姉らぶるっ!!

此葉菜咲夜

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【本幕・第1章】暴気の鈴がりんりんりんっ

2.報酬の生脱ぎパンツはいりませんねっ!

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 その日の授業中、荒木鈴が言っていたことをずっと考えていた。
痴漢に遭ったからいっしょに帰ってくれと言う。実におかしな話だ。
変質者など、を決めれば済むはず。

(――わからん。なんでダメなんだ?)

 とにかく今日いっしょに帰る見返りは、パンツと言ったきりだ。
はっきり言って、あのボクっ娘のパンツには興味がない。
パンツを脱がしてもいい権限なら、ちょっとありかもしれないが……

(あやしいな……)

 どう考えても裏がありそうだ。
俺は常に変態姉妹あねたちにロックオンされている。
だから、直感的に嫌な予感がする。

 あれこれ考え事をしているうちに時間は過ぎ、昼休みになった。

「蒼太、弁当?」

 こうして里志と昼に弁当があるかどうか確認するのは日課となっている。
こいつは可愛い双子の妹が弁当を作ってくれるらしい。

「今日姉ちゃん、生徒会で早かったからな。食堂行ってくる」

 俺は教室を出て階段をおりて、食堂がある校舎へ向かった。




 昼の食堂は生徒でごった返して騒がしい。
教室六つ分ぐらいの広さも、この時ばかりは狭っちく感じてしまう。
整理券でも配ってくれると助かるのだが、遅れて行くと残り物しかない。

 既に食券はほとんどが売り切れている。
目についたのは、冷蔵庫の大きな魚肉ソーセージ……

「はぁ……また魚肉ソーセージで腹満たすのか……」

 少し飽きているが、魚肉ソーセージは好きな部類の食べ物だ。
百円でたんぱく質とカルシウムを手軽にとれて、腹を満たせる。
それを冷蔵庫から一本取り出して、清算を終えたときだった。

「アオ、昼食まだ?」

 後ろにスズが笑顔を浮かべながら立っている。
手には食券らしきものを二枚持っているようだ。

「まだ。というか、食券売り切れてなにも食ってない」

 俺は咄嗟にソーセージをポケットに隠した。
なぜなら、これはタダ食いのフラグだからだ。

「じゃあさ、今日のお願い聞いてくれるんだったら、これあげるぞ!」

 提示されたのは、カレーセットの食券一枚だった。
要するに、今からいっしょに昼食を食えってことだ。

「スズ、お前部活終わるの遅いよな? いっしょに帰るってことは……部活終わるまで待てってことか?」
「悪い、ちょっと遅いな。でも、花穂ちゃんに許可はもらったから」

 やはりそう来たか。花穂姉ちゃんは、スズを特別可愛がっている。
困ってるから蒼太に助けてもらいたいと言えば断わらないはずだ。
姉二人にとって、このスズは四条先輩のような危険人物ではないらしい。

「空手部、終わるの何時?」
「遅いときで八時ぐらい……」
「八時!? それ、遅いな」
「頼む! 今日のパンツあげるからっ!」

 拝むように手を合わせて、おかしなことを言っている。
今朝、言っていたのことだ。
実に食欲をなくす話が始まったものだ。

「お前な、なんで報酬がお前の使用済みの汚パンツなんだよ!?」
「えっ!? 花穂ちゃん情報では使用済みパンツにアオは燃えあがって、燃えカスになるって言ってたから……パンコッキーって紗月師匠も言ってたし。ところでパンコッキーはなんなの?」
「知らん! 万国旗の間違いだろ! そして、パンツはいらんっ!!」
「えー!? いらないの? 生脱ぎなのに?」
「いらん! カレー食ってる最中にパンツの話するな……」
「大丈夫だって! ウンチは付いてないはずだ!」
「お前……わざと言ってるだろ……」

 あの変態姉妹の共有ボックスとかいうアプリ、破壊されたらいいのに。
確かに花穂姉ちゃんの下着は使ったけど、このボクっ娘のパンツはいらない。

 しかし、姉ちゃんたちはとんでもない情報を他人に漏洩するんだな。
だいたい燃えあがってないし、燃えカスになったら死んでるだろが……










◇◇◇◇◇◇











 放課後、格技場の隅っこで空手部の練習を見学しながら待っていた。
ここで待っていても、俺だけは勧誘されることがない。
青山姉妹の弟だからだ。花穂姉ちゃんは生徒会長で、校内の有名人。
さらに元空手部主将の青山紗月の弟であること、それは周囲にとって脅威なのだ。

「ごめんなアオ、待たせて。あと整理体操して終わるから」
「ん、了解!」

 スズは一年生だが、空手歴が長い。
動きを見ていても、先輩たちに引けをとらない。
まだ、入部して間もないというのに、ぎこちなさが微塵もないのは大したものだ。
整理体操と片づけが終わって、着替えたスズが更衣室から出てきたのは七時過ぎだった。

「お待たせっ!」
「それで、目的は? ほんとは痴漢撃退じゃないよな?」

 校門から出る前に、こいつの本当の狙いを確認したかった。
痴漢撃退など、蹴りの一発で片づくはずだ。スズは嘘をついている。

「アオ、エッチなことしてくれない?」
「……は!?」
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