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4巻

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 第一章 旅の準備をしよう。


「よぉー、タクミ!」
「お久しぶりです。一ヶ月半ぶりですね、タクミさん」
「ええぇぇぇ!?」

 僕、かやたくみは、エーテルディアという世界の神様の一人である風神シルフィリールの力で、彼のけんぞくとして転生した元日本人だ。
 その世界で水神の子であるアレンとエレナと出会い、冒険者として一緒に暮らしている。
 ここ最近は、ガディア国にあるベイリーの街の近くで、僕が見つけた迷宮――〝さざなみの迷宮〟という地下三十階層から構成される水属性中級のダンジョンを攻略していた。
 今日攻略を終えて、お世話になっている領主様のおやしき、リスナーていに戻ってきたんだけど……そのまま応接室に通されて意外な人物と再会し、思わず声を上げてしまった。
 そこにはなんと! 僕がこの世界に来て初めて訪れた街、シーリンで出会った騎士のグランヴァルト・ルーウェン様と、アイザック・リスナーさんがいたのだ。

「ちびっ子達も元気だったかー」
「アレンくん、エレナさん、こんにちは。お元気でしたか?」
「「げんきー」」

 驚く僕をよそに、ヴァルト様とアイザックさんはアレンとエレナに声を掛け、子供達もそこそこ面識のある人だったためか、普通に返事をしていた。

「いやいやいやっ!! な、何でヴァルト様とアイザックさんがここにいるんですぅ!?」
「酷いですね、タクミさん。ここは私の実家ですよ。いてもおかしくはないでしょう?」
「い、いや……それはそうですけど……」

 確かにベイリーの街を含むこの一帯は、アイザックさんのお兄さんであるセドリック・リスナーさんが領主を務める土地だ。すなわち、アイザックさんの実家でもある。
 だから、彼がここにいてもおかしくはない。おかしくはないのだが……。
 もしかして休暇だろうか? でも、それならヴァルト様が一緒にいるのはおかしい、よな?
 そもそも、セドリックさんは二人が来ることを知っていたのだろうか?

「タクミさんをここまで驚かすことができたのなら、馬を早駆けさせて強行軍で来たかいがありましたね~」
「そうだな。いつもはタクミに驚かされているばかりだからな」
「……」

 アイザックさんもヴァルト様も、満足そうに頷いている。
 どうやら、彼らはシーリンの街からこのベイリーまでかなりのハイペースで来たようだ。
 そうだよな。でなければ、日数的に考えて彼らがこの街にいるのはおかしい。何せ、十日ほど前にはベイリーとシーリン間でリスナー兄弟が手紙のやりとりをしていたのだから。
 一般人なら馬車を乗り継いでひと月はかかる。騎馬で休憩をほぼ挟まず飛ばしっぱなしで来たとしても、こんなに短期間で到着するなんて、相当優秀な馬で乗り手の技術も高いということだろう。
 それはいいとしても、僕が驚いたことにここまで嬉しそうにされると、なんか……悔しい……。
 彼らがいつ到着したのかは僕にはわからないが、もし着いたばかりで疲れているのだとしても、ねぎらう気持ちが失せてしまう。

「で、本当になぜここに?」

 とりあえず、僕はヴァルト様とアイザックさんがここにいる理由をもう一度尋ねた。
 二人そろってリスナーていに来たのが、単なる里帰りだなんてやっぱり思えないからな。

「タクミを迎えにだな!」
「はぁ!?」

 ヴァルト様から意味がわからない言葉が返ってきた。
 僕を迎えに? 何だそれは?

「隊長、説明をはぶくのはめてください」

 め息をつくアイザックさんに向かい、改めて聞いてみる。

「……えっと、アイザックさん、どういうことでしょうか? あ! あと、すみません。アイザックさんのお名前、勝手に呼ばせていただいています」

 以前は『リスナー様』と呼んでいたけど、お兄さんのセドリックさんと紛らわしいので変えさせてもらった。

「ああ、名前は問題ありません。リスナーの家に滞在していて、『リスナー』と呼び続けるのは不便ですからね。むしろ、敬称も必要ないのでアイザックと呼んでくださって構いませんよ」

 笑顔で許可をもらい、一安心した。
 アイザックさんなら怒りはしないだろうとわかっていても、断りを入れずに貴族の人の名前を馴れ馴れしく呼ぶのには多少の抵抗があったからな。

「おう、俺のことも呼び捨てで構わないぞ!」
「いや……それはちょっと……」

 ついでとばかりに、ヴァルト様も話に乗っかってきた……。
 セドリックさんとも同じやりとりをしたけど、やはり敬称なしで呼ぶのは無理です。
 あと、ヴァルト様は『ヴァルト様』のままのほうがしっくりくるんだよなぁ~。

「それで、迎えというのはどういう意味なんですか?」

 僕は話を本筋に戻して、アイザックさんに説明を求めた。

「この度、私達は異動で王都勤務になりまして」
「そうなんですか?」

 へぇ~、こんな時期に配置換えするんだ。
 でも、どうして二人の王都への異動が僕の迎えにつながるんだろうか?

「ええ、もともと予定していた異動なのですが、少々早まりましてね」
「……えっと?」
「何でも、ベイリーで新しく迷宮を発見した方がいて、陛下がお会いしてみたいそうなんです。ですが、その方は目立つことを嫌うようでして。陛下からの召喚状が発行されれば、政府の中枢どころか、城中からいやおうなく注目が集まりますからね。その方に不本意な事態は、陛下としてもできれば避けたいそうです」
「……」

 ヴァルト様とアイザックさんの異動について……かと思ったら、なんだか話の方向が変わってきた。
 しかも陛下って……王様のことだよね? え? 僕達、王様に呼ばれたってこと?

「それで、迷宮を発見した方と知り合いである私達が命令を受けたんです。その方にお願いして王都に来てもらってくれ、と。ついでに護衛を兼ねて一緒に王都へ移動すれば一石二鳥ではないか、とも仰っていましたね。いや~、タクミさんがベイリーをしゅったつする前に我々が到着できてよかったです」
「……」

 もう、何がなんだか……。
 えっと……王都行きはあくまで僕達の意思次第のはずだけど、これはもう半分強制されている感じだよね?
 まあ、王都にはいずれ行く予定だったので、行くこと自体は構わない。構わないんだけど……王様に会うことにもなるってわけだね。
 う~ん、王様に会ってみて人柄を確認しておくのも悪くないか? 何となく、今後のためにもそのほうが良いような気がするし。

「アレン、エレナ。別の街に行くことになるけど……いいかい?」
「「んにゅ? おにーちゃんもいっしょー?」」
「一緒に行くよ」
「じゃあ、アレンもいくー」
「エレナもいくー」

 一応、二人にも王都行きについて聞いてみると、問題なく承諾してくれた。
 じゃあ、ヴァルト様とアイザックさんとともに王都に行くことにしようか。

「えっと、出発はいつになりますか?」
「いいのですか?」
「ええ、王都にはいずれ行く予定でしたからね。まあ、だからといって『明日、出発』なんて言われたらさすがに無理ですけど」

 王都に行くまでの食料や諸々の日用品は《無限収納インベントリ》の中にそろっているが、それでもやはり旅の準備をする時間くらいは欲しい。ベイリーでしか手に入らないものがまだあるかもしれないし、そこまで疲れなかったものの、迷宮を攻略したばかりでひと息つきたいからな。

「我々もベイリーに到着したばかりで休息は必要ですので、その心配はいりませんよ」

 あ、やっぱりヴァルト様とアイザックさんは、ベイリーに着いて間もないみたいだな。そうなると、すぐに出発とはならないだろうから、数日くらいは時間があるかな?

「そうですか。じゃあ、正式な出発日が決まったら教えてください」
「はい。――ところで、タクミさんは馬には乗れるのでしょうか?」
「あー……すみません、乗れないですね」

 そうか。ヴァルト様やアイザックさん達と一緒ってことは、僕の契約獣であるフェンリルのジュールや、てんのフィートに乗って移動することはできないのか……。
 さて、そうなると……どうするかなぁ。ジュールやフィートの場合は、僕達の乗り心地や安全を考慮して彼ら自身が調整してくれるから問題なく乗れるが、さすがに自分で馬のづなを操る自信はない。
 普通であれば、何度か練習すればそれに関係するスキルを習得できるのに、ジュール達は乗り心地がよすぎるせいか、何のスキルも覚えられなかったんだよな~。
 ん~、いっそのことジュール達の存在をバラしてしまうか……。もしかしたら二人はセドリックさんからジュール達のことを聞いているかもしれないしな。
 でも、セドリックさんはジュールとフィートをフェンリルやてんの子供だって認識しているはずだから、あの子達に乗って移動しているとは思ってないか? 普通はSランクの魔物に乗るなんて考えないだろうし。

「何だ? タクミは馬に乗れないのか? それなら俺が教えてやろうか?」

 ジュール達についてどうするべきか悩んでいると、ヴァルト様からそんな提案をされた。
 なるほど。乗馬の練習をするっていう手もあったな。
 早駆けまでは無理でも、【騎乗】スキルを手に入れて普通に乗りこなすことくらいは、シルにつくってもらった今の僕の身体ならすぐにできるかもしれない。

「ヴァルト様、乗馬の指導をお願いしてもいいですか?」
「おお、いいぞ。任せておけ」

 もしスキルを習得できなかったとしても、この機会に乗馬の経験をしておいて損はないだろう。
 今後、場合によってはジュール達を呼び出せないこともあり得るからな。

「でも、馬を乗りこなせるようになるかはわからないので、移動手段を今確定することはできないんですが……」
「ええ、大丈夫ですよ。まだ出発日は決まっていませんし、結果的に馬車が必要になったとしても我が家のものを使えばいいのですから」

 僕が馬に乗れるようになった場合でも、アレンとエレナを一緒に乗せられるか、という問題もある。
 ただ、さすがに三人で一頭の馬に乗るのは無理だろう。そうなると、ある程度懐いているヴァルト様やアイザックさんに、アレンかエレナのどちらか一人をお願いするとか?
 まあ、それは僕が馬に乗れるようになってから考えるのでも遅くないな。
 とにかく、まずは訓練しなくては。

うえー。入りますよー?」

 王都行きが決定し、乗馬の練習も決まったちょうどその時、セドリックさんの息子であるテオドールくんとラティスくんが部屋に入ってきた。

「タクミさん、アレンくん、エレナちゃん、お帰りなさーい」
「お帰りなさーい」
「テオドールくん、ラティスくん、ただいま」
「「ただいまー」」

 部屋に入って来た二人は、僕達を見つけて駆け寄ってくる。

「迷宮はどうでしたか?」
「お話を聞かせてください!」

 テオドールくんとラティスくんは、迷宮での出来事に興味津々のようだ。

「迷宮の話は時間がある時にね。それよりも、アイザックさんに用事があったんじゃないのかい?」
「違いますよ。僕達はタクミさん達がこの部屋にいるって聞いたので来たんです」

 アイザックさんに呼びかけて部屋に入ってきたから、てっきり用事があるのかと思ったけれど、彼らの目的は僕達だったらしい。

「それにしても、よく僕達がここにいることがわかったね」
「それはですね、タクミさん達が帰ってきたら、すぐに僕達にも知らせるよう使用人に伝えておいたからです!」

 おう……。この子達、セドリックさんと同じことをしている……。
 セドリックさんは街門の兵に頼んで、僕達がこの街に到着したことを知らせてもらっていた。
 街と自分のやしきとで規模は違うが、やっていることは間違いなく同じだ。さすが血のつながった親子だな。

「おやおや、血は争えませんね。この子達、兄と同じことをしていますよ」

 アイザックさんも、セドリックさんがやったことを知っているらしい。呆れたようにおい達を見ていた。
 そんな態度をとっているけど、僕にはアイザックさんも同じことをしそうに思える……。

「……アイザックもよくやるだろう」

 不意に、ヴァルト様がぽつりと小さく呟いた。
 案の定、アイザックさんも常習犯なのか。

「テオドールもラティスも、今は勉強の時間なのではないですか?」

 アイザックさんはすように咳払いをし、おいっ子達に話し掛けた。

「ちょうど終わったところです!」
「僕もです」

 ああ、やることが済んだから迷宮での話を強請ねだりにきたってわけか。二人とも冒険の話が好きだって言っていたもんな。
 そうだな。話をするのもいいけど――

「じゃあ、迷宮で面白いものが手に入ったから、それで遊ばない?」
「本当ですか!」
「やったー」
「どこか広い場所がいいんだけど……」

 遊びの内容を考えると、さすがにこの応接室では狭すぎる。
 すると、テオドールくんは目を輝かせたまま僕の手を取った。

「訓練場に行きましょう! タクミさん、早く早く!」
「アレンくん、エレナちゃんも早く!」

 ラティスくんもアレンとエレナの手を取ると、テオドールくんとともに足早に応接室を出ようとする。

「わっ! 二人ともそんなに慌てないで……」

 僕達はテオドールくんとラティスくんにかされて訓練場へとやって来た。
 数人の騎士がいたので邪魔にならなそうな一角に行き、僕はバブルアーケロンから回収したバスケットボールほどのシャボン玉を取り出す。

「うわ! 何ですかこれ!」
「柔らかい~」

さざなみの迷宮〟で遭遇した亀の魔物であるバブルアーケロンは、敵が現れるとシャボン玉を吐き出して動きを妨害し、その間に逃げるという習性を持つ。
 そのシャボン玉はしばらく経つと自然と消滅するし、バブルアーケロンを倒した場合はその瞬間に消える。
 だがしかし、僕が《無限収納インベントリ》に入れておいたシャボン玉は消滅せずに残ったままだった。
 しかも、何をしても割れない。試しにナイフを突き刺してみたが、それでも割れなかった。
 なので僕は、頑丈だけど柔らかくて軽いゴム風船のようなそれを見た瞬間、子供達の遊び道具にぴったりだと思ったのだ。

「それをこっちに向かって、手で軽く打って飛ばしてごらん」
「こうですか? ――それ!」

 テオドールくんがシャボン風船をぽんと打つと――ぽよんっ、と風船が浮き、こちらに向かってゆっくりと飛んでくる。

「アレン。そのままラティスくんのほうに向かって打って。軽くだよ」
「はーい」

 飛んでくる風船を僕の隣にいるアレンが打つと、今度はラティスくんのほうへ飛んでいく。

「ラティスくん、次はエレナのほうに打って」
「はい! ――それ!」
「上手! エレナ、今度はテオドールくんのほうね」
「はーい」

 いちじゅんすれば子供達は遊び方を完全に理解し、次々と風船を打ち飛ばしていく。

「何か面白そうなもので遊んでいるなー。タクミ、あれは何だ?」

 少し遅れて訓練場にやって来たヴァルト様が、子供達が遊ぶ風船――バブルアーケロンのシャボン玉に興味を示した。この世界には植物、魔物の不思議な素材はたくさんあるが、ゴム製品みたいなものは広まっていないので珍しく感じるのだろう。

「あれはバブルアーケロンが出す泡? ですね」

 ヴァルト様と一緒にやってきたアイザックさんは、冷静に分析した。一目で見抜くとはさすがだ。
 すると、ヴァルト様は目を見開いて声を上げる。

「はぁ!? ちょっと待て! バブルアーケロンの泡って、れると割れて弾けるアレか? 何で割れないんだよっ!」
「いや~、バブルアーケロンを倒すのに邪魔だったんで《無限収納インベントリ》に入れたんですけど、倒した後もそのまま残っていたんですよ。そして取り出した時には既にあんな感じでした。刃物で刺しても割れる気配がなかったので、遊びに使っても問題ないと思いまして」

無限収納インベントリ》への収納は、対象にれているように見えるけど、実際はさわってないみたいなんだよな。だから、泡が弾けることなく回収できた。

「っていうことは、バブルアーケロンを倒したのかよ。普通は逃げられるからなっ!」
「……タクミさんらしい倒し方ですね」

 ヴァルト様とアイザックさんから呆れた目で見られた。
 いやだって、視界を覆い尽くすシャボン玉を片付けるなら、《無限収納インベントリ》に収納するのが一番早いしね~。

「タクミ、まだその泡を持っているなら、ちょっと貸してくれ」
「あ、はい」

 小さめの片手でつかめるくらいのシャボン風船を一つ取り出してヴァルト様に手渡すと、彼は早速アイザックさんとともに検分するようにいじりだした。
 実は、バブルアーケロンのシャボン風船は大小さまざまな大きさがある。テニスボールくらいのものから、バスケットボールよりひと回り大きいくらいまで。
 一匹のバブルアーケロンからは大体同じ大きさのシャボン玉が吐き出されるのだが、個体によって泡の大きさが違ったのだ。大きい泡を吐き出す個体、小さい泡を吐き出す個体、と。
 なので、僕の手持ちのシャボン玉にはいろんなサイズがそろっている。

「……本当に割れねぇーな」

 ヴァルト様がわしづかみにしたシャボン風船に力を込め、割れないことに感心していた。
 その隣で、アイザックさんも感嘆の声を漏らす。

「隊長が力一杯つかんでも変形するだけとは……。かなりの耐久性ですね。素材として何かに使えると思いますので、研究者やギルドが食いつきそうです」
「だな。おい、タクミ。これは結構数があるのか?」
「まあ、そこそこありますね。バブルアーケロンと遭遇した時に、一度で吐き出す泡の量は大体わかりますか? 正確な数じゃなくて目安って意味で」
「ああ」
「あれを十数回分、回収したと言えば、何となく量はわかります?」
「……ああ。大量にあるってことだけはわかった」

 バブルアーケロンに遭遇するたびに、泡を回収しちゃったからねぇ~。
 時間が経てば消えるであろう泡を放置するならともかく、一度《無限収納インベントリ》に回収して割れなくなったシャボン風船を迷宮内に投棄してくるわけにはいかなかったので、保管しておくしかなかったのだ。

「タクミさん、いくつか売ってもらってもいいですか?」
「いえ、差し上げますよ?」

 僕が気軽にそう言うと、アイザックさんは首を振った。

「それは駄目です。研究目的でもありますから。こういうのはしっかりとしておかないと、有用な使い道が見つかった場合、問題になりますからね。タクミさんが相手ならめることはないと思いますが、だからといって決まりを崩すことは良くないですから」

 なるほどな。素材の所有者をはっきりさせておかないと、将来的に利益でごとが起こる可能性があるってわけか。
 僕としては〝あげる〟時点で所有者は相手に移るものだと思うんだが、屁理屈を言う人っているだろうしな~。

「そういうことならわかりました。でも、売値はそちらにお任せしますよ?」
「ありがとうございます。とりあえず、ここでいくつかと、王都に行ってからも少し譲ってくださると嬉しいです」
「量はありますからね。問題ないで――おっと」

 その時、後ろから何かがぶつかる軽い衝撃があった。

「ん? ああ、アレンとエレナか。どうかしたか?」
「いっしょに」
「あそぶー」
「タクミさん、これ、面白いです。うえー。うえもどうです?」
「ヴァルト様、勝負しましょう!」

 四人で遊んでいた子供達が僕達を誘いに来たようだ。ラティスくんに至っては、ヴァルト様に勝負を挑んでいた。

「どうします?」

 僕はヴァルト様とアイザックさんをうかがい見た。

「おっし! ちびども、相手をしてやる!」
「そうですね。普段は仕事で会えないわけですし、たまには子供達と遊びましょうかね」

 初めは僕もアイザックさんも一緒に遊んでいたが、最終的には子供達四人対ヴァルト様という構図ができ上がり、ヴァルト様は日が暮れ始めるまで子供達の相手をしてくれたのだった。


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