聖女になんかなりたくない! 聖女認定される前に…私はバックれたいと思います。

アノマロカリス

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自由なスローライフの章

第六十二話

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 「ウラノスのパーティーメンバーの重症を負った怪我を治したという嬢ちゃんか!」

 「ポーションで…ですけどね。」

 「そのポーションはまだあるのか?」

 「その前に貴方は何処の誰ですか?」

 冒険者ギルドに入るなり、髭面の大きな男が私に詰め寄って来た。

 「ワシはこの冒険者ギルドのカシリス支部のギルドマスターのゼーヴェンだ!」

 「そうですか、私は…フォルトゥナと申します。」

 フォルトゥナというのは、伝承の聖女様であるエルレインの名字なんだけど…世間では余り知られていないので名乗った。

 流石に神殿関係者も私が偽名を使うにしたって、伝承の聖女様の名字を名乗るとは思うまい。

 「フォルトゥナ、ポーションはあるのか?」

 「あるにはありますが…私のポーションを幾らで買い取って頂けるのですか?」

 「ウラノスのパーティーメンバーの怪我を治したというポーションは上級という話だったが、あの怪我の具合では上級ポーション位では治らないと思うのだが…?」

 私はゼーヴェンに上級ポーションを見せた。

 ゼーヴェンは鑑定魔法を使用すると、名前は確かに上級ポーションなんだけど++という補正が付いていた。

 「これは…エクスポーションに近い効果を持っているな⁉︎」

 「エクスポーションか何かは知りませんが、私のは上級ポーションです。幾らで?」

 「流石にエクスポーションともなると値段が付けようもない。少し負けてくれるとありがたいんだがなぁ。」

 「でしたら、ブルステーキを食べさせてくれる事で手を打ちましょう。」

 「ブルステーキで良いのか?」

 「先程食堂でブルステーキを食べようとしていたら、ウラノスさんの仲間の怪我を私のポーションで治した所を偶然見ていたCランク冒険者のリーダーに食べられちゃったんですよ。しかもそのリーダーは私の持っているポーションを1本銅貨1枚で買い取ってやるとか言われて…」

 「それは気の毒だったな。多分奴のことだと思うので後で叱っておく…ギルド内にも食堂があるからブルステーキを用意するので譲ってはくれないか?」

 「ブルステーキを食べさせてくれるのなら…」

 ゼーヴェンは厨房にブルステーキを注文すると、数十分後に鉄板の上で美味しそうな音を鳴らしたブルステーキが運ばれて来た。

 私はやっとありつけると思ってナイフとフォークを用意して肉を切っていると…

 冒険者ギルドに入って来た同じ歳くらいの少年が、「腹減った~」と言って私のブルステーキを見て皿ごと奪って行き貪り食べていた。

 そして食べ終わると…?

 「ガキの癖にこんな上等なモンを食ってんじゃねぇよ!」

 そう言って皿を私の目の前に叩きつけて来た。

 私は俯いて皿を見つめていると、ゼーヴェンは少年の胸ぐらを掴んで殴り飛ばしていた。

 私が肉類を食べようとすると必ず邪魔が入る。

 本当に呪いじゃないのかと思えてくる。

 「交渉決裂ですね。」

 「いや待ってくれ!ブルステーキをもう1度焼いてくれ‼︎」

 「ギルマス、今のが最後です。」

 「だそうですよ、では失礼します。」

 私は席を立とうとすると、ゼーヴェンは頭を下げて来た。

 「まだ何か?」

 「本当にすまなかった‼︎」

 「謝罪は受け取りました。ですがお売りする気は失せましたので、これで…」

 私はそう言ってから冒険者ギルドを出ようとすると、ゼーヴェンが肉を奪っていた少年を暴行しまくっていた。

 私はいい気味だと思って冒険者ギルドを後にすると、カシリスの街を出て自宅まで移動した。

 「今日は肉にはありつけなかったけど、魚があるからそっちを食べよう。」

 そう思っていたのに、天日干ししていた魚は全部無くなっていた。

 「結界をしてあるのにどうやって入れたの?」

 「どうやらマスターの結界は魔物避けの結界で、魚を奪って行ったのは魔物ではない普通の鳥か何かだったのでしょう。」

 畑を見ると少し荒らされていたので、私は動物でも入れない結界を張り巡らせた。

 そして晩御飯はいつもの野菜のスープになっていた。

 「もう…ブルじゃなくても良いから、ボアでも良いから食べてやる!」

 リアラは数日後にカシリスの街に赴くのだった。
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