第9回ファンタジー小説大賞

第9回ファンタジー小説大賞

選考概要

1406作という過去最高の応募数となった今年は、ウェブ小説としてすっかりお馴染みとなった日常系や職業・生産系をはじめ、最近流行りの人外転生モノ、マニアックなスキルや武器にこだわる一風変わった設定など、既存のファンタジー小説の枠に収まらない幅広いジャンルの作品が集まった。また、異世界モノとは異なるライト文芸系のエントリーも多く、今後のウェブ小説ジャンルの広がりを期待させる結果となった。


多数の応募の中から、編集部内で大賞候補としたのは、「素材採取家の異世界旅行記」「異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~」「前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~」「勇者として異世界転移したが、呆気なく死にました」「自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。」「LV999で進化したら最強になりました」「グローイング・スキル・オンライン」「異世界でチビチビ稼ぐースキルは唐揚げー」「最強の職業は勇者でも賢者でもなく鑑定士(仮)らしいですよ?」「魔道プログラマーは静かに暮らしたい」「僕の装備は最強だけど自由過ぎる」「臆病者の弓使い」「ブサイクだから召喚キャンセルされたけど、自力で異世界に来てみた」「ドジな女神に不死にされました ~今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった~」「神様のごちそう」の15作品。


これらの候補作品の中で、選考員の評価をもっとも多く集めたのが「素材採取家の異世界旅行記」。すでに読者賞授賞が決定していたが、応募作品の中では人気・実力ともに頭一つ抜けていると判断し、大賞とのダブル授賞とした。
また、大賞には一歩及ばなかったものの非常に優れた作品であった「前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~」「最強の職業は勇者でも賢者でもなく鑑定士(仮)らしいですよ?」の2作品を優秀賞に選出し、「自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。」「異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~」の2作品を特別賞とした。


「素材採取家の異世界旅行記」は、ひょんなことから素材採取家になってしまった主人公と個性的な仲間たちが繰り広げる冒険をコミカルな筆致で描いた作品。レアアイテムをサクサク見つけられるというチートさと、随所にちりばめられた笑える仕掛けが絶妙だった。また、ほのぼのとした日常を描きながらも、ときおりシリアスなエピソードを差し挟むなど、物語に起伏を持たせている点も高く評価された。


「前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~」は、前世のプログラミング知識で魔法を解析、チートを獲得していくという物語。プログラミングと魔法を結びつけたという設定の巧みさだけでなく、生産系ファンタジーの王道を丁寧に描いた点も高評価だった。


「最強の職業は勇者でも賢者でもなく鑑定士(仮)らしいですよ?」は、鑑定士という地味な職業に焦点を当てた作品。変則的なスキルを上手に運用してトラブルを切り抜けていく様がテンポよく描かれており、ほどよいチートさが最近の潮流と合致していると評価された。


「自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。」は、定番の悪役令嬢ものでありながら、悪役令嬢の婚約者である男性視点で書かれた意欲作。軽妙な会話のやりとりで、暴走気味な令嬢のとらえどころのないキャラクターを描ききった筆力が高く評価された。


「異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~」は、異世界に転生した青年と双子の孤児との交流を描いた心温まる冒険譚。無邪気で可愛らしい子供たちとの日常はほのぼのしながらも刺激的であり、男女問わず幅広い層が楽しめる話だと評価された。


また授賞には至らなかったが、「僕の装備は最強だけど自由過ぎる」は、高難度ダンジョンに放り出された主人公が、伝説の武具に出会い、しかもその武具が人化して仲間になるというインパクトのある設定と個性的なキャラが秀逸だったと票を集めた。


「ブサイクだから召喚キャンセルされたけど、自力で異世界に来てみた」は、ブサイクゆえに何度も召喚と返還を繰り返される冒頭の展開がコミカルながらも緊迫感があり、その設定だけで最後まで一気に読ませてしまう勢いのある作品だった。


「ドジな女神に不死にされました ~今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった~」は、人気のある王道設定を踏まえた良作。ほのぼのとした前半からシリアスに至る展開には、読み手の裏をかく構成の巧みさを感じさせた。


「神様のごちそう」は、異世界モノとは一線を画すライト文芸作。神隠しにあったヒロインが神様の料理番を務めるというニーズの期待できる設定で、人間味あふれる神々の描写には温かみがあり、心地よい読後感をもたらしてくれた。


また大賞候補作の中で、出版化の道を探りたい作品については、個別に連絡をしていく予定である。同じく大賞候補作以外にもレジーナブックスなどのレーベルでの出版化を検討したい作品もあり、編集部より個別にオファーあるいは出版化への挑戦の打診をしていきたい。

応募総数 1,406作品 開催期間 2016年09月01日〜末日

編集部より

素材採取家となった主人公が、チートなスキルによってレアアイテムを軽快に採取していく様は、読んでいて心地よかったです。登場するキャラクターも皆ユニークでクスリと笑えるツボを上手に押さえていると思います。その一方で、シリアスなエピソードなども挿入されており、ほのぼのとした物語では終わらない深みも感じました。多くの点で他応募作品を上回る魅力があると判断し、今回、読者賞とのダブル授賞とさせていただきました。


編集部より

王道の転生展開に加え、「魔術陣」と「生産」とがうまく絡み合い、オリジナリティのある物語に仕上がっていると思いました。ロディフィスの機転の利いた発明も面白いですし、また、そこに絡んでくる登場キャラクター達が皆、魅力的に活き活きと描かれています。彼らの織りなす異世界での楽しい日常に、読んでいてどんどん引き込まれました。


編集部より

「鑑定」をはじめとする非戦闘スキルを物語の軸にしたことで主人公の特徴が際立ち、一体どんな活躍をするのだろうと終始ワクワクさせられました。比較的ライトな世界観ながらテンポよくイベントが発生し、敵と頭脳戦を繰り広げたり、個性的な仲間とも出会ったりと、読者を惹きつけるポイントが数多くあったと思います。


編集部より

転生したと思われる悪役令嬢の暴走が生き生きと描かれた作品でした。婚約者視点でストーリーが進むところもユニークで、彼の鋭いツッコミと、令嬢とのやや噛み合わない会話に、何度も笑わせていただきました。またサブキャラクターたちも魅力に溢れ、随所に書き手のセンスが光っていたと思います。


編集部より

のんびりとした雰囲気を持ちつつも様々なイベントが盛り込まれていて、テンポよく読み進めることができました。可愛らしいのに楽々と魔物を倒す双子のアレンとエレナなど個性的なキャラも魅力的です。双子兄妹を見守る主人公タクミの奮闘が微笑ましく、読んでいるうちに優しい気持ちになりました。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

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