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第二部 少年期のはじまり
第百二十四話 冒険者養成学校へ行こう②
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細メンを抱っこしたまま人混みを避けるように走り、誰もいない路地裏で彼をおろすと、今後は気をつけるようにと注意してから、立ち去る。
あの、お名前は……と頬を染めて聞いてきた細メンに、名乗るほどの名前はないからと答え、そそくさとその場を離れた。
何故かと言えば、恋する乙女のような眼差しを注いでくる細メンが、ぶっちゃけ怖かったから。
まあ、そんなこんなで再び冒険者養成学校を目指す。
ちょっと遠回りになってしまったが仕方がない。
シュリは再び[レーダー]を起動して、ルートの再検索を行った。
最適なルートが算出されて、足を踏み出したところでシュリは目をまあるくして足を止める。
目の前に、見覚えのある人がいたからだ。
にこにこしながら、やぁ、とさわやかに片手をあげて挨拶をするその人は、さっきの騒動の現場においてきたはずの人。
黒い髪、黒い瞳の男装の麗人は、とっても感じのいい笑顔でシュリに笑いかけた。
「やあ、ずいぶん足が速いんですねぇ。見つけるのが大変でした」
「えーっと……何か僕に用事でも?」
「いえ?特には」
「じゃ、じゃあ、何で追いかけてきたの?」
「なんだか君に、興味がわきまして」
「あ~……それって、恋愛感情的な??」
またアレの影響かぁと、お姉さんの顔を見上げると、お姉さんは恋愛感情?それっておいしいの?的にきょとんとした顔をして、
「恋愛感情、ですか?いえいえ、私の趣味は至ってノーマルですので。君のことは大変可愛らしいと思いますし、好感はありますが、心配はいりません。恋愛対象としては見ていませんから」
そんな風に答えてくれた。
これならまだ大丈夫そうだと安心したが、じゃあ、どこに興味を持って追いかけてきたのだろうと、そんな疑問が浮かび上がる。
シュリはちょっと不審そうに、背の高いお姉さんの顔を見上げた。
その視線に気づいたお姉さんは急に慌て出す。
「な、何でそんな目で見るんですか!?え、えっと、その、本当に本当ですよ?私はちっちゃい男の子に恋心を抱くような趣味はないんです!普通に、大人の男の人が好きなはず、ですよ?たぶん」
大人の男が好きだと言い切らないところが怪しいと、不信感を強めつつ、
「じゃあ、好きな人はいるの?」
つっこんで問いかけた。
その質問を受けて、彼女はうっと言葉に詰まる。
そして、
「あ~、好きな、人ですか?今は特に、いないですねぇ」
こう答え、
「私が好きな人を作ると小うるさい事をグチグチ言いそうな相手がいつも近くにいますし……正直、好きな人を作ってる暇もないというか……」
ちっちゃな声でぼそりと付け加えた。
(好きな相手を作ると文句を言われる?それは単純に惚れられてるだけなのでは?)
それをうっかり聞いてしまったシュリは、小首を傾げてそんなことを思いつつ、目の前の彼女を一旦安全認定する事にした。
少なくとも、悪い人ではなさそうだ。いい人だと断言するには、もう少し時間が必要かもしれないが。
まあ、もしスキルの影響でシュリに惚れてしまったとしても、それはもう今更である。
そんなことを心配していたら、シュリは一生引きこもって生きていくしか無くなってしまうだろう。
そこでシュリは、会話の流れを正道に戻す為の質問を繰り出した。
「僕に興味って、どのあたりに?」
「そうですねぇ。色々と理由はあるんですが、一番の理由は、君がその年齢に似合わない強者である、と事でしょうか?あのまま別れてしまうのはもったいないと思いまして」
「ふうん?でも、どうやって追いかけてきたの?後ろを付いてきたって訳でもないでしょ?」
「ああ、君の気配を追ってきました」
「気配??」
「気配というか、匂いというか、存在感というか」
まあ、色々と。細かいところは説明しても理解できないでしょうし、秘密です♪……と、そんなことをケロっというお姉さんを、シュリは戦慄の眼差しで見つめる。
うわぁ、この人、人間離れしてるよ、と。
完全に、自分の事は棚に上げて。
そんなシュリの眼差しをまるっと無視して、彼女はにっこりと微笑む。
「さて、前置きが少し長くなってしまいましたけど、良かったら私ともう少し親睦を深めませんか?」
「えっと、お断りします?」
「なっ、なぜ!?私がちょっと変な人だからですか!?」
(あっ、自分がちょっと変って自覚はあるのかぁ)
シュリはそんなことを思いつつ、
「だって、用事があるし」
正直な理由を告げる。
もうすでに遅れているのに、これ以上遅れるの流石にどうかと思った。
ヴィオラとジャズは、きっと怒らないとは思うけど、心配はするかもしれない。
特に、ジャズの方が。
「用事、ですか?」
「うん。冒険者養成学校で人と待ち合わせしてるんだよ」
それを聞いたお姉さんは、がっかりしていた顔をぱああっと輝かせた。
「それなら目的地は一緒です。私も、そこに知り合いが来ているとの情報を受けて向かっていたところだったんですよ」
「そ、そう」
にこにこ笑いながら、お姉さんはシュリの言葉を待っている。
恐らく、ここで言うべき言葉は一つしかない。
シュリはふぅ、と少し疲れたように息をもらし、それから苦笑混じりにお姉さんの顔を見上げた。
「良かったら、一緒に行く?」
「はい!喜んでお供します!!」
こうしてシュリは、吉備団子を持っていたわけでもないのに、美形な男装の麗人を、冒険者養成学校への道行きのお供にゲットしたのだった。
あの、お名前は……と頬を染めて聞いてきた細メンに、名乗るほどの名前はないからと答え、そそくさとその場を離れた。
何故かと言えば、恋する乙女のような眼差しを注いでくる細メンが、ぶっちゃけ怖かったから。
まあ、そんなこんなで再び冒険者養成学校を目指す。
ちょっと遠回りになってしまったが仕方がない。
シュリは再び[レーダー]を起動して、ルートの再検索を行った。
最適なルートが算出されて、足を踏み出したところでシュリは目をまあるくして足を止める。
目の前に、見覚えのある人がいたからだ。
にこにこしながら、やぁ、とさわやかに片手をあげて挨拶をするその人は、さっきの騒動の現場においてきたはずの人。
黒い髪、黒い瞳の男装の麗人は、とっても感じのいい笑顔でシュリに笑いかけた。
「やあ、ずいぶん足が速いんですねぇ。見つけるのが大変でした」
「えーっと……何か僕に用事でも?」
「いえ?特には」
「じゃ、じゃあ、何で追いかけてきたの?」
「なんだか君に、興味がわきまして」
「あ~……それって、恋愛感情的な??」
またアレの影響かぁと、お姉さんの顔を見上げると、お姉さんは恋愛感情?それっておいしいの?的にきょとんとした顔をして、
「恋愛感情、ですか?いえいえ、私の趣味は至ってノーマルですので。君のことは大変可愛らしいと思いますし、好感はありますが、心配はいりません。恋愛対象としては見ていませんから」
そんな風に答えてくれた。
これならまだ大丈夫そうだと安心したが、じゃあ、どこに興味を持って追いかけてきたのだろうと、そんな疑問が浮かび上がる。
シュリはちょっと不審そうに、背の高いお姉さんの顔を見上げた。
その視線に気づいたお姉さんは急に慌て出す。
「な、何でそんな目で見るんですか!?え、えっと、その、本当に本当ですよ?私はちっちゃい男の子に恋心を抱くような趣味はないんです!普通に、大人の男の人が好きなはず、ですよ?たぶん」
大人の男が好きだと言い切らないところが怪しいと、不信感を強めつつ、
「じゃあ、好きな人はいるの?」
つっこんで問いかけた。
その質問を受けて、彼女はうっと言葉に詰まる。
そして、
「あ~、好きな、人ですか?今は特に、いないですねぇ」
こう答え、
「私が好きな人を作ると小うるさい事をグチグチ言いそうな相手がいつも近くにいますし……正直、好きな人を作ってる暇もないというか……」
ちっちゃな声でぼそりと付け加えた。
(好きな相手を作ると文句を言われる?それは単純に惚れられてるだけなのでは?)
それをうっかり聞いてしまったシュリは、小首を傾げてそんなことを思いつつ、目の前の彼女を一旦安全認定する事にした。
少なくとも、悪い人ではなさそうだ。いい人だと断言するには、もう少し時間が必要かもしれないが。
まあ、もしスキルの影響でシュリに惚れてしまったとしても、それはもう今更である。
そんなことを心配していたら、シュリは一生引きこもって生きていくしか無くなってしまうだろう。
そこでシュリは、会話の流れを正道に戻す為の質問を繰り出した。
「僕に興味って、どのあたりに?」
「そうですねぇ。色々と理由はあるんですが、一番の理由は、君がその年齢に似合わない強者である、と事でしょうか?あのまま別れてしまうのはもったいないと思いまして」
「ふうん?でも、どうやって追いかけてきたの?後ろを付いてきたって訳でもないでしょ?」
「ああ、君の気配を追ってきました」
「気配??」
「気配というか、匂いというか、存在感というか」
まあ、色々と。細かいところは説明しても理解できないでしょうし、秘密です♪……と、そんなことをケロっというお姉さんを、シュリは戦慄の眼差しで見つめる。
うわぁ、この人、人間離れしてるよ、と。
完全に、自分の事は棚に上げて。
そんなシュリの眼差しをまるっと無視して、彼女はにっこりと微笑む。
「さて、前置きが少し長くなってしまいましたけど、良かったら私ともう少し親睦を深めませんか?」
「えっと、お断りします?」
「なっ、なぜ!?私がちょっと変な人だからですか!?」
(あっ、自分がちょっと変って自覚はあるのかぁ)
シュリはそんなことを思いつつ、
「だって、用事があるし」
正直な理由を告げる。
もうすでに遅れているのに、これ以上遅れるの流石にどうかと思った。
ヴィオラとジャズは、きっと怒らないとは思うけど、心配はするかもしれない。
特に、ジャズの方が。
「用事、ですか?」
「うん。冒険者養成学校で人と待ち合わせしてるんだよ」
それを聞いたお姉さんは、がっかりしていた顔をぱああっと輝かせた。
「それなら目的地は一緒です。私も、そこに知り合いが来ているとの情報を受けて向かっていたところだったんですよ」
「そ、そう」
にこにこ笑いながら、お姉さんはシュリの言葉を待っている。
恐らく、ここで言うべき言葉は一つしかない。
シュリはふぅ、と少し疲れたように息をもらし、それから苦笑混じりにお姉さんの顔を見上げた。
「良かったら、一緒に行く?」
「はい!喜んでお供します!!」
こうしてシュリは、吉備団子を持っていたわけでもないのに、美形な男装の麗人を、冒険者養成学校への道行きのお供にゲットしたのだった。
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