姉らぶるっ!!

此葉菜咲夜

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【本幕・第1章】暴気の鈴がりんりんりんっ

3.下校中に路上口淫やっちゃいますかっ!

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 五月七日午後七時半過ぎ。外が薄暗くなってきた。
学校を出るときにスズが言ったことはなんだったのか。
エッチ、俺の乏しい性知識辞書で検索すると……エス、イー、エックスと出た。

「スズ、お前……いきなりなに言ってんだ?」
「違うんだよ。最悪の場合、するふりしてくれないと困るんだって!」

 こいつがなにを言っているのか……意味がわからない。
まず、撃退する対象が痴漢ではないのは、確定したと言ってもいい。

「ふりってなんで? いったいなにがあるか説明しろ」
「毎日待ち伏せされてるんだ。前に同じ空手教室に通ってた三つ上の秋山って男で、あたしに言い寄ってしつこいんだよ……ぶっ飛ばそうと思っても相手のが強いし……」
「俺が代わりにぶっ飛ばされろって言うのか!?」
「違うんだ、恋人のふりだよ。漫画とかでよくあるだろ?」

 こいつは重要なことに気が付いていない。
一発で解決する方法が二つほどあるではないか。

「お前な、なんで里志に頼まない? あいつ俺より強いぞ?」
「さ、里志は……恥ずい……」

 すっかり忘れていた。スズは小学生の頃から、里志にべた惚れなのだ。
こういう役割は片想いの相手に頼みにくいのだろう。

 校門を出て、帰り道を歩きながらふと考えた。
俺の少し前を軽快に歩いて行くスズ。スズは里志が好き。
一方、里志は紗月姉が好き。スズは紗月姉を尊敬する自称弟子バカでし
これは三角関係になるのだろうかと考えていたとき……

「あっ!」
「わっ! びっくりした! なんだよアオ?」
「いや、なんでもない」

 紗月姉が俺を好きなら、その三角関係に俺も含まれてしまう。
スズが里志を思い、里志が紗月姉を思い、紗月姉が俺を思う。

 登場人物が四名で四角関係となるわけだ。
ただし、思いは循環せず、俺で途切れてしまうのだが……













◇◇◇◇◇◇













 薄闇の通学路を歩いて行くと、路地の向こうから体格のいい男が歩いて来る。
上下長袖のジャージ、薄いあごひげ、身長は里志より高いようだ。

りん、そいつが言ってた彼氏なの? まじで彼氏?」

 俺はここで話が飲み込めてきた。最近、似たようなことがあったからだろう。
スズの奴、この男につきまとわれ嫌気がさして、と嘘を言ったのだ。

「そうだって! だから、誘われてもどこにも行く気ないし、無理だから!」
「怪しいんだよな。そいつと帰ってるとこ見たことないし、だいたい付き合ってるわりには離れて歩いて、手もつないでないじゃねえか!?」
「なあ、あんたスズ……いや鈴が嫌がってるんだ。もう止めてくれないかな?」

 俺がこんなごつい男に言っても言い返されるのはわかっているのだが、ここは一言だけ物申さずにはいられない。しかし、ぶっ飛ばされるのはごめんだな……

「ああっ!? お前が彼氏だってんならキスでもしてみろよ!? ええっ!?」

 出た、お約束のセリフ。見た目からして、悪役そのものだな。
詰め寄られて少し後ずさりする俺に、スズがいきなり飛びついて来た……

「アオ、大好きっ!」

 首に腕を絡ませながら、まるで頭突きに近い勢いで唇を押しつけて来るスズ。
口先が触れるだけだったが……これで男は信じるだろう。

「ちっ! 鈴、そいつとはいつから付き合ってるんだ!?」
「一年前から! もうやりまくりだからっ!」

 この空手馬鹿ボクっ娘、また余計なことを言いやがった。
敵が一歩退く素振りを見せた時の見栄や虚勢は墓穴だ。
男は嫌味な薄笑いを浮かべて、しばし考えにふけっている。

 次にその秋山という男が口にした一言は、俺とスズを困惑させた。
こんなときに紗月姉や里志がいれば、ぶちのめして終わりなのにな……

「それなら彼氏のアレ舐めてみろよ? できるよな?」
「は? あんた馬鹿でしょ? そんなこと人前でできるわけ……」
「やりゃいいんだろ? やるから二度と鈴の前に現れんな! 俺は空手有段者でこの町最低最強の青山紗月の弟だぞ! 約束を違えたら姉があんたをぶち殺す!」

 空手をかじっている人間なら、ある程度ここで退いてくれるのだが……
いかんせん相手は格闘技経験者の大男だ。
いくら姉が強いと言っても、脅し文句にはいまいちだろう。

「青山紗月か……あれは強い。でもな、女に負けるわけあるかっ! ほれ、やれるもんならやってみろよ! やれるんなら約束は守ってやるよ!」

 秋山は少し離れた街燈の下に立って、ヘラヘラと笑っている。
スズは怒りと悔しさからか、やや涙目になってきた。
気の強いスズの泣きそうな顔を見るのは、いったい何年ぶりだろうか。

 絶対にしよう。俺の頭の中に里志の声が聞こえた。
小学生の頃だった。親友の里志と一度だけひどい殴り合いをした。
勝敗すら忘れていたが、原因の一端を思い出した。
さっき歩きながら考えていた四角関係で、里志と意見が食い違った。

 どちらにも正義や大義名分があり、譲れなかったのだ。
そして、殴り合いの原因となったのは、紗月姉と鈴。
流血する二人を発見するなり、止めに入ったのも紗月姉と鈴だ。

 ワーワー泣いて殴り合いを止めようとするスズに対して、紗月姉は俺と里志をさらにボコボコにして無理矢理その場を収めた。そこで誓いが立てられた。荒木鈴スズを泣かしてはいけない。その約束は、毎朝当たり前のように顔を合わせる俺と里志の中で、今も生き続けている。

「スズ! 下を向くな! こっち向け!」
「アオ!?」

 俺は男に背を向けて、ズボンのファスナーを開いた。
ついに隠していた伝家の宝刀を抜く時が来たのだ。

 剥き身となったものが外へ放り出された。
そして、スズの口元を自分の股間に誘導していく……

「スズ、舐めてくれ! あいつに見せつけろ!」
「うん!」

 チュボチュボと音を立て、ヨダレを流し唾液を粘らせてスズは舐め始める。
静まり返った暗い路地にその音だけが響いた……
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