第15回漫画大賞 秋の陣終了

第15回漫画大賞 秋の陣

選考概要

今回、編集部内で大賞候補作としたのは「シェリー様は強制婚約ルートをバグらせる覚悟を決めた」「黄昏と君と錬金術」「【悪役令嬢ドロテアの異世界生活《異世界ニッポン》~大罪人なのに王太子殿下に溺愛されてます~】」「エルフの元勇者と魔法使いの卵」「後の夫婦である」「悪魔に魂を売った社畜の話」「7日後に殺された幽霊」「女勇者とお姫様」「C・I」「ニャートの猫山さん A cat has nine lives.」「古代主-コダイヌシ-」「E-LINE」「呪い人形は帰宅中」「デンジャラスキン」「アイアンホース」「☆猛攻!朝刊ガール!!!」「まほろばの<沙夜(さや)>」「僕が君を描く理由」の18作品。

独自の魅力を持つ多彩な候補作の中から、編集部内で最も高い評価を得た「エルフの元勇者と魔法使いの卵」を大賞(賞金50万円)に選出した。今回で3回連続の大賞選出となり、投稿作品のさらなるレベルアップを感じさせる結果となった。

続く各賞の選考では、次いで支持を集めた「黄昏と君と錬金術」を編集長賞(賞金10万円)に、「E-LINE」をネコ部長賞(賞金10万円)に選出。
さらに作品の完成度の高さと今後の活躍への期待感から、「後の夫婦である」、「C・I」、「古代主-コダイヌシ-」、「デンジャラスキン」の4作品をそれぞれ特別賞(賞金各5万円)に選出した。

「エルフの元勇者と魔法使いの卵」は、伝説の元勇者と魔法使い志望の少年の日常ファンタジー。安定した画力と華のあるキャラクターが高い評価を得た。続きが気になりページをめくりたくなるストーリーの構成も秀逸。物語を理解する上で必要な情報や伏線を取捨選択、適宜開示して、あと一歩わかりやすさも追求してほしい。

「黄昏と君と錬金術」は、錬金術を学ぶために王国へ留学した少女のドタバタファンタジー。キャッチ―な絵柄と、しっかりと練られたテンポのよいストーリー展開が魅力。背景や人物、フキダシの配置、視線の誘導などの画面構成は、もう少し読む側を意識して整えられると作品をより高いレベルに昇華できる。

「E-LINE」は、友人の誘いで廃病院を訪れた男子高校生が不可解な事象に巻き込まれていくホラーファンタジー。画力・構成力ともに現代的でハイレベル。主人公の説明的になりがちな言動や一辺倒な表情にバリエーションを持たせ、その時々の感情を豊かに描写すると、作品の不穏な雰囲気への説得力が増すだろう。

「後の夫婦である」は、偶然拾ったおかしな子犬に翻弄される男子大学生の姿をコミカルに描いた4コマ。可愛い子犬の予測不能でシュールな行動と、それに対する主人公の冷静なツッコミが小気味よく、センスを感じる。作風だけでなく、絵柄やデザインにも今風の要素を取り入れるなど、ビジュアル面に工夫がほしい。

「C・I」は、魔物が蔓延る世界の壮大なファンタジー。緻密で丁寧な絵柄によって独自の世界観を構築できており、そこに読者をいざなうことにも成功している。トーンやベタを積極的に用いたり、ページ、見開き単位での要素を引き算したりと、読みやすさを意識した画面作りが今後の課題。

「古代主-コダイヌシ-」は、かつて世界を滅ぼしかけた龍、「古代主」を探す「古代戦士」の冒険譚。長編ながらしっかりと作り込まれた骨太なストーリーが支持を集めた。トーンとベタの入れ方、コマ割や構図を工夫し、暗く平坦になりがちな画面にメリハリをつけることで、アクションシーンや感情描写の迫力をもっと増幅させてほしい。

「デンジャラスキン」は、誰にも言えない秘密を抱えた男子高校生の難儀な学園コメディ。ネタのインパクトとそれを伝える画力、キャラクター描写が圧倒的な一方で、ニッチさは否めない。読み手の拡大を目指すならば、ネタの方向性に一考が必要になるだろう。

「シェリー様は強制婚約ルートをバグらせる覚悟を決めた」は、運命(ルート)が決められた世界で奔走するヒロインのラブファンタジー。流行の乙女ゲーム風の世界観にオリジナリティをプラスする発想力が抜きんでていた。設定の面白さをより多くの読者に訴えかけるためにも、画力・演出力のさらなる向上に期待したい。

惜しくも受賞を逃した10作品もそれぞれに見所があり、将来性を感じる作品ばかりだった。

「【悪役令嬢ドロテアの異世界生活《異世界ニッポン》~大罪人なのに王太子殿下に溺愛されてます~】」は、異世界「ニッポン」に流刑された悪役令嬢のラブコメディ。くすっと笑えるネタやキュンとするポイントも多いが、後半になるにつれて「悪役令嬢×日本」という斬新な設定が隅に追いやられてしまっており惜しい。シチュエーションを優先しすぎず、全体を貫く軸を定めてストーリーを組み立ててほしい。

「悪魔に魂を売った社畜の話」は、悪魔に魂を売ることで人生が変化していく百合ファンタジー。ほんのりダークで文学的な世界観を、味のあるタッチで表現した良作。コマ割や人物の描写に硬さはあるものの、しっかりと話を読ませる力がある。百合で勝負するなら、百合好きが期待する設定や表現をもっとしっかり盛り込むべき。

「7日後に殺された幽霊」は、主人公のもとに「7日後あなたに殺される」と訴える幽霊が現れるミステリーラブコメ。ネタのインパクトがすさまじい上に、出オチ感を持たせず次のページ、展開へと引っ張っていく力もある。読者を離さないためには、絵の粗さ、設定の矛盾点、都合のよさを解消できるかが鍵。

「女勇者とお姫様」は、伴侶を探す女勇者と、彼女に思いを寄せる姫の百合冒険譚。ファンタジーの世界観を鮮やかに表現できる高い画力とコミカルなキャラクター描写が持ち味。今の時代の流行を取り入れながら、読ませたい年齢層や性別に合わせて絵柄とギャグ表現を変化させることで、幅広い読者の獲得が期待できそう。

「ニャートの猫山さん A cat has nine lives.」は、猫獣人の猫山さんと飼い主の日常コメディ。短いページ数ながら二人の行く末が気になるような展開を作れている。独特でエッジの効いた絵柄は魅力の一つであると同時に読者を選ぶ。読者層を広げるなら、奇怪さに対して同じくらい可愛さを押し出すなど、メリハリがほしいところ。

「呪い人形は帰宅中」は、何度捨てられても持ち主のもとへ戻りたい呪いの人形のギャグホラー。個性豊かなキャラが織り成すボケとツッコミのかけあいが絶妙。斬新で広がりを持たせられそうなネタなのに、小さくまとまっているのがもったいない。ここぞというネタや感動シーンは大胆にページやコマを割き、盛り上げる意識を。

「アイアンホース」は、機関士の少年と「鉄の馬」の心の交流を描いたハートフルファンタジー。少年の初めての挫折と成功を3話内でわかりやすくまとめているが、ご都合主義的な展開が目立つ。主人公の心の奥底にある感情を掘り下げ、表情とセリフで丁寧に描写し、読者に「応援したい」と思わせられるようにすることが求められる。

「☆猛攻!朝刊ガール!!!」は、新聞配達員のある日の配達の様子を描いたスペクタクルコメディ。高い画力に裏打ちされた疾走感あふれる画面作りは見事。様々な動きや構図を使いこなしつつ、見せたいものが明確で無駄がない。インパクトのあるネタを発展性のある物語としてまとめ上げるネーム力、構成力にも期待したい。

「まほろばの<沙夜(さや)>」は、死んだ妻の複製人間を作ろうとする研究者の切ないSF。しっかりと伏線を入れた上での最後のどんでん返しは圧巻だが、それを見せること、説明することに軸が置かれているので、ネームが多いページも目立つ。葛藤や悲しみといった人物の心を臨場感を持って描き出し、読者の心も揺さぶってほしい。

「僕が君を描く理由」は、トラウマを抱えた男子高校生の青春群像劇。題材や設定は王道の域を脱していないが、主人公のざらついた不安の表現は独特で迫るものがあった。画面のパースやバランスを丁寧に取り、お話に意外性のある展開や設定を盛り込んでいくと、同ジャンルの作品の中で頭一つ飛び出ることができるだろう。

「第15回漫画大賞 秋の陣」は794作品と過去最多の応募数を更新し、3回連続の大賞選出という大変喜ばしい結果に。WEBならではのバラエティに富んだジャンル、ネタ、作風が集まり、充実した選考となった。次回も自由な発想と個性を持った才能あふれる作品が大賞を勝ち取ってくれることを期待している。

開催概要はこちら
応募総数794作品 開催期間2020年10月01日〜末日

編集部より

華のある画風、見せ場を効果的に演出するコマ割や構図の切り方など、画力・構成力が群を抜いています。線を今風の細い描き方に調整したり、トーンのバリエーションを増やしたり、あと一歩の工夫でより強いインパクトを与えられるでしょう。寛容さと強さを兼ね備えた美しいエルフと、健気で力を秘めた可愛らしい少年の凸凹コンビのアイディアも秀逸で、二人の今後が気になります。一方で、作品の世界観や魔法の設定など、物語を楽しむために必要な情報がはっきり明かされないままお話がどんどん進むので、わかりにくさも感じました。読者の理解や共感を深めるためにも、ご自身の頭の中にある設定を、セリフやモノローグで適宜しっかりと読者に共有しましょう。


編集部より

ポイント最上位作品として“読者賞”に決定いたしました。異世界ものの中でも、今最も熱い人気がある「乙女ゲーム」の世界観に、「運命(ルート)」という独自の設定を加え、「選択制の会話」「透明な壁」といった要素でさらに面白く料理した、発想力の光る作品でした。背景のパースやバランス、人物のプロポーションを細部まで丁寧に描くことを意識しながら、飽和しているネタや情報を整理することで、絵と物語で紡ぐ漫画作品としてのさらなるレベルアップが見込めるでしょう。


編集部より

キャッチーな絵柄、読者が共感できるキャラクター設定、伏線やヒキを効果的に混ぜ込んで構成されたテンポのよいストーリーの三拍子が揃った、非常にバランスのよい良作でした。巻き込まれ型のヒロインと個性豊かなキャラクターとのコミカルなやりとりを丁寧に描こうとする気概も感じられますが、ネタとネタに対する演出を重視するあまり、画面がうるさいページも多いです。文字やフキダシ、コマが多くなっていないか、セリフや絵の配置が視線の動きを邪魔していないか、全体をその都度俯瞰的に見直して画面を組み立てると、作品の完成度を高めていくことができるでしょう。


編集部より

現代的でスタイリッシュな絵柄に強く惹かれました。ホラーには欠かせない化け物のデザインも工夫されていて、ビジュアル面では申し分ないのですが、目的が定まっていない主人公の俯瞰的で説明的なセリフが続くため、ストーリーの読み応えという面では課題があります。どういうバックボーンを持ったどういう性格のキャラクターなのか、その性格のキャラクターが巻き起こる出来事に対してどういう感情を抱くのか、今一度設定を考え直し、セリフやモノローグ、表情に載せて表現していくことを心がけましょう。作品の不穏な雰囲気が色濃くなるはずです。


編集部より

とにかく犬が可愛く、次はどんな姿を見せてくれるのか、ワクワクさせられた作品でした。毎回オチをしっかりとつけた4コマの構成からも実力の高さを感じます。SNSで漫画を読むことに慣れた若年層に受け入れられそうなキャッチーさと手軽な面白さがあるので、絵のタッチやカラーの塗り方、人物の顔や体のパーツの描き方、髪型・服装のデザイン、ギャグの表現などに今風の要素を取り込めると、より多くの読者を獲得できるでしょう。

C・I

86位 / 794件

編集部より

トーンを使わずに線とベタのみで表現した画面には、メリハリの弱さという課題はあるものの、ファンタジーの世界をしっかりと捉え、息切れすることなく丁寧に描き上げている点が高く評価されました。お話にも作り込まれた設定があることは伝わってきますが、要素が多く複雑になっています。「誰がどういった世界で何をするのか」というテーマとキャラクターの行動理念がはっきりすれば、読者も作品に没入しやすくなるでしょう。


編集部より

目的に向かって突き進む主人公が様々な困難を乗り越えていく姿が爽快でした。お話を読ませる力はありますが、暗めのトーンとベタを多用した画面処理の仕方は万人受けはしません。基本的な画力はしっかりとお持ちなので、白と黒のバランスを取ってメリハリをつけつつ、コマ割、構図、アングルの切り方も、見せ場に合わせてもっと大胆に変化させると、画面からもより多くの読者の興味を刺激できるでしょう。


編集部より

圧倒的なギャグセンスもさることながら、絵からも読者を笑わせる確かな画力、一貫性のあるキャラクターを作り上げる構成力も持ち合わせています。面白さや斬新さを追求しようとすると、どうしてもネタにニッチさ、出オチ感が出てしまうかもしれません。王道の枠組みの中でも、例えばキャラクターの言動を個性的に振りきるなど、見せ方、広げ方に意識を向けてネタを考えられると表現の幅がグンと広がるでしょう。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

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