【不定期】自意識過剰の勘違い勇者は、今日も聖女に縋りつく!

アノマロカリス

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クズ聖女とゲス勇者の章

第一話 最低な二人…

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 俺の名前はカミュ、年齢は17歳。
 得意な物は剣術…という事にしているが、この時代は強さがモノをいう時代なので学んでいただけだ。
 俺は基本的に努力というものが嫌いだ。
 努力なんて熱血感や正義感という暑苦しい奴らが死に物狂いでやる行為であり、俺の様なスマートなイケメンがするものでは無い。
 この村に住む元騎士の爺さんに手解きを受けていて俺の剣術は中々のものらしい。
 極めれば王国の騎士に匹敵する強さと言われたが、俺はそこまで極めたいとは思わない。
 極める程になってしまったら、暑苦しい奴等の様に筋肉ムキムキになってモテなくなるからだ!
 何事も程々でいい。

 「今日もカミュの為に用意をして来たの!」
 「私もカミュの為に作って来たんだから!」
 「ちょっと抜け駆けしないでよ!」
 「皆、俺なんかの為に争わないでくれよ。君達の想いは全て受け取るからさ!」

 今日もグレールカ村の村娘達が俺に貢ぎ物を用意して来てくれる。
 これのお陰で俺は飯に金を使わなくて済む。
 とはいえ、全部喰ったら醜く太ってしまう。
 何事も程々が良いんだ。
 俺は村娘達から飯を受け取ってその場を後にする。
 三人の中で割と料理が上手い子の物を夕飯にし、他の二人の料理は要らないので豚に喰わせる。
 そのお陰か…うちで飼っている豚は、他の豚よりも良い物を喰っている所為か他の家よりも丸々肥っていた。
 うちの豚は嬉しさのあまり俺の元に近寄ってくるが、感謝だけすれば良いだけで来るんじゃねぇよ。
 お前の臭い匂いが俺に移るだろうが!

 「お前は邪険にしていても嬉しそうに来るな…」

 そろそろ頃合いか…売りに出せば他より高く買い取って貰えるだろう。
 飼っていて情が湧かないのかって?
 家畜に情が湧く訳ねぇだろ!
 コイツらがいかに高く売れるかによって、俺が得する為の道具なのだからな!
 …という、最低な男だった。

 「あら、カミュ…豚はそろそろ出荷が出来そうなくらいになったわね。」
 「カーネリアか、今日もアコギな真似をして稼いで来たのか?」
 「人聞が悪いわね、村の老人達を治して得た正当な報酬よ!」
 
 幼馴染のカーネリアは、幼い頃から回復魔法が使えた。
 それで村の怪我した者や老人達癒して報酬を得ている…のだが?

 「最近のジジィやババァの報酬も昔程貰えないからね。もう少し金を持っている奴が現れないかしら?」
 「この村にいる限りは、稼げてもそんなもんだ。」
 「そこで目を付けたのがカミュの豚よ。そろそろ売りに出すんでしょ?」
 「お前は…俺の可愛い家畜の売り上げを狙っているのか?」
 「そうよ、少しでもお金はあるに越した事がないからね。」
 「なんでお前なんかに渡さねぇといけねぇんだよ!」
 「あの子達が一生懸命にカミュの為に作って来た料理を豚に喰わせているとチクられたくなければ、口止め料として払うのね。」
 「お前は本当に良い性格をしているな!」

 幼馴染のカーネリアは、俺と同じ17歳で回復魔法が使えるので…グレールカ村ではちょっとした聖女扱いをされている。
 見た目は絶世の美少女…だが、俺はコイツの真っ黒な性格を知っているので惚れる事はない。
 俺が別な村出身で、コイツの性格を全く知らなければ…口説きまくっているだろうが、コイツの心の中の真っ黒さは魔王に匹敵するレベルなので、世界で二人だけになっても手を出す事はまず無いだろう。

 「それにしてもお前を抜かすと、この村の女も大した奴が居ないよな…」
 「あら、わかっているじゃない!」
 「お前は…だけは良いからな。性格はだが。」
 「カミュだってだけは良いでしょ。性格はだけど…」
 「俺が最低だと?」
 「あの子達が作った料理を豚に与えているんだから。」
 「喰い切れないから腐らせて捨てるよりも有効活用しているだけだ!誤解を生む様な事を言うなよ。」
 「へっ…」
 「ふふっ…」

 二人の美男美女は、普段では見られないくらいに悪どい笑みを浮かべて微笑んでいた。
 そして翌日…グレールカ村ではちょっとした事件が起きるのだった。

 それは…この二人にとって今後を左右する始まりになる出来事だった。
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