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「……ゴホッ、ゲホゲホッ! な、なんだ、この教会の空気は……。神聖なはずの礼拝堂が、催涙ガスで満たされているぞ……」
真っ赤な絨毯が敷かれた大聖堂。
参列した貴族たちは皆、目元をハンカチで押さえ、必死にクシャミを堪えながら新郎新婦の入場を待っていました。
そこへ、パイプオルガンが「威風堂々」ならぬ「爆風堂々」とした激しい旋律を奏で始めます。
「新婦、テリーヌ・フォン・グラタン公爵令嬢の入場ですわ!」
扉が勢いよく開き、現れたのは……もはや赤い彗星のごとき輝きを放つ私でした。
特注の「激辛オイル染め」ドレスは、照明を浴びて不気味なほど艶やかに光っています。
歩くたびに裾に縫い付けられた乾燥唐辛子がカチャカチャと乾いた音を立て、周囲に高濃度のカプサイシンを振りまいていくのです。
「おほほほ! 皆様、本日はお集まりいただき感謝いたしますわ! 私の幸せ、その肌と粘膜で存分に味わってくださいまし!」
私が通路を練り歩くたびに、参列者たちが左右にバタバタと倒れ伏していきます。
それはまるで、モーゼが海を割るような光景……いえ、除草剤を撒かれた雑草のような光景でした。
祭壇の前で待っていたアリスティア様は、特製の「防護魔法入りモノクル」を装着し、余裕の笑みを浮かべています。
「テリーヌ、今日も一段と刺激的だ。君のドレスのせいで、私の鼻腔が歓喜の悲鳴を上げているよ」
「嬉しいですわ、公爵様。さあ、誓いの言葉を始めましょう!」
神父様は、すでに意識が半分飛んでいるようで、ガスマスク(自作)を装着したまま震える声で尋ねました。
「……えー、アリスティア・フォン・スパイス。汝は、この……この『歩く劇物』……失礼、テリーヌを妻とし……健やかなる時も、喉が焼ける時も……愛することを誓いますか?」
「誓おう。彼女が作るすべての炎を、私は一生かけて飲み干すと約束する」
「……テリーヌ・フォン・グラタン。汝は、この……この『鉄の胃袋』……失礼、アリスティアを夫とし……その命の火を絶やさぬよう、常に火力を提供することを誓いますか?」
「誓いますわ! 彼の人生に、一瞬の『甘え』も許さない刺激的な日々を約束いたしますわよ!」
私たちが誓いの口づけを交わした瞬間。
教会のステンドグラスが、あまりの熱気でピシリとひび割れました。
続いて行われた披露宴会場では、さらなる地獄が待っていました。
「さあ、第一のコース! 『血の池地獄のカルパッチョ・超デスソース和え』ですわ! 皆様、一口食べたら絶対に水を飲んではいけませんわよ。余計に痛みが広がりますから!」
私が給仕を指揮すると、会場のあちこちから絶叫が上がりました。
「ぎゃあああ! 舌が、舌が溶けるぅぅ!」
「だ、誰か……冷たい牛乳を、樽ごと持ってきてくれ!」
そんな中、端の方の席で一際激しくのたうち回っている一団がいました。
ショコラ王国からの使節団……すなわち、ジュリアン殿下たちです。
「……ッ、……ッ!! テリーヌ……貴様、これはもう、披露宴ではなく虐殺だ……! このスープ……一口飲んだだけで、前世の記憶どころか、来世の記憶まで見えそうになったぞ……!」
殿下は、顔を真っ青(あるいは紫)にしながら、震える手でスプーンを握りしめていました。
「あら殿下。お口に合いませんでしたかしら? それは私が、貴方の冷え切った根性を叩き直すために特別に調合した『地獄の底から這い上がれスープ』ですわ」
「這い上がる前に、三途の川を渡りかけているわぁぁ!!」
殿下が叫ぶ隣で、シャルロット様が平然と、私のドレスの裾に付いていた唐辛子をもぎ取ってポリポリと齧っていました。
「師匠、このドレスの唐辛子、いい熟成具合ですわ! これならメインの肉料理の薬味に最高ですわね!」
「流石ですわ、シャルロット。貴女には、後で一番大きなケーキの塊を差し上げますわね」
披露宴は、涙と鼻水と絶叫に満ちた、隣国の歴史に残る「最も騒がしい宴」となりました。
しかし、アリスティア様と私の周りだけは、穏やかな……いえ、猛烈に熱い幸せのオーラに包まれていました。
「……テリーヌ。見てくれ、参列者たちが皆、辛さの向こう側の『解放感』に包まれて笑っている」
「ええ。泣きながら笑っていますわね。あれこそが、私の目指した『刺激による平和』ですわ!」
アリスティア様は、私の腰をぐいと抱き寄せ、耳元で低く囁きました。
「今夜は……まだ終わらないぞ。君の用意した『寝室用の超刺激スパイス・アロマ』、楽しみにしている」
「おほほほ! 朝まで寝かさないどころか、一瞬も瞬きさせないほどの刺激を提供して差し上げますわ!」
私たちは、燃え盛るような夕日を背景に、真っ赤なシャンパンで乾杯を交わしました。
悪役令嬢テリーヌの、最高に「痛快」で「激辛」な新生活が、今まさに本格的に幕を開けたのでした。
真っ赤な絨毯が敷かれた大聖堂。
参列した貴族たちは皆、目元をハンカチで押さえ、必死にクシャミを堪えながら新郎新婦の入場を待っていました。
そこへ、パイプオルガンが「威風堂々」ならぬ「爆風堂々」とした激しい旋律を奏で始めます。
「新婦、テリーヌ・フォン・グラタン公爵令嬢の入場ですわ!」
扉が勢いよく開き、現れたのは……もはや赤い彗星のごとき輝きを放つ私でした。
特注の「激辛オイル染め」ドレスは、照明を浴びて不気味なほど艶やかに光っています。
歩くたびに裾に縫い付けられた乾燥唐辛子がカチャカチャと乾いた音を立て、周囲に高濃度のカプサイシンを振りまいていくのです。
「おほほほ! 皆様、本日はお集まりいただき感謝いたしますわ! 私の幸せ、その肌と粘膜で存分に味わってくださいまし!」
私が通路を練り歩くたびに、参列者たちが左右にバタバタと倒れ伏していきます。
それはまるで、モーゼが海を割るような光景……いえ、除草剤を撒かれた雑草のような光景でした。
祭壇の前で待っていたアリスティア様は、特製の「防護魔法入りモノクル」を装着し、余裕の笑みを浮かべています。
「テリーヌ、今日も一段と刺激的だ。君のドレスのせいで、私の鼻腔が歓喜の悲鳴を上げているよ」
「嬉しいですわ、公爵様。さあ、誓いの言葉を始めましょう!」
神父様は、すでに意識が半分飛んでいるようで、ガスマスク(自作)を装着したまま震える声で尋ねました。
「……えー、アリスティア・フォン・スパイス。汝は、この……この『歩く劇物』……失礼、テリーヌを妻とし……健やかなる時も、喉が焼ける時も……愛することを誓いますか?」
「誓おう。彼女が作るすべての炎を、私は一生かけて飲み干すと約束する」
「……テリーヌ・フォン・グラタン。汝は、この……この『鉄の胃袋』……失礼、アリスティアを夫とし……その命の火を絶やさぬよう、常に火力を提供することを誓いますか?」
「誓いますわ! 彼の人生に、一瞬の『甘え』も許さない刺激的な日々を約束いたしますわよ!」
私たちが誓いの口づけを交わした瞬間。
教会のステンドグラスが、あまりの熱気でピシリとひび割れました。
続いて行われた披露宴会場では、さらなる地獄が待っていました。
「さあ、第一のコース! 『血の池地獄のカルパッチョ・超デスソース和え』ですわ! 皆様、一口食べたら絶対に水を飲んではいけませんわよ。余計に痛みが広がりますから!」
私が給仕を指揮すると、会場のあちこちから絶叫が上がりました。
「ぎゃあああ! 舌が、舌が溶けるぅぅ!」
「だ、誰か……冷たい牛乳を、樽ごと持ってきてくれ!」
そんな中、端の方の席で一際激しくのたうち回っている一団がいました。
ショコラ王国からの使節団……すなわち、ジュリアン殿下たちです。
「……ッ、……ッ!! テリーヌ……貴様、これはもう、披露宴ではなく虐殺だ……! このスープ……一口飲んだだけで、前世の記憶どころか、来世の記憶まで見えそうになったぞ……!」
殿下は、顔を真っ青(あるいは紫)にしながら、震える手でスプーンを握りしめていました。
「あら殿下。お口に合いませんでしたかしら? それは私が、貴方の冷え切った根性を叩き直すために特別に調合した『地獄の底から這い上がれスープ』ですわ」
「這い上がる前に、三途の川を渡りかけているわぁぁ!!」
殿下が叫ぶ隣で、シャルロット様が平然と、私のドレスの裾に付いていた唐辛子をもぎ取ってポリポリと齧っていました。
「師匠、このドレスの唐辛子、いい熟成具合ですわ! これならメインの肉料理の薬味に最高ですわね!」
「流石ですわ、シャルロット。貴女には、後で一番大きなケーキの塊を差し上げますわね」
披露宴は、涙と鼻水と絶叫に満ちた、隣国の歴史に残る「最も騒がしい宴」となりました。
しかし、アリスティア様と私の周りだけは、穏やかな……いえ、猛烈に熱い幸せのオーラに包まれていました。
「……テリーヌ。見てくれ、参列者たちが皆、辛さの向こう側の『解放感』に包まれて笑っている」
「ええ。泣きながら笑っていますわね。あれこそが、私の目指した『刺激による平和』ですわ!」
アリスティア様は、私の腰をぐいと抱き寄せ、耳元で低く囁きました。
「今夜は……まだ終わらないぞ。君の用意した『寝室用の超刺激スパイス・アロマ』、楽しみにしている」
「おほほほ! 朝まで寝かさないどころか、一瞬も瞬きさせないほどの刺激を提供して差し上げますわ!」
私たちは、燃え盛るような夕日を背景に、真っ赤なシャンパンで乾杯を交わしました。
悪役令嬢テリーヌの、最高に「痛快」で「激辛」な新生活が、今まさに本格的に幕を開けたのでした。
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