種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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闘人都市崩壊編

噴水広場

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闘人都市の闘技場から「金色の雷光」が放たれ、巨大隕石を飲み込み、完全に消失させる光景は都市中の何処からでも確認できた。人々の避難活動を誘導していたヨウカ達はその光景を確認し、すぐにレノが破壊に成功した事を悟る。


「す、すごい……これほどまでにレノさんの力は……!?」
「うわぁ~……何だか綺麗だったね」
「……同意」
「おい……少しは緊張感を持て、お前達」
「同感ですね……うっ……頭が……」


ヨウカ達は以前にジャンヌがアルト達と最初に遭遇した噴水広場で怪我人の治療を行っており、偶然にも再会したセンリと共に闘技場からの雷光と隕石の衝突を確認し、全員がその光景に驚愕した。

特にジャンヌは自分と同じ聖剣所有者であり、彼女はレーヴァティンを完全に操作する事は未だに出来ず、レノのように巨大隕石の破壊は到底できない。だからこそ、彼の凄さが良く理解できた。

コトミはセンリに肩を貸しながら、闘技場の方角を確認し、心配げに猫耳を想像させる癖っ毛をぴこぴこと忙しなく動かし、今すぐに迎えに行きたい衝動を抑えきれず、


「……ぱす」
「おおうっ!?」
「わっ……こ、コトミ!?」


ライオネルにセンリを預けると、コトミは即座に闘技場の方角に向けて走り出し、慌てて他の面々が制止の言葉を掛けるが、それを無視していつもののんびりとした動きからは考えられない俊敏さで走り抜ける。


「ま、待ってコトミたん!!」
「ふげぇっ!?」
「ああっ!?み、巫女姫様!!」


慌てた様子でヨウカが治療中の怪我人(男性冒険者)を地面に落とし、コトミの後を追うように走り出す。すぐにジャンヌがセンリに視線を向け、彼女は頷くと2人を止めるために追いかける。

センリはライオネルに抱えられながら、魔人族である彼に対して思う所はあるが、彼女はハイ・ゴブリンであるカイの面倒を見るなど魔人族に対して理解力はある。また、ヨウカから話を聞いて彼は信用できる相手だと判断した。


「ライオット……さんでしたね」
「いや、ライオネルだが……」
「す、すいません……ライオネルさん。頼みたいことがあります」
「何だ?俺もあいつ等を追いかけるのか?」
「いえ……まだ残党が残っている可能性があります。今ここで戦えるのは貴方だけですので」
「そうだな……」


2人は周囲を見渡し、大勢の怪我人がこの噴水広場に集められている。彼らは「剣乱武闘」の暴走した参加者や、魔の聖痕によって作り出されたゴーレムたちの被害者であり、その数は数百人を超す。

今現在も次々と怪我人が送り込まれ、聖導教会の人間達が治療を行っているが、人手が圧倒的に足りない。一応は護衛として都市の警備兵も配備されているが、彼等だけでは敵に襲われた場合に対処出来ない。


「出来ればもう少し人手が欲しいのですが……貴方以外の魔人族は?」
「……俺は常に1人だ」
「あ……す、すいません……友達がいなかったのですね」
「ち、違うぞ!!友はいるが、この都市に居る魔人のは俺だけだ!!」
「……どういう意味ですか?」


ライオネルの発言に引っ掛かりを覚え、センリは尋ねると彼は頭を搔きながら、


「それがな……我らが王(魔人王)が、昨夜にこの都市に居る全ての同族を呼び集めた宴を行ってくれた。その際にほとんどの者が酔い潰れてしまったが、俺だけは酔い冷ましに少し外に出てたのだが……戻った時には誰も居なくなっていた」
「置いてけぼりにされたんですね……」
「ま、待て!!話は終わっていない!!俺はすぐに臭いを頼りに皆の元へと戻ろうとしたが、すぐに異変に気が付いた。俺達が飲んでいた酒場は無数の同族の匂いが漂っていたが、同時に奇妙な魔力の残滓が感じられた……」


魔人族は独特の感覚を持っているため、中にはライオネルのように魔法を敏感に感じ取る種もいる。


「恐らく、我らが王は仲間達を連れて何処かに転移されたのだろう。その意図は分からんが、きっと何かの理由があるはずだ」
「転移……」
「まあ、その後は俺も1人酒で酔い潰れて寝ていたところを、外が騒がしくて出てきたらこんな事態に巻き込まれたという訳だ」
「置いて行かれて寂しかったのですね……」
「ち、違うというに!!」


可愛そうなものを見る目で視線を向けるセンリにライオネルは否定するが、肝心なのは彼の話が事実ならば、何故「魔人王」はこの都市中の魔人族を集めて宴を行ったのか。

恐らく、宴自体はただの彼らを呼び集める理由でしかない。肝心なのはライオネルを除く魔人族全員を転移させた事であり、まるで「ロスト・ナンバーズ」の襲撃を事前に知っていたかのような用意周到な行動にセンリは疑問を抱く。



――聖導教会と魔人族の不和は別として、センリは「魔人王」に対して疑問を抱いた瞬間だった。
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