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2章 テルミア王国 スフィアート編
アイリス・フォーリング
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「アイリス様~~!!間違いありません。この人はアイリス様です、師匠!」
フィン、大声を出すのはいいけど、この子の事を知っているなら、何者か教えて欲しいわ。私からだと、金髪碧眼で髪の長い可愛い女の子にしか見えないわ。
「ねえ、フィン、アイリスて誰よ?私、世間知らずだから教えてくれない?」
「え~~、アイリス様を知らないんですか!世間知らずにも限度がありますよ。アイリス様はスフィア教の聖女で、スフィア様の生まれ変わりと言われてるぐらいスフィア様と瓜二つなんです。しかも、若干11歳ながら、強力な聖魔法の使い手なんですよ」
生まれ変わりて、スフィアは女神なんだから、今もどこかにいるはずよね。まあ、それぐらい似ているという事か。でも、11歳で聖魔法を使えるとは凄いわね
「ねえ、フィン。そんな凄い聖女様が護衛もなしに、どうして1人でこの大森林にいるんでしょうね。私達が来なければ、彼女、間違いなく死んでたわよ」
「あれ、そうですよね。なんでだろう?」
ああ、これはスフィアートに到着する前に、厄介なことに巻き込まれたわね。さて、このままこの子をスフィアートに連れて行くのもいいけど、確実に何か起こるわね。ともかく、この大森林をグリフォンに乗って抜けますか。
「フィン、グリフォンに乗って。まずは、この子を連れて大森林を抜けるわよ」
「はい!」
○○○
ここは、スフィアートの少し手前にある林の中。このままアイリスを連れて行くと大変な事になるのは間違いないから、ここで彼女が目覚めるのを待ち、事情を聞くことにしよう。
「フィンは、アイリスと話した事があるの?」
「はい、2年前、アイリス様がレーデンブルクに来てくれたんです。当時、国中で疫病が流行っていて、アイリス様は護衛の方々と共に多くの街を渡り歩いて、瞬く間に疫病を駆逐してくれたんです。疫病が完全に消え去った後、王宮で控えめなパーティーが催されました。その時に少しだけ話しました。まだ、9歳なのに礼儀正しくて、凄い方でした」
何か引っかかるわね。私達の世界では、普通9歳だったら好奇心旺盛な時期だから、多くの子供達と遊んだりするはず。まあ、小さい頃から聖女としての教育をされてたら、一般人とは違ってくるかもしれないか。とにかく、この子の魔力を回復させましょう。とりあえず、100だけに回復させておこう。
「さて、まずアイリスの魔力を回復させましょう」
「え、そんな魔法ありませんよ。全世界で、魔力回復の魔法は研究されてますけど、未だどの国も成し遂げていません」
「あら、そうなの。それじゃあ、魔力を目に集中してアイリスを見ていなさい。『マジックトランスファー』」
この魔法に対応する属性はない。あえて言うなら無属性かな。私オリジナルの魔法だ。
「え、うそ、師匠の魔力がアイリス様に入っていく」
「確かに魔力を回復させる魔法は、私も作成に試みたけど不可能ね。現在、魔力を回復させるには、マジックポーションといった回復薬しかない。でも、回復薬をいつも常備しているわけじゃない。今回だって、フィンが全部使ったでしょ」
「う、そうでした」
「そういう時の緊急手段として開発した魔法よ。属性はないから、無属性てとこね。簡単にいうと、使用者の魔力を相手に譲渡する魔法ね。完全回復は無理でも、応急処置にはなるわ」
「そんな方法があったなんて。多くの魔法使いは、ヒールのような魔法ばかりを考えていましたから、譲渡は思いつきませんでした」
アイリスが、気が付いたようね。
「あれ、ここは?私は確か大森林まで飛ばされて、あれ、あれれ?怪我も治ってる?」
「気が付いた。あなたが邪族に襲われていたから助けたのよ。あと、怪我が酷かったから、先に治しておいたわ」
「確か、トロル・エビルタイガー・ブラックバイパー・オーガナイト・ゴブリンナイトに追われていて、オーガナイトが剣を振り上げてて、そうだ、あの時誰かが助けてくれた!」
「そう、助けたのが私達よ。自己紹介が、まだだったわね。私は、サーシャと言うの。」
「アイリス様、お久しぶりです。フィン・レーデンブルクです」
「え、ええ!フィン王女様、行方不明だったはず、どうして?」
うーん、いきなりフィンを見たら混乱するわよね。
「フィンから、あなたの名前はアイリスと聞いたけど間違いないかしら?」
「はい、私はアイリス・フォーリングと言います。助けて頂いて、怪我も治して頂いてありがとうございます」
さすがは聖女様。まだ、11歳なのにしっかりした口調だ。美香も見習って欲しいものだ。
「あなたを追っていた邪族は、全員始末したわ。これが証拠よ」
アイテムボックスから、エビルタイガーを出した。
「わ!あ、あの時のエビルタイガーだ。本当に助かったんだ。う、うう、ありがとうございます。ありがとうございます。うわーん!」
フィンの時と同じで泣いちゃったか。まだ11歳だから無理もないか。
-----ひとしきり泣き、落ち着いたようだ。
「すいません、泣いて落ち着きました。そうだ、フィン王女が、どうしてサーシャさんと一緒にいるんですか?」
まあ、気になるのは当然ね。そういえば、フィンとアイリスを見て気づいたけど、フィンは癒し系の声、アイリスはどこかのアイドル声優の声に似てるわね。おっと、脇道に逸れてしまった。
「フィンから説明して上げて。その方がいいでしょう」
「はい」
フィンは、行方不明となって以降の出来事を事細かに教えて上げた。ガルム一味やリッチの事をいうと、ひどく驚いていた。そして、ここに至る状況まで説明仕切ると、私の方を見て目を輝かせていた。あ、この感じ、まるで子供がヒーローを見ているかのような目だ。
「凄い!フィン王女のステータス異常の原因解明、ガルム一味の討伐、Bクラス邪族の4体討伐、全部凄い!是非、お姉様と呼ばせて下さい」
お姉様!いや、それはちょっと---。フィンを見ると、
「良いですね!私が師匠で、アイリス様がお姉様。良い響きです」
「いや、ちょっと」
「フィン王女は師匠ですか。確かに2つとも良い響きですよね、サーシャさんにぴったりな言葉です」
あ、これは止めるのは無理そうだ。
「ま、まあ、アイリスが気に入ったのなら、その呼び方で良いわよ」
「やった、お姉様、ありがとうございます」
なんか、この流れを止めるのは悪い気がするんだけど仕方ないよね。
「それで、アイリスはどんな経緯で、あの危険な森を1人でうろついていたの?正直、自殺行為よ」
「あ、そうなんです、お姉様、聞いて下さい。3日前、礼拝堂でお祈りをしていた時に、急に大きな魔力を感じて何だろうと思った瞬間、森の中に転移していたんです。気配を探ってみたら、周りの至る所に強い邪力を感じていたので、急いで魔力の気配を消しながら、ずっと冒険者を探して歩き回っていたんです。でも、途中で見つかってしまって、なんとか魔法で追い払いながら頑張っていたんですが、あいつらに見つかり追い詰められて、もうダメだと思っていた時にお姉様が現れてくれたんです」
一気にわかりやすく、喋ってくれてありがとう。
「つまり、誰がアイリスを転移させたのかはわからないという事ね」
「はい、あまりにも急で、魔力を探る事も出来ませんでした。ただ、フィン王女の件の事から、恐らく誰かが邪族に操られているのは間違いありません。しかも、転移を使っている事から、複数の人が邪族に操られています。そもそも、転移は、我々人間の中で、使用出来る人はいませんし、魔力を多量に必要と聞いた事があります」
この子、本当に11歳なの?喋り方と考え方がしっかりしているわ。「聖女だから」で片付けられるかしら?うーん、まあ深く考えないようにしておこう。
「成る程、転移に必要な魔力を分散させてるわけね。そうなると、アイリスがこのままスフィアートに戻ると、大変な事になるわ。大騒ぎが起こり、そのどさくさに紛れて、また何か起こす可能性が高い」
「はい、どうしましょうか?邪族に殺されたくありません」
はあ~、仕方ない、一肌脱ぎますか。
フィン、大声を出すのはいいけど、この子の事を知っているなら、何者か教えて欲しいわ。私からだと、金髪碧眼で髪の長い可愛い女の子にしか見えないわ。
「ねえ、フィン、アイリスて誰よ?私、世間知らずだから教えてくれない?」
「え~~、アイリス様を知らないんですか!世間知らずにも限度がありますよ。アイリス様はスフィア教の聖女で、スフィア様の生まれ変わりと言われてるぐらいスフィア様と瓜二つなんです。しかも、若干11歳ながら、強力な聖魔法の使い手なんですよ」
生まれ変わりて、スフィアは女神なんだから、今もどこかにいるはずよね。まあ、それぐらい似ているという事か。でも、11歳で聖魔法を使えるとは凄いわね
「ねえ、フィン。そんな凄い聖女様が護衛もなしに、どうして1人でこの大森林にいるんでしょうね。私達が来なければ、彼女、間違いなく死んでたわよ」
「あれ、そうですよね。なんでだろう?」
ああ、これはスフィアートに到着する前に、厄介なことに巻き込まれたわね。さて、このままこの子をスフィアートに連れて行くのもいいけど、確実に何か起こるわね。ともかく、この大森林をグリフォンに乗って抜けますか。
「フィン、グリフォンに乗って。まずは、この子を連れて大森林を抜けるわよ」
「はい!」
○○○
ここは、スフィアートの少し手前にある林の中。このままアイリスを連れて行くと大変な事になるのは間違いないから、ここで彼女が目覚めるのを待ち、事情を聞くことにしよう。
「フィンは、アイリスと話した事があるの?」
「はい、2年前、アイリス様がレーデンブルクに来てくれたんです。当時、国中で疫病が流行っていて、アイリス様は護衛の方々と共に多くの街を渡り歩いて、瞬く間に疫病を駆逐してくれたんです。疫病が完全に消え去った後、王宮で控えめなパーティーが催されました。その時に少しだけ話しました。まだ、9歳なのに礼儀正しくて、凄い方でした」
何か引っかかるわね。私達の世界では、普通9歳だったら好奇心旺盛な時期だから、多くの子供達と遊んだりするはず。まあ、小さい頃から聖女としての教育をされてたら、一般人とは違ってくるかもしれないか。とにかく、この子の魔力を回復させましょう。とりあえず、100だけに回復させておこう。
「さて、まずアイリスの魔力を回復させましょう」
「え、そんな魔法ありませんよ。全世界で、魔力回復の魔法は研究されてますけど、未だどの国も成し遂げていません」
「あら、そうなの。それじゃあ、魔力を目に集中してアイリスを見ていなさい。『マジックトランスファー』」
この魔法に対応する属性はない。あえて言うなら無属性かな。私オリジナルの魔法だ。
「え、うそ、師匠の魔力がアイリス様に入っていく」
「確かに魔力を回復させる魔法は、私も作成に試みたけど不可能ね。現在、魔力を回復させるには、マジックポーションといった回復薬しかない。でも、回復薬をいつも常備しているわけじゃない。今回だって、フィンが全部使ったでしょ」
「う、そうでした」
「そういう時の緊急手段として開発した魔法よ。属性はないから、無属性てとこね。簡単にいうと、使用者の魔力を相手に譲渡する魔法ね。完全回復は無理でも、応急処置にはなるわ」
「そんな方法があったなんて。多くの魔法使いは、ヒールのような魔法ばかりを考えていましたから、譲渡は思いつきませんでした」
アイリスが、気が付いたようね。
「あれ、ここは?私は確か大森林まで飛ばされて、あれ、あれれ?怪我も治ってる?」
「気が付いた。あなたが邪族に襲われていたから助けたのよ。あと、怪我が酷かったから、先に治しておいたわ」
「確か、トロル・エビルタイガー・ブラックバイパー・オーガナイト・ゴブリンナイトに追われていて、オーガナイトが剣を振り上げてて、そうだ、あの時誰かが助けてくれた!」
「そう、助けたのが私達よ。自己紹介が、まだだったわね。私は、サーシャと言うの。」
「アイリス様、お久しぶりです。フィン・レーデンブルクです」
「え、ええ!フィン王女様、行方不明だったはず、どうして?」
うーん、いきなりフィンを見たら混乱するわよね。
「フィンから、あなたの名前はアイリスと聞いたけど間違いないかしら?」
「はい、私はアイリス・フォーリングと言います。助けて頂いて、怪我も治して頂いてありがとうございます」
さすがは聖女様。まだ、11歳なのにしっかりした口調だ。美香も見習って欲しいものだ。
「あなたを追っていた邪族は、全員始末したわ。これが証拠よ」
アイテムボックスから、エビルタイガーを出した。
「わ!あ、あの時のエビルタイガーだ。本当に助かったんだ。う、うう、ありがとうございます。ありがとうございます。うわーん!」
フィンの時と同じで泣いちゃったか。まだ11歳だから無理もないか。
-----ひとしきり泣き、落ち着いたようだ。
「すいません、泣いて落ち着きました。そうだ、フィン王女が、どうしてサーシャさんと一緒にいるんですか?」
まあ、気になるのは当然ね。そういえば、フィンとアイリスを見て気づいたけど、フィンは癒し系の声、アイリスはどこかのアイドル声優の声に似てるわね。おっと、脇道に逸れてしまった。
「フィンから説明して上げて。その方がいいでしょう」
「はい」
フィンは、行方不明となって以降の出来事を事細かに教えて上げた。ガルム一味やリッチの事をいうと、ひどく驚いていた。そして、ここに至る状況まで説明仕切ると、私の方を見て目を輝かせていた。あ、この感じ、まるで子供がヒーローを見ているかのような目だ。
「凄い!フィン王女のステータス異常の原因解明、ガルム一味の討伐、Bクラス邪族の4体討伐、全部凄い!是非、お姉様と呼ばせて下さい」
お姉様!いや、それはちょっと---。フィンを見ると、
「良いですね!私が師匠で、アイリス様がお姉様。良い響きです」
「いや、ちょっと」
「フィン王女は師匠ですか。確かに2つとも良い響きですよね、サーシャさんにぴったりな言葉です」
あ、これは止めるのは無理そうだ。
「ま、まあ、アイリスが気に入ったのなら、その呼び方で良いわよ」
「やった、お姉様、ありがとうございます」
なんか、この流れを止めるのは悪い気がするんだけど仕方ないよね。
「それで、アイリスはどんな経緯で、あの危険な森を1人でうろついていたの?正直、自殺行為よ」
「あ、そうなんです、お姉様、聞いて下さい。3日前、礼拝堂でお祈りをしていた時に、急に大きな魔力を感じて何だろうと思った瞬間、森の中に転移していたんです。気配を探ってみたら、周りの至る所に強い邪力を感じていたので、急いで魔力の気配を消しながら、ずっと冒険者を探して歩き回っていたんです。でも、途中で見つかってしまって、なんとか魔法で追い払いながら頑張っていたんですが、あいつらに見つかり追い詰められて、もうダメだと思っていた時にお姉様が現れてくれたんです」
一気にわかりやすく、喋ってくれてありがとう。
「つまり、誰がアイリスを転移させたのかはわからないという事ね」
「はい、あまりにも急で、魔力を探る事も出来ませんでした。ただ、フィン王女の件の事から、恐らく誰かが邪族に操られているのは間違いありません。しかも、転移を使っている事から、複数の人が邪族に操られています。そもそも、転移は、我々人間の中で、使用出来る人はいませんし、魔力を多量に必要と聞いた事があります」
この子、本当に11歳なの?喋り方と考え方がしっかりしているわ。「聖女だから」で片付けられるかしら?うーん、まあ深く考えないようにしておこう。
「成る程、転移に必要な魔力を分散させてるわけね。そうなると、アイリスがこのままスフィアートに戻ると、大変な事になるわ。大騒ぎが起こり、そのどさくさに紛れて、また何か起こす可能性が高い」
「はい、どうしましょうか?邪族に殺されたくありません」
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