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第三章

果てしない塩の平原 3

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 エシャーは、首に籠を下げていた。
 道具を使えるという事は、やはり知的生命体じゃないのだろうか?
 ロットは、姉の籠に首を突っ込むと、中の物を咥えてきた。
「ピー」
 Pちゃんの足もとに、それを置く。
「まあ、リリアの実ですね」
 リリアの実というのか? 察するところ、現地植物のようだが……
 スイカほどもあるヒョウタンのような形をした赤い実を、Pちゃんは拾い上げた。
「早速、お料理しなくちゃ」
 Pちゃんは、リリアの実を持って屋根から降りた。Pちゃんがあっさり受け取った、という事はリリアの実とやらはPちゃんのデータの中にあって、なおかつ人間に害はないという事なのだろうな。
「カイト」
 エシャーが、僕の肩を軽くつつく。
「なんだい?」
「Pチャン、イジメル、ヨクナイ」
 うわわ! 傍から見てる奴いたのか……
 この場合、空からか……
 鳥類って人間よりもすっと目がいいらしいけど、翼竜も空を飛ぶから目がいいのかな?
「いや……苛めていたのではなくて……」
「Pチャン、オ父サンノ傷、治シテクレタ、イイヒト、優シクシテ」
 あれには驚いた。
 あの時、出血の止まらないベジドラゴンの傷を、Pちゃんは縫い合わせてしまったのだ。
 あんまし役に立たないロボットと思っていたのだが、そういう技能も持っていたんだな。
「エシャー。お父さんの具合はどう?」
「具合、イイ、モウスグ、飛ベルヨウニナル」
 キズを負ったエシャーたちのお父さんは、すぐには飛び立てそうになかったので、あの場所でしばらく養生することになった。
 日差しがきつそうだったので、シャトルから適当な鋼材を引っぺがし、それを柱にしてパラシュートの布(シャトルが不時着した時に、エアブレーキに使ったもの)を張って簡単な日除けを作ってやった。力仕事だが、ロボットスーツを使えば簡単なことだ。
 そんなわけで、エシャー達は今、交代でお父さんのところへ食糧を運んでいる。
 ここへ、立ち寄ったのはその途中の事だ。
「できました」
 Pちゃんが、トレーを運んできた。
 トレーの上には、やはり仰々しくドームカバーが被せてある。
「さあ、御主人様」
 僕の目の前でドームカバーを外した。
「私の料理を召し上がれ」
 いや、料理って……それ果物の皮剥いて、切り分けて爪楊枝刺しただけだろう。
 カロリーメートよりマシだが……
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