種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘編

異変

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「……あ~……きっつい」
「……んぅっ……眠い」
「……いつ戻ってきたコトミン」


第二次予選の翌日、自室でレノが目を覚ますと既に窓から見える太陽は昼の時刻を示しており、ベットの中で自分にしがみ付く琴音を引き剥がし、顔を洗うために部屋を出る。


「……あっ、おあよ~」
「……何でヨウカまで泊まってんの?」


部屋を出て早々に寝ぼけ眼に髪の毛がぼさぼさのヨウカと出会い、彼女は目元を擦りながらレノに抱き付く。


「おいおい……」
「ん~……あれ、レノたん?」
「気づいてなかったんかい」
「ホノカちゃんかと思っちゃった~……ねえ、部屋まで運んで~」
「はいはい……む、この感触は」
「あ、やぁん……て、的確に弱い所を触らないでぇ……」


ヨウカを抱きかかえ、そのまま彼女が泊まっているカリナ(随分と仲が良くなった)の部屋まで運び込む。部屋の持ち主であるカリナは床の上に転がっており、その手には空の酒瓶を握りしめている。


「う~ん……もう飲めないっす」
「たくっ……ほら、寝るならベットに行け」
「むにゃむにゃ……」


何時の間にか背中で眠りこけていたヨウカもベットの上に運び込み、カリナも隣に眠り込ませる。2人はお互いに抱き合うように眠り込み、微笑ましい光景だが、


「う~ん……」
「ぐぐぐっ……あ、姉御……許してっす……」
「おお、見事なチョークスリーパー」


ヨウカに首を絞められ、カリナは顔色を青くするが、そんな彼女達を置いてレノは部屋を出ると、今度は予想外の人物と出会う。


「あれ……レノ様?」
「レミア?お前も泊まってたの?」
「え、ええ……まだ少し頭が痛いです」


彼女はバルに付き合わされ、どうやら朝まで飲んでいたらしく、酒臭くて頬が赤い。頭を抑えながらレミアはレノが出てきた部屋を確認して顔を紅潮させる。


「ここは……その、あの、カリナさんとはそういった関係だったんですか……?昨晩はお楽しみを……」
「違ぇよ」
「そ、そうですか……安心しました」
「あっそう」


ほっと安堵の息を吐くレミアの横を素通りし、レノは顔を洗いに向かおうとした時、


「あ、あの……レノ様に聞きたいことがあるんですが」
「ん?」


後方から声を掛けられ、振り返るとレミアはもじもじと言いにくそうに顔を反らし、


「その……レノ様はナナの事をどう思っていますか?昨日の件でお怒りになられては……」
「別に……まあ、色々と言われたけど気にしてないよ。いや、反省していないという意味じゃないけど」
「そうですか……良かったです」


ナナは彼女なりにレノの事を気にかけており、別に彼女に悪気が無い事は理解している。レミアはその返答に安堵し、今度こそレノが立ち去ろうとした時、


ボタッ……ボタッ……


「……えっ」
「レノ様!?」


唐突にレノの鼻から熱い物が流れ込み感覚に襲われ、地面に血痕が生まれる。すぐに自分が鼻血が噴き出している事に気が付き、レノは鼻を抑える。


「だ、大丈夫ですか!?すぐに治療を……」
「い、いや、平気だって……」
「すぐに人を呼んできます!!」
「たかが鼻血で……お~い」


ドドドドッ……!!


廊下を疾走して階段を駆け下りるレミアに溜息を吐き、レノは取りあえずコトミに見てもらおうと部屋に戻ろうとした時、


「うっ……!?」


ドスンッ……


その場で跪き、今度は頭痛に襲われ、そのまま壁に背中を任せて座り込む。


(……何だ……昨日のカラドボルグの影響か……?)


だが、聖剣の影響にしては十分に魔力の方は一晩眠ったことで回復しており、今までにカラドボルグを使用した際にはこのような症状は起きなかった。レノは自分の身体の異変に戸惑いながらも、すぐにレミアが現れるまで大人しく待機していようとした時、


ボウッ……!


「……っ……!?」


突然、右手の紋様が白く光り輝き、猛烈な睡魔に襲われる。レノは床に倒れ込み、そのまま為す術も無く意識が途絶えた。




――次に意識が戻った時、随分と久しく感じる光景が広がっていた。視界には真っ白な空間が広がっており、自分の肉体の感覚が無い。



だが、変化があるとすれば何時もは現れる彼女の姿が無く、代わりに白い靄のような物に覆われた人型のシルエットが現れる。


『いや~……お久しぶりですね』
『……本当に久しぶりだな』


何処からともなく声が聞こえ、試しにこちらも返答すると、以前と違ってはっきりと発音できる事に気付く。今までは考えた事だけが伝わっていたが、今回ははっきりと言葉にする事が出来る。人型のシルエットは照れくさそうに頭を抑えながら、ピコピコと「兎」を想像させる頭の上の両耳を動かす。


『今まで何処に行ってたんだ?』
『こっちも大変でしたよ~?肉体が失ったから、波長が合う新しい素材を探すのに苦労しましたし』
『素材……?』
『そうですね……聖痕も大分集まってきましたし、そろそろ私の事と……貴方の身体の異変を説明しましょうかね』


白い靄の人型のシルエットは座り込む動作を行い、ちょいちょいとレノを手招く様に掌を動かす。身体の感覚は無いが、取りあえずは彼女の元に向かうように思い込むと、視界が徐々にシルエットに接近する。

間近にまで人型のシルエットに近づくと、白い靄の部分が晴れてある人物の姿が映し出される。それはレノも見覚えのある人物であり、名前を呟く。


『ホビット……!?』
『だれが小人ですか!!ラビットですよラビット!!』



――そこには「剣乱武闘」の実況と審判役を務める少女、ラビットの姿が映し出された。
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