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「お、お、お、お嬢様ぁぁぁ!! 今度こそ、今度こそ終わりましたわ! アステリア公爵家の命脈、ここに尽きたりですわ!」
朝から「自家製・背脂チャッチャ系味噌スープ」の試作に励んでいた私の元へ、アンナが玄関から転がり込んできた。
その手には、金糸で縁取られ、王家の紋章が刻印された、あまりにも仰々しい封書が握られている。
「あら、アンナ。そんなに騒いで。またセドリック殿下が『マヨネーズを分けてくれ』と泣きついてきたのかしら?」
「そんな可愛らしいものではありませんわ! これを見てください! 国王陛下直々の……直々の、公式晩餐会への召喚状ですわよ!」
私はスープの味見をしていたおたまを置き、その手紙をひったくるように受け取った。
そこには、流麗な文字でこう記されていた。
『下町にて「背徳の味」を広めしアステリア公爵令嬢エリチカよ。貴殿の料理は、我が国の騎士団、さらには文官たちの士気を著しく(胃袋的に)揺るがしていると聞く。よって、次なる建国記念晩餐会の「特別調理顧問」として、貴殿を王宮に招待する』
「……特別調理顧問?」
「お嬢様、これはいわゆる『公開処刑』の別名ではありませんこと!? 王妃殿下のパセリ主義を真っ向から否定する料理を、全貴族の前で作れだなんて……!」
アンナが白目を剥いて倒れ込んだ。
私は、封書をじっと見つめ、そしてニヤリと口角を上げた。
「ふふ……ふふふ。面白いじゃない。王宮の予算で、最高級のバターと、選び抜かれたラードを使い放題ということかしら?」
「お嬢様! 食欲が恐怖を完全に圧倒していますわ!」
私が建国記念のメニューを妄想し始めたその時、窓からひょいとサイラス様が顔を出した。
「……エリチカ。噂は聞いたぞ。国王陛下が、ついに動き出したようだな」
「サイラス様。陛下は、私の料理に激怒していらっしゃるのかしら?」
サイラス様は、少しだけ顔を背け、小声で言った。
「……逆だ。陛下は、最近の王妃殿下の『朝露とパセリ生活』に、最も限界を感じておられる。昨晩、陛下の寝室を警護していた際、陛下が寝言で『……揚げたての、茶色いものが、食べたい……』と呟かれたのを、俺は聞き逃さなかった」
「まあ、陛下まで……!」
王宮のトップが、私の「脂」に助けを求めている。これはもはや、食の革命と言っても過言ではない。
「サイラス様。陛下は、どのような料理をご希望かしら?」
「……陛下はこうもおっしゃっていた。『上品なだけの料理は飽きた。もっとこう、罪悪感で手が震えるような、不道徳な塊を寄越せ』とな」
「わかりましたわ! 陛下にアステリア流……いえ、エリチカ流の『全力の接待』をお見せしましょう!」
私はすぐにペンを執り、必要な食材リストを書き殴り始めた。
最高級エシレバター十箱、豚の背脂百キロ、大量のニンニク、そして……王宮の秘密倉庫に眠っているという伝説の「超濃厚熟成チーズ」。
「アンナ、起きなさい! 私たちはこれから王宮に乗り込むわよ! 今回のドレスは、ウエストをプラス二十センチまで許容できる『要塞仕様』を特注しなさい!」
「要塞仕様のドレスなんて、この世に存在しませんわよ!」
「なければ作りなさい! これから私たちは、王宮の全てのパセリを、揚げ物の飾りに変えてしまうのですから!」
私は、サイラス様に不敵な笑みを向けた。
「サイラス様も、当日を楽しみにしていらして。騎士団全員が、鎧のベルトを緩めざるを得ないような、恐ろしいメニューを披露して差し上げますわ」
「……楽しみにしている。だが、王妃殿下の卒倒だけは、最小限に食い止めてくれ」
王宮からの招待状。
それは、悪役令嬢としての「ざまぁ」ではなく、食の覇者としての「凱旋」への切符だった。
私は、黄金色の油が輝く大鍋を思い描きながら、久しぶりに袖を通す正装の準備を始めたのである。
朝から「自家製・背脂チャッチャ系味噌スープ」の試作に励んでいた私の元へ、アンナが玄関から転がり込んできた。
その手には、金糸で縁取られ、王家の紋章が刻印された、あまりにも仰々しい封書が握られている。
「あら、アンナ。そんなに騒いで。またセドリック殿下が『マヨネーズを分けてくれ』と泣きついてきたのかしら?」
「そんな可愛らしいものではありませんわ! これを見てください! 国王陛下直々の……直々の、公式晩餐会への召喚状ですわよ!」
私はスープの味見をしていたおたまを置き、その手紙をひったくるように受け取った。
そこには、流麗な文字でこう記されていた。
『下町にて「背徳の味」を広めしアステリア公爵令嬢エリチカよ。貴殿の料理は、我が国の騎士団、さらには文官たちの士気を著しく(胃袋的に)揺るがしていると聞く。よって、次なる建国記念晩餐会の「特別調理顧問」として、貴殿を王宮に招待する』
「……特別調理顧問?」
「お嬢様、これはいわゆる『公開処刑』の別名ではありませんこと!? 王妃殿下のパセリ主義を真っ向から否定する料理を、全貴族の前で作れだなんて……!」
アンナが白目を剥いて倒れ込んだ。
私は、封書をじっと見つめ、そしてニヤリと口角を上げた。
「ふふ……ふふふ。面白いじゃない。王宮の予算で、最高級のバターと、選び抜かれたラードを使い放題ということかしら?」
「お嬢様! 食欲が恐怖を完全に圧倒していますわ!」
私が建国記念のメニューを妄想し始めたその時、窓からひょいとサイラス様が顔を出した。
「……エリチカ。噂は聞いたぞ。国王陛下が、ついに動き出したようだな」
「サイラス様。陛下は、私の料理に激怒していらっしゃるのかしら?」
サイラス様は、少しだけ顔を背け、小声で言った。
「……逆だ。陛下は、最近の王妃殿下の『朝露とパセリ生活』に、最も限界を感じておられる。昨晩、陛下の寝室を警護していた際、陛下が寝言で『……揚げたての、茶色いものが、食べたい……』と呟かれたのを、俺は聞き逃さなかった」
「まあ、陛下まで……!」
王宮のトップが、私の「脂」に助けを求めている。これはもはや、食の革命と言っても過言ではない。
「サイラス様。陛下は、どのような料理をご希望かしら?」
「……陛下はこうもおっしゃっていた。『上品なだけの料理は飽きた。もっとこう、罪悪感で手が震えるような、不道徳な塊を寄越せ』とな」
「わかりましたわ! 陛下にアステリア流……いえ、エリチカ流の『全力の接待』をお見せしましょう!」
私はすぐにペンを執り、必要な食材リストを書き殴り始めた。
最高級エシレバター十箱、豚の背脂百キロ、大量のニンニク、そして……王宮の秘密倉庫に眠っているという伝説の「超濃厚熟成チーズ」。
「アンナ、起きなさい! 私たちはこれから王宮に乗り込むわよ! 今回のドレスは、ウエストをプラス二十センチまで許容できる『要塞仕様』を特注しなさい!」
「要塞仕様のドレスなんて、この世に存在しませんわよ!」
「なければ作りなさい! これから私たちは、王宮の全てのパセリを、揚げ物の飾りに変えてしまうのですから!」
私は、サイラス様に不敵な笑みを向けた。
「サイラス様も、当日を楽しみにしていらして。騎士団全員が、鎧のベルトを緩めざるを得ないような、恐ろしいメニューを披露して差し上げますわ」
「……楽しみにしている。だが、王妃殿下の卒倒だけは、最小限に食い止めてくれ」
王宮からの招待状。
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