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第三章
第三話 準備期間は自由に行動します。(色々やる事が多いです)
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さて、魔王サズンデスがサーディリアン聖王国に侵攻を始めるまでに1週間と分かったので、僕はある行動をしようと考え込んでいた。
すると、ヴォルガンが声を掛けて来た。
「ダン殿、何か対策はありそうか?」
「まぁ、色々考えてはおりますが…魔王サズンデスがサーディリアン聖王国に侵攻すると言っていましたが、まさか魔王自ら侵攻してくるわけはありませんよね?」
「流石にそれは無いとは思うが…?」
「それなら良かったですよ、配下はともかく…魔王自ら侵攻して来たら、流石の僕でも荷が重いので。」
魔王サズンデスの配下は、三元将、四天王、八魔将、十六鬼影衆…となっているらしい。
個々の能力までは分からないけど、配下なら戦って勝てる可能性はある。
それに…直接に手を下さなくても、返り討ちにする方法も。
「ただ、準備する時間は必要ですからね! 決戦までは1人で行動をしたいのですが…」
「お兄ちゃんは一緒に居てくれないの?」
「相手が相手だからね、リアはベルと一緒にいつもの様に訓練に励んでいて。」
「師匠…」
僕は2人の保護者という立場上、一緒に居るべきなのだろうが…?
移動する際に2人が一緒に居ると、行動範囲も狭まって来る。
やはり…乗り物は欠かせないだろうけど、それは侵攻を食い止めてからじゃないとなぁ。
「ダン殿なら、問題は無いとは思うが…具体的に何をするのかは教えて欲しいな。」
「そうですね…この国に来てから、何者かの思念派を送られてくるのです。 ここより遥か北西から…」
「それは一体どんなものなんだ?」
「オレはもうじき命が尽きる、その前にオレの使い手を…という声が聞こえてくるんです。 魔王との戦いも大事ですが、日に日に強くなっている声が気になっていて…」
「呪いの類か何かなのか? 魔の宿る物ならその可能性はあるかも知れないが…」
「ここからではそこまでは分かりかねますので、とりあえず確認をしに行こうかと思っております。」
「ふむぅ…」
この国に来てから声が聞こえていたというのは本当の話だった。
ただ、最初はあまりに声が小さくて気にも留めなかったのだけれど、日を追う毎に段々強くなって来るので鬱陶しさを感じていた。
「ダン殿が不在の間…俺達に出来る事は無いか?」
「そうですねぇ…? 出来るだけ多くの武具を揃えておいて下さい。 予備武具というのもありますが、僕が付与魔法を込めますので…」
「ダン殿は付与魔法も使えるのか!」
「これで、幹部達はともかく…一般の魔物や魔獣相手に引けを取る事は無くなるでしょう。 それ以外にも、僕が強化魔法を施しますし…」
「強化魔法はありがたいが、それを行っている間はダン殿は戦えないのではないか?」
「そうですね、魔物や魔獣の軍勢は冒険者達に任せます。 僕は全てを討伐し終えた後に来る幹部達を相手にしたいと思いますので…」
「ダン殿1人でか⁉」
「えぇ、ちょっとした作戦がありますので…」
幹部達相手にしか使えない秘策はあるんだけど、先に魔物や魔獣相手に使うと…下手すると対策を取られる可能性がある。
あとは、幹部達というのがどの程度の奴等が来るのかが気になるところだけど…?
大国を攻め落とすともなれば、下っ端の幹部を向かわせる…というのは考え辛いんだよねぇ?
せめて、魔王というのがもう少し分かりやすい性格をしているのなら助かるんだけど。
「とりあえず、行って来ます。」
「決戦までは戻って来るんだよな?」
「この声の主がどの程度離れているかにもよりますが、まぁ…それ程遅くはならないと思います。」
僕は冒険者ギルドの外に出てから、飛行魔法で声の主の元に向かって飛んで行った。
それを見たヴォルガンは、唖然としていた。
「あんな魔法があるのか…」
「お兄ちゃん、ベルと一緒にいつもの修業しているからね~」
「師匠、いってらっしゃい!」
僕は声の主の場所に向かって飛んでいた。
その途中に、割と大きな町を見つけたので鑑定魔法をした。
「トライヘリア港町か…他大陸に行く場合は、ここから船に乗るのか。」
僕1人なら飛行魔法で十分だけど、レイリアやクリアベールでは飛行魔法が使えないので、他大陸に向かう時は船で移動するしかない。
侵攻を食い止めたら、移動手段を確保しておかないとな。
「声の主は…海の向こうか。」
僕はてっきり、港町の積み荷の中にでも紛れ込んでいたと思ったが…そうではないらしい。
どれだけ距離が離れているかは分からないけど、あまり遠くだとねぇ?
そう思って飛んでいたんだけど、トライヘリア港町からそれ程遠くない距離の無人島から反応があったみたいだった。
「ここ…?」
流石にこの場所まで来ると、声の主はハッキリ聞こえた。
だけど、どう見ても人が居るとは思えない。
声の主は…人ではないのか?
僕は地面に降り立ってから、声の主が発している場所を特定した…んだけど、見るからに洞穴という場所から聞こえていたのだった。
「えーっと…誰かいますか?」
明らかに人の反応はないのだけれど、一応尋ねる事にした。
すると、洞穴の奥から声が響いて来た。
『む…誰だ?』
僕は洞穴の中を進んで行くと、奥に台座の様な物があり…そこにみすぼらしい剣が刺さっていた。
先程の声は…この剣から発せられていたみたいだった。
流石異世界だな、インテリジェンスソードとはねぇ?
「貴方の思念波が僕の所に届いていて、確認をする為に来たのですが…まさか剣だとは思わなかった。」
『オレの思念波は届いたのか、まさか異世界人に届くとは思わなかったが…?』
「僕が異世界人って分かるんですか?」
『異世界人というのは独特の気配がするからな、オレのかつての持ち主も異世界人だったし…似た気配がするからな!』
そういえば、過去にも異世界人が召喚されて世界を救ったという話だったな。
誰が来たかは知らんけど。
『お主からは、かつての持ち主である…ノブナガ・オダとソックリな気配があるな!』
「はい? ノブナガ・オダ⁉」
何だろう…凄く聞き覚えのある名前だった。
まさか、織田信長がこの世界に召喚されたのか?
『どうした、急に黙って?』
「いえ、凄く聞き覚えのある名前だったので…」
『恐らく、お主の知っての通りの者だと思うぞ。 ミツヒデと名乗る部下に建物に火を付けられて逃げ場を塞がれたと言っていたからな。 だけど、そのお話を知っているという事は…お主は、ノブナガ・オダと同じ日ノ本の出身か?』
「えぇ、そうです。 今は日本というのですが、かつての呼び方ではそう呼ばれていたみたいですね…」
僕の世界の歴史の教科書では、織田信長は本能寺を燃やされた際に…死体が一切見付からなかったという。
まぁ、異世界に召喚されていたら、死体なんか見付かる筈はないか?
『なぁ、異世界人よ…オレを使ってみる気はないか?』
「随分いきなりですね…」
『いや、このままだとオレは朽ち果てる寸前だったのでな、持ち主が現れて使ってくれれば生き延びる事が出来るんだが。』
「鑑定すると魔剣と表示されていますが…銘はありませんね?」
『オレは元は聖剣だったんだが、あまりにも長い間放置されていて話し相手もおらずにいたら、いつの間にか自分の名前すら忘れてしまってな。』
「なら、聖剣の状態に戻しましょうか…っていうか、自分の名前を忘れているのに、かつての持ち主の名前は憶えていたんですね?」
『聖剣に戻ることが出来るのか⁉︎ …前の持ち主のあいつはそれだけ個性が強かったから、忘れたくても忘れられなかったんだよ!』
どういう経緯で聖剣が魔剣になったのかは分からないけど…
でも僕のスキルに復元というのがあるから、それで元に戻るんじゃないかな?
「聖剣に戻れば、名前も思い出すんじゃ無いかな…というか、聖剣が何をすれば魔剣になるの?」
『長い間を放置されまくっていて、周囲の悪口を愚痴っていたら…負の感情に呑み込まれて、気付いたら魔剣になっていた。』
「はぁ…?」
この世界の聖剣は、愚痴ると魔剣になるのか。
ラノベでも元は聖剣が魔剣になったという話を聞いた事はあったけど、持ち主に裏切られたとか…そういう経緯だとばかり思っていたんだけど?
僕は魔剣に手を触れてから、復元のスキルを発動させた。
すると、先程までは黒いオーラを放っていた剣が…光のオーラを放つ剣になった。
「鑑定したら聖剣になりましたが…エグゼンリオンというのが貴方の名前みたいですね!」
『そうだ! オレの名はエグゼンリオンだ! 感謝する異世界人…って、名前をまだ聞いていなかったな?』
「僕の名前は、ダン・スーガーと言います。」
『では、ダン・スーガーよ! オレと契約を結ん…』
「いや、ちょっと待って下さい! 確かに聖剣には戻りましたが…偉く弱くありませんか? 現在の状態なら、まだ持っているミスリルの剣の方が強いですよ?」
『それは仕方が無いんだ、持ち主が魔物を倒した経験値を入手する事によって、オレも強化されるという仕組みになっているんだ。』
「なら…経験値を渡しましょうか? 僕の場合、レベルが高過ぎて…少し落としたいと思っていましたので。」
『お主は…レベルが700近くあるな? 一体今迄に何を倒して来た⁉︎』
倒して来た魔物は数多くいるけど、一気にレベルが上がった原因は恐らく…?
「多分だけど、邪神ルキシフェルというのを倒した際に爆発的にレベルが上がったのでは無いかと…」
『邪神ルキシフェルだと⁉︎』
「おや、知っているんですか…?」
『ノブナガ・オダと他の異世界人達と退けたのが邪神ルキシフェルだ! まさか…肉体を失った魂だけの存在の奴を倒せる者がいたとは思わなかった。』
僕は聖剣エグゼンリオンを手に取ってから、レベルを150位譲渡した。
すると、聖剣としては貧弱過ぎるステータスだったのが、一気に最終形態に変化したのだった。
『お…おい、こんなに渡してくれたのは有り難いが…お前に影響は無いのか⁉︎』
「この程度くらいなら問題は有りませんよ。 それに…1週間後にまた経験値が入る予定ですしね。」
『ん?』
「エグゼンリオンさんが聞いていたかどうかは分かりませんが…」
『呼び捨てで構わない、オレもダンと呼ばせて貰うからな!』
「では…エグゼンリオンが聞いていたかどうかは分かりませんが、魔王サズンデスというのが復活して、まず最初にサーディリアン聖王国に侵攻すると言ったのは聞こえました?」
『あぁ、あの馬鹿でかい声で響いたアレか!』
「実は…僕はそのサーディリアン聖王国にいるんですよ。 それで色々準備をする前に、まず先に思念波を確認する為にこの場所に来たんです。」
『長い間…洞穴にいたからな、当時の地名なら分かるが…現在の地名は良く分からん。 サーディリアン聖王国というのは?』
「この世界で2つある大国の1つらしいです。 伝承では、聖女と呼ばれた乙女がサーディリアン聖王国を創ったとか…」
『あぁ、ジャンヌ・ダルクという少女か! あいつ…戦乙女と呼ばれていた気がするが、聖女になったのか。』
なんか…サラッと凄い話が出てきたな。
伝承の異世界人って…他にどんな有名人なんだろうか?
『…となると、オレの力だけでは不足かも知れないな! 妹の気配は…かなり離れているな?』
「妹さんがいるんですか?」
『妹もオレと同じ聖剣だ! 戦力増強を図るなら、妹も回収した方が良いかもしれないな!』
聖剣エグゼンリオンはそう言い終わると、急に眩い光を放った。
何処かに転移した…というのまでは分かったんだけど、眩し過ぎて目が開けられなかった。
『に、兄さん⁉︎』
『よぉ、シャンゼ! 数百年?…振りだな‼︎』
「この方が妹さんなんですか?」
『そうだ! 妹のシャンゼリオンと言ってな…』
「シャンゼリオンって…勇者が手にする聖剣ですよね? 確か、聖竜国グランディオにあるという話では?…っていうか、ここは聖竜国グランディオ⁉︎」
『あの、兄さん…私は事情が全く飲み込めなんだけど?』
『オレの契約者のダン・スーガーと言ってな、少し前に魔王がある国を攻め込むという話を聞いたか?』
『えぇ、その話を聞いて…この国も手を貸せないかと騒がれていたんだけど。』
『今のオレの状態なら問題はないとは思うが、万が一を考えて…お前にも手を貸して貰おうと思ってな!』
『それは別に構わないけど、私はテレシア王国で救世主召喚された異世界人を…』
『ダンがその異世界人だ!…勇者では無いらしいが?』
僕はテレシア王国での召喚の話をエグゼンリオンとシャンゼリオンに話した。
シャンゼリオンは本来、勇者である翔也が手にする者だという事も。
『とりあえずは、勇者が手にするという話は置いといて…今は猶予が無いだろうから、私はダン君と契約を結ぶ事にしますね。』
「宜しくお願いします…って、シャンゼリオンもまだ完全体ではないみたいですね?」
『アレをやるんだな? シャンゼ、気をしっかり持てよ‼︎』
『え? それはどういう……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎』
僕はシャンゼリオンにも経験値を分け与えて完全体にした。
エグゼンリオン曰く…急激なレベルアップはかなりの負担になるという話だけど?
『気をしっかり持てって…そういう事だったのね⁉︎』
『オレもやられたが、かなり来るだろ?』
『歴代の持ち主でも、私を完全体まで進化させたことは無かったけど…こんなに譲渡しても大丈夫なの?』
『ダンは、邪神ルキシフェルを倒した者という話だ。 オレも聞いた時は唖然となったよ。』
『邪神ルキシフェルを倒したって、それならその強さも納得だわ!』
エグゼンリオンもシャンゼリオンも異常な迄の輝きを放っていた。
この二本の聖剣があれば…どんな奴が相手でも負ける気はしないな?
「さて、話も終わったみたいだし…サーディリアン聖王国に帰りたいんだけど、このままシャンゼリオンを持ち出しても大丈夫なのかな?」
シャンゼリオンが置いてある場所は、城の宝物庫らしき場所にある。
シャンゼリオンを持って行く許可が欲しいところだけど、このまま宝物庫から出たら…?
『絶対に面倒な事になるわよねぇ? 事情は後日にして、とりあえずはこの場所からサッサと離れましょう。』
『だな、ここから出た瞬間にダンは捕まるだろうし…どんな説明をしても信じて貰う迄に時間がかかりそうだからなぁ。』
「下手に牢屋に捕まったりしたら、決戦の日までに戻れないだろうしね。」
此処が宝物庫で、シャンゼリオンは恐らく国宝級扱いになっているだろうから…?
侵入して必要なんですと言った所で、何の説得力も無いだろう。
なので僕は、サーディリアン聖王国に向けて転移魔法を発動して、聖竜国グランディオから離れたのだった。
そしてサーディリアン聖王国に戻って来た僕は、エグゼンリオンとシャンゼリオンの知識を元に武具に付与魔法を込めたり、ポーションやエリクサーを大量に創り出した。
そんな事をしていたら、あっという間に時間が過ぎて行き…気付けば明日が決戦の日になっていた。
「これで…準備は完了だと思いたいが?」
後は明日の決戦で全てが決まる!
僕は緊張で中々寝付く事が出来なかった。
~~~~~一方、聖竜国グランディオでは?~~~~~
僕が立ち去ってから数日後に、翔也達は聖竜国グランディオに到着した。
そして聖剣シャンゼリオンを…という話で、宝物庫を確認したら?
聖剣シャンゼリオンが持ち去られていて、聖竜国グランディオ内で大騒ぎになっていたという。
すると、ヴォルガンが声を掛けて来た。
「ダン殿、何か対策はありそうか?」
「まぁ、色々考えてはおりますが…魔王サズンデスがサーディリアン聖王国に侵攻すると言っていましたが、まさか魔王自ら侵攻してくるわけはありませんよね?」
「流石にそれは無いとは思うが…?」
「それなら良かったですよ、配下はともかく…魔王自ら侵攻して来たら、流石の僕でも荷が重いので。」
魔王サズンデスの配下は、三元将、四天王、八魔将、十六鬼影衆…となっているらしい。
個々の能力までは分からないけど、配下なら戦って勝てる可能性はある。
それに…直接に手を下さなくても、返り討ちにする方法も。
「ただ、準備する時間は必要ですからね! 決戦までは1人で行動をしたいのですが…」
「お兄ちゃんは一緒に居てくれないの?」
「相手が相手だからね、リアはベルと一緒にいつもの様に訓練に励んでいて。」
「師匠…」
僕は2人の保護者という立場上、一緒に居るべきなのだろうが…?
移動する際に2人が一緒に居ると、行動範囲も狭まって来る。
やはり…乗り物は欠かせないだろうけど、それは侵攻を食い止めてからじゃないとなぁ。
「ダン殿なら、問題は無いとは思うが…具体的に何をするのかは教えて欲しいな。」
「そうですね…この国に来てから、何者かの思念派を送られてくるのです。 ここより遥か北西から…」
「それは一体どんなものなんだ?」
「オレはもうじき命が尽きる、その前にオレの使い手を…という声が聞こえてくるんです。 魔王との戦いも大事ですが、日に日に強くなっている声が気になっていて…」
「呪いの類か何かなのか? 魔の宿る物ならその可能性はあるかも知れないが…」
「ここからではそこまでは分かりかねますので、とりあえず確認をしに行こうかと思っております。」
「ふむぅ…」
この国に来てから声が聞こえていたというのは本当の話だった。
ただ、最初はあまりに声が小さくて気にも留めなかったのだけれど、日を追う毎に段々強くなって来るので鬱陶しさを感じていた。
「ダン殿が不在の間…俺達に出来る事は無いか?」
「そうですねぇ…? 出来るだけ多くの武具を揃えておいて下さい。 予備武具というのもありますが、僕が付与魔法を込めますので…」
「ダン殿は付与魔法も使えるのか!」
「これで、幹部達はともかく…一般の魔物や魔獣相手に引けを取る事は無くなるでしょう。 それ以外にも、僕が強化魔法を施しますし…」
「強化魔法はありがたいが、それを行っている間はダン殿は戦えないのではないか?」
「そうですね、魔物や魔獣の軍勢は冒険者達に任せます。 僕は全てを討伐し終えた後に来る幹部達を相手にしたいと思いますので…」
「ダン殿1人でか⁉」
「えぇ、ちょっとした作戦がありますので…」
幹部達相手にしか使えない秘策はあるんだけど、先に魔物や魔獣相手に使うと…下手すると対策を取られる可能性がある。
あとは、幹部達というのがどの程度の奴等が来るのかが気になるところだけど…?
大国を攻め落とすともなれば、下っ端の幹部を向かわせる…というのは考え辛いんだよねぇ?
せめて、魔王というのがもう少し分かりやすい性格をしているのなら助かるんだけど。
「とりあえず、行って来ます。」
「決戦までは戻って来るんだよな?」
「この声の主がどの程度離れているかにもよりますが、まぁ…それ程遅くはならないと思います。」
僕は冒険者ギルドの外に出てから、飛行魔法で声の主の元に向かって飛んで行った。
それを見たヴォルガンは、唖然としていた。
「あんな魔法があるのか…」
「お兄ちゃん、ベルと一緒にいつもの修業しているからね~」
「師匠、いってらっしゃい!」
僕は声の主の場所に向かって飛んでいた。
その途中に、割と大きな町を見つけたので鑑定魔法をした。
「トライヘリア港町か…他大陸に行く場合は、ここから船に乗るのか。」
僕1人なら飛行魔法で十分だけど、レイリアやクリアベールでは飛行魔法が使えないので、他大陸に向かう時は船で移動するしかない。
侵攻を食い止めたら、移動手段を確保しておかないとな。
「声の主は…海の向こうか。」
僕はてっきり、港町の積み荷の中にでも紛れ込んでいたと思ったが…そうではないらしい。
どれだけ距離が離れているかは分からないけど、あまり遠くだとねぇ?
そう思って飛んでいたんだけど、トライヘリア港町からそれ程遠くない距離の無人島から反応があったみたいだった。
「ここ…?」
流石にこの場所まで来ると、声の主はハッキリ聞こえた。
だけど、どう見ても人が居るとは思えない。
声の主は…人ではないのか?
僕は地面に降り立ってから、声の主が発している場所を特定した…んだけど、見るからに洞穴という場所から聞こえていたのだった。
「えーっと…誰かいますか?」
明らかに人の反応はないのだけれど、一応尋ねる事にした。
すると、洞穴の奥から声が響いて来た。
『む…誰だ?』
僕は洞穴の中を進んで行くと、奥に台座の様な物があり…そこにみすぼらしい剣が刺さっていた。
先程の声は…この剣から発せられていたみたいだった。
流石異世界だな、インテリジェンスソードとはねぇ?
「貴方の思念波が僕の所に届いていて、確認をする為に来たのですが…まさか剣だとは思わなかった。」
『オレの思念波は届いたのか、まさか異世界人に届くとは思わなかったが…?』
「僕が異世界人って分かるんですか?」
『異世界人というのは独特の気配がするからな、オレのかつての持ち主も異世界人だったし…似た気配がするからな!』
そういえば、過去にも異世界人が召喚されて世界を救ったという話だったな。
誰が来たかは知らんけど。
『お主からは、かつての持ち主である…ノブナガ・オダとソックリな気配があるな!』
「はい? ノブナガ・オダ⁉」
何だろう…凄く聞き覚えのある名前だった。
まさか、織田信長がこの世界に召喚されたのか?
『どうした、急に黙って?』
「いえ、凄く聞き覚えのある名前だったので…」
『恐らく、お主の知っての通りの者だと思うぞ。 ミツヒデと名乗る部下に建物に火を付けられて逃げ場を塞がれたと言っていたからな。 だけど、そのお話を知っているという事は…お主は、ノブナガ・オダと同じ日ノ本の出身か?』
「えぇ、そうです。 今は日本というのですが、かつての呼び方ではそう呼ばれていたみたいですね…」
僕の世界の歴史の教科書では、織田信長は本能寺を燃やされた際に…死体が一切見付からなかったという。
まぁ、異世界に召喚されていたら、死体なんか見付かる筈はないか?
『なぁ、異世界人よ…オレを使ってみる気はないか?』
「随分いきなりですね…」
『いや、このままだとオレは朽ち果てる寸前だったのでな、持ち主が現れて使ってくれれば生き延びる事が出来るんだが。』
「鑑定すると魔剣と表示されていますが…銘はありませんね?」
『オレは元は聖剣だったんだが、あまりにも長い間放置されていて話し相手もおらずにいたら、いつの間にか自分の名前すら忘れてしまってな。』
「なら、聖剣の状態に戻しましょうか…っていうか、自分の名前を忘れているのに、かつての持ち主の名前は憶えていたんですね?」
『聖剣に戻ることが出来るのか⁉︎ …前の持ち主のあいつはそれだけ個性が強かったから、忘れたくても忘れられなかったんだよ!』
どういう経緯で聖剣が魔剣になったのかは分からないけど…
でも僕のスキルに復元というのがあるから、それで元に戻るんじゃないかな?
「聖剣に戻れば、名前も思い出すんじゃ無いかな…というか、聖剣が何をすれば魔剣になるの?」
『長い間を放置されまくっていて、周囲の悪口を愚痴っていたら…負の感情に呑み込まれて、気付いたら魔剣になっていた。』
「はぁ…?」
この世界の聖剣は、愚痴ると魔剣になるのか。
ラノベでも元は聖剣が魔剣になったという話を聞いた事はあったけど、持ち主に裏切られたとか…そういう経緯だとばかり思っていたんだけど?
僕は魔剣に手を触れてから、復元のスキルを発動させた。
すると、先程までは黒いオーラを放っていた剣が…光のオーラを放つ剣になった。
「鑑定したら聖剣になりましたが…エグゼンリオンというのが貴方の名前みたいですね!」
『そうだ! オレの名はエグゼンリオンだ! 感謝する異世界人…って、名前をまだ聞いていなかったな?』
「僕の名前は、ダン・スーガーと言います。」
『では、ダン・スーガーよ! オレと契約を結ん…』
「いや、ちょっと待って下さい! 確かに聖剣には戻りましたが…偉く弱くありませんか? 現在の状態なら、まだ持っているミスリルの剣の方が強いですよ?」
『それは仕方が無いんだ、持ち主が魔物を倒した経験値を入手する事によって、オレも強化されるという仕組みになっているんだ。』
「なら…経験値を渡しましょうか? 僕の場合、レベルが高過ぎて…少し落としたいと思っていましたので。」
『お主は…レベルが700近くあるな? 一体今迄に何を倒して来た⁉︎』
倒して来た魔物は数多くいるけど、一気にレベルが上がった原因は恐らく…?
「多分だけど、邪神ルキシフェルというのを倒した際に爆発的にレベルが上がったのでは無いかと…」
『邪神ルキシフェルだと⁉︎』
「おや、知っているんですか…?」
『ノブナガ・オダと他の異世界人達と退けたのが邪神ルキシフェルだ! まさか…肉体を失った魂だけの存在の奴を倒せる者がいたとは思わなかった。』
僕は聖剣エグゼンリオンを手に取ってから、レベルを150位譲渡した。
すると、聖剣としては貧弱過ぎるステータスだったのが、一気に最終形態に変化したのだった。
『お…おい、こんなに渡してくれたのは有り難いが…お前に影響は無いのか⁉︎』
「この程度くらいなら問題は有りませんよ。 それに…1週間後にまた経験値が入る予定ですしね。」
『ん?』
「エグゼンリオンさんが聞いていたかどうかは分かりませんが…」
『呼び捨てで構わない、オレもダンと呼ばせて貰うからな!』
「では…エグゼンリオンが聞いていたかどうかは分かりませんが、魔王サズンデスというのが復活して、まず最初にサーディリアン聖王国に侵攻すると言ったのは聞こえました?」
『あぁ、あの馬鹿でかい声で響いたアレか!』
「実は…僕はそのサーディリアン聖王国にいるんですよ。 それで色々準備をする前に、まず先に思念波を確認する為にこの場所に来たんです。」
『長い間…洞穴にいたからな、当時の地名なら分かるが…現在の地名は良く分からん。 サーディリアン聖王国というのは?』
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『あぁ、ジャンヌ・ダルクという少女か! あいつ…戦乙女と呼ばれていた気がするが、聖女になったのか。』
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「妹さんがいるんですか?」
『妹もオレと同じ聖剣だ! 戦力増強を図るなら、妹も回収した方が良いかもしれないな!』
聖剣エグゼンリオンはそう言い終わると、急に眩い光を放った。
何処かに転移した…というのまでは分かったんだけど、眩し過ぎて目が開けられなかった。
『に、兄さん⁉︎』
『よぉ、シャンゼ! 数百年?…振りだな‼︎』
「この方が妹さんなんですか?」
『そうだ! 妹のシャンゼリオンと言ってな…』
「シャンゼリオンって…勇者が手にする聖剣ですよね? 確か、聖竜国グランディオにあるという話では?…っていうか、ここは聖竜国グランディオ⁉︎」
『あの、兄さん…私は事情が全く飲み込めなんだけど?』
『オレの契約者のダン・スーガーと言ってな、少し前に魔王がある国を攻め込むという話を聞いたか?』
『えぇ、その話を聞いて…この国も手を貸せないかと騒がれていたんだけど。』
『今のオレの状態なら問題はないとは思うが、万が一を考えて…お前にも手を貸して貰おうと思ってな!』
『それは別に構わないけど、私はテレシア王国で救世主召喚された異世界人を…』
『ダンがその異世界人だ!…勇者では無いらしいが?』
僕はテレシア王国での召喚の話をエグゼンリオンとシャンゼリオンに話した。
シャンゼリオンは本来、勇者である翔也が手にする者だという事も。
『とりあえずは、勇者が手にするという話は置いといて…今は猶予が無いだろうから、私はダン君と契約を結ぶ事にしますね。』
「宜しくお願いします…って、シャンゼリオンもまだ完全体ではないみたいですね?」
『アレをやるんだな? シャンゼ、気をしっかり持てよ‼︎』
『え? それはどういう……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎』
僕はシャンゼリオンにも経験値を分け与えて完全体にした。
エグゼンリオン曰く…急激なレベルアップはかなりの負担になるという話だけど?
『気をしっかり持てって…そういう事だったのね⁉︎』
『オレもやられたが、かなり来るだろ?』
『歴代の持ち主でも、私を完全体まで進化させたことは無かったけど…こんなに譲渡しても大丈夫なの?』
『ダンは、邪神ルキシフェルを倒した者という話だ。 オレも聞いた時は唖然となったよ。』
『邪神ルキシフェルを倒したって、それならその強さも納得だわ!』
エグゼンリオンもシャンゼリオンも異常な迄の輝きを放っていた。
この二本の聖剣があれば…どんな奴が相手でも負ける気はしないな?
「さて、話も終わったみたいだし…サーディリアン聖王国に帰りたいんだけど、このままシャンゼリオンを持ち出しても大丈夫なのかな?」
シャンゼリオンが置いてある場所は、城の宝物庫らしき場所にある。
シャンゼリオンを持って行く許可が欲しいところだけど、このまま宝物庫から出たら…?
『絶対に面倒な事になるわよねぇ? 事情は後日にして、とりあえずはこの場所からサッサと離れましょう。』
『だな、ここから出た瞬間にダンは捕まるだろうし…どんな説明をしても信じて貰う迄に時間がかかりそうだからなぁ。』
「下手に牢屋に捕まったりしたら、決戦の日までに戻れないだろうしね。」
此処が宝物庫で、シャンゼリオンは恐らく国宝級扱いになっているだろうから…?
侵入して必要なんですと言った所で、何の説得力も無いだろう。
なので僕は、サーディリアン聖王国に向けて転移魔法を発動して、聖竜国グランディオから離れたのだった。
そしてサーディリアン聖王国に戻って来た僕は、エグゼンリオンとシャンゼリオンの知識を元に武具に付与魔法を込めたり、ポーションやエリクサーを大量に創り出した。
そんな事をしていたら、あっという間に時間が過ぎて行き…気付けば明日が決戦の日になっていた。
「これで…準備は完了だと思いたいが?」
後は明日の決戦で全てが決まる!
僕は緊張で中々寝付く事が出来なかった。
~~~~~一方、聖竜国グランディオでは?~~~~~
僕が立ち去ってから数日後に、翔也達は聖竜国グランディオに到着した。
そして聖剣シャンゼリオンを…という話で、宝物庫を確認したら?
聖剣シャンゼリオンが持ち去られていて、聖竜国グランディオ内で大騒ぎになっていたという。
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