地方騎士ハンスの受難

アマラ

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閑話 壱

閑話 治療魔法使い・キョウジ

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 この日、キョウジは珍しくミツバと共に昼食をとっていた。
 普段昼時は往診などで忙しいのだが、珍しく予定が空いていたのである。
 ここの所はゆっくり休む暇もなかった事ので、キョウジは久しぶりの息抜きにとコウシロウの店へと足を運ぶことにした。
 そこで、たまたまミツバと出くわしたのだ。

「あれ、どうしたんすかキョウジさん! 珍しいっすね!」

「うん。久しぶりに昼間に手が空いてね。お昼はここにしようと思って」

「自分もお昼ごはんっす! 隊長から買い食い許可チケットをゲットしたんすよ!」

 ミツバが自慢げに掲げて見せたのは、小さな紙にハンスがサインをしたものであった。
 ハンスが発行するこのチケットがないと、ミツバは買い食いをする事が出来ないのだ。
 ドヤ顔でチケットを見せてくるミツバに対し、キョウジは思わず苦笑する。
 このチケット制度の確立には、キョウジも一役買っていた。
 ミツバの説得を手伝ったのである。
 自由な買い食いを規制される事に、ミツバは凄まじい抵抗をした。
 キョウジも何度か殴られたが、何とかミツバを納得させる事に成功したのだ。
 そのときの恐怖を考えれば魔獣になんてもうビビらないと、キョウジは後に語ってたりする。
 まあ、それはともかく。
 一緒に食事をとることにした二人は、コウシロウの店へ入った。
 店は昼時であるためかなり混んでおり、キョウジとミツバはコウシロウに挨拶だけして席に着く。

「コウシロウさん! いつものヤツお願いするっす!」

「はいはい。すぐ用意するからねぇ」

 メニューも見ずに、ミツバは元気いっぱいに声を張り上げる。
 すぐに返ってきたのは、厨房に居るコウシロウの声だ。
 大きい声でもないのに良く響くその声は、今のコウシロウの外見とは不相応な落着いたものである。

「いつもの、なんだ。常連なんだね」

「自分はいっつも街の中にいるっすから! 朝も昼も夜もここで食べる事もあるんすよ!」

 ハンスの補佐の仕事をしているミツバは、基本的にはこの街に張り付いている事が多かった。
 周囲の農村にお使いに行くこともあったが、ミツバの足なら行って帰ってくるのにはそれほど時間も掛からない。
 馬を追い抜く俊足を持つミツバにとって、人の足で半日程度の距離などあっという間なのだ。
 ハンスに託された手紙を持って走り抜けるミツバは、最近ではこのあたりの名物と化している。

「へー。いつものって、どんな料理なの? 定食とか?」

「肉っす」

「肉? 肉って、肉?」

「肉っす。たくさんの肉っす」

 真剣な表情でそう言い切るミツバ。
 その表情を見て、キョウジは考えるように眉間に皺を寄せた。
 そして、厨房の方へと目を向ける。
 目を凝らしてみると、コウシロウが大きな肉の塊を焼き台の上に乗せているのが見えた。
 炭火の上に金網を載せた大きな焼き台なのだが、載せられた肉の塊が大きすぎるため僅かに小さいように感じられる。
 遠目で良く分からないが、肉の塊は恐らく二キロ前後はあるだろう。

「なるほど。肉なんだね」

「肉っす」

 分かり合えたのと思ったのか、ミツバは実に良い笑顔をしている。
 対するキョウジが多少引きつった顔をしているのは、まあ、無理からぬ事だろう。

「んー。アレは流石に重いなぁ。別のにしよう……」

 どうやらキョウジは注文に迷ったようで、常連だというミツバの頼んだものを参考にしようとしていたらしい。
 流石に参考にならなかったらしく、キョウジは唸りながら壁に貼られたメニューを見上げた。

「あ、鳥ハムのサラダだって。美味しそう」

 そんなキョウジの言葉に、ミツバは驚いたような表情をキョウジに向ける。

「なんすかその女子みたいなメニューは! 男なら肉じゃないっすか! パワーな力が付かないっすよ!」

「パワーと力で被ってるよ。いや、僕あんまり油っぽいお肉って苦手で。サラダとかの方が食べやすいし、ほら、鶏肉って体にもいいし?」

「なに女子みたいな事言ってるんすか! そんな事だから体力付かないんっすよ!」

 確かに、キョウジは体力が低かった。
 なにせ元々がただの一般学生なのだ。
 所属していた部活も文科系で、苦手な授業は体育とくれば、その運動能力はお察しである。

「まあ、確かに最近痛感するけど……あ、すみませーん、この鳥ハムのサラダと今日のスープと、パンでお願いしまーす」

 苦笑しながらも、キョウジは通りがかった店員に注文を出す。
 そんな様子を見て、ミツバは大きくため息を吐いた。
 そして何を思ったのか、珍しく考え込むような仕草をし始める。
 両腕を組んで暫く唸ると、大げさな動きで手を叩いた。

「そうだ! 自分にいい考えがあるっす!」

「それ絶対だめなパターンの台詞じゃない?」

 人差し指を立てていい笑顔を作るミツバに、キョウジはゲンナリとした様子で言うのだった。



 食事を終えた後ミツバがキョウジを連れてきたのは、街の散髪屋であった。
 この街唯一の散髪店であり、この地方唯一の散髪店でもある。
 その唯一という部分が、この地方が如何にド田舎なのかを表しているだろう。

「というわけで今回ご協力いただくこの街のカリスマ美容師、サムソン・ノースリバーさんっす。日本語に直訳すると寒村・北川さんっす」

「どーもー! キョウジセンセイ、おひさしぶりー!」

 ミツバの紹介にあわせ、散髪店店主のサムソンは両手を小刻みに振って挨拶をする。
 サムソンは身長2mほどの巨漢であり、その全身はぱっつんぱっつんの筋肉に覆われていた。
 ウシぐらいなら一撃で倒せそうな威圧感のあるサムソンではあるが、足は常に内股で手の小指は上空に向って立っている。
 そう。
 サムソン氏はガッツリマッチョ系のオカマさんだったのだ。
 普段ならキョウジ的にはお近づきになりたくないタイプの人種ではあったのだが、この街で唯一の散髪店であることや医者という立場上、そういうわけにもいかないのである。

「お、お久しぶりです。この間の風邪は治ったみたいですね。体が弱ってると立て続けにひく事がありますから、気をつけてください」

 引きつった表情を浮かべながらも、キョウジは何とかそういうことに成功した。
 元来気が弱いタイプであるキョウジは、こういうパワー系に弱いのだ。

「ありがとー! もう大丈夫よ! 独り身だから病気になるとホント大変よねぇー! センセイの魔法なら一瞬で治して貰えるからスッゴクたすかるわぁー!」

 くねくねと腰をくねらせるサムソンに、キョウジは引きつった笑いを返すのが精一杯であった。

「やっぱり彼氏が居ないとフアンよねぇー! どっかに良い男いないかしらぁー?」

 そういいながら、サムソンはねっとりとした視線をキョウジに投げかけた。
 なんでも彼の好みは、色白でどこか頼りないタイプなのだそうだ。
 それを聞いてから、キョウジは極力店に近づかないようにしていた。
 おかげで散髪する事ができず随分髪が伸びてしまったが、背に腹は変えられないのだ。

「それでミツバちゃん! 今日は何事かしら! 私の力が必要ってっ!」

「実は、カクカクシカジカというワケなんすよ!」

 極々真剣な表情で、ミツバはそう言い放つ。
 それで通じるワケがないだろうと表情を歪めるキョウジだったら、サムソンの口から飛び出したのは予想外の台詞であった。

「マルマルウシウシというわけね! わかったわ! そういうことなら私の専門分野ねっ! 任せて頂戴!」

「通じるの?!」

 思わず突っ込みを入れるキョウジだが、サムソンとミツバの耳には届かないらしい。

「さあ、そうと決まったら早速お着替えよっ! ミツバちゃん、手伝ってっ!」

「うーっす!」

 びしりとキョウジを指差すサムソンに、ミツバは返事をする。
 背中に寒いものを感じたキョウジは速攻で逃げようとするが、超身体能力のミツバ相手に逃げ切れるはずもない。

「ちょっ、なに、やめっ!」

「いーからいーから! 自分をしんじるっす! 悪いようにはしないっすから!」

「もう既に悪いよ! いやぁああああああ!!」

 必死に暴れて抵抗するが、ミツバに羽交い絞めを決められた時点でキョウジの敗北は決まっていたのだ。
 その後暫く、サムソンの店からは叫び声やらすすり泣く声やらが響いていた。



「私ね、いつも思っていることがあるの。ファッションはエロスだって」

 キラキラとした表情で、サムソンはため息混じりにそう言った。

「女が着飾るのは、結局男を引っ掛けたいからよ。男だって同じ。動物としての本能がそうさせるのね。異性をひきつけたい、その思いが着飾らせるの。女性的にしても男性的にしても、メスとオスの魅力を引き立たせるという意味では、それはつまりセックスアピール、性的魅力を見せ付けるということに他ならないわ!」

 力説するサムソンの隣で、ミツバは真面目腐った顔で頷いている。
 勿論、内容の半分以上は理解していない。
 むしろ全く理解していないといっていいだろう。
 難しい話は右から左に流れていくミツバイヤーは伊達ではないのだ。

「可愛さ、綺麗さ、美しさ。それらは結局のところエロスに繋がるの! どんなものにエロスを感じるかは人それぞれだからこそ、恋は戦い、ファッションは武装なのよ!」

「ふぁっしょんは武器なんすね!」

「そう! 武器よっ! だからこそ様々なものが存在するの! 艶やかなドレス、可愛らしいフリフリ、凛々しさを引き立たせる男装なんていうのもステキだわぁ! 様々な武器の中で今回私がチョイスしたのはこれよっ!」

 そういうのと同時に、サムソンは大きく手を翻す。
 視線を集めるように動かされたその先に居たのは、白いワンピースを着た人物であった。
 白い、といっても純白ではない。
 あまり上等ではないこの地方で一般的に使われている生地であるためか、クリーム色のような色合いである。
 スカートの丈は膝下まであり、袖も長めのようであった。
 上には少し大きめのカーディガンを羽織っており、肌の露出はかなり抑え目だ。
 ショートボブの髪型とあいまって、全体的に落着いた雰囲気を醸し出していた。
 ワンピースの人物はその服装にあまりそぐわない、すこぶる不満そうな表情をしている。
 落着かなさそうに型を縮こまらせながら、いかにも嫌そうな様子で口を開いた。

「あの、とりあえず眼鏡だけでも返してくれません?」

 そう。
 このワンピースの人物こそ、治療魔法のスドウ・キョウジその人なのである。
 今のキョウジの状態は、サムソンによって施されたものであった。
 どこからどう見ても地味目なお嬢さん然としたその様は、まさしくファッションマジックと言わざるを得ないだろう。
 ちなみに恐ろしい事実なのだが、キョウジには化粧などは施されていなかった。
 マッサージやクレンジングによって肌を磨きその輝きを取り戻すサムソンマジックにより、キョウジは見違えるほどみずみずしいお肌を手に入れていたのだ。

「だめよぉー! これ直ぐにキョウジセンセイだってばれちゃうでしょぉー!」

 サムソンは腰をくねくね動かしながら指を振って見せた。
 この国の金属加工技術はかなり高い水準にあるが、キョウジのかけている様なメガネを量産するところまでは行っていない。
 作れたとしても職人の手仕事になるため、とても高価な一点物になるのだ。
 どんなに変装していても、そんな特徴のあるものをしていれば一発でキョウジだと分かってしまう。
 逆に言えば、メガネをかけていない今の状態では、一発ではキョウジであると分からないのだ。

「ほんとに誰だかわかんないっすね。ガチで女の子過ぎて逆に笑えないっす」

「笑ってもらった方がすっきりするよっ!」

 困惑顔でいうミツバに、キョウジは半泣きで叫ぶ。
 大きくて黒い瞳が特徴的な目を潤ませるその姿は、あまり男には見えなかった。
 むしろミツバが言うように、ドン引きするほど女の子になっている。
 キョウジは元々顔にこれといった特徴のない無味無臭な顔立ちであるため、衣装次第でかなり性別をごまかせるのだ。

「もー、これ脱いでいいでしょう? もう」

「ここで脱いだらサムソンさん大勝利っす!」

「私は一向に構わないわっ! キャー!」

 頬に手を当てて体をくねらせるサムソンに、キョウジは顔を思い切り引きつらせる。

「何いってるんですか! 奥借りますよ、奥! 絶対入らないでくださいよ!」

「それは押すなよ、絶対に押すなよってことっすね!」

「違うわっ!!」

 珍しく強い口調で言うキョウジだが、迫力は皆無だ。
 サムソンはそんなキョウジの足先から頭の先までに舐めるように視線を這わせると、うっとりとした表情でため息を吐く。

「それにしてもやっぱり完璧だわっ! これこそ地味っ娘の一つの完成形よ! 花畑にあるたくさんの中でなぜか目に留まった一輪! 暫く眺めるうちどんどんそれの美しさに気が付いていき、いつしかどうして他のものと同じだなんて考えたんだろうと思うようになるのっ! キョウジセンセイならなれるわっ! 地味男の娘の星にっ!!」

「なりたくありませんっ!!」

 キョウジが悲鳴にも似た声を上げるのと店のドアが開かれたのは、ほぼ同時だった。
 駆け込んできたのは、腰に木剣を下げたゴブリンの青年だ。
 ミツバが結成した、自衛隊の一員であった。

「ああ、ミツバさん! キョウジさん見ませんでしたか! 急患です!」

「急患?! どこですかっ!」

「レビ村の村長さんが梯子から落ちたみたいで! 外傷はないんですが腰を打ったみたいで……って。あの、この方は?」

 直接聞くのも失礼と思ったのが、ゴブリンの青年はミツバの耳に顔を寄せて尋ねる。
 そのリアクションに、キョウジの動きが凍りつく。
 一瞬何を言っているんだこいつはという顔をするミツバだったが、すぐになるほどといった様子で手を叩いた。
 おもむろにキョウジへと指を向けると、キリッとした表情で言う。

「こちらは完全体のキョウジさんっす」

「いや、冗談言ってる場合じゃないですよ。村長さん本当に腰打ってのた打ち回って……」

 ゴブリンの青年が困惑した表情で抗議するような言葉を口にしている途中で、サムソンはそっとキョウジにメガネを戻した。
 微動だにしなくなっているキョウジは、まるでメガネ置きでもあるかのようにスムーズにメガネをかけさせられる。
 メガネを装備したキョウジを見て、ゴブリンの青年は露骨に体をびくつかせた。
 キョウジの方を二度見し、それだけでは足りなかったのか、まじまじとキョウジの顔を見据える。
 しばしの沈黙。
 だれも動かない空間で、勇敢にも最初に動いたのはゴブリンの青年であった。

「は、早く行きましょうキョウジさん! 村長の腰が大変な事になってるんです!」

「ええ。そうですね」

 そのときキョウジの目から流れた一筋の涙に誰も触れなかったのは、ある意味優しさであったのかもしれない。



 村長の治療を終えたキョウジは、街から少し離れた場所でがっくりと膝を突いていた。
 表情は暗く、絶望の色に染まっている。
 そして、その服装は件のワンピースのままであった。
 一刻も早く村長のもとへ行くことを選択したキョウジは、結局着替えずにサムソンの店を出たのだ。
 外傷はないとはいえ、体内にどんな影響が出ているかも分からない。
 レビ村の村長は高齢なので、なおさら心配だったのだ。
 結局キョウジはそのままの恰好で、いつも移動の足として活躍してくれている魔獣の背に飛び乗った。
 村に着いたキョウジは、すぐに長老の家へと赴き、治療を施す。
 幸い大した怪我も無く、内臓などへの損傷も無いようだった。
 軽いうち身などはあったが、そんなものはキョウジの治療魔法に掛かればあってないようなものである。
 とりあえず全てを治し終え、ほっと一息ついたそのとき。
 村長の口から衝撃の台詞が飛び出した。

「何方様か存じませんが、有難うございます! まるで聖女様だっ!」

 キョウジは全身から血の気が引くのを感じた。
 顔に手を伸ばすが、あるべきものがそこには無かったのである。
 そう、メガネだ。
 サムソンの店を出るとき、一瞬の隙を突いてメガネを奪われていたのである。
 幾ら運動神経が壊滅しているキョウジとはいえ、それに気が付かれずメガネを奪うなど並みの所業ではないだろう。
 恐らくミツバがやったのだ。
 いらないところで全力を出すミツバに、キョウジは凄まじい怒りを覚えた。
 ちなみに、キョウジのメガネは度の入っていない、いわゆる伊達メガネである。
 元々はかなり低視力だったのだが、自分の治療魔法で視力を回復させたのだ。
 事肉体関連の治療に関しては、ほぼ万能に近いキョウジであった。
 まあ、それはともかく。
 自分が村長にキョウジとして認識されていない事に気が付いたキョウジは、慌てて周囲の人を見回した。
 村長の言葉に対して、誰かが修正をしてくれる事を期待したのだ。
 だが。
 周囲に居た村人達は、皆長老と同じ疑問を持っているようであった。
 キラキラと目を輝かせて、キョウジが答えを返すのを待っていたのである。
 あまりの状況に、キョウジは完全に言葉を失った。
 日本人というのは追い詰められると、なぜか笑ってしまいがちな人種である。
 ご多聞に漏れず、キョウジも思わず微笑んでしまったのだ
 だが、笑ったからといって状況が改善するわけでは勿論無く、緊急手段に訴える事にした。
 つまり、ダッシュで逃げたのだ。
 これが後に、「どこからとも無く現れ不思議な力で長老を癒し、微笑だけを残して去っていった謎の聖女様」伝説へと発展する事になるのだが、キョウジにとってはどうでもいいことである。
 村人達が軽いパニックになっている間に何とか村を抜け出したキョウジは、心に感じた疲労から来る眩暈で、がっくりと膝を突いたのだ。

「どうしてこうなった……」

 絶望したような表情で、キョウジはそう呟く。
 どうでもいいことではあるが、スカートは丈が長かったため中身が露出するような事態にはなっていない。
 不幸中の幸いである。
 虚脱感と空しさに苛まれ、キョウジは若干死にたくなっていた。
 そんなキョウジに、一頭の魔獣が近づいてきた。
 馬のような体に、純白の毛並み。
 そして、額には一本の角。
 日本でも有名な一角獣、ユニコーンである。

「おつかれっした」

「あ、どうも」

 意外と野太い声のユニコーンに、キョウジは何とか復活して頭を下げた。
 このユニコーンは、最近キョウジの足になってくれている魔獣だ。
 普通彼のようなユニコーンは極度の処女崇拝であり、男や非処女を蹴り殺す勢いで嫌う。
 だが、ケンイチの舎弟であるこのユニコーンは非常に硬派であり、女とか男以前に恋愛に興味が無いという。

「自分、スピード命っすから」

 そう語ったユニコーンに、キョウジはある種尊敬の念すら抱いていた。
 発言が若干なんとか族っぽいのは、恐らくケンイチの影響だろう。
 キョウジはふら付く体を何とか叱咤して立ち上がると、生気の無い顔をユニコーンに向けた。
 傍から見ると女の子が不安げな瞳を向けているように見えなくも無かったが、幸いな事にここには目撃者などは居なかった。

「ユニコーンさん。僕、女性に見えるんですかね?」

「自分、相手が男か女かは本能的な部分で分かるんで」

「ああ、なるほど……」

 どうやらユニコーンという種族には、何らかのセンサーのようなものが付いているらしい。
 恐らく一般的なユニコーンは、それを処女か否かを調べるために使っているのだろう。
 キョウジは深いため息を吐くと、ユニコーンの方へと歩き出した。

「まあ、とりあえずさっさと帰りましょう。でもって着替えちゃえばいいんです。考えてみれば女装趣味の変態とか言われないだけましなんですし」

 何とか思考をポジティブにして、キョウジはユニコーンに跨った。
 裸馬ではあるが、毛並みの柔らかなユニコーンの背はなかなかに乗り心地のよいものである。

「あ、ゆっくりお願いします」

「うっす」

 キョウジの言葉に、ユニコーンは頷いて見せる。
 数多く居るケンイチの率いる魔獣の中で、このユニコーンは地上最速を誇っていた。
 なんでも峠の上り下り共に最速のラップを持っているのだとかで、とにかく足が速いのだ。
 ミツバといい勝負をするというのだから、その速度は相当のものなのだろう。
 勿論、そんな速度にキョウジが耐えられるはずが無い。
 振り落とされれば命にかかわるので、常に速度を落としてもらうように頼んでいた。
 幾らキョウジでも、即死してしまえば治療できないのだ。

「あ、でも早く帰りたいんで、なるべく急いで……。ん? いや、その、そこまで急がす、僕が吹っ飛ばない程度でお願いします」

 キョウジのそんな要求に、ユニコーンは静かに頷いて見せた。
 そして、2、3度足を踏み鳴らすように地面を踏みしめると、ゆっくりと走り始めるのであった。



 いつもならば何も無くすぐに街に着くはずの道のりであったが、その日は違っていた。
 途中、何人かの人を追い抜くことになったのだ。
 街から農村までの道のりは、普段はあまり人通りが無いのである。
 人と出会うだけでも珍しいそこでキョウジがであったのは、さらに珍しいことに怪我人だったのだ。

 最初に出会ったのは、足を挫いた少年であった。
 道の端でうずくまり、動けなくなっていたのである。
 キョウジは現在の自分の状態も忘れ、大急ぎで近づいていった。
 なぜか恥ずかしがる少年の靴を脱がせ、ズボンをたくし上げる。
 直接肌に触れるほうが、治療魔法の効果が出やすいのだ。
 幸いな事に怪我はそれだけだったようで、治療はあっという間に終わった。
 一安心したキョウジだったが、そこで少年の尋常でない顔色に気が付く。
 異様なまでに真っ赤になっているのだ。
 一瞬怪訝に思ったキョウジだったが、すぐに大切な事を思い出した。
 自分の恰好である。
 少年の一種ぼうっとしたような表情は、まさかあの思春期にありがちなアレではあるまいか。
 その恐れに気が付いたキョウジは、一瞬で様々な事を考えた。
 赤くなっているぐらいだから、恐らく少年はキョウジの事に気が付いていないのだろう。
 ここで正体を正しく説明すれば、確実に変態だと思われるはずだ。
 せっかく治療魔法使いとして確立した地位が無に帰す。
 キョウジは取り立てて地位欲が強い方ではないが、女装好きの人としてその地位を破壊されるのは御免被りたかった。
 別に同性愛や趣味としての女装を否定しているわけではないが、いろいろな人に接する治療師としての立場上、そういったうわさなどは無いに越した事はない。
 オカマの治療師やサムソンのようなガチムチおねぇ僧侶とかもキャラとしてはありだろうが、自分がなるのは全力でお断りしたかった。
 そこで、まぁいいや、と割り切れるほど、キョウジは大人ではなかったのである。
 キョウジは顔が引きつるのを何とか耐えながらユニコーンの背に戻ると、少年に一緒に乗るかと尋ねた。
 足を挫いていた事から、心配しての台詞である。
 とはいえ、怪我は治っているし、こういうときの少年の行動は元少年であるキョウジには手に取るように分かっていた。
 少年はぶんぶんと首を振り、遠慮したのだ。
 もう痛くないし、元々歩いていたから、と。
 キョウジは内心でガッツポーズをした。
 多感な世代の少年が、異性として意識した相手と一緒にくっ付いて乗馬する事などありえるだろうかいいやない。
 よほどませてでも居ない限り、ほぼ確実に遠慮してくるはずなのである。
 キョウジは困ったように微笑むと、少年に別れを告げて走り去った。
 事情を察してくれたのか、ユニコーンも若干早足で走ってくれる。
 その気遣いに、キョウジは思わず目から心の汗を流した。
 ちなみに、非常にどうでもいい話ではあるが。
 この数年後、この少年は魔法の素養が認められ、王都にある軍学校に通う事になる。
 そこでメキメキと才覚を伸ばした彼は、早めにツバをつけて置こうと考えた貴族や軍の幹部などから、女性や金などを使った勧誘を受ける。
 しかし、とある経験が元で「地味系の年上」にしか興味を示せなくなった少年はこれらの誘惑を全く受け付けず、その得意魔法とあいまって「鉄片の魔術師」などと呼ばれるようになる。
 結局学校を出た後軍人として成り上がったのち、自分で雇った侍女に心を射抜かれ幸せに暮らすことになるのだが、その辺は本当に関係ないどうでもいい話であった。

 ちょっとした事情から軽い絶望に襲われているキョウジが次に出会ったのは、旅装束の人物であった。
 このあたりは他所から人が来る事など殆ど無いのだが、それでも稀に物好きが出向いてきたりするのだ。
 そんな稀な事を知っているほどこの街に長く居るのだな、と、しみじみ感傷に浸るキョウジだったが、すぐに旅装束の人物の様子がおかしい事に気が付いた。
 何かふらふらと道の端によけたかと思うと、突然体を抱えてうずくまったからだ。
 キョウジはもはや条件反射のように、その旅装束の人物へと駆け寄った。
 ずっと治療師として活動している中で、キョウジ自身知らぬ間に病人や怪我人をほうっておけない性質を身に付けていたのだ。
 旅装束の人物は、どうやら若い聖職者であるらしかった。
 首からかけている紋章が、その証拠である。
 街にある教会と同じものであるので、恐らくそこを尋ねに来たのだろう。
 キョウジの具合が悪いのかという問いかけに、若い聖職者はなんとか笑顔を作って見せ、持病だと応えた。
 病気治療の発達していないこの世界では、かなりの苦痛を伴う病気や怪我でも放って置かれる事があるのだ。
 キョウジは自分に治療魔法の素養があることを伝えると、若い聖職者の額に手を当てた。
 治療魔法にはいくつか段階のようなものがあり、体にどのような異常があるかを調べる事も可能であった。
 どこが悪いか分からなければ、治療のしようも無いからだろう。
 若い聖職者がいう持病の原因を発見したキョウジは、思わず顔をゆがめた。
 体内にかなりの数の腫瘍を発見したからだ。
 それがどのような性質のものであるかは分からなかったが、それから来る苦痛は想像する事ができた。
 この街にも、以前には何人か似たような症状の人間が居たからである。
 かなりの苦痛を伴うらしく、弱りきってのた打ち回る事すらできなくなっていた。
 いた、と過去形なのは、現在はそういった人物が居ないからである。
 死んでしまったわけではない。
 キョウジが治療魔法で治してしまったのだ。
 腕がもげようが足がもげようが、生きてさえ居れば回復させられるキョウジである。
 何なら内臓が無くても再生させられるだけに、腫瘍の治療などあっという間だ。
 ついでに原因になっているっぽい不調も治療して、キョウジはほっとため息を吐いた。
 治療に掛かった時間は、20秒ほどだろうか。
 痛みが取れたことに驚いているのだろう、若い聖職者は呆然とした表情をしている。
 キョウジはそんな彼に、もう大丈夫ですよ、と声をかけて、凍りついた。
 自分の今の服装を思い出したからである。
 まずい。
 そんな単語が浮かんだ後、キョウジの脳内では様々な考えた乱れ飛んだ。
 宗教に関しては資料が少なくあまり調べられていなかったが、地球のものと似通っているとすれば同性愛などは禁忌とされている事が多いはずである。
 そうなると女装の状態である今のキョウジは、ある意味禁忌の存在だろう。
 ばれたら何を言われるか分からない。
 そこで、キョウジはもう一つの事実を思い出した。
 ハンス曰く、治療魔法というのは教会の専売特許であり、王都に居る政治権力を気にする一派などは、遥か上を行くキョウジの存在をあまり歓迎されないだろうというのだ。

「つまり、さらわれたり殺されたりするかもしれないってことっすね!」

 ミツバのそんなドストレートな言葉にハンスが反論しなかったあたり、恐らくそういうことなのだろう。
 この街の僧侶は口をつぐむ事を約束してくれているし、人間的に信頼できる人物であるのでばれても問題は無い。
 しかし、会ったばかりであるこの若い聖職者がどんな人物であるかは分からないのだ。
 僅かの間に様々な考えをめぐらせたキョウジは、ある結論にたどり着いた。
 正体がばれないうちにバックレよう。
 苦しんでいる人物を助けた事に後悔はないが、それが原因で殺されるのは真っ平御免だ。
 キョウジは笑顔が引きつるのを何とかこらえながら、ユニコーンの背に跨った。
 既に全身異常が無い事は調べてあるので、問題ないだろう。
 若い聖職者は慌てた様子で、キョウジに「貴女は一体……」と尋ねてきた。
 勿論いえるはずが無い。
 追い詰められたキョウジは、ふっと視線をそらせ、明後日の方向を指差した。
 ついでに、あ、UFO、とか言おうと思ったが、通じるかどうか分からなかったのですんでの所で言うのをやめる。
 だが、狙い通り若い聖職者の視線をはずす事には成功した。
 ここしかない、と、判断したキョウジは、ユニコーンに耳打ちをする。

「全力で逃げてください……!」

 その言葉を聞いたユニコーンの目がぎらりと輝いたように見えたのは、キョウジの気のせいではないだろう。
 一瞬にして最高速に達したユニコーンは、瞬きする間に若い聖職者の前から消え去った。
 走るユニコーンが巻き起こした風に驚き若い聖職者が振り返ったが、そこには既にキョウジもユニコーンも居なかったのである。
 また、非常にどうでもいい話ではあるが。
 この若い聖職者は王都教会に所属していた人物であり、そこの治療師達からは不治の病であると宣告されていた。
 死期を悟った彼は、死に場所を求める旅の途中であったのだ。
 そこでたまたま出くわしたのが、女装状態のキョウジだったのである。
 突然一角獣に乗って現れた女性が、不治の病と診断されていたものを一瞬で癒してくれた。
 そして、名も告げず、現れたときと同じくまるで消えるように去っていった。
 ちなみに来たときは普通に走ってきていたのだが、若い聖職者は苦痛に耐えることに集中しており気が付かなかったのである。
 一体どういうことかと困惑しながら辺りを見回す若い聖職者であったが、当然キョウジは見つからない。
 なにせキョウジは今、峠最速の走り屋の背中の上で死にそうになっているのである。
 ふと、聖職者はキョウジが指差した方向に眼を向けた。
 そこにあったのは、風に触れる小さな花であった。
 背中合わせに二つの花をつけるそれは、ズィアラフという名である。
 それに気が付いたとき、若い聖職者は雷に打たれたような衝撃を感じた。
 ハンスの国で盛んな宗教の神話には、三柱の姉妹神が登場する。
 長女はとても華やかな美しさを持ち、三女は儚げな愛らしさを持っているという。
 それに対して次女は、他の二柱とは違いそれほど美しくは無く、目立たない存在なのだそうだ。
 だが、その心根は神々の中でも飛びぬけて優しく、常に地上の事を気にかけているのだとか。
 その次女である女神が好むとされるのが、ズィアラフという花なのである。
 目立たずけっして華美ではないが、ズィアラフは荒れた畑などに力を戻す植物として広く知られていた。
 作物が育たなくなった畑でズィアラフを育てると、再び作物が取れるようになるのだ。
 もしや、と、聖職者は考えた。
 三姉妹の次女神様が地上に現れ、自分の病を癒してくれたのではないか。
 そういえば先ほどの女性は、穢れなき乙女しか背に乗せないというユニコーンに跨っていたではないか。
 実際はあのユニコーンは男とか女とかどうでもいいだけなのだが、当然若い聖職者はそんな事は知らないのだ。
 若い聖職者は感動に打ち震える体を何とか動かし、涙を流しながら風に揺れるズィアラフに祈りをささげた。
 後にこの聖職者は王都に戻り、次女神を祭る宗派を起し、その大司教に収まる事になる。
 この大司教が体験した奇跡は本になったりして、かなりの信者を獲得。
 かなり狂信的な神罰代行団体なども結成され、後々長きに渡ってキョウジをビビらせる事になったりする。
 また、その鉄の結束力が原動力になり、百数十年後幾つもの国で国教となり、その頂点に立つ大司教はかなりの影響力を持つようになるのだが、その辺は割とマジで本当に関係ないどうでもいい話であった。



 少年とか若い聖職者とかを治療したあと、さらに数人怪我人や病人に出くわし治療した後、キョウジはようやく街にたどり着いた。
 ユニコーンの背中に跨っているキョウジは、今にも死にそうな顔をしている。
 実際、若干死にたい気分にはなっていた。
 とりあえず救いだったのは、だれもキョウジの事をキョウジであると気が付かなかったことだろう。
 女装していたとしても、ばれなければどうという事はないのだ。
 だが、そのばれないと言う事実がキョウジを居た堪れなくもしていた。
 僕って何なんだろう。
 そんな哲学的な悩みが、キョウジの心には受け付けられていたのである。
 流石にユニコーンもそんな空気を察しているのか、特にキョウジに言葉をかけることは無かった。
 街の中に入ると、キョウジはユニコーンの背を降りて歩き始めた。
 人通りが多いため、緊急時以外乗馬は禁止されているためである。
 キョウジとユニコーンは、とりあえず診療所へと向う事にした。
 もう開く頃合でも有ったし、恐らくケンイチが来ていると思われたからだ。
 牧場から街に荷物を運ぶ帰り、ケンイチはいつもハンスの詰め所やキョウジの借り診療所でお茶を飲んでいくのである。
 そんなとぼとぼと歩いているキョウジだったが、ばったりとある人物に出くわした。
 街の中を見回っていた、ハンスである。
 凍りつくキョウジに、ハンスは怪訝な顔をして声をかけた。

「どうしたんだキョウジ、その恰好は。なにかあったのか」

 その言葉に、キョウジは一瞬なんと応えたらいいのか混乱した。
 だが、すぐに気を取り直して事情を説明しようと口を開く。

「あの、なんていうか。ミツバちゃんとサムソンさんに捕まって、こんな感じに……」

「ああー」

 たったそれだけの説明で、ハンスは事情を察してくれたらしい。
 ハンスは常日頃からミツバの行動に悩まされているし、町の人間の生態にも詳しいのだ。

「なるほど。災難だったみたいだな。診療所にいけば着替えもあるんだろ? 早く着替えてくるといい」

 苦笑しながら、ハンスは肩をすくめてそういった。
 その瞬間である。
 キョウジががっちりとハンスの手を両手で掴むと、滝のように涙を流し始めたのだ。
 ビクつくハンスを無視して、キョウジは震える声を絞り出す。

「ハンスさん……! 僕ぁ、僕ぁ一生貴方についていきます……!」

「え? ちょっ、なにが?」

 突然の行動に、ハンスは困惑したようにユニコーンの方へと顔を向けた。
 一緒に居たらしいこの魔獣ならば、事情を知っているかと思ったからだ。
 しかし、ユニコーンはただただ感心したように縦に首を振るだけであった。

「ハンスさん。あんた、男だぜ……」

「いや、だから、なにが?」

 なぜかユニコーンに男として認められるも、ハンスの疑問には誰も応えてくれない。
 キョウジは暫くの間、ハンスの手を掴んで男泣きを続けるのであった。

 ちなみに。
 この後きちんと事情を説明したため、ハンスはキョウジの行動の意味を正しく理解する事ができた。
 若干哀れんだ目を向けられ泣きたくなったキョウジではあったが、まあ誤解を与えたままよりはいいだろうと考えたのである。

 そして。
 この後街に赴任してきたレインが、このときの事を目撃した人物を発見。
 人相書きなどを作りかなりの割合の殺意を込めてその女性、つまりキョウジを探し始めたりするのだが、それはまた別の話である。
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