第9回青春小説大賞

第9回青春小説大賞

選考概要

編集部内で大賞候補作としたのは「転部したら先輩が神だった」「世界の終わり、茜色の空」「スポットライトに照らされて」「この放送は県立夏ヶ丘高校放送部がお送りいたします!」「傘と嘘と花びらと」「あしたの僕をさがさないで」「北野坂パレット」「月並みニジゲン」「FILIOS FABULA 白き衣に包まれて」の9作品。最終検討の結果、編集部内の評価が最も高かった「あしたの僕をさがさないで」を大賞とすることになった。

「あしたの僕をさがさないで」は、一風変わった「タイムカプセル」を通して、青春時代の心模様を見事に描いた作品。全体的に文章がやや硬く感じられたものの、章ごとに物語る人物の視点をつなげていく手法、最後の謎のどんでん返しなど、優れた構成力を評価した。

「この放送は県立夏ヶ丘高校放送部がお送りいたします!」は、青春小説の王道である部活モノの中でも変わり種の「放送部」が舞台。各部員が成長していく展開が読み手を引きつけたが、それを表現しきるだけの文章力に物足りなさがあった。

同じく部活モノとして好評だったのが「スポットライトに照らされて」。かつて名門だった演劇部を主人公が再び盛り上げていく、という王道の展開で、作者の豊富な知識が部活動の描写にリアリティを与えていた。しかし小説としてのわくわく感にやや乏しいのが惜しかった。

「北野坂パレット」は、父との再会をきっかけに様々な出来事を経験していく主人公の様子が、どこか懐かしい雰囲気で描かれ、登場人物たちも魅力的だった。他方、作品全体を通じてのテーマが散漫で、構成力不足の印象もあった。

「傘と嘘と花びらと」は、主人公二人の葛藤がよく伝わり、作者の描写力の高さを感じた。ただやや痛々しさが目立ってしまい、今のニーズにマッチしていないのではないかという声があった。

「世界の終わり、茜色の空」は、世界の終わり直後に主人公たちがタイムリープする設定は魅力的なものの、今一歩登場人物たちの心の機微を描ききれていないところが惜しかった。

「月並みニジゲン」は、涙の色とそこに籠められた感情が見える男子校高校生、という設定は面白かったが、純粋すぎる主人公への感情移入が難しいなどキャラクター設定に物足りなさを感じた。

「転部したら先輩が神だった」は、科学部物理班という耳新しい舞台が魅力的な作品。しかし物語の軸が定まっておらず、テーマを上手くまとめられていない印象だった。

「FILIOS FABULA 白き衣に包まれて」は、青春とはやや毛色の異なる作風だが、鋭くも静かな雰囲気のある世界観に票が集まった。ただ話の展開や登場人物にもう少し工夫が欲しかった。

応募総数 309作品 開催期間 2016年11月01日〜末日

編集部より

誰しもが持っている心の弱さや辛さなど、決して常に輝いているとはいえない青春の苦しさが上手く表現されていると感じました。また、物語る人物の視点を自然につなぐ手法、物語全体を通して最大の謎である作家「時野旅人」の正体が誰であるかを最後まで悟らせない展開など、構成の巧みさが光っていました。

転生したら残念王子と呼ばれていました

イッポン
1位 / 309件

編集部より

ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。学園モノ・イケメン・残念キャラといった人気のある設定がふんだんに盛り込まれ、騒がしくもワクワクするような楽しい作品でした。登場するキャラクターも皆個性的で、物語を華やかに盛り上げていたと感じます。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

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