第13回漫画大賞 秋の陣終了

第13回漫画大賞 秋の陣

選考概要

今回、編集部内で大賞候補作としたのは「新人君と童顔さん」「異世界召喚されたけどみんなが俺のメンタルを殺しにくる」「ダーリンは絶滅危惧種」「Darkness Messiah ー闇の救世士ー」「恋愛読本なんていらない」「異星界転星」「アルメリアちゃんとギンセンカ」「ベーカリー漫画「CROSS」」「アダムの花婿」「美しく生まれて」「ケモナー娘と悪霊キツネ」「ゼロといちの世界」「EtoR」「あなたの神様いただきます」「人形の城」「Undead Mother Goose 00」「幽霊アパート」「キラキラしていてね」「下町ダンジョン」の19作品。

個性が光る魅力的な候補作の中から、編集部内で広く支持を得た「異星界転星」を大賞(賞金50万円)に選出した。大賞選出は2015年開催の第8回以来約4年ぶりで、漫画大賞として喜ばしい結果となった。

次に各賞の選考では、編集部内での人気を競っていた「恋愛読本なんていらない」を編集長賞(賞金10万円)に、「異世界召喚されたけどみんなが俺のメンタルを殺しにくる」をネコ部長賞(賞金10万円)に選出した。今回から新設された「BL賞(賞金10万円)」ではオリジナリティに富む優れた作品群のなかで、拮抗した評価ながらも、白熱した議論の末「アダムの花婿」を選出する結果となった。また、画風・作風に華があるという評価多数の「Darkness Messiah ー闇の救世士ー」とポテンシャルやセンスを感じさせる「下町ダンジョン」2作品を特別賞(賞金各5万円)に選出した。

「異星界転星」は、宇宙に旅立った主人公がファンタジー世界のような星に辿り着くSF作品。異世界ものとSFを融合した個性的かつポップさもある世界観や、続きがどうなるか思わず気になってしまう見せ方などが評価された。画面や要素の引き算をして読者に見せたい部分を絞り込むとより読みやすい作品になるだろう。

「恋愛読本なんていらない」は、古書店の娘と女子大講師の年の差ラブコメ作品。レトロ感のある個性的な絵柄が印象的で、自分のスタイルがすでに完成されていて安定感が突出していた。古書店や講師、年の差などの設定を活かしたストーリー作りを意識するとさらにドラマチックに話を展開できるだろう。

「異世界召喚されたけどみんなが俺のメンタルを殺しにくる」は、異世界転生した平凡な主人公が勇者として実力以上に祭り上げられるコメディ作品。時代にあったテーマと作風で、キャラクターメイキングの能力にも高い評価がついた。話の着地点を意識しながら物語の起伏をコントロール出来れば、さらに内容の幅が広がると感じた。

「アダムの花婿」は、魔女を目指す少年が悪魔と婚約するBL作品。可愛らしい絵柄でメリハリのある構成を意識出来ていてバランスが良く、将来性を強く感じた。読者を意識して何を一番伝えたいのかを表現出来れば作品の魅力も一気に高まるだろう。

「Darkness Messiah ー闇の救世士ー」は、科学者の父と、その実験台となり特異能力を付与された子供のダークファンタジー作品。ピュアな少年の可愛さと父親の狂気のギャップが魅力的で、設定の骨子もしっかり練られていた。説明不足になっている部分が散見されたので、今後設定をどこまで出してどこまで隠すのか、それをどのように説明するのかが課題。

「下町ダンジョン」は、妖怪の街に繋がっている下町の日常系作品。カメラワークやテンポが秀逸で、ポテンシャルに関して非常に高い評価を得た。主人公がどういう人間なのか、この物語がどこに向かうのかを意識して提示出来るとより世界観の骨子がハッキリしてぐっと解りやすくなると感じた。

「新人君と童顔さん」は、新人サラリーマンと童顔上司のBL作品。ウケの性格をドSにすることで、時折見せる可愛さをギャップとして引き立たせている。二人の関係性の構築は完璧なので、あとは話にちょっとしたトラブルを起こすことで起伏を持たせると、二人の間にさらにドラマが生まれるだろう。

惜しくも受賞を逃した12作品もそれぞれに見所があり、将来性を感じる作品ばかりだった。

「Undead Mother Goose 00」は、悪魔と対悪魔士のファンタジー作品。絵がすっきりしていて読みやすく、描きたいものを一本筋を通して描き切っている点が好印象。女性キャラクターの可愛さが際立っていた反面、主人公の影が薄くなってしまっているので内面描写のバランスを考える必要がある。

「美しく生まれて」は、美形の貧乏男子と根暗ストーカー男子のBL作品。耽美な絵柄で美しさに説得力があり、感情表現も非常に豊かなのでテンポよくスラスラと読めた。楽しさと色気が両立出来ていて、読者のことをきちんと意識して描いている印象。今の段階では登場人物がすべて美形なので、美しさ以外の魅力をもつキャラクターも描ければ表現の幅がさらに広がるだろう。

「アルメリアちゃんとギンセンカ」は、25歳男性と16歳女性の年の差カップルラブコメ。パロディ作品ゆえに世界観や関係性などの詳しい説明が大胆に省かれており、入り口の狭さが気になるものの、キャラクターの魅力や画力の高さである程度補われていた。ただし、それでも情報不足感は否めないので、単体で読ませるには読者に説明する情報の取捨選択をさらに意識する必要がある。

「ゼロといちの世界」はコンピューターに支配された世界での少年のヒューマンドラマ。説明することが多い設定だが、物語に必要な情報を上手く選択して構成している点が素晴らしい。画力は高いので、世界観を文字で説明せず、絵で表現する思い切りを持つことが今後の課題。

「あなたの神様いただきます」は、人間の体を取り戻すために各地で崇められている神を倒していくファンタジー作品。主人公の目的を序盤で説明する意識が感じられ、作者の好みがしっかり反映された世界観を構築出来ている。ストーリーとしては冒頭なので、ドラマ重視に振るのか、バトル重視に振るのかなどどのような方向性で構成するのかが肝。

「ダーリンは絶滅危惧種」は、気の弱い主人公がひょんなことでリーゼントのヤンキーに惚れられるBL作品。ライトな読み口でコメディ漫画としても十分面白い。「ステレオタイプな不良」という記号を上手く使ってキャラクターのギャップも出せているので、あとは二人の心の繋がりや恋愛面を、説得力を持たせて描ければBL作品としての魅力も出てくるだろう。

「キラキラしていてね」は、霊感少女といじめられっ子のヒューマンドラマ。いじめの描写の緊張感や間に迫力があり、自分が格好良いと思う構図も上手く表現できていると感じた。いい意味での尖りがあったので、そのエッジが効いた部分を最大化する意識で設定やストーリーの抑揚を描いていくと、作風の魅力がさらに底上げされるだろう。

「人形の城」は、不思議な力をもつお嬢様とそのメイドたちの衝突を描いたファンタジー作品。感情表現や演出のメリハリが素晴らしく、勢いでストーリーを読ませる力がある。展開にダイナミックさがある反面、急なところもあるので自然な感情の流れを意識して丁寧に描いていく必要がある。

「幽霊アパート」はスケベなおじさんと女性の悪霊のコメディ作品。画力に課題は多いが女の子が絶妙に可愛く見えるラインを心得ていると感じた。ギャグも面白いので、読者に引かれない下品さのバランスを見極められれば間口が広がるだろう。

「ベーカリー漫画「CROSS」」はベーカリー店員たちの恋愛漫画。業務のディテールがリアルに描かれていて説得力がある。友愛から恋愛感情を自覚するまでの過程が丁寧に描かれており、感情移入しやすい。ただし、全体的にさらっと流すように描かれているので大事な部分が印象に残りづらいのが懸念点だ。

「ケモナー娘と悪霊キツネ」はケモナーの女の子とそれに憑りついたキツネのコメディ作品。テーマとキャラクターが解りやすくてキャッチー。可愛らしい雰囲気の作品だが、現状では純粋なコメディとしてはボケが弱く、ラブコメとしては恋愛要素が薄いのでどちらかに振り切る必要がある。

「EtoR」は死ぬ運命から逃れられない主人公とそれを救おうとする竜の女の子のファンタジー作品。複雑に練られた設定だが、ほどよいノリの緩さや丁寧なストーリーテリングによって読みやすく仕上がっている。思い切りのいい風呂敷の広げ方を評価する声があった。

「第13回漫画大賞 秋の陣」は682作品という過去最多の応募があり、さらに久々となる大賞も選出した。年々作品内容のレベルが上がり、層が厚くなっていくなかで新たな才能の発掘に寄与出来、非常に充実した選考となった。来年以降も、大賞をとるような突出した作品が読めることを期待している。

開催概要はこちら
応募総数682作品 開催期間2019年10月01日〜末日

編集部より

冒頭の描写から重厚な世界観のSF作品かと思いきや、良い意味で裏切られました。主人公を通して近未来SF的な視点から異世界ファンタジーを描いていくという試みは非常に個性的で、大賞に相応しいアイディアでした。主人公の技術力が異世界でどのような力を発揮するのか、母親の目的はなんなのか、そもそも地球はなぜ滅びたのかなど、先が気になる謎が多く冒頭としては満点でした。今後この謎を主人公の活躍とともに上手に回収していくことが重要です。画面がやや過密すぎたり背景と人物が同化して見づらいところがありますので、そこを意識してメリハリや抜きどころを覚えるとグッと見やすくなるでしょう。


編集部より

ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。「キャラクターの属性がわかりやすい」というBLとして大事な部分をきっちり抑えつつ、特に先輩の「童顔だけどドS、でも基本誘い受け」というギャップが非常に上手く描けていて可愛さが際立っていました。日常での密接なイチャラブ描写の分量を多くしていることによって、「この二人が別れることはない」という安心感を抱かせてくれますし、このまま延々とやりとりを見ていたいという関係性を作り出すことに成功しています。基本的にこの読者に対しての「安心感」を大事にしつつ、大きすぎない可愛らしいトラブルや事件を起こしてストーリーに起伏をつけると、長編としての魅力がさらに高まるでしょう。


編集部より

絵柄に雰囲気があり、独自の世界観に読者を引き込む強烈な力を感じました。キャラクター造形も秀逸で、男女ともに嫌みのない格好良さと可愛さがあると思います。全体的に完成度が非常に高いのですが、年の差カップルにおいて必ず壁になる「世間の目」をあまり活かしていない点がもったいないなと思いました。例えば大人の側が冷静に壁を作るも若さの勢いで崩されたり、自制しようとするも愛のあまり冷静さが保てなくなるなど、「二人の間の障壁」を利用したドラマもあると思います。その設定にした必然性があるストーリーになっているかというところを意識出来れば、さらにお話に盛り上がりが出るでしょう。


編集部より

とにかく「キャラクター愛」を感じました。自分が描きたい設定やキャラを詰め込んで上手にまとめている印象です。キャラクター同士の掛け合いのテンポがよく、畳みかけるような応酬が非常に魅力的でした。世界観やキャラクター設定が頭のなかにハッキリ浮かんでるがゆえにメリハリの効いた表現が出来るのだと思いますが、伝えたい気持ちが強すぎて情報を1コマに詰め込みすぎるところがあります。そこを整理整頓できればより新規読者がとっつきやすい作品になるでしょう。

アダムの花婿

4U
61位 / 682件

編集部より

結婚することにより悪魔と魔力も結ばれるという設定が二人の絆を描くにあたって秀逸でした。これからどのような試練を二人で乗り越えていくのかが気になる展開で、思わずドキドキします。現状「愛情」と呼べる感情を持っているのは悪魔一人のみなので、この設定からまずは友情をはぐくみつつ、徐々に愛情に転化させていくと、BLとしてドラマチックに描けるでしょう。


編集部より

父親が胸に何を秘めているのか、純粋なアスティが父親の狂気に気づいたときどういうドラマが起きるのかなど想像力が膨らむ良い設定です。冒頭の描写から「各地に広まった子供をアスティを利用して父親が回収していくバディもの」になるかと思いきや、アスティ一人に焦点がいきがちなので、最初に提示した情報に焦点を当てて、それをブラさずに描いていくと物語のテーマがより解りやすくなるでしょう。


編集部より

飾り気がない登場人物と独特のテンポで「下町感」が表現されており、そこに妙に人間味のある妖怪を混ぜることにより、リアリティと空想のバランスがいい、魅力的な「SF(すこしふしぎ)」作品の世界観が構築されています。コマ割りやカメラアングルのセンスが非常に秀逸なので思わず読んでしまいますが、ここがどういう世界観で主人公がどういう役割の人間なのかという部分をもう少し説明する必要があります。それが出来れば消化できる人が増え、より読者層が広がるでしょう。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

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