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三章 ケリュネオン参戦編
ざわめく闘技場の真
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こちらは「月が導く異世界道中」8巻収録箇所のダイジェストその1になります。
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闘技大会の華である団体戦。
今年の決勝は僕の講義も受けている学生、ジン=ロアンを中心とするパーティが優勝して終わった。
……はずだった。
彼らの決勝の相手は、ここ最近何かと僕に突っかかってきていたリミア王国の有力な貴族の息子とその仲間達。
イルムガンド=ホープレイズ御一行だ。
ちなみに僕の生徒にも一人アベリア=ホープレイズって娘がいるけど、まあ事情があるにせよ偶然にせよ、彼女から打ち明けられてない以上、僕の方では気にしない事にしてる。
で。
かなり不利な条件での試合にも関わらずジンとイズモ、それにユーノは完勝したんだ。
なのに、どうもイルムガンド君の様子がおかしい。
終了のコールは済んだのに舞台から去る気配もなく、ジン達もまた警戒を緩めていない。
そうして会場の注目を集める中、ソレは始まった。
イルムガンド君の体と、彼を取り巻く魔力が不自然な動きを見せた。
巴、澪、識。
僕が頼る三人の従者に状況を推測してもらう限り、彼は人を辞めようとしているらしかった。
ただ、自発的にという訳じゃなく何らかの要因によって無理矢理に、だという。
変異体、とでも呼ぼうか。
はあ……。
また事件だよ。
まったく、筋書き通りに進んで終わった試しがない。
ロッツガルドは比較的平和な街だ。
僕から見ればヒューマンと亜人の間にある結構な差別なんかが平和には映らないけど。
少なくとも世界規模でヒューマンと魔族が戦争やってるって状況から考えれば十分平和だ。
僕としてはこの一件、まあ魔族とはこの間そこそこ良い関係を築いたとこだから彼らって線はないだろうな、と考えていた。
ええ、即座に識に否定されましたよ。
状況から間違いなく魔将ロナの仕業、つまり魔族が絡んでいるってね。
ははは。
まあ、そういう事だ。
笑うしかない。
敵の敵は味方なんて、そんな理屈は現実には成り立ちはしないって、そのくらいの事は僕にだってわかっていて。
なのに自分がその渦中に入った時、簡単に信じてしまっていたんだから。
騙された、って言葉が頭をぐるぐるしてる。
つくづく僕には策略とか陰謀とかは向いてない。
これはもう勉強不足って次元じゃなく、向き不向きといってもいいんじゃないかとも思い始めてる。
だけど諦めてばかりもいられない。
僕が一人ならそれでも構わないんだけどさ。
今の僕には守らないといけない人達もいる。
いつの間にか、出来てしまった。
だから苦手だろうとなんだろうと逃げるのはナシだ。
頭には頭で対抗する、だけが全てじゃない。
僕には、僕らにしかできないやり方ってのもある。
いいさ。
ロッツガルドの商人も、魔族も。
それからよくわからない貴族からの嫌がらせも。
対処させてもらおうじゃないか。
ただし、頭脳じゃなく……主に腕力でね。
ついでに作戦に殆どを巴の案に頼ったのは内緒だ。
良いんだ、僕の担当は多分そっちじゃないんだから。
適材適所ってやつで、柔軟に行こう。
さあ、クズノハ商会出動と行こうか。
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闘技大会の華である団体戦。
今年の決勝は僕の講義も受けている学生、ジン=ロアンを中心とするパーティが優勝して終わった。
……はずだった。
彼らの決勝の相手は、ここ最近何かと僕に突っかかってきていたリミア王国の有力な貴族の息子とその仲間達。
イルムガンド=ホープレイズ御一行だ。
ちなみに僕の生徒にも一人アベリア=ホープレイズって娘がいるけど、まあ事情があるにせよ偶然にせよ、彼女から打ち明けられてない以上、僕の方では気にしない事にしてる。
で。
かなり不利な条件での試合にも関わらずジンとイズモ、それにユーノは完勝したんだ。
なのに、どうもイルムガンド君の様子がおかしい。
終了のコールは済んだのに舞台から去る気配もなく、ジン達もまた警戒を緩めていない。
そうして会場の注目を集める中、ソレは始まった。
イルムガンド君の体と、彼を取り巻く魔力が不自然な動きを見せた。
巴、澪、識。
僕が頼る三人の従者に状況を推測してもらう限り、彼は人を辞めようとしているらしかった。
ただ、自発的にという訳じゃなく何らかの要因によって無理矢理に、だという。
変異体、とでも呼ぼうか。
はあ……。
また事件だよ。
まったく、筋書き通りに進んで終わった試しがない。
ロッツガルドは比較的平和な街だ。
僕から見ればヒューマンと亜人の間にある結構な差別なんかが平和には映らないけど。
少なくとも世界規模でヒューマンと魔族が戦争やってるって状況から考えれば十分平和だ。
僕としてはこの一件、まあ魔族とはこの間そこそこ良い関係を築いたとこだから彼らって線はないだろうな、と考えていた。
ええ、即座に識に否定されましたよ。
状況から間違いなく魔将ロナの仕業、つまり魔族が絡んでいるってね。
ははは。
まあ、そういう事だ。
笑うしかない。
敵の敵は味方なんて、そんな理屈は現実には成り立ちはしないって、そのくらいの事は僕にだってわかっていて。
なのに自分がその渦中に入った時、簡単に信じてしまっていたんだから。
騙された、って言葉が頭をぐるぐるしてる。
つくづく僕には策略とか陰謀とかは向いてない。
これはもう勉強不足って次元じゃなく、向き不向きといってもいいんじゃないかとも思い始めてる。
だけど諦めてばかりもいられない。
僕が一人ならそれでも構わないんだけどさ。
今の僕には守らないといけない人達もいる。
いつの間にか、出来てしまった。
だから苦手だろうとなんだろうと逃げるのはナシだ。
頭には頭で対抗する、だけが全てじゃない。
僕には、僕らにしかできないやり方ってのもある。
いいさ。
ロッツガルドの商人も、魔族も。
それからよくわからない貴族からの嫌がらせも。
対処させてもらおうじゃないか。
ただし、頭脳じゃなく……主に腕力でね。
ついでに作戦に殆どを巴の案に頼ったのは内緒だ。
良いんだ、僕の担当は多分そっちじゃないんだから。
適材適所ってやつで、柔軟に行こう。
さあ、クズノハ商会出動と行こうか。
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