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「……というわけでだ。アッシュフォード公爵」
断罪劇から一夜明けた、王城の奥まった一室。
国王の私的な執務室に、ギルバートとキャサリンは呼び出されていた。
目の前には、疲労困憊の国王と、昨日の騒動で胃薬が手放せなくなった宰相がいる。
国王は咳払いをして、一枚の辞令書をテーブルに置いた。
「此度の功績、ならびに貴殿の保有する強大な魔力と知識……。これを国のために使わない手はない」
国王の目が真剣に光る。
「ギルバート・アッシュフォード。貴殿を、次期『宰相』の候補として正式に任命したい」
「はい?」
ギルバートは、出された紅茶のカップを持ったまま固まった。
「宰相……って、あそこで胃薬飲んでるおじいさんの後任?」
「お、おじいさんとは失礼な! まだ五十代だ!」
宰相が反論するが、その顔色は土気色で説得力がない。
国王は身を乗り出した。
「うむ。今の宰相も過労で限界が近い。貴殿のような優秀な魔導師がその座につけば、帝国の脅威など恐れるに足らん。魔法による行政改革、通信網の整備……貴殿なら可能だろう?」
それは、国一番の栄誉ある地位だった。
普通の貴族なら、喉から手が出るほど欲しがる権力の頂点。
しかし。
「……嫌です」
ギルバートは、秒で即答した。
「なっ……嫌だと!?」
「だって、宰相って激務ですよね? 朝から晩まで書類と睨めっこして、貴族の揉め事を仲裁して、陛下に呼び出されて……。今の生活より忙しくなるなんて、絶対に無理」
ギルバートは隣のキャサリンに寄りかかった。
「僕は今、キャサリンに管理されて、一日の睡眠時間十時間、おやつタイム三回、お昼寝付きの生活をしてるんです。これを手放す気はありません」
「き、貴様……国より睡眠時間が大事か!」
「大事です(断言)」
国王が絶句する中、キャサリンがスッと手を挙げた。
「陛下。補足させていただきます」
彼女は懐から電卓を取り出し、高速でキーを叩き始めた。
カチャカチャカチャカチャッ!
「宰相の平均労働時間は一日十四時間。対して、現在の旦那様の労働時間(研究含む)は一日四時間。もし宰相になれば、私との接触時間が一日に十時間も減少することになります」
キャサリンの目が、怪しく光る。
「十時間です。それは、キス百回分、ハグ五十回分、そして膝枕三回分に相当します。この莫大な『愛の損失(ラブ・ロス)』を、国はどう補償してくださるのですか?」
「ほ、補償と言われても……」
「金銭では解決できません。旦那様のメンタルヘルスに関わります。もし彼がストレスで病んだり、あるいは寂しくて魔力を暴走させたら……」
キャサリンはニッコリと微笑んだ。
「王都が更地になりますが、よろしいですか?」
「……脅しか?」
「リスク管理の提案です。旦那様を働かせて国を滅ぼすか、今のまま私に飼い殺しにさせて平和を維持するか。……答えは明白かと」
国王と宰相は顔を見合わせた。
そして、同時に深く溜息をついた。
「……わかった。諦めよう」
「賢明なご判断です」
ギルバートは安堵して、クッキーを齧った。
「よかったね、キャサリン。これで僕たちの時間は守られたよ」
「はい、旦那様! 貴方様の時間を一秒たりとも国ごときに奪わせません!」
「……帰れ。もう帰ってくれ」
国王がしっしっと手を振る。
二人は「失礼いたします」と優雅に一礼し、堂々と退室していった。
残された国王は、宰相にボソリと言った。
「……あれが、最強か」
「ええ。ある意味、帝国軍よりタチが悪いですな」
◇
王城を出た二人は、王都のメインストリートを歩いていた。
普段なら馬車を使うところだが、今日は天気も良く、キャサリンが「お散歩デート」を提案したのだ。
しかし、そのデートは平和とは程遠いものだった。
「あ、あそこにいらっしゃるのは……!」
「アッシュフォード公爵夫妻だ!」
「指先一つで王子を倒したって噂の……!」
「隣の奥様は、睨んだだけで鉄骨をへし折るらしいぞ!」
道行く人々が、まるで伝説の珍獣を見るような目で遠巻きに眺めてくる。
以前のような「呪い公爵」への恐怖ではない。
「畏怖」と「崇拝」、そして「絶対に近づいてはいけない」という警戒心だ。
「……なんか、視線が痛いね」
ギルバートが居心地悪そうに肩をすくめる。
「有名税ですわ、旦那様。堂々としていてください」
キャサリンは日傘を差し、ギルバートの腕にガッチリとしがみついている。
「むしろ好都合です。この『最強夫婦』という評判が広まれば、変な虫も寄り付かなくなりますから」
その時。
人混みをかき分けて、数人の商人が駆け寄ってきた。
「こ、公爵閣下! 我が商会の魔導具をご覧いただけませんか!?」
「ぜひ我が社の投資案件を……!」
彼らは二人の評判を聞きつけ、利益にあやかろうとするハイエナたちだ。
ギルバートが「え、面倒くさい……」と後ずさる。
瞬間。
「――下がれ」
キャサリンの声が、氷点下まで下がった。
彼女は日傘をバッと開き、商人たちとギルバートの間に物理的な壁を作った。
「私の旦那様の半径三メートル以内は『聖域(サンクチュアリ)』です。許可なき立ち入りは、即ち死を意味すると心得なさい」
「ひぃっ!?」
キャサリンの瞳孔が開いている。
その背後に、幻影の黒い龍が見えた気がして、商人たちは悲鳴を上げて逃げ出した。
「……ふん。雑魚が」
キャサリンは日傘を閉じ、瞬時に甘い笑顔に戻ってギルバートに向き直った。
「大丈夫ですか、旦那様? 変な菌をもらいませんでしたか? 後で全身消毒しましょうね♡」
「……キャサリン、君、本当に強くなったね」
ギルバートは苦笑しながら、彼女の頭を撫でた。
「昔はもっと、こう……普通の令嬢だった気がするんだけど」
「愛は女を強くするのです。今の私は、貴方様を守るためなら魔王だって素手で殴り倒せます」
「頼もしすぎるよ」
二人は腕を組み、歩き続ける。
その姿は、確かに「最強」だった。
魔力最強の夫と、物理・精神力最強の妻。
この二人に喧嘩を売ろうなどという命知らずは、もうこの国には存在しないだろう。
◇
夕暮れ時。
公爵邸に戻った二人は、テラスでお茶を楽しんでいた。
空が茜色に染まり、庭のバラ園が風に揺れている。
「……平和だ」
ギルバートは紅茶を啜り、深く息を吐いた。
「いろいろあったけど……結局、ここが一番落ち着くね」
「ええ。私たちの城ですから」
キャサリンは彼の膝にブランケットをかけながら、優しく微笑む。
「ねえ、キャサリン」
「はい」
「国王陛下が言ってた『最強の夫婦』って言葉……あながち間違いじゃないかもね」
ギルバートは自分の手のひらを見つめた。
かつては制御できずに恐れていた魔力。
今は、それが心地よく体の中を巡っている。
「君が僕を管理して、僕が君に依存して……お互いがお互いを必要としてる。この関係が、僕たちを最強にしてるんだと思う」
「旦那様……」
「君がいなければ、僕はただの『呪い公爵』で終わってた。君が拾って、磨いて、愛してくれたから、僕はここにいられるんだ」
ギルバートはキャサリンの手を取り、その甲にキスをした。
「ありがとう。僕を『最強』にしてくれて」
キャサリンの顔が、ボンッと音を立てて赤くなった。
「……っ! ……っ!」
彼女は言葉にならない声を漏らし、次の瞬間、テーブルに突っ伏した。
「ど、どうしたの!?」
「尊すぎて……限界です……!」
キャサリンは顔を伏せたまま、震える声で叫んだ。
「ああっ、もう! 好き! 大好き! 愛してる! 今すぐ貴方様をホルマリン漬けにして永遠に保存したい!」
「それはやめて!」
「冗談です(半分本気)。……でも、私もです、旦那様」
キャサリンは顔を上げ、涙目で笑った。
「貴方様がいなければ、私はただの『重すぎる元婚約者』でした。貴方様が私の愛を受け入れてくださったから、私は私のままでいられるのです」
「うん。……win-winってやつだね」
「はい。最高の共依存関係ですわ」
二人は笑い合った。
世間から見れば、歪な関係かもしれない。
ヤンデレとダメ人間。
管理する者と、される者。
だが、彼らにとっては、これこそが「究極の愛」の形だった。
「さて、旦那様」
キャサリンは立ち上がり、パンパンとスカートを払った。
「感傷に浸るのもいいですが、そろそろ現実的な作業に入りますよ」
「え、まだ何かあるの?」
「何を仰いますか。来週はいよいよ『結婚式』です!」
キャサリンは目を輝かせ、分厚いファイルをテーブルに叩きつけた。
ドサッ!
「招待状の宛名書き、席次表の決定、料理の試食、衣装の最終フィッティング……やることは山積みです。徹夜でいきますよ!」
「て、徹夜!? 僕、寝たいんだけど……」
「ダメです。一生に一度の晴れ舞台、貴方様を世界一格好良い新郎に仕上げなければ気が済みません!」
キャサリンはギルバートの手を引き、強引に立たせた。
「さあ、特訓です! 誓いのキスの角度は四十五度がベストです! 練習しましょう、今すぐ!」
「ちょ、待って、心の準備が……!」
「準備などいりません! 必要なのは気合いと根性、そして愛です!」
夕日に照らされながら、キャサリンに引きずられていくギルバート。
その顔は困り果てていたが、どこか楽しそうでもあった。
最強の夫婦の戦いは終わらない。
次は「結婚式」という名の、新たなる戦場が待っているのだから。
(……まあ、いいか。キャサリンと一緒なら、なんとかなるだろう)
ギルバートは諦めて、彼女の背中を追った。
その首元のチョーカーが、夕日を受けてキラリと輝いていた。
断罪劇から一夜明けた、王城の奥まった一室。
国王の私的な執務室に、ギルバートとキャサリンは呼び出されていた。
目の前には、疲労困憊の国王と、昨日の騒動で胃薬が手放せなくなった宰相がいる。
国王は咳払いをして、一枚の辞令書をテーブルに置いた。
「此度の功績、ならびに貴殿の保有する強大な魔力と知識……。これを国のために使わない手はない」
国王の目が真剣に光る。
「ギルバート・アッシュフォード。貴殿を、次期『宰相』の候補として正式に任命したい」
「はい?」
ギルバートは、出された紅茶のカップを持ったまま固まった。
「宰相……って、あそこで胃薬飲んでるおじいさんの後任?」
「お、おじいさんとは失礼な! まだ五十代だ!」
宰相が反論するが、その顔色は土気色で説得力がない。
国王は身を乗り出した。
「うむ。今の宰相も過労で限界が近い。貴殿のような優秀な魔導師がその座につけば、帝国の脅威など恐れるに足らん。魔法による行政改革、通信網の整備……貴殿なら可能だろう?」
それは、国一番の栄誉ある地位だった。
普通の貴族なら、喉から手が出るほど欲しがる権力の頂点。
しかし。
「……嫌です」
ギルバートは、秒で即答した。
「なっ……嫌だと!?」
「だって、宰相って激務ですよね? 朝から晩まで書類と睨めっこして、貴族の揉め事を仲裁して、陛下に呼び出されて……。今の生活より忙しくなるなんて、絶対に無理」
ギルバートは隣のキャサリンに寄りかかった。
「僕は今、キャサリンに管理されて、一日の睡眠時間十時間、おやつタイム三回、お昼寝付きの生活をしてるんです。これを手放す気はありません」
「き、貴様……国より睡眠時間が大事か!」
「大事です(断言)」
国王が絶句する中、キャサリンがスッと手を挙げた。
「陛下。補足させていただきます」
彼女は懐から電卓を取り出し、高速でキーを叩き始めた。
カチャカチャカチャカチャッ!
「宰相の平均労働時間は一日十四時間。対して、現在の旦那様の労働時間(研究含む)は一日四時間。もし宰相になれば、私との接触時間が一日に十時間も減少することになります」
キャサリンの目が、怪しく光る。
「十時間です。それは、キス百回分、ハグ五十回分、そして膝枕三回分に相当します。この莫大な『愛の損失(ラブ・ロス)』を、国はどう補償してくださるのですか?」
「ほ、補償と言われても……」
「金銭では解決できません。旦那様のメンタルヘルスに関わります。もし彼がストレスで病んだり、あるいは寂しくて魔力を暴走させたら……」
キャサリンはニッコリと微笑んだ。
「王都が更地になりますが、よろしいですか?」
「……脅しか?」
「リスク管理の提案です。旦那様を働かせて国を滅ぼすか、今のまま私に飼い殺しにさせて平和を維持するか。……答えは明白かと」
国王と宰相は顔を見合わせた。
そして、同時に深く溜息をついた。
「……わかった。諦めよう」
「賢明なご判断です」
ギルバートは安堵して、クッキーを齧った。
「よかったね、キャサリン。これで僕たちの時間は守られたよ」
「はい、旦那様! 貴方様の時間を一秒たりとも国ごときに奪わせません!」
「……帰れ。もう帰ってくれ」
国王がしっしっと手を振る。
二人は「失礼いたします」と優雅に一礼し、堂々と退室していった。
残された国王は、宰相にボソリと言った。
「……あれが、最強か」
「ええ。ある意味、帝国軍よりタチが悪いですな」
◇
王城を出た二人は、王都のメインストリートを歩いていた。
普段なら馬車を使うところだが、今日は天気も良く、キャサリンが「お散歩デート」を提案したのだ。
しかし、そのデートは平和とは程遠いものだった。
「あ、あそこにいらっしゃるのは……!」
「アッシュフォード公爵夫妻だ!」
「指先一つで王子を倒したって噂の……!」
「隣の奥様は、睨んだだけで鉄骨をへし折るらしいぞ!」
道行く人々が、まるで伝説の珍獣を見るような目で遠巻きに眺めてくる。
以前のような「呪い公爵」への恐怖ではない。
「畏怖」と「崇拝」、そして「絶対に近づいてはいけない」という警戒心だ。
「……なんか、視線が痛いね」
ギルバートが居心地悪そうに肩をすくめる。
「有名税ですわ、旦那様。堂々としていてください」
キャサリンは日傘を差し、ギルバートの腕にガッチリとしがみついている。
「むしろ好都合です。この『最強夫婦』という評判が広まれば、変な虫も寄り付かなくなりますから」
その時。
人混みをかき分けて、数人の商人が駆け寄ってきた。
「こ、公爵閣下! 我が商会の魔導具をご覧いただけませんか!?」
「ぜひ我が社の投資案件を……!」
彼らは二人の評判を聞きつけ、利益にあやかろうとするハイエナたちだ。
ギルバートが「え、面倒くさい……」と後ずさる。
瞬間。
「――下がれ」
キャサリンの声が、氷点下まで下がった。
彼女は日傘をバッと開き、商人たちとギルバートの間に物理的な壁を作った。
「私の旦那様の半径三メートル以内は『聖域(サンクチュアリ)』です。許可なき立ち入りは、即ち死を意味すると心得なさい」
「ひぃっ!?」
キャサリンの瞳孔が開いている。
その背後に、幻影の黒い龍が見えた気がして、商人たちは悲鳴を上げて逃げ出した。
「……ふん。雑魚が」
キャサリンは日傘を閉じ、瞬時に甘い笑顔に戻ってギルバートに向き直った。
「大丈夫ですか、旦那様? 変な菌をもらいませんでしたか? 後で全身消毒しましょうね♡」
「……キャサリン、君、本当に強くなったね」
ギルバートは苦笑しながら、彼女の頭を撫でた。
「昔はもっと、こう……普通の令嬢だった気がするんだけど」
「愛は女を強くするのです。今の私は、貴方様を守るためなら魔王だって素手で殴り倒せます」
「頼もしすぎるよ」
二人は腕を組み、歩き続ける。
その姿は、確かに「最強」だった。
魔力最強の夫と、物理・精神力最強の妻。
この二人に喧嘩を売ろうなどという命知らずは、もうこの国には存在しないだろう。
◇
夕暮れ時。
公爵邸に戻った二人は、テラスでお茶を楽しんでいた。
空が茜色に染まり、庭のバラ園が風に揺れている。
「……平和だ」
ギルバートは紅茶を啜り、深く息を吐いた。
「いろいろあったけど……結局、ここが一番落ち着くね」
「ええ。私たちの城ですから」
キャサリンは彼の膝にブランケットをかけながら、優しく微笑む。
「ねえ、キャサリン」
「はい」
「国王陛下が言ってた『最強の夫婦』って言葉……あながち間違いじゃないかもね」
ギルバートは自分の手のひらを見つめた。
かつては制御できずに恐れていた魔力。
今は、それが心地よく体の中を巡っている。
「君が僕を管理して、僕が君に依存して……お互いがお互いを必要としてる。この関係が、僕たちを最強にしてるんだと思う」
「旦那様……」
「君がいなければ、僕はただの『呪い公爵』で終わってた。君が拾って、磨いて、愛してくれたから、僕はここにいられるんだ」
ギルバートはキャサリンの手を取り、その甲にキスをした。
「ありがとう。僕を『最強』にしてくれて」
キャサリンの顔が、ボンッと音を立てて赤くなった。
「……っ! ……っ!」
彼女は言葉にならない声を漏らし、次の瞬間、テーブルに突っ伏した。
「ど、どうしたの!?」
「尊すぎて……限界です……!」
キャサリンは顔を伏せたまま、震える声で叫んだ。
「ああっ、もう! 好き! 大好き! 愛してる! 今すぐ貴方様をホルマリン漬けにして永遠に保存したい!」
「それはやめて!」
「冗談です(半分本気)。……でも、私もです、旦那様」
キャサリンは顔を上げ、涙目で笑った。
「貴方様がいなければ、私はただの『重すぎる元婚約者』でした。貴方様が私の愛を受け入れてくださったから、私は私のままでいられるのです」
「うん。……win-winってやつだね」
「はい。最高の共依存関係ですわ」
二人は笑い合った。
世間から見れば、歪な関係かもしれない。
ヤンデレとダメ人間。
管理する者と、される者。
だが、彼らにとっては、これこそが「究極の愛」の形だった。
「さて、旦那様」
キャサリンは立ち上がり、パンパンとスカートを払った。
「感傷に浸るのもいいですが、そろそろ現実的な作業に入りますよ」
「え、まだ何かあるの?」
「何を仰いますか。来週はいよいよ『結婚式』です!」
キャサリンは目を輝かせ、分厚いファイルをテーブルに叩きつけた。
ドサッ!
「招待状の宛名書き、席次表の決定、料理の試食、衣装の最終フィッティング……やることは山積みです。徹夜でいきますよ!」
「て、徹夜!? 僕、寝たいんだけど……」
「ダメです。一生に一度の晴れ舞台、貴方様を世界一格好良い新郎に仕上げなければ気が済みません!」
キャサリンはギルバートの手を引き、強引に立たせた。
「さあ、特訓です! 誓いのキスの角度は四十五度がベストです! 練習しましょう、今すぐ!」
「ちょ、待って、心の準備が……!」
「準備などいりません! 必要なのは気合いと根性、そして愛です!」
夕日に照らされながら、キャサリンに引きずられていくギルバート。
その顔は困り果てていたが、どこか楽しそうでもあった。
最強の夫婦の戦いは終わらない。
次は「結婚式」という名の、新たなる戦場が待っているのだから。
(……まあ、いいか。キャサリンと一緒なら、なんとかなるだろう)
ギルバートは諦めて、彼女の背中を追った。
その首元のチョーカーが、夕日を受けてキラリと輝いていた。
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