僕は最強の魔法使いかって?いえ、実はこれしか出来ないんです!〜無自覚チートの異世界冒険物語〜

アノマロカリス

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第三章 新大陸に向けて…

第十話 獅子神烈王

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 「お前が本当に…輝なのか?」
 「異世界転生って…」
 「あぁ、生前の名前は輝だよ。今はホーリーだけどな…」

 僕は現在、烈王と麗美と向かい合って話をしていた。
 烈王は頭を押さえ、麗美は僕の顔を覗き込む様な感じで見つめていた。

 「はぁ…本当に信じられない話だよ!まさか…親友の葬式をした後に、異世界で再び再会する事になろうとはな!」
 「親友…?」
 「まぁ、良いや!輝…お前を殺した奴等は、二度と日の目を見れない様に仇を討ったからな‼︎」
 「仇…?」
 
 僕と烈王との関係は、友達位にしか思っていなかったんだが?
 それに、仇って…何の事だ⁉︎

 「お前が死んだという知らせを受けて、お前の遺体を預かってから、獅子神財閥の傘下の大学病院で検死解剖を行ったんだよ。そうしたらお前は泥酔させられた挙句、全身を殴打された様な痕が見られたという話でな!それで俺は、お前の事を狙った不良共が…」
 「ちょっと待て!一体何の話だ⁉︎」
 「お前は奴等に捕まって、奴等のリーダーの親が住んでいるタワマンの屋上で、浴びせられる程の酒を飲まされてから、全身を殴られて…屋上から突き落とされたんだろ?」
 「………は?」
 「お前は重度のアルコールの所為で、覚えてないかも知れないが…」

 えーっと…?
 僕の死因って、そういう事になっていたのか⁉︎
 僕は麗美に振られてから、バイト先のコンビニで店長に強引に許可を貰ってから酒を購入して、タワマンの屋上でヤケ酒をして歩いていたら、柵に躓いてそのまま落ちた…と記憶をしていたんだが?
 その時は殴られていた事はなかったし…あ!
 殴打の後って、アレのことかな?
 あのタワマンの外壁には、良く分からないオブジェが備え付けられていて、落ちている最中に何かにぶつかった衝撃を何度か味わったんだっけ?
 まだ気を失う前だったから、かなりの痛みを顔や背中に感じた記憶はあったんだけど、何か強い衝撃が後頭部に直撃してから気を失って…その後に気づいたら、目の前に女神トゥエルティスが居て。

 「あ~~~そうか!僕の仇を取ってくれたのか!有り難うな烈王。」
 「俺がもっと早くに気付けていたら…済まない!」
 
 あの不良達は、ただのとばっちりだったんだけど…?
 まぁ、僕以外にも迷惑を掛けられた者達も居るという話だったし、あんな奴等がこの先も世に放たれていると、他の者達の迷惑になる筈だし…別に良いか!

 「しかし…輝が転生してから、既に9年も経っていたんだな…?お前の葬式は、この世界に来る数日前の出来事だったというのに…」
 「それは異世界と地球とでは、時間の流れが違うからじゃ無いか?」
 「だとすると、俺達が魔王を倒したとしても…帰った時はかなりの年数が?」
 「いや、それは無いと思う。僕はこの世界の人間に生まれ変わった為に年齢を重ねて来たという感じで、地球組の者達は異世界での時間に縛られる事はないんじゃ無いか?知らんけど…」

 考えてみれば妙な話だな?
 僕が死んでから、この世界で10年近くの年が流れているというのに、地球での時間は殆ど変わっていないのだから。
 まぁ、考えていても分からないし…気にするまでの話では無いな。

 「それでな、輝の死で悲しんで暫く経った後に…神を名乗る者から異世界で魔王を倒す為に協力を頼まれたんだよ。その時は気乗りはしなかったんだが、輝の死を少しでも紛らわせられるのなら…と思ってな。」
 「元の世界では望めば何でも手に入る烈王が…異世界に来るのは妙だと思ったんだよな?お前には、魔王を倒して叶えたい願いがあるとも思えなかったし…」
 「最初に願いが叶うというその話を聞いた時に、魔王を倒したら輝を生きからせられないか…と頼むつもりだった。」
 「だが、それは無理だと言われたんだろ?異世界の神では、地球の神の管轄する場所での人の干渉は出来ないと…まぁ、異世界召喚や転移は魔王討伐の為という事で話は通っているらしいが?」
 「そうだ、それなら気分転換で…と思っていたら、まさかこの世界で輝に会えるとは思わなくてな!なら、俺は…魔王を倒した褒美に、輝を地球に一緒に帰れないかを願うつもりで…」
 「いやいや、待ってくれ!僕にはこの世界で生まれ育って、更には仲間や奥さんだっているんだ‼︎僕はこの世界から離れる気はないし、烈王には悪いけど…地球に戻りたいという希望もない‼︎」

 烈王の性格上…この世界で僕に会えたら、意地でも地球に連れ帰るという願いを、魔王討伐の後の報酬で願うかも知れないと考えていたのだが…?
 まさか、本当にそんな事を考えているとは思わなかった。
 だから僕は、烈王には会いたく無かったんだよ。

 「ちょっと待ってくれ!輝は…その年齢で結婚をしているのか⁉︎」
 「あぁ…ラミナ、ちょっとこっちに来て!」

 僕は工房の奥で隠れて聞いていたラミナに声を掛けると、ラミナは僕の横に来て…烈王と麗美に軽く会釈をした。
 烈王はラミナを見ると、驚いた表情を浮かべていたのだった。

 「えっと…獣人族の嫁を貰ったのか?」
 「獣人族…と言えば、獣人族だな。彼女は森猫族のラミナと言って、僕と同じ年で奥さんだよ。同じ職場で知り合ったんだ。」
 「そ、そうなのか…」
 「だから、烈王の気持ちは嬉しいけど…僕はラミナと離れるつもりはないんだ。」
 
 烈王は腕を組んで悩んでいる感じだった。
 僕が独身だったら、烈王の気持ちを汲んで…いやいや、そもそも…僕が独身だったら態々こんな場所には来ていない筈だし、他の勇者達との接点もなくて、烈王とも再開する事はなかったか。
 そんな事を考えていると、麗美はラミナを見て…何やら笑顔を向けていた。
 ラミナはその笑みに対して何かを察すると、僕の背後に隠れたのだった。
 恐らく…勇者紫乃と同じ物を察したのだろう。

 「ネコミミ…可愛い!」
 「ラミナは人見知りだから、あまり怖がらせないでくれよ。」
 「そんな事はしないよ?」
 「紫乃がな…ラミナに必要以上にちょっかいを出して、怖がらせた事があったからな。」

 ラミナは僕の背後で少し震えている感じだった。
 勇者紫乃のやった事は、それ程までにラミナに恐怖心を植え付けたのだろう。

 「…で、これから烈王はどうするんだ?」
 「神からの要望に応えて、魔王を倒す為の行動は起こすつもりだ。元々の目的はそれだったからな!」
 「そうか、なら…他の勇者3人の様に、烈王と麗美にも武具を作ってやるよ。この世界に勇者専用の伝説の聖剣…があるかどうかは知らないが、それまでの繋ぎの武器として使ってくれ。」
 「そう言えば、エイジや紫乃から聞いたんだが…輝は勇者よりも強いギフトを持っているという話じゃないか!」
 「この世界では、ホーリーと呼んでくれ。まぁ、色々あって…数々のギフトを女神や他の神々から貰ったりしたけどな。」
 「なら、魔王討伐に為に一緒に…」
 「断る!僕には魔王討伐とかはどうでも良い話だからな。」
 「輝……」
 「ホーリーだ。」
 「て…いや、ホーリー…親友の頼みを断る気か?」
 「それを言われると辛いが、これ以上…僕の平穏な生活を邪魔されるのはなぁ?」

 僕がそういうと、烈王は黙ってしまった。
 僕の事を親友と言ってくれる烈王を助けたいという気持ちはある。
 だけど、それは一緒に旅をする…という事ではなくて、武具を提供したりする支援する程度で良いと思う。
 
 「なら、俺は魔王を討伐した暁には…この世界に留まって、今度こそお前と一緒に…」
 「いや、帰れよ…獅子神家の跡取り息子!お前がこの世界に残ったら、獅子神家が途絶えるだろう?お前も僕と一緒で1人っ子なんだし…」
 「いや、俺がいなくなったとしても、別の後継者が俺の代わりに継いでくれるだろうし…」
 「いやいや、お前がこの世界に残ってどうするんだよ!紫乃の様に目的があるのなら、別に構わないが…」
 「紫乃は何か目的があるのか?」
 「猫人族を集めて、アイドルプロデュースをするとかほざいていたな。ねこまんまカルテットを結成させて、この世界で流行らせるとか…」
 
 僕は勇者紫乃の考えを聞いて呆れていた。
 猫人族が非常に珍しい種族だったら、需要はあったかも知れないけど…?
 この世界では、獣人族は特に珍しい種族というわけでもないし、猫人族もその街に居なくても、他の街では普通に見掛ける種族だからなぁ?
 そんな中でアイドル化は…難しいだろうなぁ。
 
 「なぁ、て…いや、ホーリー…」
 「言いにくいのなら輝でも良いよ。」
 「そうか…なら輝、俺はお前の事を親友だと思っている!」
 「それが分からないんだよなぁ…?お前は僕と違って友達にも恵まれていると思うし、財力に物を言わせれば、何でも手に入れる事ができるだろ?」
 「友達…は、俺にはいないな。俺の周りに集まる連中は、獅子神家の名にあやかりたい奴等や金目当ての奴が多い。輝の様に、金にあまり関心が無い友達は居なかったからな。」
 「別に、金に関心が無いわけではなかったけどなぁ?毎日貧しい生活をしいられていたし、贅沢すら出来なかったからな。」
 「だが、輝は俺に一度も金をせびりに来た事はなかっただろ?」
 「僕は金を稼ぐ大変さや、金の有り難みを知っていたからな。例え友人が裕福だからって、他人の金が欲しいと思った事はなかったな。」
 「だから俺は、そんな輝を親友だと思えたんだよ。」

 烈王も友達と呼べる存在が居なかったのか。
 まさか、そんな僕を親友と言ってくれた事には感謝をしているが…?
 ただなぁ…以前に烈王の財布を拾った時に、中身を見て驚愕した事があったんだよなぁ。
 万札が100枚くらい入っていて、全てネコババすれば…当面はバイトをしなくても良くなるとか、1枚位なら…今夜は肉を喰えるとか考えた事もあったな。
 まぁ、結局…それをしてしまえば、僕をヤ○ザに売った最低な両親と同じ事をしてしまうと感じて、すぐに返したけどね。
 それ以来かな、烈王がちょくちょく何かに付けて会いに来る様になったのは…
 
 さて、烈王には…何をどう話せば納得をしてくれるんだろうな?
 これは…難しいぞ。
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