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5 羨ましがられました。

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王太子に襲われた数日後が経過した。
不自由なく過ごせる毎日がとっても居心地悪い。
本来なら侍女としてここで働いていたのだ、無理もない感じだ。
それに他の侍女が私の事を蔑む視線を向けられているのもなんだか。
今日も私の世話をしてくれている仲間だった侍女ラスティが私に話しかけてきた。

「貴女本当にラッキーだわよねぇ~。侍女から王妃に繰り上がるなんて、羨ましい」
「私は本意ではないのよ。いきなり王太子に襲われてしかも『私の子を孕ませてくれ』なんていわれて無理やり……本当に嫌な出来事だわ」
「侍女たちの間でも凄い噂になってるわよ。貴女が王太子を誑かしただの、無理やり迫っただの。事実は何時の時代も捻じ曲がるものなのね……」

本当にそうだと思った。
王太子は相変わらず夜な夜な私の部屋に来ると私の身体を求めてくるのだ。
もう抵抗しても無駄だと分かってからは私は無理くりハメられることに慣れてしまった。

「私は元の生活に戻りたいだけなのに」
「それは無理ってものでしょ。王太子の婚約者は遊びだったって王の前で言われちゃったし。貴女を恨むでしょうねぇ~」
「それも私の本意ではないんだけれど……」
「貴女も色々大変ね。私は応援してるから、頑張ってっ」

何を頑張ればいいのか……。
どうせ今日もあのエロ王太子が私の事を夜這いに来るに決まっている。
毎日毎日……私の身体が持たない。

「一層の事お城を抜け出して何処か遠くへ行きたいわ」
「それは無理ってものでしょう。貴女は既にあの王太子と婚約することになってるんですもの。ああ、羨ましい。侍女の間で貴女悪口で持ち切りよ」

何で私がこのような事になってしまうのだろう。
侍女たちの間では『泥棒猫』扱いされているらしい。
ラスティは私の身の回りの世話を担当する侍女として私が指名した相手。
この人なら何でも話が出来ると思ったのだ。

「ラスティだったら、私のこの状況嬉しい?」
「それは、嬉しいと思うわよ。私たちは使い捨てられる側の人間なんですもの。私なんてまだましだわ。貴女が私を指名してくれたお蔭でこうしてお茶を飲みながらサボれるんですもの。他の侍女達は忙しく仕事をしているっていうのにね」

お茶に誘ったのは私だけれど、ラスティは私の今の立場を羨ましいと連呼する。
ならば私と変わらない? 
そう持ち掛けた。
するとラスティはこう答えた。

「嫌よ。毎晩セックスを迫られるのは困るし。それに他の侍女たちに妬まれるのはごめんだわ。あ、あと貴族の令嬢達に目を付けられるのも御免だわ」

本心が訊けて納得した私だった。
どうせ、誰も私の立場を理解して、憐れんでくれる人はこの現実世界にはいないということが……。
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