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「……イグニス様。私、決めましたわ。私たちのハネムーンの目的地は、ここですわよ!」
結婚式から数日。公爵家のサロンで、ネイビーは力強く世界地図の一点を指さしました。
そこは、北の果てにある「氷晶の離宮」からさらに数日、砕氷船で進んだ先にある、地図上では真っ白な未踏の海域でした。
「……ネイビー。そこは『果てなき流氷の海』だぞ。魚すら凍って泳ぐのをやめるような死の海域に、新婚旅行で行く奴がどこにいる」
イグニスは、差し出された地図を眺めながら頭を抱えました。
新婚生活が始まったばかりですが、妻となったネイビーの「熱」に対する情熱は、とどまるどころか成層圏を突破しそうな勢いでした。
「いいえ、よく見てくださいまし! この流氷の海のど真ん中、ここにぽつんと小さな島があるでしょう? ここは古の火山島……つまり、巨大な『天然の床暖房』の上に浮かぶ、神に選ばれし熱源地なのですわ!」
ネイビーは目を輝かせ、扇子をバサリと広げました。
「現在は周囲の冷気によって凍りついていますが、ここに私のパイプライン技術と、イグニス様の魔力を注ぎ込めばどうなると思います? ……そう! 年中無休、三百六十五日、水着で過ごせる『ネイビー・ワールド』の誕生ですわ!」
「……ネイビー。お前、ついに個人でリゾート地を経営するつもりか?」
「経営だけではありませんわ。これは寒さに震える全人類への救済ですの! 世界中の寒がりたちから資金を集め、ここに『究極の不夜城(サウナ)』を築く。これこそが、悪役令嬢と呼ばれた私の、最後にして最大の社会貢献ですわ!」
ネイビーの野望は、もはや一国の枠を超えていました。
彼女はすでにセバスに命じ、最新鋭の「全天候型・暖房完備・砕氷船」の建造を開始させていたのです。
「……はぁ。分かったよ。お前のその熱意に当てられたのは、俺だけじゃないしな。……実際、村人たちもお前のおかげで冬を越せると感謝している。その計画、俺も乗ってやるよ」
イグニスが観念したように笑うと、ネイビーは歓喜の声を上げて彼の胸に飛び込みました。
「ああ、イグニス様! 大好きですわ! あなたという最強の燃料があれば、北極点にひまわりを咲かせることだって夢ではありませんわ!」
「燃料って言うな。……まあ、いい。その島へ行く前に、王都の仕事も片付けておくぞ。国王陛下が、お前の開発した『温泉パッチ』を軍の正式装備に採用したいと仰っている」
「あら、陛下もすっかり私の虜ですわね。いいですわ、そのロイヤリティで、島の露天風呂に純金の手すりを付けましょう!」
ネイビーの「改心」という名の「環境改造」は、ついに世界を変えようとしていました。
彼女は、かつて自分を追放しようとした冷たい世界を、自らの手で、そして最愛の夫の熱で、ドロドロに溶かして書き換えていったのです。
「セバス! 出発の準備を! 防寒着は一切不要よ、代わりにありったけの『夏服』と『日焼け止め』、そして最高出力の魔石を積み込みなさい!」
「心得ております、奥様。すでに砕氷船の試運転は完了し、船内の室温は常に摂氏三十五度を保っております」
「完璧ですわ! さあ、イグニス様。私たちの情熱で、あの冷たい海を沸騰させてやりましょう!」
ネイビーの手を取り、イグニスは力強く頷きました。
二人の旅路は、これからも熱く、そしてどこまでも温度を上げ続けていくのです。
結婚式から数日。公爵家のサロンで、ネイビーは力強く世界地図の一点を指さしました。
そこは、北の果てにある「氷晶の離宮」からさらに数日、砕氷船で進んだ先にある、地図上では真っ白な未踏の海域でした。
「……ネイビー。そこは『果てなき流氷の海』だぞ。魚すら凍って泳ぐのをやめるような死の海域に、新婚旅行で行く奴がどこにいる」
イグニスは、差し出された地図を眺めながら頭を抱えました。
新婚生活が始まったばかりですが、妻となったネイビーの「熱」に対する情熱は、とどまるどころか成層圏を突破しそうな勢いでした。
「いいえ、よく見てくださいまし! この流氷の海のど真ん中、ここにぽつんと小さな島があるでしょう? ここは古の火山島……つまり、巨大な『天然の床暖房』の上に浮かぶ、神に選ばれし熱源地なのですわ!」
ネイビーは目を輝かせ、扇子をバサリと広げました。
「現在は周囲の冷気によって凍りついていますが、ここに私のパイプライン技術と、イグニス様の魔力を注ぎ込めばどうなると思います? ……そう! 年中無休、三百六十五日、水着で過ごせる『ネイビー・ワールド』の誕生ですわ!」
「……ネイビー。お前、ついに個人でリゾート地を経営するつもりか?」
「経営だけではありませんわ。これは寒さに震える全人類への救済ですの! 世界中の寒がりたちから資金を集め、ここに『究極の不夜城(サウナ)』を築く。これこそが、悪役令嬢と呼ばれた私の、最後にして最大の社会貢献ですわ!」
ネイビーの野望は、もはや一国の枠を超えていました。
彼女はすでにセバスに命じ、最新鋭の「全天候型・暖房完備・砕氷船」の建造を開始させていたのです。
「……はぁ。分かったよ。お前のその熱意に当てられたのは、俺だけじゃないしな。……実際、村人たちもお前のおかげで冬を越せると感謝している。その計画、俺も乗ってやるよ」
イグニスが観念したように笑うと、ネイビーは歓喜の声を上げて彼の胸に飛び込みました。
「ああ、イグニス様! 大好きですわ! あなたという最強の燃料があれば、北極点にひまわりを咲かせることだって夢ではありませんわ!」
「燃料って言うな。……まあ、いい。その島へ行く前に、王都の仕事も片付けておくぞ。国王陛下が、お前の開発した『温泉パッチ』を軍の正式装備に採用したいと仰っている」
「あら、陛下もすっかり私の虜ですわね。いいですわ、そのロイヤリティで、島の露天風呂に純金の手すりを付けましょう!」
ネイビーの「改心」という名の「環境改造」は、ついに世界を変えようとしていました。
彼女は、かつて自分を追放しようとした冷たい世界を、自らの手で、そして最愛の夫の熱で、ドロドロに溶かして書き換えていったのです。
「セバス! 出発の準備を! 防寒着は一切不要よ、代わりにありったけの『夏服』と『日焼け止め』、そして最高出力の魔石を積み込みなさい!」
「心得ております、奥様。すでに砕氷船の試運転は完了し、船内の室温は常に摂氏三十五度を保っております」
「完璧ですわ! さあ、イグニス様。私たちの情熱で、あの冷たい海を沸騰させてやりましょう!」
ネイビーの手を取り、イグニスは力強く頷きました。
二人の旅路は、これからも熱く、そしてどこまでも温度を上げ続けていくのです。
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