11 / 28
11
「止まるな! 手を動かせ! 金ならある! 資材も山ほどある!」
「「「へい、お嬢(ボス)!!」」」
辺境の荒野に、活気あふれる掛け声と、ハンマーの音がオーケストラのように響き渡っていた。
シリウス陛下からの融資(金貨五万枚)が決定してから一ヶ月。
私たちの拠点は、劇的な進化を遂げていた。
豊富な資金力を背景に、大陸中から優秀な土木魔導師や建築家を高給でヘッドハンティング。
彼らを二十四時間体制(三交代制・深夜手当完備)で稼働させ、突貫工事を行った結果――。
「……お嬢様。ここ、本当に一ヶ月前まで更地でしたか?」
ベッキーが完成したばかりのレンガ造りのメインストリートを歩きながら、呆然と呟く。
「ええ。金と権力(コネ)があれば、地図なんて簡単に書き換えられるのよ」
私は満足げに頷いた。
かつて「魔の荒野」と呼ばれた場所は、今や幾何学的に整備された区画整理都市へと変貌しようとしていた。
中央には巨大なオリハルコン精錬工場。
その周囲には、作業員たちのための宿舎、食堂、商店が軒を連ね、夜になっても魔石灯の明かりが消えることはない。
人はここを、敬意(と畏怖)を込めてこう呼ぶようになった。
新興都市『ミルク・シティ』と。
「住民登録数もすでに千人を超えたわ。王国の重税に耐えかねた商人や職人たちが、雪崩を打って移住してきているもの」
「税金が安くて、仕事が山ほどある。彼らにとっては天国でしょうね。……支配者が『守銭奴の悪魔』であることを除けば」
「あら、私は慈悲深い領主様よ? 働けば働くほど給料を出すんだから」
私は建築中の新庁舎(私の執務室兼金庫)を見上げた。
順調だ。順調すぎる。
だが、私の商魂はこれくらいでは満たされない。
工場だけでは「生産都市」止まりだ。
もっと外貨を稼ぐには、人がわざわざ足を運びたくなる「魅力(コンテンツ)」が必要なのよ。
その時だった。
ドォォォォォンッ!!
突然、街の北側、工場建設予定地のあたりで爆音が轟いた。
地面が揺れ、白い煙がもうもうと立ち昇る。
「な、なんだ!?」
「敵襲か!?」
住民たちがパニックになる。
「ベッキー、行くわよ!」
私はスカートを捲り上げ、現場へとダッシュした。
◇
「お、お嬢! 大変だ!」
現場に到着すると、ドワーフの棟梁ガンテツが、全身ずぶ濡れになって走ってきた。
「どうしたの! 魔物の襲撃!?」
「いや、違う! 地熱発電用の穴を掘ってたら、いきなり熱湯が吹き出しやがった! 止まらねぇんだ!」
「熱湯?」
私は彼が指差す方を見た。
そこでは、掘削した穴から、白い湯気を伴った大量のお湯が、間欠泉のように噴き上がっていた。
シューシューという音と共に、硫黄の独特な香りが漂ってくる。
作業員たちが「あちち!」「やべぇ、現場が水浸しだ!」と逃げ回っている。
普通なら、工事の失敗であり、大事故だ。
だが。
「……くんくん」
私は鼻を動かした。
この匂い。そして、肌に触れた蒸気のしっとりとした感触。
「……成分分析、急いで!」
私は懐から試験管を取り出し、噴き出すお湯を採取した。
即座に片眼鏡(モノクル)の鑑定スキルを発動させる。
『分析結果:温度42度。泉質は弱アルカリ性単純泉。効能は疲労回復、神経痛、そして――美肌効果(特大)』
カチャリ。
私の脳内で、計算機が弾かれる音がした。
「……勝った」
「へ? お嬢?」
私はガンテツの肩をガシッと掴んだ。
「でかしたわ、ガンテツ! これはただの熱湯じゃない! 『液状の金貨』よ!」
「はぁ? 金貨?」
「そう、温泉よ!」
私は両手を広げ、天に噴き上げるお湯を仰いだ。
「ああ、神よ(というか地殻変動よ)、感謝します! これで最後のピースが埋まったわ!」
私は近くの岩の上に飛び乗り、混乱する作業員たちに向かって叫んだ。
「総員、聞けぇッ!! 工期変更だ! 工場の建設は一時中断! 最優先でここに『巨大温浴施設』を作るわよ!」
「お、おんよく……?」
「風呂よ! ただの風呂じゃない。貴族たちが大金を払ってでも入りたがる、豪華絢爛なリゾート・スパよ!」
私は熱弁を振るう。
「いい? 世の中の貴族や金持ちは、常に疲れているの! 派閥争い、跡目争い、嫁姑問題! 彼らが求めているのは『癒やし』よ!」
「癒やし……」
「このお湯には、肌をツルツルにし、疲れを吹き飛ばす効果がある。これを『聖なる泉』として売り出せば、王都や帝国から、暇を持て余した有閑マダムや引退した高官たちが大挙して押し寄せるわ!」
私は指を突き立てる。
「入浴料、宿泊費、食事代、マッサージ代、そしてお土産の『温泉饅頭』! 観光産業は、煙突のない工場よ! 粗利率が桁違いなの!」
私の説明を聞いて、ベッキーが手帳を開いた。
「なるほど。工場の排熱を利用して温水プールを作り、冬でも常夏のリゾートを演出するわけですね。……相変わらず、転んでもタダでは起きないどころか、地面を掘って金を掘り当てるお方です」
「ガンテツ! 設計図は私の頭の中にあるわ! 露天風呂は岩風呂にして、滝を作るの! 打たせ湯よ! それとサウナ! 『整う』快感を異世界に布教するのよ!」
「お、おう! よくわからねぇが、でかい風呂を作ればいいんだな! 任せろ、ドワーフの石材加工技術を見せてやる!」
ガンテツがニカッと笑い、職人たちに号令をかける。
「野郎ども! お嬢のご乱心だ! いや、いつもの『金儲けの神託』だ! 風呂を作るぞぉぉ!」
「「「うおおおおぉぉぉっ!!」」」
さっきまでパニックだった現場が、一瞬にして熱狂的な建設現場へと変わった。
「ベッキー、貴女は広報担当よ」
「はい」
「至急、ポスターとチラシを作成して。『奇跡の秘湯、発見! 飲むだけで若返る(※個人の感想です)』くらいの煽り文句で、各国の社交界にばら撒きなさい」
「誇大広告スレスレですね。承知しました」
噴き上がる温泉の向こうに、私は幻を見た。
湯煙の中に浮かぶ、巨大なホテルと、そこで金を落としていくカモ……いや、お客様たちの行列を。
「ふふふ……忙しくなるわよ。ミルク・シティを、大陸一の『搾取……いえ、楽園』にするんだから!」
こうして、辺境都市ミルク・シティは、単なる工業都市から、大陸初の一大温泉リゾート地へと舵を切ったのである。
その噂は、風に乗って遠く離れた王都にも届くことになる。
『北の辺境に、死者も蘇る奇跡の泉が湧いたらしい』
そんな尾ひれのついた噂を、美容と健康に悩む「あのヒロイン」が聞き逃すはずがなかった。
「「「へい、お嬢(ボス)!!」」」
辺境の荒野に、活気あふれる掛け声と、ハンマーの音がオーケストラのように響き渡っていた。
シリウス陛下からの融資(金貨五万枚)が決定してから一ヶ月。
私たちの拠点は、劇的な進化を遂げていた。
豊富な資金力を背景に、大陸中から優秀な土木魔導師や建築家を高給でヘッドハンティング。
彼らを二十四時間体制(三交代制・深夜手当完備)で稼働させ、突貫工事を行った結果――。
「……お嬢様。ここ、本当に一ヶ月前まで更地でしたか?」
ベッキーが完成したばかりのレンガ造りのメインストリートを歩きながら、呆然と呟く。
「ええ。金と権力(コネ)があれば、地図なんて簡単に書き換えられるのよ」
私は満足げに頷いた。
かつて「魔の荒野」と呼ばれた場所は、今や幾何学的に整備された区画整理都市へと変貌しようとしていた。
中央には巨大なオリハルコン精錬工場。
その周囲には、作業員たちのための宿舎、食堂、商店が軒を連ね、夜になっても魔石灯の明かりが消えることはない。
人はここを、敬意(と畏怖)を込めてこう呼ぶようになった。
新興都市『ミルク・シティ』と。
「住民登録数もすでに千人を超えたわ。王国の重税に耐えかねた商人や職人たちが、雪崩を打って移住してきているもの」
「税金が安くて、仕事が山ほどある。彼らにとっては天国でしょうね。……支配者が『守銭奴の悪魔』であることを除けば」
「あら、私は慈悲深い領主様よ? 働けば働くほど給料を出すんだから」
私は建築中の新庁舎(私の執務室兼金庫)を見上げた。
順調だ。順調すぎる。
だが、私の商魂はこれくらいでは満たされない。
工場だけでは「生産都市」止まりだ。
もっと外貨を稼ぐには、人がわざわざ足を運びたくなる「魅力(コンテンツ)」が必要なのよ。
その時だった。
ドォォォォォンッ!!
突然、街の北側、工場建設予定地のあたりで爆音が轟いた。
地面が揺れ、白い煙がもうもうと立ち昇る。
「な、なんだ!?」
「敵襲か!?」
住民たちがパニックになる。
「ベッキー、行くわよ!」
私はスカートを捲り上げ、現場へとダッシュした。
◇
「お、お嬢! 大変だ!」
現場に到着すると、ドワーフの棟梁ガンテツが、全身ずぶ濡れになって走ってきた。
「どうしたの! 魔物の襲撃!?」
「いや、違う! 地熱発電用の穴を掘ってたら、いきなり熱湯が吹き出しやがった! 止まらねぇんだ!」
「熱湯?」
私は彼が指差す方を見た。
そこでは、掘削した穴から、白い湯気を伴った大量のお湯が、間欠泉のように噴き上がっていた。
シューシューという音と共に、硫黄の独特な香りが漂ってくる。
作業員たちが「あちち!」「やべぇ、現場が水浸しだ!」と逃げ回っている。
普通なら、工事の失敗であり、大事故だ。
だが。
「……くんくん」
私は鼻を動かした。
この匂い。そして、肌に触れた蒸気のしっとりとした感触。
「……成分分析、急いで!」
私は懐から試験管を取り出し、噴き出すお湯を採取した。
即座に片眼鏡(モノクル)の鑑定スキルを発動させる。
『分析結果:温度42度。泉質は弱アルカリ性単純泉。効能は疲労回復、神経痛、そして――美肌効果(特大)』
カチャリ。
私の脳内で、計算機が弾かれる音がした。
「……勝った」
「へ? お嬢?」
私はガンテツの肩をガシッと掴んだ。
「でかしたわ、ガンテツ! これはただの熱湯じゃない! 『液状の金貨』よ!」
「はぁ? 金貨?」
「そう、温泉よ!」
私は両手を広げ、天に噴き上げるお湯を仰いだ。
「ああ、神よ(というか地殻変動よ)、感謝します! これで最後のピースが埋まったわ!」
私は近くの岩の上に飛び乗り、混乱する作業員たちに向かって叫んだ。
「総員、聞けぇッ!! 工期変更だ! 工場の建設は一時中断! 最優先でここに『巨大温浴施設』を作るわよ!」
「お、おんよく……?」
「風呂よ! ただの風呂じゃない。貴族たちが大金を払ってでも入りたがる、豪華絢爛なリゾート・スパよ!」
私は熱弁を振るう。
「いい? 世の中の貴族や金持ちは、常に疲れているの! 派閥争い、跡目争い、嫁姑問題! 彼らが求めているのは『癒やし』よ!」
「癒やし……」
「このお湯には、肌をツルツルにし、疲れを吹き飛ばす効果がある。これを『聖なる泉』として売り出せば、王都や帝国から、暇を持て余した有閑マダムや引退した高官たちが大挙して押し寄せるわ!」
私は指を突き立てる。
「入浴料、宿泊費、食事代、マッサージ代、そしてお土産の『温泉饅頭』! 観光産業は、煙突のない工場よ! 粗利率が桁違いなの!」
私の説明を聞いて、ベッキーが手帳を開いた。
「なるほど。工場の排熱を利用して温水プールを作り、冬でも常夏のリゾートを演出するわけですね。……相変わらず、転んでもタダでは起きないどころか、地面を掘って金を掘り当てるお方です」
「ガンテツ! 設計図は私の頭の中にあるわ! 露天風呂は岩風呂にして、滝を作るの! 打たせ湯よ! それとサウナ! 『整う』快感を異世界に布教するのよ!」
「お、おう! よくわからねぇが、でかい風呂を作ればいいんだな! 任せろ、ドワーフの石材加工技術を見せてやる!」
ガンテツがニカッと笑い、職人たちに号令をかける。
「野郎ども! お嬢のご乱心だ! いや、いつもの『金儲けの神託』だ! 風呂を作るぞぉぉ!」
「「「うおおおおぉぉぉっ!!」」」
さっきまでパニックだった現場が、一瞬にして熱狂的な建設現場へと変わった。
「ベッキー、貴女は広報担当よ」
「はい」
「至急、ポスターとチラシを作成して。『奇跡の秘湯、発見! 飲むだけで若返る(※個人の感想です)』くらいの煽り文句で、各国の社交界にばら撒きなさい」
「誇大広告スレスレですね。承知しました」
噴き上がる温泉の向こうに、私は幻を見た。
湯煙の中に浮かぶ、巨大なホテルと、そこで金を落としていくカモ……いや、お客様たちの行列を。
「ふふふ……忙しくなるわよ。ミルク・シティを、大陸一の『搾取……いえ、楽園』にするんだから!」
こうして、辺境都市ミルク・シティは、単なる工業都市から、大陸初の一大温泉リゾート地へと舵を切ったのである。
その噂は、風に乗って遠く離れた王都にも届くことになる。
『北の辺境に、死者も蘇る奇跡の泉が湧いたらしい』
そんな尾ひれのついた噂を、美容と健康に悩む「あのヒロイン」が聞き逃すはずがなかった。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜
まりー
恋愛
ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。
でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます
娯遊戯空現
恋愛
ハイタッド公爵家の令嬢・セラフィン=ハイタッドは悪人だった……。
第二王子・アエルバートの婚約者の座を手に入れたセラフィンはゆくゆくは王妃となり国を牛耳るつもりでいた。しかし伯爵令嬢・ブレアナ=シュレイムの登場により、事態は一変する。
アエルバートがブレアナを気に入ってしまい、それに焦ったセラフィンが二人の仲を妨害した。
そんな折、セラフィンは自分が転生者であることとここが乙女ゲーム『治癒能力者(ヒーラー)の選ぶ未来』の世界であることを思い出す。
自分の行く末が破滅であることに気付くもすで事態は動き出した後で、婚約破棄&処刑を言い渡される。
処刑時に逃げようとしたセラフィンは命は助かったものの毒に冒されてしまった。
そこに謎の美形男性が現れ、いきなり唇を奪われて……。
異母姉の身代わりにされて大国の公妾へと堕とされた姫は王太子を愛してしまったので逃げます。えっ?番?番ってなんですか?執着番は逃さない
降魔 鬼灯
恋愛
やかな異母姉ジュリアンナが大国エスメラルダ留学から帰って来た。どうも留学中にやらかしたらしく、罪人として修道女になるか、隠居したエスメラルダの先代王の公妾として生きるかを迫られていた。
しかし、ジュリアンナに弱い父王と側妃は、亡くなった正妃の娘アリアを替え玉として差し出すことにした。
粗末な馬車に乗って罪人としてエスメラルダに向かうアリアは道中ジュリアンナに恨みを持つものに襲われそうになる。
危機一髪、助けに来た王太子に番として攫われ溺愛されるのだか、番の単語の意味をわからないアリアは公妾として抱かれていると誤解していて……。
すれ違う2人の想いは?
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。