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第三章 リュータと新たな出会い

第二十六話 リュータと踏破と新種族

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「さて、まさかダンジョンコアとかくれんぼをするハメになるとは思いもよりませんでしたごひよ」

 と、言う訳です。
 何が? と思ったかもしれませんが、シンプルに言えば、これが真実なのです。
 それと言うのもこの、おそらく正式名称「原初の黒のダンジョン」のダンジョンコアさん、周囲の闇に溶け込むのです。
 しかも逃げる。
 だからこの一か月、探しては見つからず、見つけても逃げられる日々を送っておりました。

「最初は灯台下暗しって思ったんだけど、それも外れたごひ」

 石碑の近くにいるのではと思い、スケルトン師匠の元を離れ拠点に戻ったのですが、おりませんでした。そして島中をくまなく探し、スケルトン師匠に何度もお世話になり、今、この孤島に来てから一か月が経過しておりました。

「一か月も行方不明だと捜索願を出されかねないレベルの拉致監禁ごひよ」

 一体何を目的として俺を拉致したのか。
 それも分からない。
 真っ暗闇の中、不安で不安で、独り言にもつい奇妙な語尾が付いて回ってしまうのである。

「教えてくれごひ。この島は俺に何も言ってくれないごひ」

 しかしそれも、スケルトン師匠との修行の日々と思えばまだ耐えられなくはない。
 謎の新スキル『骨感知』なるスキルも会得し、勇往邁進する日々ですが、いい加減に人里が恋しくなってまいりました。

「赤と青のダンジョンコアさんたちも、まだ魔力充填が終わってないごひ。詰んだごひ」

 さて、どうなってしまうのだろうか。


***

 あれからさらに一か月。
 発想の転換が必要でした。

「そう、探しても出てこない、見つけても逃げられるのなら・・・」

 自分から、出て来てもらえばいいのだ!!

「と言う訳で、ここ、「原初の黒のダンジョン」のからリュータが中継でお送りしております。ゲストはこの方、赤のダンジョンコアこと真紅さんと、青のダンジョンコアこと藍子さん、そして、なんと超大物! 現地のカリスマ、黒のダンジョンコアさんの三名です!! どんどん、ぱふぱふー」

「・・・、なんでアンタ、こんな簡単に見つかってんのよ?」
「・・・」
「しかし私たちの時よりも豪華なこの祠に惹かれてしまうのは無理のない話よ。ほら下僕、青のダンジョンに戻ってこれ以上の物を用意しなさい」
「ちょっと!! それ、アタイが先だよ!! 藍子なんてデコってもらってるじゃないのさ!!」


 天の岩戸作戦、大 成功!!

 毎日コツコツと森からそれらしい木を『電動ノコ』で伐採し、『乾燥』で使える木材にした上で、加工。俺の背と同サイズのミニやぐらを組んで、見た目はまるで妖精の為のお祭り会場のよう。その奥には本陣となる岩製の祠も設置。石製ナイフを作るときと同じ要領で巨大な岩を研磨して形を整えて、道祖伸の簡易祠みたいなものを作ってしまいました。なお、運搬には『収納室』を使いました。


 さぁ、これでダンジョン踏破だ!!


 なんだけど・・・

「しかし黒のダンジョンコアさんをこれから破壊するの?」

 目の前で黒い珠が、俺が用意した料理の数々と取り込んでいるのですが、これ、割るの?
 餌に釣られた野良猫を叩くようで、良心の呵責がハンパないんですけど・・・。

「アタイを無視するんじゃないよ!!」
「・・・ッ!?」

 パリーン。


 - おめでとうございます。
 -ダンジョン踏破によりスキルポイントを200p進呈します。


「あ」
「あ」
「あ」


 黒のダンジョンコアさん、真紅さんの一撃により殉職なされました。

「そんなの、あり!?」


 ありみたいです。


 合掌。



***

「そうか、彼女らは俺の所有物と言う扱いなのか」

 何故赤のダンジョンコアの妖精さんたる真紅さんが割ったのに、俺が踏破した事になったかと言えば、そう言う事情です。
 なら俺の事、マスターって呼んでもいいんだよ?

「なんて、怖くて言えないけど」

 何せ彼女らは、あのダンジョンコアを何でもない癇癪の一撃でブチ壊すほどの腕力をお持ちなのだ。逆らえば、うっ、お腹が・・・。

「しかしいきなり言われて咄嗟に付けた名前だけど、気に入ってくれて良かったよ」

 そして無事に黒のダンジョンコアの魔石も手に入れたし、脱出と行きますかね。

 行きますかね。
 ・・・。

「なんでまだ、闇が晴れないんですかね」

 結界が持続しております。脱出が出来ません。
 砂浜から出ようとして、ぽよんと弾かれます。どうなっているのでしょうか。
 仕方がなく、スケルトン師匠が普段いる場所を超えて、いつも孤島を脱出する時に行っている石碑とは真反対の位置に来た。

「あれ? ここちょっと柔らかいな」

 押し込めば通れるかも。
 えい、えい、えい、えおおぉぉぉぉ!?

「ぬおおお! 体が吸い込まれるぅぅぅ!!」

 いきなりの吸引力。それもまったく落ちない。どこの掃除機メーカーに依頼した吸引なのでしょうか。

「だ、だめだ、体が千切れる!」

 だいそんがい。

 吸い込みきってくれるならともかく、ものすごく中途半端な位置で吸引してくる。直接的に言うと、右半身だけ吸い込んでくる。左半身は未だに砂浜に残っており、実質的には片足立ち状態だから移動も出来ない。このままでは身体が縦に真っ二つになることうけあいです。サムライの魂みたいなゲームで見たよ、それ!!

「た、助けてスケルトン師匠・・・、って、ほんとに来たー!?」

 そう言えば今日はまだスケルトン師匠と戦っていない。
 もぞもぞと這い寄るように近寄ってきた師匠は、何故か手に持っていた骨を俺に向かって投げつけてきた。

「ぬおおお!?」

 慌ててそれを左手でキャッチしたが、それが決め手だったのだろう。
 俺はズルリと奈落へと落ちていった。

 ありがとう師匠。
 例えヤる気満々な性悪笑顔の一撃だったとしても、助かりました。

 なお師匠の骨は、時空の狭間らしきこの場所に入ったとたんに粉々。
 俺の体も四方八方から吸い寄せられるような力を感じて、分裂寸前。
 これに焦った俺は身を護るためのスキルを全力で『スキルツリー』に依頼。

「対時空! 対時空! 対時空防御みたなスキル、下さい!!」

 この空間、マジヤバいって!
 スケルトン師匠、絶対に俺を殺す気満々だったって! ダストシュートする気で骨を投げてたんだ!!
 俺の感謝の気持ち、5秒持たなかったよ!! っと

「出た! なんのスキルだ!?」


 存在耐性


「え?」


 存 在 耐 性



 ん、んん?

 良く分からんが、今の状況を打破できるなら取得を宜しくぅぅわああああ!!



***

「ヘブッ!?」

 いきなり石畳にハードランディングした俺の顔面が、痛い。HP残り11。

 ざわ、ざわざわ。
 そして感じる人の気配。
 背後には、例の石碑。広場のようで、いつか見た俺の石像みたいな状況で、石碑の周りは花壇となっている。
 どうやら俺は無事に脱出し、エルフの里の時と同じようにどこか人里に転移させられた模様。加工された石材の数々に、文明を感じる。
 ちなみに今回は死んでいません。


「はー、すいません、お騒がせしまし・・・ドラゴン!?」

 二足歩行のドラゴンが、大勢歩いていました。

 ざわ、ざわざわ、ザワザワザワザワザワ!!

「な、何? 急に騒がしく・・・、あ!?」

 まさか、空飛ぶトカゲドラゴン扱いした事を怒っていらっしゃる?
 なにやら二足歩行する髪の毛フサフサのトカゲ人が、いかつい顔をして徐々に間合いを詰めてくる!
 すわっ、魔人か!? と思ったその瞬間、一番手前にいたフサフサのトカゲ人が、俺でも分かるほどの笑顔で肩を優しく叩いてきた。

「今、俺の事を格好いいドラゴンと勘違いしたか?」
「え?」
「いや待てよアレックス。きっと俺の事をドラゴンと勘違いしたんだ。な? そうだろ?」

 ええ?

「いいえ、彼は私の鱗を美しいドラゴンと見間違えたのよ。ミス.トリビュートのこの私を!」
「いや、俺だ」
「ワシじゃよ」
「俺っちだって!」
「僕だよ!!!!」
「アタチよー」

 え、えーと。
 か、『鑑定』!!


 リザードマン
 -勇猛で気高く、心優しい種族。全員が戦士であり、全員が大工でもある。ドラゴンおよびドラゴニュートに対して強烈な憧れを持っている。同族同士はとても仲が良い。



 あ、はい。

「「「「で、誰がドラゴンなんだ!?」」」」


「えーと、うん。皆さんかっこよすぎて、全員ドラゴンだと思ってしまいました」

「「「「・・・」」」」

 ごくり・・・。


「「「「だよな!!」」」」



 わっはっはっはーって、仲良いな、ほんとに!!


***

「改めて、我らドラゴン、ではなかったな、はっは、失礼。我らリザードマンの街トリビュートへようこそ、人族のお客人」
「はい、ありがとうございます」

 皆さん笑顔で肩をポンポンと叩いて立ち去っていく。なんだろう、下町とか、そう言う雰囲気を感じる。
 しかしなんでまた、髪の毛フサフサなんだろうか・・・。しかも黒髪・・・。緑の肌とマッチして、なんかこう、そこはかとなくイケメン臭がするわ。

「自己紹介をしよう、俺はアルファのアレックスと言うものだ。こちらがベータのブライトだ」
「ブライトだ! よろしくな!」
「はいご丁寧にどうも。俺はリュータです」
「リュータか! 何か、かっこいい名前だな! はっはっは!」

 太だから、感じるものがあるのかもしれない。
 しかしすごく爽やかに笑うのな、このトカゲ。

「それでどうしたリュータ、女にでも振られたのか? はっはっは」

 あ、これ外人のノリだ。HA HA HA!! ってヤツだ!
 しかしネタが女に振られたかって、なんともまぁテンプレな・・・、おっと、そうだ!

「ちょっと失礼!!」

 そうだ、脱出したんだから『電話』だ! 『電話』でガルフとシルちゃんに連絡しとかないと!

「てい、『電話』!!」


- お掛けになった番号は、電源が入っていないか、電波が届かない場所にあります -


「ガ、ガルフ? いや、シルちゃんも、まさか・・・」


- お掛けになった番号は、電源が入っていないか、電波が届かない場所にあります -


「そおい!!」

 なんだよそれ、電源が入っていないってさり気なく怖い言い方すんじゃねーよ!! 人間なのに電源入ってないとか、怖すぎるわ!!
 いや本当に、マジで二人とも死んだりしてないよね?

「お、どした?」
「ブライトさん。実は俺、今知り合いに連絡入れようとしたら、通じなかったんです」
「あー、ここ、電波の入りが悪いかんな」

 電波の入りが悪い。

 でんぱの はいりが わるい。



「そうだな。国内ならばハンターギルドの電話が使えるが、どうする?」
「え?」

 あるの? 電話。
 あるの? ハンターギルド。

「国内、なんだろうか・・・」
「どこに連絡しようとしたんだ?」
「アベリア王国と、エルフの里です」
「アベリアは海を挟んで向こう側だな。エルフの里は隣だ」
「隣!?」
「だが、あちらと交流はあまりない。獣人王国は真下だから繋がる」

 真下!?
 いや、獣人王国どんだけ広いんだよ!?
 さすがモグラ王国、ハンパない。
 でもとにかくそうだ、変態忍者に連絡を入れよう。


***

 チン。
 受話器を置いた音が鳴る。

「連絡は付いたか?」
「はい、同じハンターの友人、いえ、知り合いと話せました。その彼に伝言を頼みました」
「そうか、それは重畳。しかし獣人にエルフに我らと、実に顔が広いのだな」
「言葉も分かってるしな! すごいことだぞ! だが、なんで今言い直したんだ?」

 うん、さすが『生活魔法』さん、あなたの翻訳機能はチートです。
 しかしどうにもこの機能、生活魔法Lv2以上の効果みたいだ。未だに俺と同じレベルで言語をマスターしている人をシルちゃん以外に見かけない。彼女のは年の功だからな。

「とりあえず・・・」
「とりあえず?」
「働かせてください!」

 なんと俺氏、無一文、再び。
 宿に泊まる、お金がない!! おばざたーぼー

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