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しおりを挟む香織は結婚して三年、善き妻であろうと必死だった。親戚から子供はまだかと聞かれる都度、泣きそうになりながらも必死で笑った。
子供が出来ないのは香織のせいだと責めてくる夫にも耐えた。どれだけ浮気されても、いつか自分の所へ戻ってきてくれる。身体だけではなく、心も。
そう思って耐えるのにも、限界が来た。
自分の浮気を正当化しようとは思わない。けれどいつものように和樹にヘラヘラと笑う気もない。
ただ、もう私の心が限界を迎えたのだ。
善き妻であることに、疲れてしまったのだ。
愛が無くなっても情くらいは残るかと思ったが、情すらも感じないほど香織の心は冷めきっていた。
「おい、香織!いい加減にしろよ!」
「なぁに?和樹…」
「お前俺と別れたいのか!」
「そう言っているでしょう」
あんなにも他の女をとっかえひっかえしていたくせに、まさか…私と離婚するのが嫌なのだろうか。
「貴方は浮気をやめない。私も浮気した。お互い、もう愛なんてない。幸い私たちにはまだ子供もいないんだから、いいわよね」
「…俺をもう愛していないのか…?」
おかしなことを聞く。
そうさせたのは…貴方よ?
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