卵子バンク小説一覧

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22世紀初めに、Zウイルス感染症という女性だけに感染する疾患が流行し、地球上の女性人口は激減、人類の男女比は八対一までにバランスが崩れた。
純一(28)は、婚約者恵美(26)をZウルス感染症で亡くした。この時期の日本政府は、極端な出生率の低下から、人類滅亡の危機をアンドロイド婚という秘策導入により、その後の出生率を上げ人口減少に歯止めをかけた。アンドロイド婚の夫婦は、卵子バンクから卵子の提供を受け人工授精を行い、その後、標準的な出産体重の三千グラムになれば、胎児ファームから要望した家庭に届けられる。
純一は、恵美の生まれ変わりのアンドロイドEMI(26)との結婚を申請し暮らし始めた。政府の提供する卵子バンクから、最適なマッチングで受精され、後に二人の子供を授かった。アンドロイド婚を利用し子供を育てた場合、個人の一生涯の就労義務日数から三千日を減らしリタイアする事が出来る。その後の生活は生涯保障されるというメリットがあり、日本の出生率も順調に回復して行った。
純一の現役時代およびリタイア後の二人の暮らしは幸せだった。純一は、EMIとの毎日の生活は楽しく過ぎて行った。リタイア後には、純一も髪がグレーに染まって行くが、EMIと一緒に歳を重ねる事が幸せだった。
純一が87歳になると、ある時期から現役時代に起こした交通事故が、フラッシュバックするようになり次第に心身は衰弱して行く。この時代の死因の一位は、フラッシュバック病という病だ。この時代の平均寿命が百歳を越える中、純一は、87歳というこの時代には異例の若さで息を引き取った。EMIは、政府生命維持管理局に純一の死亡を報告し、自らも生命維持活動装置を切り生命活動の終わりを迎えた。
文字数 13,893
最終更新日 2025.04.30
登録日 2025.04.30
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