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「……ふぅ。これでようやく、胃袋の六分目といったところですわね。サイラス様、あちらのフォアグラのムースも、まだ諦めきれませんわ」
ミミルは満足げにナプキンで口元を拭い、キラキラとした瞳で次のターゲットを見定めた。
深紅のドレスを纏いながらも、その手つきは百戦錬磨の戦士のよう。
「……ラングレー嬢、いい加減にしておけ。……これから、舞踏会の『メインイベント』が始まる。……ここで食べ過ぎて動けなくなっては、元も子もないだろう」
サイラスが、少しだけ困ったように微笑みながら、彼女の皿にそっとナプキンを置いた。
彼の礼服姿は、時間が経つにつれて会場中の令嬢たちの視線を独占し始めている。
無骨な騎士団長が、これほどまでに気品高く、そして圧倒的な「雄」の魅力を放つなど、誰も想像していなかったのだ。
「メインイベント……? ああ、デザートワゴンの入場ですわね! 分かっておりますわ、そのためのスペースはちゃんと空けてありますもの」
「……違う。……。ダンスだ」
サイラスが、大きな右手をミミルの前に差し出した。
会場の中央では、優雅なワルツが流れ始めている。
「……えっ!? サ、サイラス様と、ダンス……!? ……あ、あの、私……。食べ物のことばかり考えていたので、ステップを覚えているかどうか……」
「……。案ずるな。……。貴様は、俺のリードに身を任せていればいい。……。……筋肉の動きで、次に行くべき場所を教えてやる」
「……! ……筋肉の動きでナビゲート!? ……なんて、なんて素晴らしい響きかしら! 喜んでお受けいたしますわ!」
ミミルがその手を取った瞬間。
会場全体のざわめきが、一瞬にして静寂へと変わった。
「……見なさい、あれを。……サイラス団長が……踊るのか?」
「……しかも相手は、あの『氷の毒婦』ミミル様よ! ……なんて、なんて絵になる二人なの……」
招待客たちが波が引くように道を空ける。
深紅のドレスと、深い紺色の礼服。
対照的な二人がダンスフロアの中央に立ったとき、そこにはジュリアス王子とカレンさえも踏み込めない、圧倒的な「覇気」が渦巻いていた。
「……いくぞ、ミミル」
サイラスが腰に手を添えた瞬間、ミミルの背筋に電気が走った。
(……ああ……! この、礼服越しに伝わる、手のひらの熱! そして、私の動きを完全にコントロールする、この盤石な体幹の強さ……!)
音楽が始まると同時に、二人は滑るように踊り出した。
サイラスの動きは、騎士らしく無駄がなく、それでいて猛獣のようなしなやかさがある。
「……。……驚いたな。……。貴様、これだけ食べたというのに、羽のように軽い」
「……ふ、ふふ。……。それは、サイラス様の腕の筋肉が、私を軽々と持ち上げているからですわ! ……ああ、今のターンでの広背筋の収縮……最高ですわ、サイラス様!」
「……ダンス中に筋肉の感想を述べるのは、世界中で貴様一人だけだろうな」
サイラスが苦笑いしながら、ミミルを華麗に回転させる。
ミミルのドレスが、大輪の薔薇のようにフロアに広がった。
その光景は、もはや「嫌がらせのパーティー」ではなく、二人のための「お披露目会」のようだった。
フロアの端でそれを見ていたジュリアス王子は、持っていたシャンパングラスを今にも握り潰さんばかりに震わせていた。
「……ありえん……! あんな、あんな野蛮な男と、あのミミルが……! あいつは僕の前では、もっと冷たく、可愛げのない女だったはずだ!」
「……殿下、落ち着いてくださいまし。……。……わたくし、あんなに楽しそうに笑うミミル様、初めて見ましたわ……」
カレンの顔も引きつっていた。
自分が奪い取った王子の輝きが、今、フロアの中央で踊る二人の輝きに、完全に塗り潰されている。
曲がクライマックスを迎え、サイラスがミミルを深く抱き止めるポーズで終わった時。
会場からは、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
「……素晴らしいわ!」
「これこそ、真の愛の姿ではないかしら?」
「……。……やり遂げたな、ミミル」
「……はい。……。……でもサイラス様、一番大事なことを忘れてはいけませんわ」
ミミルは、サイラスの胸に顔を寄せたまま、会場の入り口を指差した。
「……見なさい。……。……デザートワゴンが、今、入場いたしましたわ!」
「……。……貴様という女は、本当に……。……。……よし、行くか。……俺も、少し甘いものが欲しくなった」
「はい! 突撃ですわ!」
拍手喝采の中、二人は再び、獲物を狙う狩人の目をしてビュッフェ台へと向かって走り出した。
王宮中の人々が、その「美しくも食欲旺盛な二人」の姿を、呆れと感嘆の入り混じった目で見送るしかなかった。
ミミルは満足げにナプキンで口元を拭い、キラキラとした瞳で次のターゲットを見定めた。
深紅のドレスを纏いながらも、その手つきは百戦錬磨の戦士のよう。
「……ラングレー嬢、いい加減にしておけ。……これから、舞踏会の『メインイベント』が始まる。……ここで食べ過ぎて動けなくなっては、元も子もないだろう」
サイラスが、少しだけ困ったように微笑みながら、彼女の皿にそっとナプキンを置いた。
彼の礼服姿は、時間が経つにつれて会場中の令嬢たちの視線を独占し始めている。
無骨な騎士団長が、これほどまでに気品高く、そして圧倒的な「雄」の魅力を放つなど、誰も想像していなかったのだ。
「メインイベント……? ああ、デザートワゴンの入場ですわね! 分かっておりますわ、そのためのスペースはちゃんと空けてありますもの」
「……違う。……。ダンスだ」
サイラスが、大きな右手をミミルの前に差し出した。
会場の中央では、優雅なワルツが流れ始めている。
「……えっ!? サ、サイラス様と、ダンス……!? ……あ、あの、私……。食べ物のことばかり考えていたので、ステップを覚えているかどうか……」
「……。案ずるな。……。貴様は、俺のリードに身を任せていればいい。……。……筋肉の動きで、次に行くべき場所を教えてやる」
「……! ……筋肉の動きでナビゲート!? ……なんて、なんて素晴らしい響きかしら! 喜んでお受けいたしますわ!」
ミミルがその手を取った瞬間。
会場全体のざわめきが、一瞬にして静寂へと変わった。
「……見なさい、あれを。……サイラス団長が……踊るのか?」
「……しかも相手は、あの『氷の毒婦』ミミル様よ! ……なんて、なんて絵になる二人なの……」
招待客たちが波が引くように道を空ける。
深紅のドレスと、深い紺色の礼服。
対照的な二人がダンスフロアの中央に立ったとき、そこにはジュリアス王子とカレンさえも踏み込めない、圧倒的な「覇気」が渦巻いていた。
「……いくぞ、ミミル」
サイラスが腰に手を添えた瞬間、ミミルの背筋に電気が走った。
(……ああ……! この、礼服越しに伝わる、手のひらの熱! そして、私の動きを完全にコントロールする、この盤石な体幹の強さ……!)
音楽が始まると同時に、二人は滑るように踊り出した。
サイラスの動きは、騎士らしく無駄がなく、それでいて猛獣のようなしなやかさがある。
「……。……驚いたな。……。貴様、これだけ食べたというのに、羽のように軽い」
「……ふ、ふふ。……。それは、サイラス様の腕の筋肉が、私を軽々と持ち上げているからですわ! ……ああ、今のターンでの広背筋の収縮……最高ですわ、サイラス様!」
「……ダンス中に筋肉の感想を述べるのは、世界中で貴様一人だけだろうな」
サイラスが苦笑いしながら、ミミルを華麗に回転させる。
ミミルのドレスが、大輪の薔薇のようにフロアに広がった。
その光景は、もはや「嫌がらせのパーティー」ではなく、二人のための「お披露目会」のようだった。
フロアの端でそれを見ていたジュリアス王子は、持っていたシャンパングラスを今にも握り潰さんばかりに震わせていた。
「……ありえん……! あんな、あんな野蛮な男と、あのミミルが……! あいつは僕の前では、もっと冷たく、可愛げのない女だったはずだ!」
「……殿下、落ち着いてくださいまし。……。……わたくし、あんなに楽しそうに笑うミミル様、初めて見ましたわ……」
カレンの顔も引きつっていた。
自分が奪い取った王子の輝きが、今、フロアの中央で踊る二人の輝きに、完全に塗り潰されている。
曲がクライマックスを迎え、サイラスがミミルを深く抱き止めるポーズで終わった時。
会場からは、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
「……素晴らしいわ!」
「これこそ、真の愛の姿ではないかしら?」
「……。……やり遂げたな、ミミル」
「……はい。……。……でもサイラス様、一番大事なことを忘れてはいけませんわ」
ミミルは、サイラスの胸に顔を寄せたまま、会場の入り口を指差した。
「……見なさい。……。……デザートワゴンが、今、入場いたしましたわ!」
「……。……貴様という女は、本当に……。……。……よし、行くか。……俺も、少し甘いものが欲しくなった」
「はい! 突撃ですわ!」
拍手喝采の中、二人は再び、獲物を狙う狩人の目をしてビュッフェ台へと向かって走り出した。
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