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第六章
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◇◇◇
静寂を約束された場所。古からの知識や文化、技術…書き記された文字で得ることが出来る先人たちに教えを乞う尊き学び舎。
ここは、膨大な数の本が収められている唯一の図書館。閉館時間になり利用者が残っていないか確め、閲覧スペースをチェックする。
そのついでに、ジェイは整然と並べられた本棚に白い手袋を装着した手に持っていた本を戻した。知り合いに貸していた本が戻ってきたからだ。
ここの本はほとんどがジェイの寄付によるものである。
電球がチカチカと点滅している。早急に新しいモノと取り替えないと、視力が落ちる。
図書館を管理する者として、ここを利用する者達の環境を最善なものにしていなければならないのだが、
「よう、ジェイ……電球、俺がかえてやろうか?」
「ロゼ、ちょうどいいところに。お願いします」
少し高く、脚立が必要か、と腕を組んで考えているところに声を掛けられ天井を見上げていたジェイがそちらに視線を向ける。従兄弟のロゼだ。
ジェイは動きを制限されている。今は日常生活には支障がないのだが走ったり、重いものを持ったりすると通常より心臓に負担が掛かってしまう。
今も医療技術が発達した人間の国にある大きな病院に半年に一回受診している。
「瑠璃の花、散りましたね」
「……ああ、漸くだ。地獄の2週間だった」
瑠璃の花の命は短命である。2週間美しく咲き誇りそして散る。
アレルギー体質の者は体調が回復する頃だ。
ロゼも瑠璃の花アレルギーで、花粉用のマスクに世話になっていたがようやく手離せた。息苦しさもなく心が軽い。
「アレルギーの予防の注射すればいいのに」
「…うへ!やだよ、注射苦手。むりむり」
顔を歪めて首を横に震る。ロゼは注射が苦手なのだ。一分一秒でも急を要するとか、命に関わる事以外で注射をするくらいなら我慢する方を選ぶ。
「子供ですね。飴食べますか?」
「うるせー、今に何もかも追い越してやる。子供じゃねーけどハッカの飴ならもらう」
電球を新しいモノに交換すると、ロゼは脚立を元の場所へと戻した。子供扱いは子供の頃から嫌だった。眉間に皺を寄せて唸る顔は昔と変わらず、ジェイは飴を差し出した。
ロゼもジェイも甘いものは苦手だが、ハッカのすーすーする飴は好んでたまに舐めている。
「…今日は、お前に頼みごとし来た。本当は一人で、見つけようと思ったんだけど…上手くいかねぇ、悔しいけど」
ロゼは自分が温室育ちの王子でしかないと、思い知った。
どんなに鍛練をして国を守るとき率先して動く心構えや、技術を習い備えていても、自分は何一つまだ持っていない。
静寂を約束された場所。古からの知識や文化、技術…書き記された文字で得ることが出来る先人たちに教えを乞う尊き学び舎。
ここは、膨大な数の本が収められている唯一の図書館。閉館時間になり利用者が残っていないか確め、閲覧スペースをチェックする。
そのついでに、ジェイは整然と並べられた本棚に白い手袋を装着した手に持っていた本を戻した。知り合いに貸していた本が戻ってきたからだ。
ここの本はほとんどがジェイの寄付によるものである。
電球がチカチカと点滅している。早急に新しいモノと取り替えないと、視力が落ちる。
図書館を管理する者として、ここを利用する者達の環境を最善なものにしていなければならないのだが、
「よう、ジェイ……電球、俺がかえてやろうか?」
「ロゼ、ちょうどいいところに。お願いします」
少し高く、脚立が必要か、と腕を組んで考えているところに声を掛けられ天井を見上げていたジェイがそちらに視線を向ける。従兄弟のロゼだ。
ジェイは動きを制限されている。今は日常生活には支障がないのだが走ったり、重いものを持ったりすると通常より心臓に負担が掛かってしまう。
今も医療技術が発達した人間の国にある大きな病院に半年に一回受診している。
「瑠璃の花、散りましたね」
「……ああ、漸くだ。地獄の2週間だった」
瑠璃の花の命は短命である。2週間美しく咲き誇りそして散る。
アレルギー体質の者は体調が回復する頃だ。
ロゼも瑠璃の花アレルギーで、花粉用のマスクに世話になっていたがようやく手離せた。息苦しさもなく心が軽い。
「アレルギーの予防の注射すればいいのに」
「…うへ!やだよ、注射苦手。むりむり」
顔を歪めて首を横に震る。ロゼは注射が苦手なのだ。一分一秒でも急を要するとか、命に関わる事以外で注射をするくらいなら我慢する方を選ぶ。
「子供ですね。飴食べますか?」
「うるせー、今に何もかも追い越してやる。子供じゃねーけどハッカの飴ならもらう」
電球を新しいモノに交換すると、ロゼは脚立を元の場所へと戻した。子供扱いは子供の頃から嫌だった。眉間に皺を寄せて唸る顔は昔と変わらず、ジェイは飴を差し出した。
ロゼもジェイも甘いものは苦手だが、ハッカのすーすーする飴は好んでたまに舐めている。
「…今日は、お前に頼みごとし来た。本当は一人で、見つけようと思ったんだけど…上手くいかねぇ、悔しいけど」
ロゼは自分が温室育ちの王子でしかないと、思い知った。
どんなに鍛練をして国を守るとき率先して動く心構えや、技術を習い備えていても、自分は何一つまだ持っていない。
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