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第八章 ダンジョンを攻略して女神様に会おう1

5、60階層水のエリア攻略☆女神様のニンギョ……劇?

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 ボク達は、地下60階の水のエリアを行く。
 サンダーボールでは、水の中で放電して弱くなってしまう。届かない場合もある。

 相手に直接触れるスタンガンは問題ない。だが、遠距離攻撃が出来ないのでは、せっかくの先制攻撃のチャンスを逃す事になる。
 ボク達のサンダーボールは進化させた。魔力で生み出した雷を凝縮して、水の中で放電しないように魔力でコーティングしたのだ。
 ボク達は、サンダーブリットと呼んでいる。三匹の掛け声は、同じなのだが……。

 森のエリアでは、道が続いていたのだが……。周りを見渡すと、遠くに小さな灯りがぼんやりと見える場所がある。
 たぶん、この灯りが目印だろう。

 ボク達は灯りを目指して泳ぎだした。
 近づいていくと、灯りが大きくなっていく。直径1.2m高さ2mくらいの円柱の上に灯りが浮かんでいる。
 水の中の灯台といったところだろうか。
 来た方向とは別の方向に小さな灯りを見つけて、次の灯台を目指す。

 ジャイアントクラブ、ウォータースネーク、レッドオクトパス、ブルーシャークなどを倒していく。ボク達は、万全の準備を整えてきた。何の問題もなく進む続ける。

 モンスター種類は、マリアさんが教えてくれているのだが……。

『マリアさん、水の中のモンスターの名前まで分かるなんて物知りですね』

『……ん? 私は鑑定スキルを使ってるだけですよ。……あまり使えないスキルなので、気付かなかったのですね』


 鑑定があっても基本的に他人のステータスは見れない。モンスターの類でも、分かるのは種族名くらいだという。
 だが、まったく役に立たない訳でもない。種族名が分かれば、聞き知ったモンスターの知識が役に立つ事があるのだ。
 

 64階の最後の灯台は、建物の上にあった。
 近づいていくと、例によってモンスターが集団で襲ってくる。

 今回は複数のモンスターだった。四方八方から、やってきた。水の中であり、敵が来ないのは地面の中からくらいである。

 だが、水の中を泳いでくる相手は、動きが分かり易い。慣性というものがあり、方向転換するにも限界がある。
 離れた場所から見ると更に丸分かりだった。

 空野家の四人は弓矢に幻影を纏わせていた。矢が当たると同時に実体化させた幻影が追加ダメージを与える。
 マリアさんは、水の中だと分かりにくいが水魔法だろうか。ブルーシャークが、何かに貫かれていく。
 ブランカさんが、以前に言っていたマリアさんのえげつない攻撃……。ブルーシャークは、毒に犯され動きを止め消えていった。
 付与魔法で剣を輝かしたブランカさんが、地を這うように近づいて来たジャイアントクラブを切り刻む。
 ボクとぽち、たま、うさ子もサンダーブリットを、ばら撒いていく。近接戦闘になる頃には、充分に敵の数を減らしていた。

 気が付けば、ボク達は圧勝していた。



 階段を下りて、地下65階のセーフティゾーンに着く。
 ボクは、建物の中を探してみた。……宝箱はないようだ。

 ここでも、何日か掛けて強化してから先に進む。
 何度か戻るたびに確認をするのだが、やはり宝箱はない。みんなの目が憐れんでいる様に見えるのは、気のせいだろうか……。

 
 69階へ降りると、これまであった灯台の道しるべがなくなった。
 70階へ続く建物への道が分からなかった。女神様はどういうつもりなのだろうか?

 そのとき女性の人魚が三人、こちらに向かってきた。この人魚と戦うのだろうか? と思っていると、人魚からの念話が聞こえてきた。

『勇者の皆様に、お願いがあって参りました。
 どうか、私たち人魚をシロクロクジラの魔の手よりお救いください』

 話してる人魚は、お嬢様然としている。あとの二人は御付きといった感じだ。
 みんなも聞こえているようだ。人魚と自分を示して、聞こえていると合図を送ってきた。

 ところで、何だか念話が棒読みなんですけど……。その人魚は、とんでもない大根役者だった。
 あれ、何故だろう。人魚がこちらを睨んでる気がする。
 こちらの考えている事を知られた訳でもないと思うが。念話スキルは、相手の心の中まで読めるスキルでは無いのだから。

 と、お嬢様然とした人魚がニコリと笑った。そして、ボクにだけ念話を伝えてきた。

『……大根役者って、失礼な人ですね』

 念話スキルじゃあないのか……。そして、また皆に向かって続きを始める。女神様、何なんでしょうか。このオシバイ……。
 劇団でも始めるつもり? それとも自主制作映画とか? 

『私たち人魚は、シロクロクジラは頭が良い可愛いと大切に保護してきました。しかし、いつの間にか大きくなり過ぎたシロクロクジラは、私たちの食料資源にまで悪影響を与えるようになる始末。
 それでも私たち人魚は、シロクロクジラの保護を止めませんでした。クジラ保護主義者の圧力もありましたが……。
 そして人魚は、その人口を減らしシロクロクジラは更に大きく育ったのです。いまやシロクロクジラは、私たち人魚を食料として襲って来る様になりました。
 ……すでに、人魚の秘伝クジラ討伐技術は失われています。もはや、人魚にシロクロクジラを倒す術はありません。
 どうかお願いです。人魚に替わりシロクロクジラを退治して、私たち人魚をお救いください』

『『『お任せください!』』』
『勇者きた~!』『『がんばります!』』

 人魚はチラリと、ノリノリの六人を見ると気を良くした様に満面の笑顔になる。そして、またボクにだけ念話を飛ばしてくる。

『ふっ、どうですか? この完璧な長セリフ。つかえずに言えたのです』

 やっぱり大根なんだが、女神様ももう少しマシな役者を選べばよいのに……まずいと思いながらもついつい考えてしまう。
 あ~っ、やっぱりこっちを睨んでいる……。

 人魚達に案内されて、ボク達はシロクロクジラの住処に向かう。案内を終えると、人魚たちが消えていく。その際に、ボクに念話を飛ばしてきた。

『わたし、友達いますよ』

 何のこと? 取りあえず、訳のわからない言葉は後回しにする。

 ボク達は、シロクロクジラとの戦闘を開始した。
 デカイ、巨大だ。魔法が効かない。……他の攻撃も効かなかった。

 ボク達は戦略的撤退を決意するが、逃げられなかった。

 体力も限界かと、思われる頃……。
 シロクロクジラが吼え声を上げると、大きく口を開ける。

 口の中に続く、大きな水流が出来ていた。
 ボク達は、次々とシロクロクジラの口の中に飲み込まれて行くことになった。

 それは絶対に勝てない、……イベント戦闘だった。
 ボク達が目を覚ますと、そこはシロクロクジラの腹の中。その中で、ボク達は70階へ降りる階段を見つけた。

「これ、ピノキオのパクリ?」

 ボクが思わずポツリと呟くと、頭の中で声がした。

『これは汎用的な設定で、パクリじゃないです!
 それから、私は暇じゃないです。同時に色々出来るだけで、今も幾つも仕事してますから~!』

 その瞬間、ボクは相手の正体を知る事になった。
 あの、お嬢様然とした人魚……女神ミューズ様でした~!

 
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