断罪中にお腹が鳴る!食欲に正直に生きたら騎士団長に胃袋を掴まれました

ちゃっぴー

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「皆様、ご覧になって? あのように大口を開けてケーキを頬張る姿。公爵令嬢としての品格も、マナーも、どこへ置き忘れていらしたのかしら」


王都の社交場として名高い『薔薇の温室茶会』。
色とりどりの花々に囲まれた優雅な空間に、場違いなほどトゲのある声が響いた。


声の主は、カレン・ベルナルド男爵令嬢。
ジュリアス王子に愛想を尽かされたはずの彼女だが、今日はなりふり構わず、高名な伯爵夫人の茶会に潜り込んでいた。
その視線の先には、サイラス団長に「あーん」を強要……もとい、仲睦まじくモンブランを分け合っているミミルの姿がある。


「ミミル様。わたくし、同じ女性として見ていられませんわ。食事というものは、その人の育ちが出るもの。あのように、一口で三層のクリームを同時に味わうような野蛮な食べ方、騎士団長様のお顔を泥で塗っているようなものですわよ」


カレンが勝ち誇ったように扇を広げ、周囲の令嬢たちに同意を求めた。
確かに、当時の貴族社会において「少食」と「静寂」は美徳とされていた。
ミミルのような「全力疾走並みの速度で完食する」スタイルは、異端中の異端である。


しかし、ミミルは栗のクリームを口いっぱいに含んだまま、ゆっくりとカレンへと視線を向けた。


「もふ。はぁ、ご馳走様ですわ。カレン様、お言葉ですが、食べ物を『小さく、音を立てず、残すのが美学』だなんて、それは食材に対する最大の侮辱ですわよ」


ミミルは、優雅に指先のクリームをペロリと舐めた。


「このモンブランを作るために、職人の方は何時間栗を剥き、何回裏ごしをしたとお思い? その結晶を、まるでお薬でも飲むかのようにちびちびと削り取って。カレン様、貴女のそのお皿のケーキ、乾燥して可哀想なことになっていましてよ」


「な、なな! わたくしは、マナーを守っているだけですわ!」


「マナーとは、同席する方を不快にさせないためのもの。サイラス様、私と食べていて、不快に思われますかしら?」


ミミルが隣のサイラスを見上げると、彼は手に持っていたフォークを一度置き、カレンを射貫くような鋭い目で見据えた。


「不快どころか、俺は、彼女の食べっぷりを見て、自分の胃袋まで元気をもらっている。カレン嬢、貴公の言う『マナー』とやらは、騎士団の兵舎では『栄養失調の原因』と呼ぶ。見ていて、こちらまで腹が減るような食事は、毒と同じだ」


サイラスの言葉に、周囲の令嬢たちから「まあ」と感嘆の声が漏れた。
戦場を生き抜く英雄からすれば、カレンの装った「か弱さ」は、ただの「不健康」にしか見えなかったのだ。


「そ、そんな! 団長様まで、あんな野蛮な女を庇うなんて! ミミル様、貴女が団長様をたぶらかしているのは、その卑しい『餌付け』のせいでしょう!?」


「あら。『餌付け』ではなく、『情熱の分配』と言っていただきたいですわ。カレン様、貴女もそんなにトゲのある言葉を吐く前に、この厚切りベーコンのキッシュを食べてごらんなさいな。言葉がまろやかになりますわよ?」


ミミルがキッシュを差し出すと、カレンはそれを思い切り振り払おうとした。
だが、その瞬間。
極度の空腹により、彼女の膝がガクガクと震え始めた。


「あ、あ、ああ。わたくし、わたくしは。王妃にふさわしい、完璧なマナーを」


「カレン嬢。マナーよりも先に、貴公は血色を良くするべきだ。今の貴公は、煮込みすぎて形を失ったジャガイモのようだぞ」


サイラスの無慈悲な追撃が、カレンの心を粉砕した。
ジャガイモ。
かつて「真実の愛」のヒロインを自称した彼女にとって、これ以上ないほど「脇役」な例えだった。


「う、うわあああああん! 皆、嫌いですわー!」


カレンは、空腹による眩暈に耐えかね、今度は本当に茶会のテーブルに突っ込みそうになりながら、泣き喚いて退場していった。
後に残されたのは、香ばしいキッシュの香りと、呆然とする招待客たちだけだった。


「ふぅ。ようやく静かになりましたわね。サイラス様、今のジャガイモの例え、最高にコクがありましたわ!」


「事実を述べたまでだ。それよりミミル、あちらの『特製カスタードプリン』が、我々を呼んでいる気がするのだが」


「! 流石はサイラス様、私の心の胃袋とリンクしていらっしゃいますわね! 参りましょう、全メニュー制覇まであと少しですわ!」


カレンの最後の悪あがきは、ミミルの「健康的な食欲」と、サイラスの「筋肉の論理」の前に、ただの空腹による幻聴のように消え去った。
二人の絆は、デザートを一皿空けるごとに、ますます強固なものになっていくのだった。
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