなんかしないのに、必死に食べるその姿は、可愛さを思わせた。
口に合ってよかった、と胸を撫で下ろす。
そして突然、咲夜は堪え切れないように、肩を震わせて笑い出す。
「どうしたの?咲夜。」
「お前...ほんと可愛すぎっ!!!」
突然笑い出した咲夜に驚き、瀬津は動き続けていた手を、止めた。咲夜は今度は声を上げて笑う。
あぁ、もう。こいつ本当に同い年だとは思えねぇ。口の周りに米粒をつけて、ポカンとしている瀬津が愛おしかった。可愛くて仕方がない。
笑い続ける咲夜に、瀬津はおろおろとし始めた。どうしていいかわからず、とりあえずスプーンを机の上に置く。
「そんな事ないと思うよ?」
精一杯考えて出た言葉。首を傾げる。
「じゃあこれなぁんだ。」
ニヤニヤする咲夜は、瀬津の口元に手を伸ばし米粒をつまみ取る。そのお米を見て、瀬津は恥ずかしそうに目を伏せた。
「...ご飯。だって美味しいんだもん。夢中になっちゃうもん。」
自分で気付かないほど、夢中になっていた恥ずかしさと、からかわれた事への悔しさで思わずふくれっ面になる瀬津。
その表情がまた幼くて可愛い。と、咲夜は感じた。
「サンキュ。もっと食いたくなったら遠慮なく言って。食っていいからな。」
そう言い、向かいの席から手を伸ばし、瀬津の髪をまたくしゃくしゃにする。瀬津は抵抗をしない。
瀬津は、最初に比べて明るくなったと思う。少なくとも、その辺によくいる極普通の子、と思えるまでには顔を上げて話すことが出来るようになっただろう。ただ...まだ虐めが終わっていないのも事実だけれど。
次の日の朝、瀬津の自転車がないので、自転車登校を一旦辞めて、一緒に歩いて学校へ向かう。結局、昨晩、由比は日付を変わるまで帰って来なかった。帰ってくるなり、食事もとらず、お風呂に入ってすぐに部屋にこもってしまった。
隣を歩く咲夜は、特に何も話さない。ただ、一定の距離感を保ったまま、瀬津の隣を歩いている。周りからの視線も気になるが、やましい事をしているわけではないから、堂々としていろと、家を出て直ぐに咲夜に怒られたばかりだ。
「咲夜――、瀬津――――ッ!」
学校まで後10mというところで、後ろから大声で呼びながら亮が走ってくる。「おはよッ!!」と、元気に言うと、瀬津と咲夜の間に入り、2人の背中に手を置いた。
「おはよう。」
瀬津が、返事をすると、亮は妙に嬉しそうな顔をした。頬が緩んでいる。
たったこれだけのことでも、幸せを感じている。頬が緩みきらないように、緩んだ頬を隠すように、亮はそっぽを向いた。キョトンとした表情の瀬津の視線を後ろから感じる。
「なぁ、亮。...-・・―+:*?」
トントンッと、亮の背中を叩き、目配せをすると、亮の耳元で咲夜が囁く。
"告白したら?"
「はぁ!!?お前...何言って......。」
亮はいきなり叫んだかと思うと、瀬津を一目見て、口を両手で覆い、思わず足を止めた。隠しきれない動揺。抑えきれなかった焦りに、なにがあったのかわからず、瀬津は不思議そうに見つめている。
そんな瀬津とは打って変わって、周りに居合わせた女子たちはキャーキャーと黄色い声を飛ばしている。
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